トップアジア諸国の情報をさがす刊行物>『上海協力機構15年 : 発展情勢の分析と展望』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(20):アジア情報室通報 17巻1号

「アジア諸国の情報をさがす」に関するアンケートを実施しています。
ご意見をお聞かせください。 アンケートに答える

『上海協力機構15年 : 発展情勢の分析と展望』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(20):アジア情報室通報 17巻1号

1. 中国語

1.27. 李进峰『上海合作组织15 : 发展形势分析与展望 = Shanghai cooperation organization : analysis and forecast : 2001-2016(上海協力機構15 : 発展情勢の分析と展望)』北京 : 社会科学文献出版社, 2017.6, 2, 2, 46p.中国社会科学院库报. 欧中研究A162-C5

2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6か国で発足した上海協力機構(以下「SCO」という。)は、2017年6月にインド、パキスタンを正式加盟国に迎え、世界の人口の40%以上、GDPの25%近くを占めるまでに拡大した。上記8加盟国に加え、アフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴルの4か国がオブザーバーとして、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、トルコ、スリランカの6か国が対話パートナーとして参加している[1]。本書は、中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所の副所長が執筆した報告書であり、まず、SCO発足から15年間の発展の過程についてまとめ、次に、国際情勢の変化や中国の「一帯一路」構想との関係を踏まえて、今後の展望や課題を論じている。

 第1章「上海協力機構成立から15年間の主な成果」では、SCOの発展は4つの段階[2]に分けることができ、2001年以降の15年間に次の3つの面で飛躍を遂げたと分析している。1つ目は、役割の面での飛躍である。成立当初の「3つの勢力(宗教的過激主義、民族分裂主義、テロリズム)」への対処から、政治、安全保障、経済、人文の4大分野での協力へと発展した。2つ目は、参加国の面での飛躍である。中露+中央アジア4か国から、南アジア、インド洋へと拡大し、オブザーバーと対話パートナーを合わせると18か国にまで増加した。3つ目は、議題の面での飛躍である。現実的な問題への対処から参加国の未来の発展戦略と結び付く議題へ、また、中央アジア周辺の議題からユーラシア大陸周辺の議題へと発展した。

 第2章「現在の国際情勢」では、イギリスの国民投票によるEU離脱派勝利、アメリカのトランプ大統領当選といった2016年の国際情勢を振り返り、第3章「上海協力機構の2016年の発展における主な成果」では、政治、安全保障、経済、人文の4分野における協力の成果を整理している。まず、政治分野の成果としては、2016年6月のSCO首脳会議において、南シナ海問題の国際化や外部からの干渉への反対に加え、ウクライナやアフガニスタンをめぐる問題についても一致した立場を表明したことを挙げている。次に、安全保障分野では、対テロ合同軍事演習「平和の使命―2016」や国境警備の合同活動「団結―2016」等の実施を成果として挙げている。経済分野では、貿易、税関、交通インフラ等7分野38の協力事業を含む経済協力の「5か年計画」の策定、加盟国間の貿易・投資額の増加、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」の増便等を挙げ、2016年は貿易・投資の促進と相互交通網の整備の面で大きな成果を上げたとしている。最後に、人文分野では、文化、教育、科学技術、環境保護における協力計画の策定状況等を整理している。

 第4章「直面する新たなチャンス」では、今後のSCO発展の内的要因及び外的要因について分析している。まず、内的要因としては、中国が提唱する「シルクロード経済ベルト(一帯)」とロシア主導の「ユーラシア経済連合」の連携に現れている中露間の政治的相互信頼の強化、「中パ経済回廊」の建設等に見られる「一帯一路」構想の進展、及び加盟国の増加を挙げている。特に加盟国の増加については、インド、パキスタンの加盟は、SCOの地域の拡大、域内人口やGDPの増加、地域の安定や世界平和への貢献の増大、及び地域経済発展の促進をもたらすのみならず、BRICs内での中露印の協調の進展、核不拡散体制の強化、「一帯一路」構想の推進、SCOの国際的役割の強化といった影響ももたらすと分析している。外的要因としては、アメリカのTPP離脱と二国間主義への移行を挙げ、中露の協力による地域の一体化の推進が必要であり、習近平主席の外交理念である「人類運命共同体[3]」の構築がSCOによる地域の一体化の新しい方向性を示す理念であると主張している。

 第5章「直面する新たな挑戦」では、まず、SCOの内部的な問題として、ロシアがユーラシア経済連合への影響を懸念してSCOでの経済協力に積極的でないこと、開発銀行や発展基金といった独自の金融機関が存在しないことを挙げている。また、加盟国の拡大により、印パ間の対立がSCOに持ち込まれる、「全会一致」の決定原則の見直しが必要となる、世界の貧困人口の30%以上を占めるインドの貧困層への対応が必要となる、国際政治経済秩序に対する影響力の増大により欧米諸国の警戒を招く、といった新たな問題が生じると指摘している。次に、外部的な問題としては、「イスラム国」等のテロ組織の脅威の増大、不安定な中東・アフガニスタン情勢、日本とアメリカの中央アジア諸国及びインドへの接近政策を挙げている。

 第6章「上海協力機構の将来的活動の展望」では、SCOの今後について、中露の2国間、中露と中央アジア諸国間、中露印の3国間及び印パの2国間の戦略的相互信頼と協調、SCOと国連関係機関の協調、SCOと欧米諸国の戦略的対話や意思疎通といった6つの協調政策によって発展を図るべきであると提言している。また、経済協力については、自由貿易地域設置の検討による貿易の更なる円滑化、域内投資ルールの明確化による加盟国間の投資の促進、SCO開発銀行及び発展基金の創設による金融協力の推進の3つに力を入れるべきであると主張している。政策決定の仕組みについても、「全会一致」と「単純多数」の併用や分担金の額に応じた投票権の比率の調整を提案し、今後は更なる加盟国の拡大によって、国連、CIS、ASEAN等の国際組織との協力を強化するべきであると主張している。

 巻末には、付録として、2001年から2016年のSCO加盟8か国のGDP及び経済成長額とその世界比率を示した統計表、中国、ロシアと中央アジア4か国間及び中露間の貿易総額を示した統計表、並びにSCOの主要なできごとをまとめた年表を収録している。

(アジア情報課 山本 彩佳)

 



[1] 「关于组织」上海協力機構ウェブサイトhttp://chn.sectsco.org/about_sco/

[2] 前身である「上海ファイブ」時代の第1段階(1996~2000年)、「上海精神」を指導理念とする地域協力の新しいモデルを構築したSCO創立初期の第2段階 (2001~2005年)、協力分野を「経済、安全」から「政治、安全、経済、人文」へと拡大した第3段階 (2006~2010年)、「一帯一路」構想と結び付けて地域の一体化を推し進め、参加国を拡大していく第4段階 (2011~2016年) の4つ。

[3] 中国の利益の追求にあたって他国の利益にも配慮し、自国の発展とともに世界各国の共同発展を促すという考え。2018年3月11日に全国人民代表大会で可決された憲法改正案の序文にも盛り込まれた。

  • 国立国会図書館
  • 国立国会図書館オンライン
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡
  • 参考書誌研究