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中国で刊行された日本関係資料とアジア情報室における 収集・所蔵:アジア情報室通報 14巻2号

アジア情報室通報 第14巻2号(2016年6月)
水流添 真紀(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

中国は、特に近代以降、日本の動向を注視してきた[1]。また最近では、日本を紹介する雑誌『知日』[2]が2011年に創刊され、猫や漫画を特集した号の売り上げが10万部を超える[3]など、文化面への関心が寄せられている。

本稿では、中国の人々の日本への関心の度合いを測る材料の一つとして、中国における日本関係資料の刊行状況を紹介する。他国が日本についてどのような関心を持っているかを知ることは、対話や相互理解のきっかけになると思われる。

1. 中国における日本関係資料の刊行状況

1.1. 出版点数と分野

中国では、2014年に44万8,431点の図書が出版されている[4]。これらすべての資料から日本関係資料を網羅的に抽出する手段は存在しないが、ここでは、いくつかの情報源をもとに、出版状況の把握を試みたい。

中国国家図書館は、納本制度により国内のすべての出版物を収集することとしている。2014年の日本関係図書の出版状況を知るため、同図書館の蔵書目録データベース[5]で、日本関係の分類記号[6]またはキーワード[7]を持つ資料を検索した結果、合計3,470件がヒットした。この中には台湾で出版された図書や複数の分類が付されているものも含まれるが、近年の納本率(全出版物のうち同館に納本されたものが占める割合)が約70%[8]であることから推計すると、2014年には4,500点から5,000点程度の日本関係図書が出版されたものと考えられる。

なお、検索に使用した分類記号、キーワードならびにヒット件数は表1のとおりである。「日本文学」が突出して多いが、ここには日本文学の中国語訳が含まれる。次に多いのが日中戦争、日本語、日中関係などの分野である。

また、2009年の出版点数と比較すると、日中関係、日本文学、日中戦争の分野が大きく増加している。

表1 中国で出版された日本関係資料
  2014年 2009年
図書分類記号 (内容)    
B313* (日本哲学) 8 21
D731.3* (日本政治) 71 35
D829.313 (日中関係) 103 17
D831.3* (日本外交) 10 13
D931.3* (日本法律) 43 23
E313* (日本軍事) 44 5
F131.3 (日本経済) 3 5
G131.3* (日本文化) 18 26
G531.3* (日本教育) 5 3
H36* (日本語) 433 659
I313* (日本文学) 1433 635
K264* (日本統治) 43 18
K265* (日中戦争) 666 96
K313* (日本史) 103 55
K833.13* (日本人伝記) 62 71
K893.13* (日本風俗) 16 4
K931.3* (日本地理) 75 56
キーワード    
日本 and 科学 176 89
日本 and 工业 29 18
日本 and 交通 20 9
日本 and 艺术 18 14
日本 and 农业 15 2
日本 and 医学 18 11
日本 and 环境 16 11
日本 and 地震 0 7
日本 and 技术 12 67
日本 and 漫画 30 12
合計 3,470 1,982
(参考)総出版点数 448,431 301,719

(出典)中国国家図書館蔵書目録より筆者作成

1.2. 学術分野の叢書、逐次刊行物

学術分野の日本関係資料の刊行状況については、日本研究の動向が参考となるだろう。中国では1990年代から日本研究に関する叢書の刊行が相次いでおり、1990年から2013年の間に計31種刊行されている。叢書ごとの刊行冊数も増加傾向にある[9]。

また、中国には100を超える日本関係の研究機関・学会等が存在する[10]。各機関が機関誌や学会誌を発行していることを考えると、日本関係の学術刊行物も少なくないことが予想される。例えば、中国学術雑誌全文データベース「CAJ」[11]には、タイトルに「日本」が含まれる雑誌が9誌収録されており、「美国(米国)」が2誌、「韓国」が1誌であるのに比べても特に多いことが分かる。

