トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報>国立国会図書館関西館アジア情報室におけるヒンディー語蔵書の評価:アジア情報室通報 17巻3号

国立国会図書館関西館アジア情報室におけるヒンディー語蔵書の評価:アジア情報室通報 17巻3号

川中薫(国際ファッション専門職大学専任講師)[1]

はじめに

 本稿の目的は、2018年4月から2019年3月まで、 国立国会図書館非常勤調査員として、 同館関西館アジア情報室(以下、「アジア情報室」という。) で実施したヒンディー語資料の整理等の成果をもとに、その蔵書評価を試みることである。 あわせて、本稿では、ヒンディー語以外の南アジア諸言語資料、英語資料及び日本語資料にも言及する。 ヒンディー語が使用される地域では、ヒンディー語のみならず南アジア諸言語と英語の使用が広く見られ、 それらの地域に関する理解には英語資料や日本語資料も欠かせないためである。

 国立国会図書館は、長年南アジア諸言語蔵書の構築に取り組んでおり、 インド・南アジア関連の政府刊行物の所蔵において日本有数の規模を誇る[2]。 関西館は2002年の開館以来、アジア情報室においてヒンディー語資料等の収集を進めてきた。 資料は、主に当該言語資料を扱う国内書店からの購入や寄贈等で収集し、 ヒンディー語の選書協力員[3]による選書を導入する等、蔵書の充実に向けた取り組みを行っている。

 国立国会図書館が長年収集を続けてきた南アジアの歴史、宗教、芸術、言語、文学等の分野の現地語資料は、 ヒンディー語のみならず、多様な南アジア諸言語(サンスクリット語、パーリ語、ベンガル語、ネパール語、マラーティ語等)で 構成され、アジア情報室の蔵書の言語的な幅を広げてきた。 また、南アジアに関する日本語及び英語資料は、地域研究、社会学、文化人類学等の図書及び雑誌、新聞、政府刊行物等で構成され、 蔵書の分野的な幅を広げている。

 本稿では、アジア情報室の蔵書を他機関の南アジア関連蔵書と比較し、アジア情報室のさらなる継続的な発展を期待して若干の提言を試みたい。特に、アジア情報室ならではの、一般書と学術書のバランスのとれた収集や特色ある蔵書構築への期待を述べたい。

1. 蔵書の概要と特徴

 アジア情報室は、2019年3月時点で、ヒンディー語図書約1,000冊、雑誌・年鑑16タイトル、新聞3タイトルを所蔵する[4]。 サンスクリット語やネパール語等の南アジア諸言語を合わせると、図書約2,000冊、雑誌・年鑑42タイトル、新聞11タイトルである。 アジア情報室で所蔵するアジア言語図書約46万冊の言語別冊数及び割合は、中国語約36万冊(約78%)、朝鮮語約5万冊(約11%)、 インドネシア語・マレーシア語約1.9万冊(約4%)、ベトナム語約5,600冊(約1%)等となっている。 ヒンディー語を含む南アジア諸言語は約0.4%に当たり、割合としては比較的少ない印象を受ける。 今後の更なる取り組みが期待される。

 アジア情報室のヒンディー語蔵書のうち、2019年8月時点で整理を終えている図書のタイトル数は683件である。 分野別の内訳は表1の通りとなっており、芸術、言語、文学、哲学、歴史等の蔵書が多いという特徴がある[5]。 こうした分野の資料は、主に文芸作品や経典、辞典、解説書、研究書等である。 上記の分野以外の政治、経済、社会、科学技術、学術一般のヒンディー語図書は少なく、政府刊行物や研究書等が僅かに見られる。 そのほか、ヒンディー語の新聞、雑誌等を所蔵している。

表1 アジア情報室所蔵ヒンディー語図書の分野別タイトル数及びその割合(2019年8月)

