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『한일양국의 독도정책과 그 비교』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(10):アジア情報室通報 14巻3号

2.11. 신용하, 이성환, 송휘영, 최장근, 유하영, 김호동 저(愼鏞廈、李盛煥、宋彙榮、崔長根、ユ・ハヨン、キム・ホドン著)『한일양국의 독도정책과 그 비교(韓日両国の独島政策とその比較)』ソウル, 지성인(知性人), 2015.3, 194p【A171-K116】

本書は、韓国で竹島(韓国名「独島」)が所属するとされる慶尚北道の独島研究機関統合協議体が刊行する研究叢書の一冊である。

日韓両国の中央・地方政府における竹島関係政策の現況と動向に焦点を絞っており、近年韓国で刊行された竹島関係の資料のなかでは、比較的珍しい存在である[8]。独立した6論文からなり、全体を通じたまとめや要約はない。以下、各論文の内容を紹介する。

第1論文「韓日間独島領有権を取り巻く主要争点」(愼鏞廈 ソウル大学校名誉教授)は、日韓両国の主張や、国際法上の争点等について、歴史的経緯を整理している。大韓帝国勅令第41号(1900年)、SCAPIN第677号(1946年)等、類書でも頻繁に言及される事項が中心であり、特段目新しい情報は含まれていない。

第2論文「日本の独島政策と韓日関係の亀裂―2012年李明博大統領の独島訪問を中心に―」(李盛煥 啓明大学校国境研究所長)は、現状維持を基調としていた両国の姿勢が1990年代後半以降変化し、2012年の李明博前大統領の竹島上陸を契機として、日韓関係が大きく悪化していく過程を分析している。

まず、1996年に排他的経済水域設定をめぐり日韓両国の竹島に関する主張が衝突した際に、両国の現状維持路線が変化し始め、その後、2005年に島根県が「竹島の日」を制定したことで、日本の竹島政策が領有権の奪還を目指すものに変化したと分析しつつ、一方で両国間には従来型の枠組みを維持して紛争を回避しようとする傾向もあったとの見解を紹介している。

また、近年中国や韓国が見せている強硬な対日姿勢の背景には、日本の国際的な影響力が低下しているという認識があり、さらに、2012年以降、日中韓各国は、政権交代後に国内の政治基盤を確立させるために領土問題に対して積極的な姿勢をとるようになったと指摘している。

最後に、安倍政権の竹島関係政策を整理し、日本国民の竹島に対する関心の高まりや、海外広報の充実といった「政府の広報・教育の効果」が上がっていると指摘している。

第3論文「日本島根県独島政策の動向と方向」(宋彙榮 嶺南大学校独島研究所研究教授)は、竹島が所属する島根県の竹島関係政策と、県内の竹島教育の動向を整理している。

まず、島根県が「竹島の日」を制定した2005年に設置された「竹島問題研究会」の活動を整理し、その研究成果が韓国政府の政策及び教育と結びつき、「三位一体」の構造が成立していると指摘している。また、島根県の小中高等学校における竹島教育の実施率が100%近い水準まで高まっていることや、『竹島問題100問100答』(当館請求記号【A99-ZK4-L40】)のような一般向け広報資料が多数刊行されていることを紹介している。最後に「竹島・北方領土返還要求運動県民大会」の開催や要望書の提出等の中央政府に対する活発な働きかけについて、韓国の中央政府と慶尚北道との関係を考えるにあたって示唆的であると評価している。

第4論文「韓国政府の独島政策の現況と課題」(崔長根 大邱大学校独島領土学研究所長)は、李承晩政権から李明博政権までの各政権の関連施策を簡単に整理している。現在、朴槿恵政権が日本に要求している歴史問題や慰安婦問題の清算については一歩も譲るべきではないが、いたずらに日本を刺激する独島政策をとると、政治・経済関係等が冷え込むため、独島に関して何らかの実効的措置をとる場合は、日本政府が「独島を挑発する」タイミングに合わせる必要があるという。最後に、歴史的権原、国際司法裁判所への提訴、実効的支配といった主要論点に対する朴槿恵政権の立場をまとめているが、韓国外交部ウェブサイトに掲載されている「独島に関する15種一問一答」[9]の引用に留まる。

第5論文「慶尚北道独島政策の現況と課題」(ユ・ハヨン 東北亜歴史財団研究委員)は、類書で触れられることが少ない慶尚北道の関連政策を整理している。現在は、「独島政策官」が置かれ、①独島領有権強化のためのインフラ構築[10]、②文化・芸術と広報を通じた領土主権の守護[11]、③独島研究・教育の専門化及びグローバル化[12]の三分野を中心に、各種施策を実施している。また、入島者の増加に対応する体制の弱さ、人事異動に伴うノウハウの断絶、類似事業の重複等が課題であり、中央・地方・民間の協力が必要であると指摘している。

第6論文「我が国独島教育政策の現況と課題」(キム・ホドン(嶺南大学校独島研究所研究教授))では、日本の教科書における竹島の扱いに触れた後、韓国の教育課程の動向を整理している。小中高等学校別、教科別に「独島」の扱いが詳細に記述されている。第5論文同様、類書では得難い体系的な情報である。

(アジア情報課 福山 潤三)

[8] 近年韓国で刊行された竹島関係の資料については、下記を参照。
鎌田文彦・濱川今日子・福山潤三「尖閣諸島、竹島等に関する最近の中国語、朝鮮語資料」『レファレンス』758号, 2014.3, pp.134-144.
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8436649
このほか、最近刊行された資料集として、『독도총람 = The superintendence on Dokdo(独島総覧)』선인(先人), 2015.4【A171-K112】がある。韓国の歴代政権の竹島関係政策の概要や(第XIX章)、「日本自衛隊の独島上陸の違法性」等6編の論考(第XXI章)も収録するが、大部分が竹島問題に関係する主要史資料の引用である。

[9] 「독도에 관한 15가지 일문일답」外交部ウェブサイト
http://dokdo.mofa.go.kr/kor/dokdo/faq.jsp

[10] 入島支援センター、防波堤等の施設整備のほか、韓国から竹島にアクセスする際の中継地となる鬱陵島の道路整備等が含まれる。

[11] 広報冊子・音源等の製作、展示会・音楽祭の開催等。

[12] 研究会の運営、外国人の独島体験教育の実施、博物館の運営等。

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