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中国の漢詩や言葉の出典―インターネット情報を中心に―(レファレンス事例・ツール紹介(3)):アジア情報室通報 14巻3号

アジア情報室通報 第14巻3号(2016年9月)
齊藤 まや(国立国会図書館関西館アジア情報課)

アジア情報室には、中国の漢詩や言葉の出典に関する質問が多く寄せられます。出典を調査する際には、専門的な中国語資料が必要になる場合もありますが、多くの場合はインターネット情報だけでもある程度の調査が可能です。

本稿では、実際に問合わせがあった事例を用いて、主に無料で使えるインターネット情報を活用した出典の調査方法をご紹介します。

*【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2016年8月4日です。

事例1
書道作品に書かれている「独上高楼望帝京 鳥飛猶是半年程」という句の出典を調べたい

作者や時代等は不明です。まずは手がかりを得るためにGoogle等の検索エンジンで検索すると、この句は漢詩の一部であることや、「李徳裕」という人物が作者である等の情報を得られます。インターネット情報は信頼性に欠ける場合があるので注意が必要ですが、まずは上記が正しいと仮定して裏付け調査を進めます。漢詩の出典調査に使えるツールには様々なものがありますが[1]、ここでは、その中から以下のデータベースを検索します。

诗词鉴赏(金陵图书馆)
http://www1.jllib.cn/c/scjs/
先秦から近現代までの約10万首の詩・詞の全文を収録しており、全文検索および作者名検索が可能なデータベースです。時代や作者が分からない漢詩の出典を調べたい場合はまずこれを検索するとよいでしょう。簡体字で検索する必要があります[2]。詩の本文は「搜索诗词」、作者名は「搜索诗人」の欄に入力して検索します。

「搜索诗词」に句を入力して検索し、ヒットした「[唐•李德裕]登崖州城作」をクリックすると、以下の画面が表示されます(図1)。探していた句は唐代の詩人李徳裕の「登崖州城作」というタイトルの漢詩の一部であり、出典は『全唐詩』[3]の巻475の第44首目であることが分かります[4]。「[唐] 李德裕」の下に表示される28字が漢詩の全文です。

図1  「诗词鉴赏」の検索結果

図1「诗词鉴赏」の検索結果

この事例は、データベースで比較的容易に出典が分かりましたが、データベースで見つからなかった場合には、インターネット検索で名前が挙がった「李徳裕」の著作から探す方法もあります。NDL-OPAC(国立国会図書館蔵書検索・申込システム)(http://ndlopac.ndl.go.jp/)で「李徳裕」をキーワード検索すると、『李卫公会昌一品集.1~4』(【XP-A-21927】ほか)等の著作がヒットします。

もし、人名でNDL-OPAC等を検索してもヒットしない場合には、その人物について辞典類を調査し、別名や著作名等で再度検索する方法をお試しください[5]。例えば、以下の資料で「李徳裕」を調べてみます。

『大漢和辞典』(諸橋轍次著 大修館書店 1989~1990年)【KF4-E18】
国内最大の漢和辞典です。漢字や語句だけでなく、人名等の固有名詞の調査にも有用です。五十音順の「語彙索引」巻が便利です。

「語彙索引」巻で「李徳裕」を検索して該当項を見ると、李徳裕には「文饒」という字(あざな=別名の一種)があることが分かります。

改めて、NDL-OPACで「李文饒」をキーワード検索すると、先ほどはヒットしなかった『李文饶文集』[6]【XP-B-45515】がヒットします。このように、検索語を変えると新たな情報が見つかる場合があります。

上記の調査結果から見つかった李徳裕の著作を確認すると、『李卫公会昌一品集.3』【XP-A-21929】p.205と『李文饶文集』p.138に探していた句を含む漢詩を確認できます。

事例2
「古書澆胸」という言葉の出典を調べたい。

次に、言葉の出典の事例です。この言葉は、インターネットで検索しても手がかりを得られません。中国の言葉であることが推測されますが、中国語の辞典等には掲載されていません。このような事例では、以下のような、中国の漢籍を収録する全文データベースを検索するのが有効です。

捜神 (北京爱如生数字化技术研究中心) [7]
http://m.soshen.cn/soshen/
漢籍約1万点を検索できる「古代典籍」と近代以降の雑誌や新聞の記事を検索できる「近代典籍」を収録する無料のデータベースです(図2)。

図2 「捜神」トップページ

図2「捜神」トップページ

出典や人名・固有名詞の調査等に役立ちます。キーワード検索すると、キーワードを含む文章の前後約20文字とその出典が表示されます。簡体字・繁体字のいずれでも検索できますが、日本の漢字では検索できません。ここでは、漢籍を検索したいので、「古代典籍」にチェックを入れ、「古書澆胸」と入力して検索すると、次の1件がヒットします。

