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トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報巻号から探す第17巻(2019年)>これからの東アジア研究のための情報源へのアクセスにおいて図書館が果たすべき役割 ―平成30年度アジア情報関係機関懇談会 概要報告― :アジア情報室通報 17巻2号

これからの東アジア研究のための情報源へのアクセスにおいて図書館が果たすべき役割 ―平成30年度アジア情報関係機関懇談会 概要報告― :アジア情報室通報 17巻2号

増田 利恵(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

平成31年2月22日(金)、国立国会図書館(NDL)関西館において、平成30年度アジア情報関係機関懇談会を実施した。この懇談会は、当館と国内のアジア情報関係機関との連携を深め、国全体としてのアジア情報資源の充実と流通促進に資することを目的として、平成13年度から毎年実施しているものである。

今回は、「これからの東アジア研究のための情報源へのアクセスにおいて図書館が果たすべき役割」をテーマとし、東アジア専攻の大学教員、大学図書館等及びNDL関西館から報告を行った後、出席者で懇談を行った。以下、その概要を紹介する。なお、本懇談会の当日配布資料等をNDLウェブサイト内に掲載したので、併せてご参照いただきたい[1]

1. 大学教員からの報告

1.1. 報告①:中国研究のための情報源のアクセスの現状と図書館に期待する役割(中部大学国際関係学部准教授 大澤 肇氏)

中国近現代史研究の立場から、中国研究の史料や学術情報の電子化が進んでいる状況に日本の図書館が対応するためには、商用データベース(以下「DB」)や有料のデジタルライブラリーの提供、利用者の拡大のためのウォークインユーザー(所属機関の構成員以外の図書館利用者)への対応やコンソーシアムによるDBの導入等の必要性を指摘した。

また、インターネット資料への対応のためには、効率的なアクセス方法であるリンク集を引き取って維持・保管・最低限の運用を行うことや、ウェブサイト、デジタルデータ、書籍がシームレスに検索できる高機能OPACの導入が必要であることを指摘した。

さらに、デジタル資料は統制や改ざんが容易なことから、紙媒体の雑誌や新聞の収集の重要性を指摘する一方で、すべての図書館で取り組む必要はなく、館を限定しての収集や、分担収集の仕組みの必要性を指摘した。

1.2. 報告②:朝鮮研究のための情報源へのアクセスの現状と図書館に期待する役割(横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授 辻 大和氏)

自身の研究に必要な情報の入手方法を説明した上で、日本、韓国及び米国で構築されている近現代の代表的な韓国朝鮮研究関係のDBを紹介した。その中で、DBpiaやKISSが日本でも東京大学、京都大学などが導入していること、DBpiaの価格高騰のため、釜山大学では契約を打ち切ったこと、韓国国立中央図書館のデジタルライブラリーのうち著作権が切れていないものは「協定館」だけ閲覧ができ、日本では韓国文化院などで閲覧できることを紹介した。

次に、日本国内の韓国朝鮮研究関係DBの特徴について紹介の上、持続可能性や収録範囲、データのダウンロードや件名検索について課題があることを指摘した。

その上で、図書館等に期待する役割として、韓国朝鮮語図書のコレクションがある図書館の蔵書構築の継続、NDLにおける海外DBの遠隔複写サービスの継続、海外の国立図書館と連携した協定図書館向け電子化資料の閲覧サービスの導入、更新が止まったDBの公共性の高い組織への移管による保存・維持、DB内のデータを汎用性の高いファイルで出力可能とすることを挙げた。

2. 大学図書館等及び当館からの報告

2.1. 報告①:東アジア研究の学術情報環境の変化と研究ニーズ~図書館の役割(日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館研究情報企画課課長代理 澤田 裕子氏)

最初に、アジア経済研究所図書館(以下「アジ研図書館」)の蔵書構成と蔵書構築方針につき、社会科学分野を中心に、「現地主義」(現地語、現地調査、現地資料)による収集及び図書館職員による選書が行われていることを紹介した。

次に、アジ研図書館利用者のニーズ調査結果を基に、利用者としての研究者は「とにかく現地資料を使う研究者」と「電子ジャーナルを使ってから現地資料を使う研究者」に分かれること、また、内部利用者(アジ研内の研究者等)は電子資料の利用、外部利用者(アジ研以外の研究者等)は統計資料の利用が比較的多いことを紹介した。その上で、アジ研図書館の特色である現地資料の収集を継続しつつ、電子資料等へのニーズにも応えていく必要性を指摘した。また、中国を例として学術情報環境の変化についても紹介した。

最後に、アジ研図書館における課題とその対応に関して、選択的・重点的な資料収集という課題には、予算の継続的な要求や外部資金の調達可能性の検討を進めること、研究者等のニーズに応えるための職員のスキル・専門性の向上という課題には、情報リテラシー研修を活用して情報探索スキルのレベルアップを図ったり、図書館共同利用制度を活用して国内外の蔵書・DBの最新動向を把握し紹介すること等を挙げた。 

2.2. 報告②: 大学図書館における研究支援機能の構築-東アジア研究情報資源提供の現況と課題-(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)特任研究員 中尾 道子氏)

