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韓国所在の植民地期日本関係資料 ―デジタル化資料の利用方法を中心に―:アジア情報室通報 14巻1号

アジア情報室通報 第14巻1号(2016年3月)
福山 潤三(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

植民地期の朝鮮半島(1910-1945年)で発行・作成された資料は、既に失われたものも少なくないが、第二次世界大戦後に朝鮮半島内外の各所に移り、現在に引き継がれている。韓国に残る資料については、1990年代以降デジタル化が進められており、日本からも閲覧できるデジタル化資料が増えている。

本稿では、韓国に残る植民地期日本関係資料の概況とデジタル化の動向を整理した上で、デジタル化資料の利用方法を紹介する。

1. 韓国所在資料の概況

出版物については、朝鮮総督府図書館の旧蔵書が韓国国立中央図書館(以下「NLK」という。)に、京城帝国大学図書館の旧蔵書がソウル大学校図書館に引き継がれている[1]。そのほか、釜山広域市立市民図書館(釜山・慶尚地域資料)、ソウル市立鍾路図書館(近代地誌、陸地測量部発行地図)等、特色ある資料を所蔵している図書館も見られる。

一方、朝鮮総督府の文書は、国家記録院に文書約4万件、図面約85万件が引き継がれたほか、国史編纂委員会、高麗大学校等の機関にも残されている[2]。

表 韓国所在の主な植民地期日本関係資料
機関名 所蔵資料概要
国立中央図書館 朝鮮総督府図書館蔵書を引き継ぐ。約10万6千冊(当該資料全体の約8割)をデジタル化。 
http://www.nl.go.kr/nl/dataSearch/data_wm.jsp
ソウル大学校図書館 京城帝国大学図書館蔵書を引き継ぐ。単行本、雑誌記事等をデジタル化。
http://sdl.snu.ac.kr/StaticView.jsp?page=DLContents
国史編纂委員会 朝鮮総督府職員録、京城地方法院検事局文書等の一次資料、雑誌・新聞記事等。外部機関との協力によるデジタル化も進めている。
http://db.history.go.kr/
国家記録院 朝鮮総督府の文書、図面等をデジタル化。
http://www.archives.go.kr/
韓国言論振興財団 1945年以前刊行の新聞34タイトルをデジタル化。
http://www.kinds.or.kr/

2. デジタル化の動向

2.1. 韓国国立中央図書館(NLK)

NLKが所蔵資料のデジタル化に着手したのは1995年のことである。当初のデジタル化対象は、貴重資料や資料保存の必要性が高い資料で、朝鮮総督府図書館旧蔵資料は、この頃からデジタル化が進められてきた。[3]

その後、対象資料を拡大しつつ事業が進められ、2014年時点で約45万冊の資料がデジタル化されている。そのうち、朝鮮総督府図書館旧蔵資料は約10万6千冊で、全体の23.3%を占める一大資料群となっている[4]。

デジタル化済資料は、同館ウェブサイトの「소장원문(所蔵原文)」(http://www.nl.go.kr/nl/dataSearch/data_wm.jsp)で検索できる。そのうち、著作権の問題が解決された資料(約15万冊)はインターネット上で公開されており、朝鮮総督府図書館旧蔵資料についても日本から閲覧できるものが少なくない。

2.2. 国史編纂委員会

1997年から、韓国史の研究に必要な基礎資料をデジタル化し、「한국사데이터베이스(韓国史データベース)」(http://db.history.go.kr/)で提供している。古代から現代に至るまでの出版物、文書、目録情報等、多様な情報を扱っている。[5]

植民地期関係については、「日帝強占期資料」として、朝鮮総督府職員録、京城地方法院検事局文書、中枢院資料等の一次資料や、当時の雑誌・新聞等、30種類のコンテンツを公開している。前述したソウル大学校図書館、釜山広域市立市民図書館、鍾路図書館との協力によりデジタル化した資料も閲覧できる。

