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台湾で刊行された日本関係資料とアジア情報室における収集・所蔵:アジア情報室通報 17巻4号

水流添 真紀
(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

台湾では、日本をテーマとする資料や、日本語資料の翻訳版が多数刊行されている。日本の漫画やドラマも人気を集めている。

学術的な面では、32の大学が日本及び日本語関係の学科[1]を、15大学が日本研究センターを設置している[2]。また、「台灣日本研究學會」「當代日本研究學會」など複数の学会が存在するなど、日本研究活動がある程度の規模で行われているといえるだろう。

本稿では、台湾における日本関係資料の刊行状況と、国立国会図書館における所蔵状況について概観したい。台湾の状況については、『107年臺灣圖書出版現況及其趨勢分析(民国107(2018)年台湾図書出版現況及び動向分析)』[3]及び台湾国家図書館の蔵書目録データベース[4]を、当館の状況については、「日本関係外国語図書の書誌情報(試行版)」[5]を用いて検討する。

1. 台湾における日本関係資料の刊行状況

1.1. 図書

台湾には法定納本制度があり、台湾国家図書館は納本図書館の一つである[6]。台湾の納本率が約95%[7]であるため、同図書館の所蔵状況は、出版状況を反映したものとみなすことができる。同図書館の蔵書目録データベースで、2015年から2017年[8]までに出版された図書を対象に、日本関係の分類記号[9]が付与された資料を検索した結果、2,018件がヒットした。表1に、検索に使用した分類記号[10]及びヒット件数をまとめた。件数が多い分類は「日本文学」「アジア地理歴史-日本」「日本語テキスト」である。なお、「アジア地理歴史-日本」には旅行ガイドが多数含まれる。

表1 台湾で刊行された日本関係資料点数
分類及び分類記号 2015-2017
日本哲学 131 8
日本神道 273 5
アジア地理歴史-日本 731 569
日本文学 861 736
日本仏教諸宗 226.8 20
日本真言宗 226.93 2
日本寺院 227.31 2
日本料理 427.131 57
台湾原住民誌-日本統治期 536.3307 1
日本経済 552.31 9
各国政治-日本政治 574.2 3
各国殖民地-日本 577.531 1
移民-日本 577.731 1
日本外交 578.31 5
日本憲法 581.31 1
日本民法 584.931 1
日本商法 587.931 2
日本行政法 588.931 2
中日戦争(1937-1945) 628.5 44
日本統治期(1895-1945) 733.28 65
日本伝記 783.1 45
日本語テキスト 803.18 429
宮殿:城廓-日本 924.31 8
日本画 946.1 1
日本演劇 983.1 1
合計   2018

(出典)台湾国家図書館蔵書目録より筆者作成

1.2. 雑誌

蔵書目録データベースで、タイトルに「日本」または「台日」が含まれ、かつ台湾で刊行された中国語雑誌を検索すると、46件ヒットする。『秋刀魚 : 開始探索日本』[11]のような日本の現代文化を紹介するカルチャー誌もあるが、『日本與亞太研究季刊』『淡江日本論叢』『台日法政研究』[12]など、多くが大学及び学会等が刊行する学術誌である。

1.3. 翻訳書

1.1.の検索結果には現れていないが、台湾における翻訳書の大きな特徴は、日本語からの翻訳が非常に多いことである。2018年の翻訳書の発行点数は9,524点、うち日本語からの翻訳書は5,280点と、約55%を占める[13]。分野別内訳は表2のとおりで、漫画が最も多く、小説(ライトノベルを含む)、医学・家政(家事・レシピを含む)がそれに続く。社会科学、人文(歴史地理等)、科学技術等の学術書は、いずれも数パーセントにとどまる。