分野件数分類別割合(%)
政治・法律・行政 6 0.9
経済・産業 4 0.6
社会・労働 7 1.0
教育 0 0.0
歴史・地理 62 9.1
哲学・宗教 104 15.2
芸術・言語・文学 491 71.9
科学技術 2 0.3
学術一般・ジャーナリズム・図書館・書誌 7 1.0
683 100.0

 南アジア関連資料は、総じて現地語資料と英語・日本語等の資料から成る。特に、南アジアでは、人文・社会・自然科学の教育研究及び南アジアに関する教育研究の成果発表を英語で行うことが多いため、その蔵書構築においても現地語で書かれた学術資料の収集には制約が生じやすいが、アジア情報室では事典や雑誌等の分野で良書を収集している。

 ヒンディー語の図書では、例えば、समाज-विज्ञान विश्वकोश(社会科学百科事典)【Y751-TS-15】[6]がある。 全6巻で主にインドに関係する社会科学の歴史的な流れと主要事項を扱う百科事典である。 一般的なデーヴァナーガリー文字表記排列ながら見出し語に英文を併記しており検索しやすい。 インド国内の主要な研究所である発展社会研究所(CSDS)[7]等に属する研究者が執筆している。また、बृहद आधुनिक कला कोश(近代芸術事典)【Y751-TS-27】は、近現代のインドの芸術作品について詳しく知ることができる資料である。

 英語の研究書としては、The Oxford India companion to sociology and social anthropology【(000004389209)】を挙げることができる。全2巻で、インドの社会学及び社会人類学を学ぶうえで重要なトピックを課題や内容ごとにまとめており読みごたえがある。ヴィーナ・ダス(Veena Das)が編集し、英国及びインドの研究機関に所属する学者が執筆する書籍で、独立以降のインド社会学を学ぶ者にとって必要な参照点を提示している。この他にも、オックスフォード大学等の大学出版社から出版された学術書があり、メディア研究、環境、都市化、グローバリゼーションといった社会、文化、経済、政治、政策等の領域の研究書を所蔵する。例えば、The Oxford handbook of Sikh studies【(024639956)】や、Theatre of conflict, city of hope : Mumbai, 1660 to present time【(023068118)】、Keywords for Modern India【(025493777)】、A Companion to the Anthropology of India【(000011240979)】、Indian fashion : tradition, innovation, style【EF25-P29】等である。英語資料では、こうした研究書のほかに、Encyclopaedia of Hindi cinema【(000004389108)】といった事典や大型図書も収集している。

 次に、雑誌については、英語及びヒンディー語の学術雑誌、一般雑誌を継続的に収集している。例えば、英語ではEconomic & Political Weekly【Z51-E158】、The Indian historical review【Z52-D486】、South Asia【Z51-M133】、South Asia Research【Z52-E180】、Indian Economic and Social History Review【Z51-L136】が挙げられる。これらは、インドの人文・社会科学を本格的に学び、研究する際に有効な学術雑誌である。筆者の院生時代には図書室にEconomic & Political Weeklyが揃っており、それを求めて経済学や法学等異なる専攻の研究者もよく来室していた。近年はオンライン化が進んでいるが、まとまった量を紙面で閲覧できるのはやはりありがたい。

 また、ヒンディー語では、時事誌इंडिया टुडे(India Today)【Y751-ZS-12】や文芸誌हंस(ハンス(白鳥))【Y751-ZS-15】が挙げられる。ハンスは、19世紀から20世紀前半にかけて活躍した作家プレームチャンドが創刊に関わった文学雑誌である。

 このほか、新聞は、ヒンディー語新聞नवभारत टाइम्स(Nav Bharat times)【Y751-SN-1】や英字新聞The Hindu【Z91-59】、The Economic Times【Z91-291】等が継続的に受け入れられている。