1.3. 翻訳書

中国における日本書の翻訳出版点数は明らかではないが、日本書を出版する権利を日本から輸入した数は2014年で1,736点であり、米国、英国に次いで多い[12]。

また、中国のインターネット書店である「当当图书」の2015年売上トップ100[13]には、東野圭吾の『解忧杂货店(ナミヤ雑貨店の奇蹟)』など、7点の日本人著作の翻訳書がランキング入りしている。

これらのことからも、日本の翻訳書がある程度人気を集めているといえるだろう。

2. アジア情報室で収集・所蔵している日本関係資料

2.1. 日本関係資料の収集方針

国立国会図書館は、「資料収集方針書」において、外国の資料のうち、「日本語の資料、言語を問わず日本を主題とする資料及び著者が日本人又は日系人である資料」を日本関係資料とした上で、「日本関係資料は、旧植民地関係の資料(中略)、東日本大震災の記録等を含め、できる限り広く収集する。日本人著作の翻訳書(重訳書を含む。)、漫画及び児童書についても収集の対象とする。ただし、趣味のための資料、実用書、日本語教材及び旅行ガイドブックは厳選して収集する。」としている[14]。アジア情報室でも、本方針に基づき、中国で刊行された資料の収集に努めてきた。

2.2. アジア情報室における所蔵状況

2015年11月、アジア情報室は、当館ホームページの調べもの支援サイト「リサーチ・ナビ」において、「アジア地域で刊行された日本関係図書リスト」[15]の提供を開始した。これは、当館で収集・整理した、アジア諸国で刊行された日本関係図書の書誌情報を、地域別・分類別に四半期ごとに提供するものである。このリストを元に、アジア情報室での所蔵状況を紹介したい。

表2のとおり、アジア情報室で2015年に整理した図書のうち、中国で刊行された日本関係資料は216冊である。歴史分野が約半分を占め、その中でも、『抗日战争时期重庆大轰炸研究(抗日戦争期の重慶大爆撃の研究)[16]』、『日本侵华细菌战(日本の中国侵略細菌戦)[17]』など、日中戦争に関する資料が多い。一方、中国で多く出版されている日本文学の分野が2割にとどまるのは、当館では参考図書や学術書を中心に収集しているためである。例えば、文学関係では『村上春树小说艺术研究(村上春樹小説芸術の研究)[18]』、『《三国演义》在日本的译介与研究(日本における『三国演義』の翻訳紹介と研究)[19]』などは収集するが、日本の文学作品の中国語訳は厳選して収集している。

表2 関西館アジア情報室所蔵の中国刊行日本関係図書
  2015年整理分
政治・法律・行政 25 11.6%
経済・産業 12 5.6%
社会・労働 5 2.3%
教育 4 1.9%
歴史・地理 110 50.9%
哲学・宗教 14 6.5%
芸術・言語・文学 45 20.8%
科学技術 0 0.0%
学術一般・ジャーナリズム・図書館 1 0.5%
合計 216  

(出典)「アジア地域で刊行された日本関係図書リスト」より筆者作成

また、2015年に整理した資料には、科学技術に関するものが1点もなかった。収集すべき資料を適切に収集できているかどうか、慎重に確認する必要があるだろう。

1.2.で紹介した日本研究叢書については、31種のうち、当館で1冊でも所蔵しているものが、「中日历史研究中心文库(中日歴史研究センター文庫)」(社会科学文献出版社)など21種あった。未収集の資料は今後可能な範囲で入手を図りたい。

おわりに

以上、中国における日本関係資料の刊行状況を2014年のデータを中心に概観し、併せてアジア情報室での所蔵状況を紹介した。

アジア情報室では、日本関係資料以外の資料も含め、1年間に4,000冊から5,000冊程度の中国語資料を収集している。予算の制約もあり、中国で刊行されるすべての日本関係資料を収集することは難しいが、今後も学術刊行物や日中関係を扱った資料を中心に、収集に努めていきたいと考えている。