2.3. 韓国言論振興財団等

韓国では、新聞のデジタル化と公開が進んでいる。韓国言論振興財団では、19世紀から現在の新聞まで、幅広くデジタル化を行っており、検索用ウェブサイト「KINDS」(http://www.kinds.or.kr/)で公開している。戦前期の新聞として、終戦まで中断なく刊行された唯一の朝鮮語新聞「매일신보(毎日申報)」等15紙のほか、他機関がデジタル化した19紙を検索できる。

また、韓国の大手ポータルサイトのNAVERでも、「뉴스 라이브러리(ニュースライブラリー)」(http://newslibrary.naver.com/)で「동아일보(東亜日報)」を提供している[6]。

3. デジタル化資料の利用方法

3.1. 韓国のデータベース検索時の注意点

次に、本稿で取り上げたデジタル化資料の利用方法を紹介する。データベースごとに検索仕様は異なるものの、ある程度共通する特徴として、以下の注意事項がある。これらに注意して、ここでは、京城帝国大学に関する資料を探してみる。

  • 漢字、ひらがな、カタカナ等は、原文表記のとおり入力するのが望ましい[7]。
  • 複数の検索語でAND検索する際は、半角スペースで区切るのが望ましい。全角スペースは処理されないことがある。

3.2. 検索事例①:NLK「所蔵原文」

NLKの「所蔵原文」は、タイトル、著者、発行者等から検索でき、新字体でもある程度ヒットする。例えば、新字体で「京城帝国大学」をタイトル(제목)検索してみると、122件ヒットする。画面左側で資料群の種別、発行年代等で絞り込みができ、官報、新聞、貴重雑誌等の資料群に関連データがあることが確認できる。ここで、「한국관련외국어자료(韓国関連外国語資料)」を選択すると、該当する9件のみの書誌データが表示される。

次に、検索結果の中に閲覧したいデータがあった場合は、書誌事項の3行目に表示されるアイコンを見て、利用条件を確認する(図1)。図1の②の部分に水色のアイコン「모두 이용(무료)(すべて利用(無料))」が表示される資料は、その左側にある①のリンク「온라인(원문)보기(オンライン(原文)閲覧)」をクリックすれば、原文をインターネット上で閲覧できる。

図1 デジタル化資料へのリンクと利用条件

ちなみに、図1の『(京城帝國大學豫科)文化生活調査報告 : 昭和12年12月現在』は、京城帝国大学予科文芸部が予科の学生の趣味・嗜好等を調査した日本語資料である。映画が大人気だったこと、読書する学生が多い割に図書館利用率は低調であったこと等、当時の学生生活が窺われる資料であるが、当館では所蔵していない。このように、日本国内でも入手が難しい日本関係資料を閲覧できることがある点が、大きなメリットと言えよう。

3.3. 検索事例②:KINDS

次に「KINDS」で、京城帝国大学第5代総長の松浦鎮次郎に関する新聞記事を探してみよう。時代別に検索ページが異なるので[8]、今回は1945年以前の新聞を検索できる「고신문(古新聞)」のキーワード検索画面(http://www.mediagaon.or.kr/jsp/sch/mnews/gonews/goMain.jsp?go_code=B)にアクセスする。

KINDSは、見出しと本文[9]から検索できるが、漢字の新旧字体が区別される点に注意が必要である。例えば、「松浦鎮次郎」の検索結果は0件であるが、旧字の「松浦鎭次郞」で検索すると54件ヒットする。漢字のハングル音読みでも検索できるので、表記が曖昧な場合は、ハングル音読みで検索するとよい(松浦鎮次郎の場合は、漢字のハングル音読み「송포진차랑」でも54件ヒット)[10]。

検索結果の中から、50件ヒットした「매일신보(毎日申報)」を選択すると、記事ごとに、掲載紙名、日付、記事種別、掲載面、掲載段等の書誌情報が表示される。ここで、右端の「원문보기(原文閲覧)」に表示されるアイコンをクリックすると、原文のイメージ画像を閲覧できる(図2)。人事情報、式典記録等、様々な情報を、当時の紙面そのままに確認できる有用なデータベースである。