 南アジア地域の政府刊行物の所蔵については、国立国会図書館はその成り立ちの経緯から日本有数の規模を誇り、 法令資料及び議会資料は東京本館議会官庁資料室で所蔵している 。アジア情報室では、現代の政治経済の年鑑のほかに、 やや古い年代の官報を収録した図書、法令の解説書、判例を掲載する雑誌等を所蔵している。 例えば、Puri / by L.S.S. O'Malley (Bengal district gazetteers)(1908年)【(000010437617)】、 Punjab district gazetteers. Part A [descriptive matter] / compiled and published under the authority of the Punjab Government(1900年?-)【(000009887320)】等が挙げられる。 また、10年ごとに実施されるセンサスの報告書や各種年次報告書はアジア情報室で継続的に受け入れられている。 Yearbook of South Asian Languages and Linguistics【Z62-A744】、Annual survey of industries【Z61-J73】等が挙げられる。 この他にも、経済、労働、教育、輸出入、映画、医療等様々な分野の年次報告書や統計資料がある[9]

 日本語資料では、人文・社会科学に関する一般書と学術書がみられ、例えば、社会学者ラーマチャンドラ・グハの著作の翻訳を挙げることができる。実用書としては、「法廷通訳ハンドブック」シリーズが充実しており、ヒンディー語実践編【AZ-773-J42】、ウルドゥー語実践編【AZ-773-J36】、シンハラ語実践編【AZ-773-J34】、ベンガル語実践編【AZ-773-J31】を所蔵している。

 以上のように、アジア情報室のヒンディー語蔵書は、総じて芸術、言語、文学、哲学、歴史の分野の資料がみられる。南アジア関連の蔵書としては、一般書、学術書の充実が図られており歓迎すべき状況である。特に大判であったり、購入費用もかかる事典、雑誌、政府刊行物の継続収集は、図書館の蔵書としてふさわしい選書と評価できる。

 次節では、他館との比較をもとに、アジア情報室のヒンディー語蔵書の課題を示してみたい。端的に言えば、蔵書数増加への期待と蔵書の体系性の整備への期待という点である。

2. 他機関との比較と課題

 日本国内の学界では、南アジア地域に関する重要性の認識の高まりを受けて、 これまで研究者や研究機関が独自に築き上げてきた研究蓄積を総合的に取りまとめ、 大学間相互利用及び研究者交流の促進を目的とした人間文化研究機構(NIHU)プロジェクト「南アジア地域研究(INDAS)」 が2010年度に発足し、現在も活動を継続している[10]。 ヒンディー語資料または南アジア関連資料の規模と内容から特徴的な所蔵館は、 概ねこの「南アジア地域研究」に何らかの形で参画している。 例えば、京都大学、東京大学、広島大学、国立民族学博物館、東京外国語大学、龍谷大学、アジア経済研究所、大東文化大学 、一橋大学、大阪大学等が挙げられよう[11]

 これらの機関ではヒンディー語蔵書のみならず、南アジア全般に関する学術資料等の研究基盤が整えられている。各機関では教員や研究員が海外出張や在外研究で資料収集を行う、もしくは図書に関する委員会を通して国内から現地書店へ発注する等、専門分野の体系に則った蔵書の特徴を有していることが多い。

 そのうち、ヒンディー語図書に関しては、東京外国語大学において19,928冊[12]、 大阪大学において12,204冊[13]と国内屈指の規模で揃う。 また、大東文化大学で4,949冊[14]、東京大学で1,683冊[15]、 京都大学で1,229冊[16]、国立民族学博物館で874冊[17]が揃う。 これらのヒンディー語及び現地諸言語資料は各大学で研究されている 文学、言語学、宗教学、歴史学等に関する体系性を持った資料となっている。

 こうした国内の状況の中で、アジア情報室のヒンディー語図書1,046冊及び現地諸言語資料を位置付けると、国内有数の所蔵館と評価できる。一方で、その大部分を占める芸術、言語、文学、哲学、歴史の分野を深堀りするための蔵書構成としてはやや課題も残る。

