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東南アジア諸国の政府情報~日本語と英語による調査を中心に~―平成30年度アジア情報研修 概要報告―:アジア情報室通報 17巻1号

東南アジア諸国の政府情報~日本語と英語による調査を中心に~

平成30年度アジア情報研修 概要報告

 

 新谷 扶美子(国立国会図書館関西館アジア情報課)

 

はじめに

平成30(2018)年11月8日(木)及び9日(金)、国立国会図書館関西館において、当館と独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所(以下、「アジ研」という。)との共催により、平成30年度アジア情報研修を実施した。この研修は、アジア情報の収集・提供に関する知識の増進と探索スキルの向上を図り、また、当館とアジア情報関係機関との連携を深めることを目的として、当館が平成14(2002)年度から毎年実施しており、今年度で17回目となる。

今回は、「東南アジア諸国の政府情報~日本語と英語による調査を中心に~」をテーマに、東南アジアの諸制度や統計の調べ方に主眼を置いた研修を行った。以下、その概要を報告する。

 

1. 研修の特徴と目的

本研修においては、アジ研との共催、グループワークによる実習形式、研修生の多様な属性、という三つの特徴が定着しつつある。

中でも研修生の多様な属性については、広報に際して東南アジア研究の学会や、イベントカレンダー等も活用し、広く参加を呼びかけた。その結果、公共図書館員 3 名、大学図書館員 6 名、研究者 1 名、大学院生 4 名、中央省庁職員 1 名、民間企業の社員 1 名という多様な属性の研修生(計16名)が集まり、グループワーク等において、活発な意見・情報交換が行われた。

今回は、昨年度の受講者アンケートにおいて要望の多かった、東南アジアを取り上げた。

実習では、国ごとに異なる言語を持つ東南アジアを主題とすることから、どの属性の研修生でも活用できるよう、現地語を解さなくても可能な調査方法を取り上げた。東南アジア諸言語の読解力を必要としないため、グループ分けは属性の多様性を軸とした。

また、研究者から、図書館とは異なる視点での情報収集手法や、現地の情報流通事情などを伺うことも、受講生にとって有意義であると考えられること、当研修の目的の一つである、当館とアジア情報関係機関との連携の推進にも資することから、京都大学東南アジア地域研究研究所(以下、「東南研」という。)の岡本正明教授を招聘し、ご講演いただいた。

 

2. 各科目の概要

2.1. イントロダクション

(アジア情報課長 南 亮一)

 本研修の目的とそのねらいを下記のように明示し、諸制度や統計を信頼性の高い資料・情報にあたって調べることの意義を説明したうえで、その有効なツールとして「AsiaLinks-アジア関係リンク集-[1]」を紹介した。

 

・実習を通じて、アジア情報の収集・提供に関するスキルを向上させる。

・異業種間の交流を通じて、連携協力の機会とする。

・諸制度や統計は、その国の事情を理解するための基礎的な情報であり、信頼性の高い情報源へのたどり方を身に着けることは、調査研究や仕事の質の向上につながる。

 

2.2. 実習 東南アジア諸国の諸制度を調べる

(アジア情報課アジア第一係 新谷 扶美子、大西 啓子、伊勢田 梨名)

研修当日の配布資料は、当館及びアジ研のウェブサイトに掲載した[2]ので、実習①②の講義内容はそちらをご参照いただくこととし、本稿では、実習の流れと、研修中に気づいた点や当日の質疑等について簡単に紹介したい。

初めに、信頼性の高い情報を得るための調査の進め方や、参考となるインターネット上のツールの紹介を行った。そのうえで、グループワークによって各研修生が事前課題の調査プロセスや参照したウェブサイト等について情報交換を行った。グループごとの調査結果の報告後に、調査過程も含めた回答例を紹介し、あわせて課題となったシンガポールの法令が検索できるウェブサイト等の参照方法を解説した。休憩を挟んで、当日課題も同様に取り組んだ。

研修前に各研修生から提出された事前課題回答では、情報への到達度がさまざまであったが、グループワークでは互いの調査結果を積極的に解説し、他の研修生から新しい情報を得ようとする意識がうかがわれた。また、当日課題においては、それまでに紹介されたツールを実際に使って、調査を試みる様子が見られた。

 

質疑では、以下のようなやり取りがあった。

・現地語関係法令の名称まで分かった後、どのように根拠条文にたどりつけばよいか。

⇒関係法令の名称と調べたいキーワードとを検索エンジンで掛け合わせてみる、といった方法がある。

ほかに、研修中に紹介した方法として、日本語・英語で関連情報にあたる、現地関連機関のウェブサイトを参照する、条文全体に目を通す、といった方法が考えられる。いずれの場合も、得られた情報の信頼性、有効性等を都度確認することが重要である。