最初に、東京大学におけるアジア研究図書館計画とU-PARLとの関係について述べた上で、U-PARLによる東アジア研究情報資源提供の現況を紹介した。資料収集については、他機関との蔵書の棲み分けや相互補完を目指すとともに、アジア研究の基本資料が幅広く揃い着実に更新されていく環境作りを重視するとしている。また、開架フロアの収集方針も紹介があった。DBについては、主要な中国関係DBを購入するとともに、「アジア研究文献探索セミナー」を開催してDBをよりよく利用するための実習を行っていることや、U-PARLにおける所蔵資料・購入資料のデジタル化の実施とその研究について紹介した。

最後に、大学図書館における東アジア研究情報資源の提供に関する課題について、日本における東アジア研究の学術論文のオープンアクセス化を推進すること、また、研究の支援として、研究で必要とされる情報スキルに対応し得る情報リテラシー教育の担い手を育成し、大学図書館に配置することを指摘した。

2.3. 報告:大阪大学外国学図書館における「専攻語(現地語)図書収集」の歩み 2009-2019(大阪大学附属図書館箕面地区図書館サービス課外国学図書館班専門職員 野原 亜希氏)

最初に、平成21年度から実施している「専攻語(現地語)図書収集」につき、その背景を説明の上、主に専攻語で書かれた新刊図書の収集方法として、国内書店を通す方法、国内から現地書店を通す方法及び現地の書店で直接購入する方法の3つの方法があることを紹介した。また、対象言語の専攻教員に収集方法の説明会を実施していること、当初、臨時経費の「館長裁量経費」を使用して23の専攻語の図書を3年で1巡する収集計画だったのを、平成27年度から、経常経費である附属図書館学生用図書購入費により6年で1巡する計画に変更したこと、総予算が減少傾向にあり、整理経費の支出財源を変更したこと、これまでの収集冊数が8,745冊(うち中国語530冊、朝鮮語259冊)であることを紹介した。

最後に、今後の課題として、予算縮小への対応、図書整理業務における人材育成とノウハウの継承、教員への負担問題、収集分野の偏りへの対応を挙げた。収集分野の偏りについては、蔵書の調査から、各専門分野の教員数とおおむね重なる傾向にあるが、この偏りが蔵書の特徴となり、研究用図書の充実にも貢献しているとのことであった。今後の方向性として、専攻語の図書については、教員と図書館が協力してどの分野の収集を強化すべきかを検討することと、専攻語に触れる学生の視点に立って収集を進めることを挙げた。

2.4. 報告④:東アジア資料に関する蔵書構築等の現状と課題(国立国会図書館関西館アジア情報課課長補佐 増田 利恵)

最初に、NDLにおける東アジア資料の収集を、国内書店からの購入と国際交換、中国国家図書館のリストからの選書により行っていることを紹介した。

続いて蔵書構築のための取組みにつき、国会サービスに役立つ蔵書の構築のため、社会科学分野資料の積極的な収集や、担当部署の要望に基づく選書を行っていること、現地の出版状況に詳しい研究者による蔵書評価や有用な資料・情報源の助言を活用していることを説明した。

最後に、直面する課題として、DB導入による冊子体の逐次刊行物の購入打ち切りへの対応、韓国のデジタル化資料送信サービスの導入、よりよい選書方法の確立、未入力資料の遡及入力などを挙げた。

3. 懇談-これからの東アジア研究のための情報源へのアクセスにおいて図書館が果たすべき役割-

傍聴参加の大阪市立中央図書館、京都大学東南アジア地域研究研究所図書室およびU-PARLの職員を含む出席者全員で懇談を行い、次のような意見が出された。

・DBの仕組みが分かれば、検索が成功しやすくなる。このような知識は学生や教員と共有されるとよい。先行研究探しが課題となる卒論指導には、このような知識を持つ図書館員に関わってもらえると動きやすい。

・現地資料の購入には、図書館が選書した資料を研究者が出張時に立替払いで購入する、現地で選書した資料を国内書店経由で購入する、現地事務所で購入した資料を輸入するなどの方法が取られる。現地買付は、カタログにない図書を選書でき、予算的にも安く済むという長所がある一方、研究者への負担や郵送手続が煩雑という短所がある。

・教員が選書する研究用図書に偏りがあるのは仕方がないが、学習用図書やレファレンスブックに偏りがあると、地域に関する基本的な研究や授業の進行、専門外の分野の卒業論文や修士論文のチェックの際などに支障が出るため、バランスの取れた蔵書構築が必要であり、このためには、図書館員の専門性が必要となる。なお、U-PARLでは、各地域の専門家による基本的な手引書100選を言語・地域別に作り、選書に活用している。

・雑誌は、すぐに読めることが求められるので電子媒体がよい。ただし、改ざんが容易なため、中国の場合、紙媒体と電子媒体で内容が異なることがあり、また、接続が不安定なため、国立国会図書館を始め永続性が担保できる国内1-2館で保存しておく必要がある。

・一方、図書の場合、電子ブックが多くない上、アクセスの永続性の問題から、紙媒体がよい。ILLで提供することも可能なので、日本全国で1館でも何とかなる。なおU-PARLでは他の機関に所蔵があるものは購入しない方向としている。

おわりに

本懇談会では、東アジア資料を収集・提供する関係機関にご参加いただき、東アジア研究のための情報源へのアクセスが変化している現状、図書館が果たすべき役割について知見を共有した。出席者の皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げる。今後も関係機関の意見交換の場として、アジア情報関係機関懇談会を充実させていきたい。

(ますだ りえ)



[1] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「平成30年度アジア情報関係機関懇談会」

https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-meeting30.php

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