 例えば、文学分野であれば、作家プレームチャンドのヒンディー語著作のうち、 民族運動高揚期に重なる作品गोदान(ゴーダーン(牛供養))【Y751-P4】やरंगभूमि(ラングブーミ(人生劇場))【Y751-P7】、 कर्मभूमि(カラムブーミ(行動の劇場))【Y751-TS-22】が所蔵されている。 また、日本語資料でもプレームチャンドに関する翻訳や学術研究書等が見られ、大変興味深い。 では、短編のकफ़न(カファン(屍衣))はとなると、ウルドゥー語版[18]の所蔵はあるものの、 デーヴァナーガリー文字での所蔵は見られず、やや高度な読解力を必要とされる状況にある。 またプレームチャンドの作品を読んだ利用者が、彼の次の世代(民族運動高揚期以降の独立から現代)の図書を読みたい場合、 例えば、多くの人が知るH.バッチャン(Harivansh Rai Bachchan)のヒンディー語の自伝क्या भूलूँ क्या याद करूँ(備忘録) 【Y751-B6】が見つかり歓迎すべき状況だが、この自伝を含むバッチャンの自伝4点をまとめて英訳した有名な作品 In the Afternoon of Timeの所蔵がみられないのは残念である。

 そして、現地語資料以外の南アジア関連資料に関しては、他機関と比較した場合に、アジア情報室でも、 日本語や英語資料の収集に力を入れ、一般書と学術書のバランスのとれた所蔵館として評価される取り組みがみられる。 一方で、各機関がその専門性に応じて豊富で深い体系的資料を揃えている[19]ことを鑑みれば、 アジア情報室でも更なる進展が期待されているといえよう。

 例えば、社会学の分野であれば、先述した英語の概説的研究書The Oxford India companion to sociology and social anthropologyを読み、そこに現れた興味深い著者の他の著作を読もうとした時に、アジア情報室の蔵書だけでは物足りない場合がある。例えば、編者ヴィーナ・ダスの共著の日本語訳『他者の苦しみへの責任 : ソーシャル・サファリングを知る』【EF1-J5】は、残念ながら東京本館のみの所蔵である。もしくは、執筆者の一人ヤン・ブレマン(Jan Breman)の著作のうち最も読むべきFootloose labour : working in India's informal economy【EL72-A27】も東京本館のみの所蔵である。

 他にも言語分野では、ヒンディー語の学習者の利用を考えると、アジア情報室では『ヒンディー語=日本語辞典』【KN52-H3】をはじめとした語学の辞書類が揃っている。これらはやや値が張るという面、未電子化資料であるという面で図書館の蔵書として優れた選書といえるのだが、加えて、語学学習に頻繁に利用される図書があることが望ましい。例えば、『CDエクスプレス』シリーズは東京本館には揃っているが、アジア情報室にも所蔵されているとよい。英語資料では、全世界的に語学学書で使用されるTeach Yourself シリーズが所蔵されていると、日本語を母語としない利用者が現れた場合や『CDエクスプレス』シリーズを終えた学習者が学習の広がりを見いだす際に役立つと考えられる。

 こうした事例は単なる一例だが、ここから述べたいことは、アジア情報室では取掛かりとなる文献資料が幅広い分野で集められており大いに評価されるべき状況があるのだが、利用者がさらにその先へ、関連した内容を調査しようとすると、現在のヒンディー語や南アジア関連の蔵書ではやや物足りなさが生じてしまうという状況があるという点である。

 その結果、どうしても次に他館を利用せざるを得ないという状況になりやすいという課題が現れる。そうすると、利用者としては、前もって蔵書検索をして必要な資料がアジア情報室にある場合にだけ利用するということになりがちで、機関としては、利用者数が伸びにくい、もしくは継続的に利用を促すことが難しいという状況を招きやすいのではないかと考えられる。