表2 台湾における2018年新刊及び翻訳書点数
分野全新刊点数翻訳書点数
翻訳書全点数日本分野別割合日本の割合
文学 2,643 244 97 2% 40%
小説 4,191 1,180 820 16% 69%
言語 1,318 119 29 1% 24%
辞典類 149 5 3 0% 60%
教科書 1,479 119 1 0% 1%
試験用図書 2,161 27 7 0% 26%
漫画 2,497 2,259 2,237 42% 99%
自己啓発 1,564 529 166 3% 31%
科学技術 2,343 438 173 3% 39%
医学・家政 2,552 918 600 11% 65%
商業と管理 1,682 413 197 4% 48%
社会科学 4,327 614 165 3% 27%
人文 4,936 767 209 4% 27%
児童書 3,788 1,430 311 6% 22%
芸術 2,810 353 188 4% 53%
余暇・旅行 626 105 74 1% 70%
その他 48 4 3 0% 75%
合計 39,114 9,524 5,280 55%

(出典)『107年臺灣圖書出版現況及其趨勢分析』より筆者作成

2. アジア情報室で収集・所蔵している日本関係資料

2.1. 日本関係資料の収集方針

国立国会図書館では「資料収集方針書[14]」を定めており、日本関係資料を「日本語の資料、言語を問わず日本を主題とする資料及び著者が日本人又は日系人である資料」と定義した上で、「欧米を中心とした外国人による日本研究に関する資料、日本人著作の外国語訳や日本人による外国語著作物を収集する。」とし、日本関係資料一般は包括的収集、日本人著作の漫画の翻訳は選択的収集、趣味のための資料、実用書、日本語教材及び旅行ガイドブックは厳選収集など、資料の種類によって収集水準[15]を定めている。アジア情報室でも、本方針書に基づいて資料を収集している。

上述のとおり、台湾における日本関係資料の多くは、旅行ガイドや日本語テキストである。翻訳資料についても、漫画及び小説、実用書が多く、いずれも選択的収集または厳選収集する資料と位置付けられている。

2.2. アジア情報室における所蔵状況

当館では、2019年3月に「日本関係外国語図書の書誌情報(試行版)」をオープンデータセットとして公開した。これは、日本関係外国語図書の書誌情報をtsv形式及びExcel形式で提供したもので、試行版には2015年から2017年までに当館が整理した書誌情報が収録されている。

表3は、本データセットから台湾刊行の資料を抽出し、分類ごとにまとめたものである。半数が国際子ども図書館で所蔵する児童書で、残りのアジア情報室所蔵の資料では、「歴史・地理」「芸術・言語・文学」の所蔵が特に多い。また、分類に依らず細かく見ると、『未竟的殖民 : 日本在臺移民村(未完の植民:台湾日本人移民村)』[16]、『台灣流行歌日治時代誌』[17]など、日本統治期に関する資料が70点あり、全体の18%を占める。また、日本人著作の翻訳書は、児童書198点のうち197点、当室所蔵202点のうち53点である。

表1及び表3では資料の刊行年や分類体系が異なるなど、単純な比較は困難であるが、両表をもとに当室の所蔵状況を考察する。

台湾における3年間(2015-2017年)の日本関係資料の刊行数と比較すると、当室における整理件数は十分の一にとどまる。しかし、台湾で刊行された日本関係資料(表1)を当館の収集基準に照らすと、積極的には収集しない資料が多く含まれており、その割合は分類によって異なる。例えば、「日本文学」「日本伝記」の多くは日本語からの翻訳であり、「アジア地理歴史-日本」中、約83%が旅行ガイドであった[18]。一方、「中日戦争」「日本統治期」は、ほぼすべてが包括的収集と位置付けられる資料である。

当室の収集状況を見ると、日本統治期の資料点数は表1と大きくかけ離れてはいない。また、台湾における日本関係の政治・経済分野の資料の出版点数は多くはないが、表3では12%(「政治・法律・行政」と「経済・産業」の計)を占めている。これは、日本統治期関係の資料が含まれるためであり、妥当なものであると考える。予算等の制約はあるが、分野の面では適切な収集であると考えてよいのではないだろうか。

ここで、本データセットには含まれない雑誌にも触れておきたい。1.2.で言及した、「タイトルに「日本」または「台日」が含まれ、かつ台湾で刊行された中国語雑誌46誌」のうち、所蔵しているのはわずか3誌であった。未所蔵誌には、日本研究関係の学会や大学の日本関係学科の紀要も含まれるため、今後の収集に留意する必要がある。