・根拠情報が英語等の場合に、回答時、日本語への翻訳はどのようにするのがよいか。

⇒自分自身で訳すことはなるべく避けて、できる限り図書等で日本語になっているものにあたるのがよい。

 2.3. 講演 東南アジア諸国情報の入手方法

(京都大学東南アジア地域研究研究所教授 岡本 正明 氏)

 「ポスト・トゥルース時代の東南アジアにおける情報収集」をテーマに、東南アジアにおける情報収集を取り巻く現状と、その中で信頼できる情報とは何かについて、さまざまな実例を示しながらご講演いただいた。また、資料として各国の情報源リストの提供をご提供いただいた。

 ご講演の主な内容は、次のとおりである。

 

・現在は、現地に行くことなくオンラインだけで情報収集が可能な時代になっている。しかし、そのような現場感覚抜きの情報収集には、情報の変化に気づかず、古い情報を利用してしまう危険性がある。オフラインに戻って、現地ネットワークから最新情報を得る努力も必要である。

・フェイクニュースなどの過度に可視的な情報がある一方で、検閲や情報操作の結果として不可視的な情報があることにも注意を向ける必要がある。

・研究の場においては、現地語よりも英語での論文執筆が重視される傾向にあり、その結果、内容が伴わなくても英文であれば掲載するような、劣悪な学術誌も乱立している。

 

質疑では、以下のようなやり取りがあった。

・現地に行くことができない場合、フェイクニュースと事実はどのように見極めたらよいか。

⇒①オンライン情報の信用性をチェックする機関[3]のウェブサイトで確認する、②複数の文献に当たり、内容を徹底的にチェックする、③掲載誌がクオリティージャーナルかどうかを確認する、といった方法がある。

・政府情報であっても信用できないということだが、具体的な事例が知りたい。また、意図的に統計の数字を変えることもあるか。

⇒地図上の境界と実際の境界が全く違う、世論調査を実際には行わず、村長が作成するといった事例があった。統計については、新しい自治体を作るために、統計上の人口が操作された事例があった。

 

2.4. 実習 東南アジア諸国の統計を調べる

(アジア経済研究所図書館 小林 磨理恵 氏、山下 惠理 氏)

初めに、アジ研図書館で受ける東南アジアに関する資料相談が、全体の4割を占めること、各国の総合統計年鑑を調べることで回答が導き出せるものが多くあることが紹介された。そのうえで各国の統計について、集中型・分散型といった構造や、タイプ別の入手手順、政府情報の公開度などが解説された。

次に、実習①と同様に事前課題に関してグループワークを行った後、実際に手順をたどりながら、事前課題と回答についての解説がなされた。その後、当日課題についても同様に取り組まれた。

 現地語のウェブサイトに苦戦する姿も見られたが、講師の解説に合わせて自分でも手順をたどってみるなど、意欲的に取り組む様子もうかがえた。

 

質疑では、以下のようなやり取りがあった。

・統計年鑑の各国別のオンライン公開状況に違いはあるか。

⇒各国で事情が異なる。ベトナムのように、データベースを公開している国は少ない。

・地方自治体では、行政区画が頻繁に変わることがあるが、個別に見ていくしかないのか。

⇒基本的には、行政区画に関する法令等と見比べながら、個別に見るのが良い。

 

3. 研修に対する反応

終了時のアンケートでは、全研修生から、本研修に対して大変肯定的な評価(満足:16)が得られた。個別の意見や感想としては、実習時間をもっと長く取ってほしいという声が多く寄せられた。昨年度、当日新たな課題に挑戦したかった、との意見があったことから当日課題を設けたが、グループワーク・発表を事前課題・当日課題両方で行ったため、結果的に実習時間が短くなってしまった。次年度への課題としたい。

 

おわりに

短い研修では十分に紹介できなかった内容もあるが、本研修を通じて、①現地の最新情報を正確に把握するためには一次情報を調べる必要があること、②少し手間がかかるが、一次情報を調査すればそれに見合う正確な情報が得られること、の二点は実感していただけたのではないかと考えている。本研修が成功裡に終了したことについて、研修生の皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げる。

次回のアジア情報研修は、平成31年秋以降にアジア経済研究所で実施予定である。ぜひ奮ってご参加いただきたい。

(にいや ふみこ)



[1] 国立国会図書館リサーチナビ「AsiaLinks-アジア関係リンク集-」

http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asialinks.php

(ウェブサイトの最終アクセス日は2019年2月16日。以下同じ)

[2] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「平成30年度アジア情報研修」

http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-workshop30.php

日本貿易振興機構アジア経済研究所「図書館イベント開催報告:平成30年度アジア情報研修「東南アジア諸国の政府情報~日本語と英語による調査を中心に~」」

https://www.ide.go.jp/Japanese/Library/Event_report/20181108_kouen.html

[3] 米デューク大学の調査によると、東南アジアでは、インドネシアに3機関、フィリピンに2機関存在する。

https://reporterslab.org/fact-checking/

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