 以上を踏まえて、ヒンディー語の蔵書等における課題をまとめると、蔵書の受け入れを継続的に伸ばしていくこと、そして今後は、現在ある蔵書の輪郭を少しずつ広げていくことが求められるのではないだろうか。そのための資料収集には、どの分野を充実させるかという判断が課題となる。

3. 蔵書構築への若干の提言

 こうした課題への解決策として、一つは、これまで同様、資料を継続的に受け入れ、蔵書を増やすという活動が重要になる。アジア情報室のヒンディー語資料は、おもに国内書店からの購入や寄贈によって収集されており、これまで見てきたように、おしなべて有用なシリーズやコレクションが揃えられている状況といえる。政府刊行物や新聞、雑誌、年鑑でも一連の資料が揃うものと、時々欠号等がみられるものとがあるため、まずは、こうしたもののうち、年代等で欠いているものを埋める作業を行うことが蔵書を増やすと同時にまとまりのある蔵書構築という課題への解決策となると考えられる。

 その他に、新聞や雑誌において、新規タイトルの受け入れを検討することが考えられる。 例えば、現地で刊行された新聞の充実が挙げられる。 これは2016年にアジア情報室の南アジア関連資料の収集について助言を行った研究者の意見にも通底する[20]。また、写真や図版を豊富に掲載する現地語雑誌やビジュアル雑誌の収集を提案する。官報や新聞がテクストで示されるやや硬質な社会、文化、政治、経済等の記録であるとするならば、大衆雑誌等ビジュアルで示される資料はさまざまな地域の市民生活に密接に関係したやや柔らかな社会、文化、政治、経済等の記録であろう。例えば、全世界的に流通しているファッション誌VOGUE(ヴォーグ)やELLE(エル)、MARIE CLAIRE(マリー・クレール)等のインド版が収集できれば、アジア情報室で既に受け入れられている女性誌Femina【Z76-A571】とともにインドの消費文化、特に結婚や恋愛観等の変化を知るうえでも貴重な資料となる。他にも自動車や機械産業等の業界誌等、一般雑誌や一般社会に関する資料の網羅的収集は、これまでも学術書と一般書をバランスよく配置し、幅広く資料を収集してきた、アジア情報室ならではの貴重な役割になりうると考えられる。

 さらに、図書については、体系性を保持した蔵書を持つ研究者からの寄贈を受け入れることを検討してみてはどうかと考える。研究機関の移動等で、寄贈等の申し入れがあった場合、寄贈コレクションの内容の説明と解説を合わせて受け、一連の分野が充実するように協力を得ることを検討する。蔵書の欠号や物足りなさをなるべく少なくしたコレクション構築を可能にするのではないかと考えたためである。これには個人寄贈のみならず、組織間の寄贈の検討も含まれる。例えば、歴史的に価値を持つ可能性がある文書や資料が南アジアの現地の小さな図書館や企業の片隅で埃をかぶったまま平積みされ放置されていることをしばしば目にする。こうした保護すべき貴重書についての情報が得られた場合には、各研究機関と協力して、必要とあれば収集と整理活動に協力することが更なる発展的段階ともいえよう。特に南アジアの史資料は、紙面の劣化が激しく、貴重書や特殊資料の保護や電子化を進めるべき案件であることも多く、こうした取組みは貴重な貢献と考えられる。

おわりに

 アジア情報室は、国内唯一の国立図書館の専門室として現地語資料等を所蔵しているという特徴を持つ。ヒンディー語資料に関しては、歴史的資料から現代の資料まで数多く所蔵するが、その中でも新聞や雑誌を含む一般的な一次資料から学術書に至るまで幅広い資料を所蔵している。今後は、一般書と学術書のバランスのとれた収集を現地語、英語、日本語の各言語の資料について進めること、雑誌等の欠号を補充すること、研究者から体系性を保持した蔵書の寄贈を受けること、現在ある資料の体系性をより深く整えることといった、アジア情報室ならではの取り組みに期待する。個人、組織の関係性をもとにした貴重書の収集等によって、蔵書の厚みが出るとよい。アジア情報室には、各大学図書館では後回しになったり手が届かない等、それをしてもらえるならば大変助かるという「孫の手」のような資料を持つこと、そして市民、学生、研究者には、そうした資料の情報を互いに交換し合い協力することが求められている。多くの人に注目されてしかるべき図書館であり、さらなる展開が大いに期待される。