また、今回公開を始めた「アジア地域で刊行された日本関係図書リスト」を、ご自身の調査研究あるいは各図書館における選書の際にご活用いただければ幸いである。

(つるぞえ まき)



[1] 例えば、社会評論社から刊行されている下記シリーズを参照。
『中国人の日本観』編集委員会編『中国人の日本観 第1巻 古代から二十一か条要求まで』2016.【A99-ZC9-L142】
同『中国人の日本観 第2巻 二十一か条要求から日本敗戦まで』2012. 【A99-ZC9-J102】(【 】内は当館請求記号。以下同じ。)

[2] 『知日』中信出版社等, 2011-.【GB63-C85

[3] 毛丹青 等著『知日 : なぜ中国人は、日本が好きなのか! : it is JAPAN』潮出版社, 2015, p.142.【GB571-L171】

[4] 「23-1 图书出版状况(2014年)」国家统计局『中国统计年鉴 2015』中国统计出版社, 2015, p.771. http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2015/indexch.htm
(ウェブサイトの最終確認日は2016年5月16日。以下同じ。)

[5] 联机公共目录查询系统(中国国家图书馆) http://opac.nlc.cn/

[6] 国家图书馆《中国图书馆分类法》编辑委员会编『中国图书馆分类法』第5版, 国家图书馆出版社, 2010.9.【UL653-C30】
「简表」レベルのうち、主に地理区分で日本を指定できる分類記号を検索対象とした。

[7] 分類記号で抽出できないものを検索するため、筆者がキーワードを設定した。ノイズが含まれる可能性がある。

[8] 赵志刚「国家图书馆图书缴送统计方法与实践」『图书馆理论与实践』2015年11期, 2015.11, pp.20-24.

[9] 唐権「中国の日本研究叢書ブーム」『世界の日本研究』国際日本文化研究センター, No.18, 2014, pp.104-116. http://id.nii.ac.jp/1368/00003636/

[10] 日本研究机构检索(日本国际交流基金会北京日本文化中心) https://www.jpfbj.cn/intellectual/search/

[11] 中国期刊全文数据库(CAJ) http://gb.oversea.cnki.net/Kns55/

[12] 「23-8 版权合同登记及引进和输出情况(2014年)」前掲『中国统计年鉴 2015』 http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2015/indexch.htm

[13] 「图书畅销榜-2015年畅销书排行榜-当当畅销图书排行榜」当当图书. http://bang.dangdang.com/books/bestsellers/01.00.00.00.00.00-year-2015-0-2-1

[14] 「資料収集方針書」(平成25年7月1日), pp.13-14. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/collection/guideline.html

[15] http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bojasia.php
当館提供の「Books on Japan(日本関係欧文図書目録)」(http://www.ndl.go.jp/jp/publication/books_on_japan/boj_top_J.html)と同様に、『国立国会図書館分類表 改訂版 1987』に基づき、「日本」という主題に関連した約700の分類記号によって自動的に書誌データを抽出している。

[16] 潘洵 等 著『抗日战争时期重庆大轰炸研究』(国家哲学社会科学成果文库), 商務印書館, 2013.3.【GE333-C670】
なお、本書の日本語訳も刊行されている。潘洵 著 ; 徐勇, 波多野澄雄 監修 ; 柳英武 訳『重慶大爆撃の研究』岩波書店, 2016.2. 【GB521-L122】

[17] 陈致远 著『日本侵华细菌战』中国社会科学出版社, 2014.9.【GE333-C659】

[18] 尚一鸥 著『村上春树小说艺术研究』东北师范大学日本研究丛书, 商务印书馆, 2013.7.【KG665-C1】

[19] 赵莹 著『《三国演义》在日本的译介与研究』南开大学出版社, 2014.9.【KK222-C31】

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