図2 記事一覧画面から原文を表示する

おわりに

本稿では韓国所在の植民地期日本関係資料を取り上げたが、台湾、旧満州等の地域にも同様の資料は残されており、かつデジタル化が進められている[11]。こうした資料は、当該地域の研究はもちろん、日本研究、あるいはアジア研究にも資すると思われる。本稿が、国外所在の日本関係資料がより多く活用されるきっかけとなれば幸いである。

(ふくやま じゅんぞう)



[1] 加藤聖文「解説 主要図書館の戦後の動向について」『旧植民地図書館蔵書目録. 第14巻』ゆまに書房, 2004.3, pp.425-428.
これらの機関の所蔵目録については、リサーチ・ナビ「韓国所在植民地期日本語文献の調べ方」を参照。
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-109.php (ウェブサイトの最終アクセス日は、2016年2月16日である。以下全て同じ。)

[2] 金慶南「帝国の植民地・占領地支配と「戦後補償」記録の再認識 : 植民地朝鮮支配・戦後処理の決裁構造と原本出所を中心に」『アーカイブズ学研究』23号, 2015.12, pp.116-118.

[3] NLKのデジタル化については、以下を参照。 チェ・ユジン「国立中央図書館の所蔵資料のデジタル化と遠隔利用サービスの現状」(第18回日韓業務交流発表資料)2015.9.9. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/cooperation/pdf/2015kankoku_theme1.pdf
「4.2.1 주요자료 원문정보 DB구축(4.2.1 主要資料原文情報データベース構築)」『국립중앙도서관연보 2014(国立中央図書館年報)』2015.5, pp.110-111.

[4] 主に以下の資料群からなる。 ①朝鮮総督府官報、②新聞、③貴重雑誌(雑誌記事)、④日本語資料、⑤韓国関連外国語資料(日本語の資料も含む)。なお、書誌事項はテキストで、原文情報はイメージファイルで構築されている。

[5] 「한국사데이터베이스 소개(韓国史データベース紹介)」国史編纂委員会ウェブサイト
http://db.history.go.kr/introduction/e_intro.html

[6] 阿部健太郎「韓国の最新の図書館情報サービス : 在外研究報告」『アジア情報室通報』11巻1号, 2013.3, p.2.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8111664_po_bulletin11_1.pdf?contentNo=1

[7] 例えば、NLKの「所蔵原文」では、ひらがなとカタカナ、促音は明確に区別される。次ページの図1の2番目に見える「パムフレツト. 第1-3冊」は、「ぱむふれつと(ひらがな)」「パムフレット(促音)」ではヒットしない。うまくヒットしない場合は、漢字のみで検索する、ハングル読みでも検索する等の手法も試してみるとよい。

[8] 時代別の検索方法については、リサーチ・ナビ「韓国の新聞記事データベースKINDSの使い方」参照。
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-115.php

[9] 本文検索は、全文がテキスト化されているか、本文を基にキーワードが付与されている場合のみ可能。

[10] 例えば、以下のウェブサイトで、漢字をハングル音読みに変換できる。
「漢字ピンインハングル読み変換」国立情報学研究所ウェブサイト
http://cattools.nii.ac.jp/pinyin/pinyin_jsonp.html

[11] 台湾については、齊藤まや「台湾に所在する植民地期日本関係資料の現況と課題」『アジア情報室通報』12巻4号, 2014.12, pp.2-7を参照。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8837153_po_bulletin12_4.pdf?contentNo=1
旧満州については、丹治美玲「レファレンスツール紹介(40)満州国・満鉄に関する資料」『アジア情報室通報』13巻4号, 2015.12, pp.7-9を参照。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9579144_po_bulletin13_4.pdf?contentNo=1

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