(かわなか かおる)



[1] 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特任研究員を兼任。専門は地域研究、文化人類学。インドのアパレル産業に関する地域研究を行う。

[2]「国立国会図書館所蔵のインド・南アジア関連資料」(南アジア地域研究 INDAS-South Asia) https://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/shiryou_syoukai_kokuritsu/ (2019年8月15日最終アクセス。以下同じ。)

[3] 国立国会図書館職員のうち、ヒンディー語の知識を持つ者に委嘱する。

[4] 国立国会図書館「アジア情報室所蔵資料の概要」http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-02data.php新たに購入した図書等、未整理の資料も含む。

[5] 整理済蔵書の分野構成と未整理資料を含む総蔵書の分野構成は、概ね類似している印象である。

[6] 【 】内は国立国会図書館請求記号。国立国会図書館オンライン(https://ndlonline.ndl.go.jp/)において請求記号による検索ができない資料は、請求記号の代わりに【( )】内に国立国会図書館書誌IDを記載。以下同じ。

[7] Centre for the Study of Developing Societies https://www.csds.in/introduction

[8] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「政治・法律・行政」 https://rnavi.ndl.go.jp/politics/index.php

[9] 国立国会図書館「アジア情報室所蔵資料の概要: 南アジア関係資料: 継続受入年鑑リスト」 https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-02data-south-yb-list.php

[10] 発足当初のプロジェクト名は「現代インド地域研究」で、後に現名称に改称。

[11] 「日本国内の所蔵機関ガイド」(南アジア地域研究 INDAS-South Asia)の掲載順。 https://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/shiryou-kokunai/

[12] 2018年度。東京外国語大学附属図書館統計「言語別所蔵冊数」 http://www.tufs.ac.jp/library/gaiyo/toukei/toukei_holdings_language.pdf

[13] 2019年3月時点。アジア情報室から大阪大学附属図書館外国学図書館への問合せによる。

[14] 2019年8月時点。アジア情報室から大東文化大学図書館への問合せによる。

[15] 2019年8月時点。アジア情報室から東京大学附属図書館への問合せによる。

[16] 2019年8月時点。アジア情報室から京都大学附属図書館への問合せによる。

[17] 2019年8月時点。アジア情報室から国立民族学博物館への問合せによる。

[18] پریم چند کے سو افسانے【Y752-P6】

[19] 例えば、京都大学ではインド古典籍、歴史学、社会学、人文地理学、文化人類学等の蓄積が、東京大学ではインド学や古典籍、人類学、歴史学、地域研究等の豊富で優れた研究基盤がみられる。また、アジア経済研究所では統計資料、政府刊行物、新聞・雑誌等の基礎資料、広島大学では人文地理学、地図、国立民族学博物館では文化人類学、民俗学の文献資料、独自の標本資料、映像・音響資料、龍谷大学では仏教研究資料、一橋大学では寄贈図書を通じた体系的コレクション資料、というように各分野で深く網羅的な資料が揃う。参照「日本国内の所蔵機関ガイド」(南アジア地域研究 INDAS-South Asia) https://www.indas.asafas.kyoto-u.ac.jp/shiryou-kokunai/

[20] 大石高志「関西館アジア情報室が収集する南アジア地域刊行資料について」(『アジア情報室通報』14巻3号, 2016.9) https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin14-3-1.php

  • 国立国会図書館
  • 国立国会図書館オンライン
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡
  • 参考書誌研究