(清)張玉書 《佩文韻府》(清文淵閣四庫全書本) 御定佩文韻府卷二之二 :
琳札者胸有偃骨 古書澆胸 黄庭堅書人胸中久

『佩文韻府』[8]という資料に「古書澆胸」を含む文章が掲載されているようです。「黄庭堅」という人名らしきものも見えます。「捜神」は、約20文字しか本文を表示しないので、引用元の『佩文韻府』を確認する必要があります。

『佩文韻府』(博文館 明23.5)【特70-501】
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/903551(インターネット公開)[9]
通常の辞書等と異なり、韻体系の順に排列されているため、知識がないと検索するのが困難です。まず「捜神」で収録巻を特定してから探すのがよいでしょう。「捜神」の検索結果から、「古書澆胸」の掲載巻が巻2と分かっているので、『佩文韻府 2,3巻』を確認します。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/903552
まずは韻字の「胸」を探し、「胸」の一覧から「古書澆胸」の記述を見つけます (図3)。

図3 『佩文韻府 2,3巻』の19コマ目より http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/903552/19
図3 『佩文韻府 2,3巻』の19コマ目より

この部分の記述から、「古書澆胸」は、黄庭堅という人物の「人胸中久不用古書澆灌之則塵俗生其間」という文章に由来する言葉ということが分かります。

ただし、『佩文韻府』は、出典調査のツールの一つにすぎないので、これだけでは調査としては不十分かもしれません。黄庭堅の著作から前述の文章を見つけることができれば確実です。この文章の一部を検索語として、再度「捜神」を検索すると、黄庭堅の著作『山谷别集』[10]巻15等に収録されていることが分かります。

以上のほか、事例1と同様に黄庭堅の著作を探す方法もあります。前述の『大漢和辞典』等を調べると、黄庭堅は宋代の詩人・書家であることが分かります。NDL-OPACで「黄庭堅」を検索してヒットした『黄庭堅全集』【KK163-C3】を確認すると、第3冊 pp.1378-1379の「與宋子茂」という文章に「毎相聚,輙讀數葉《前漢書》,甚佳。人胸中久不用古今澆灌之,則俗塵生其間~」が掲載されています。『佩文韻府』では原文を短縮した形で引用されていたため、一部の字句が異なります。

このように、漢籍では引用元によって字句が異なる場合があるので、うまく見つからない場合はキーワードを短くする等して検索してください。なお、この部分の大意は、「いつも集まっては『前漢書』を数葉ずつ読むのは良いものだ。人は、長らく古今(の知識)を胸中に注がずにいれば、俗世の塵にまみれてしまう。」であり、「古書澆胸」は、「古典を学んで知識を得る」を意味します。

まとめ

以上、2つの出典調査の事例をご紹介しました。基本的な手順は以下の3ステップです。

  1. インターネット検索で手がかりを探す
  2. 漢詩や漢籍の全文データベースを検索する
  3. 作者と思われる人名の著作を確認する

出典調査は一見難しいように感じられますが、無料のインターネット情報だけでもある程度の調査が可能です。まずはこれらを活用いただき、さらに当館所蔵資料の確認等が必要になった場合は、ご遠慮なくアジア情報室にご相談ください。

(さいとう まや)



[1] 当館ウェブサイト内リサーチ・ナビの「漢詩の出典」(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-16.php)で紹介しています。

[2] 中国のデータベースは、簡体字か繁体字で入力しなければならないのが通例です。中国語の入力ができない場合は、「漢字ピンインハングル読み変換」(一橋大学付属図書館)(http://www.lib.hit-u.ac.jp/retrieval/holding/han2pin.html)等の漢字変換サイトを活用してください。

[3] 唐代の漢詩約5万首を収録する漢詩集です。冊子体だけではなく、「全唐诗库」(鄭州大学網絡管理中心)(http://www3.zzu.edu.cn/qts/)等、インターネットで公開されている無料データベースもあります。

[4] 「诗词鉴赏」の収録詩の全てに出典が表示されるとは限りません。個々で特定した詩人名や詩のタイトルから別途の調査が必要になる場合があります。

[5] 人物情報を調べるツールについては、「中国の歴史上の人物を調べる」(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-31.php)で紹介しています。

[6] 『吕和叔文集』等の複数タイトルと合冊されており、NDL-OPACの検索結果一覧では『吕和叔文集』としか表示されないのでご注意ください。

[7] 2016年8月時点では「测试版(テスト版)」となっており、今後サービス内容が変更される可能性がありますのでご注意ください。

[8] 詩で使われる語句を韻字(末尾の字のこと)で分類配列した作詩用の辞典です。様々な語句の出典が収録されているので出典調査のツールとしても有用です。

[9] 第1巻のURLです。画面右上の「他の巻号を探す」で他の巻を探せます。

[10] 『山谷别集』は、NDL-OPACで検索してもヒットしませんが、CD-ROM版の『四庫全書』というデータベースに収録されており、当館に来館すれば利用可能です。詳しくは、「『四庫全書』と関連叢書の調べ方」(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-130.php)をご参照ください。

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