表3 国立国会図書館所蔵の台湾刊行日本関係図書
分類2015-2017年整理分
うち、
日本統治期
うち、
日本人著作
政治・法律・行政 23 6% 12 1
経済・産業 22 6% 10 5
社会・労働 14 4% 3 4
教育 15 4% 12 2
歴史・地理 68 17% 20 11
哲学・宗教 10 3% 3 5
芸術・言語・文学 42 11% 9 21
科学技術 5 1% 1 2
学術一般・ジャーナリズム・図書館 2 1%   2
特別コレクション 1 0%    
児童書 198 50%   197
合計 400 70 250

(出典)「日本関係外国語図書の書誌情報(試行版)」より筆者作成

おわりに

以上、台湾における日本関係資料の刊行状況を概観し、併せてアジア情報室での所蔵状況を紹介した。

これまで当室では、書店のカタログや、海外の図書館から提供される資料リストを参照して選書を行ってきた。また、外部有識者の意見を聴取するなど、蔵書構築のための情報収集も行っている[19]。今後は、台湾国家図書館等の所蔵状況も確認しながら、学術刊行物や日台関係を扱った資料、日本統治期の資料など、「包括的収集」を図るべき資料にさらに目配りして収集業務を進めていきたい。

(つるぞえ まき)



[1] 2018年時点。「大專校院科系別概況(含學生數,畢業生數,教師數) 」(教育部統計處)
https://depart.moe.edu.tw/ED4500/News_Content.aspx?n=5A930C32CC6C3818&sms=91B3AAE8C6388B96&s=9D1CE6578E3592D7
なお、全大学数は127。『中華民國教育統計 (108年版)』
http://stats.moe.gov.tw/files/ebook/Education_Statistics/108/108edu.pdf
(2019年10月21日最終アクセス。以下同じ。)

[2] 李世暉「台湾における日本研究の現状と展望 : 社会科学領域に関する一考察」『問題と研究』45(1)=453ママ:2016.1/3. p.50【Z8-756】(【 】内は当館請求記号。以下同じ。)

[3] https://nclfile.ncl.edu.tw/files/201901/ec7c233b-3c31-4b15-887d-36709a0ef75e.pdf

[4] 國家圖書館館藏目錄查詢系統 http://aleweb.ncl.edu.tw/

[5] https://www.ndl.go.jp/jp/dlib/standards/opendataset/index.html#bojdataset

[6] 齊藤まや「アジアにおける納本制度の動向―シンガポール、マレーシア、ベトナム、台湾の事例― 」『カレントアウェアネス』2014.6
https://current.ndl.go.jp/ca1826

[7] 前掲注(6)

[8] 「日本関係外国語図書の書誌情報(試行版)」の収録年に合わせた。

[9] 《中文圖書分類法》(2007年版)類表編(國家圖書館編目園地)
http://catweb.ncl.edu.tw/standard/page/25549
主表中の「日本」「日據」を含む分類を検索した。

[10] 検索結果が0件の分類は省略した。

[11] 『秋刀魚 : 開始探索日本』黑潮文化有限公司, [2014.11-]【Z23-AC85】

[12] いずれも当館未所蔵。

[13] 前掲注(3) pp.15-17

[14] 「資料収集方針書」(平成29年3月全部改正)p.22
https://www.ndl.go.jp/jp/collect/collection/guideline.html

[15] 前掲注(14) p.1 包括的収集は「該当する資料をできる限り多く収集」、選択的収集は「評価選択して収集(刊行年や予算、入手方法(国際交換、寄贈以外は不要等)による制約を付す場合がある。)」、厳選収集は「史料価値、館の蔵書構成上の必要性、他館所蔵状況等を総合的に評価し厳選して収集。寄贈は受入れ可」と定めている。

[16] 張素玢 作『未竟的殖民 : 日本在臺移民村』衛城出版, 2017.6【DC812-C13】

[17] 林良哲 著『台灣流行歌日治時代誌』白象文化事業, 2015.7【KD841-C18】

[18] サンプルとして検索結果から100件を目視し、推計した。

[19] 松本充豊「関西館アジア情報室所蔵の台湾政治関係資料について」『アジア情報室通報』16(3), 2018.9
https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin16-3-1.php

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