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北朝鮮の考古学(レファレンス事例・ツール紹介 19):アジア情報室通報 18巻3号

田中 福太郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

 朝鮮半島の古墳は発掘調査が多く行われ、調査報告も多数あります。また、高句麗(紀元前1世紀頃~668年)時代には、壁画を伴った古墳も築かれ、日本の高松塚古墳の壁画などに影響を与えたとされます。

 本稿では、「高句麗時代の壁画古墳にはどのようなものがあるか」というお問い合わせを例に、北朝鮮における考古学の成果を調査する際に参考となるツールをご紹介します。

*特に注記のない限り、紹介する情報源は朝鮮語です。【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2020年8月1日です。

1.事典類

 朝鮮半島全般の考古学についての事典類には、下記のようなものがあります。

  • ①西谷正 編『東アジア考古学辞典』(東京堂出版 2007.5)【GE8-H18】
     日本語資料です。朝鮮半島を中心に、中国・台湾・モンゴル・ロシア・日本、東南アジア諸国の遺跡・遺物・用語・事項・人名等2、350項目を収録しています。項目の末尾には参考文献が付されているとともに、巻末には遺跡、用語・事項それぞれの索引が付されています。
  • ②유적조사연구실 [編]『韓國考古學事典』(國立文化財硏究所 2001.12)【GE73-K182】
     韓国の国立文化財研究所発行の事典です。 世界の考古学理論や遺跡に関する事項を含め、韓国考古学を理解するために必須の用語約1,650 件を収録しています。 各項目に参考文献を付しているほか、図版、図面等を豊富に掲載しています。 巻末にハングル索引、漢字・原語索引が付されています。
  • ③국립문화재연구소 [編]『韓國考古學專門事典 : 古墳篇』(國立文化財研究所 2009.12)【GE8-K32】
     韓国の国立文化財研究所発行の事典です。初期鉄器時代末ごろから統一新羅時代までを対象に、 古墳、遺跡や概念用語など約1,700項目を収録しています。 韓国の古墳形成に関連がある、または影響を与えた中国・ロシア・日本の遺跡についても掲載されています。 巻末にハングル、漢字、日本語、英語の索引および遺物名の漢字一覧表が付されています。
  • ④『조선유적유물도감(朝鮮遺跡遺物図鑑)』(《조선유적유물도감》편찬위원회 1988.6-1996.2)【GE73-K179】
     北朝鮮で発行された図鑑です。全20巻から成り、朝鮮半島各地に分布する遺跡・遺物を、王朝時代別に収録しています。 遺跡・遺物には、朝鮮語による解説が付され、名称・年代・位置などの基礎データや、 豊富に掲載されている挿図・写真のキャプションには、日本語・英語を併記しています。 索引巻では、総目次のほか、歴史遺跡分布図をはじめ、最近の発掘成果や檀君陵、東明王陵、王建陵、高麗成均館、 平壌・開城の遺跡資料に関する情報や、収録されている遺物の一覧が掲載されています。

 ①には「壁画古墳」が立項されており、「三国時代の高句麗を主として、百済・新羅・加耶(加羅)や、高麗時代に若干、横穴式石室などの壁面に各種の壁画が描かれた墳墓が知られる」とあります。②にも「壁画古墳」が立項されており、「(前略)韓国の場合、遼東地方や楽浪・帯方地方に分布していた中国式の古墳壁画が三国時代の高句麗によって初めて受け入れられ、大きく発展するようになる。(後略)」とあります。③では「壁画墳」として立項されており、「三国時代の壁画墳は、現在までに121基発見されており、(中略)残りの117基は高句麗古墳である」とあります。同項目には高句麗の壁画古墳の一覧表も付されています。④は、時代別の構成となっており、高句麗は第3巻から第6巻に収録されています。④の第5巻「高句麗篇(3)」では「人物風俗図古墳」、第6巻「高句麗篇(4)」では「人物風俗及び四神図古墳」として、壁画古墳がカラー図版で紹介されています。

 ①②にも、いくつか代表的な古墳名が挙げられていますので、古墳名から関連の資料をさらに調べていくことができます。

2.北朝鮮における考古学研究

 ここでは、北朝鮮における考古学に関する研究書や論文を調べるツールを紹介します。

  • ⑤국립문화재연구소 고고연구실 [編]『북한 정기간행물 고고학 문헌 목록(北韓定期刊行物考古学文献目録)』(국립문화재연구소 고고연구실 2016.12)【GE3-K95】
     韓国の国立文化財研究所が編集・発行したものです。 北朝鮮で発行された定期刊行物のうち、考古学関連論文が収録されている8誌[1]について、 2016年までに刊行されたものを対象に、掲載論文約4,300件の掲載ページ、タイトル、著者等を収録しています。 排列は刊行物ごとに刊行年度及び巻号順です。巻末に著者名索引が付されています。 なお、本書は「国立文化財研究所文化遺産研究知識ポータル」ウェブサイトにてPDF形式で閲覧できます[2]
  • ⑥국립문화재연구소 고고연구실 [編]『조선고고연구 해제집 (朝鮮考古研究解題集)』(국립문화재연구소 고고연구실 2017.11) 【GE73-K437】
     同じく韓国の国立文化財研究所が編集・発行したものです。北朝鮮の考古学の研究論文が収録されている雑誌『朝鮮考古研究』について、1986年から2006年までに発行されたものについての解題を収録しています。
  • ⑦한국예술연구소 편『북한 잡지 총목록과 색인 : 『조선건축』・『조선고고연구』・『조선미술』・『미술』・『조선어문』(北韓雑誌総目録と索引 : 『朝鮮建築』・『朝鮮考古研究』・『朝鮮美術』・『美術』・『朝鮮語文』)』(한국예술종합학교 한국예술연구소 2002.12) 【UP54-K12】
     韓国の韓国芸術総合学校韓国芸術研究所が編集・発行したものです。『朝鮮考古研究』など5誌の総目次と索引を収録しています。索引部分は「作品索引」「人名索引」「主題索引」から成り、「主題索引」は刊行物ごとに収録されています。
  • ⑧국사편찬위원회[編]『북한역사학논저목록. 상,하(北韓歴史学論著目録. 上、下)』(국사편찬위원회 2001.11)【GE3-K31】
     韓国の国史編纂委員会が編集・発行したものです。 1946年から2001年上半期までに発表された北朝鮮の歴史学研究論著約9,000 件 及び韓国の北朝鮮関連歴史学論著約3,000 件を、著書は分野別に、論文は時代・分野別に収録しています。 付録として北朝鮮歴史学論著についての執筆者索引、北朝鮮の歴史関連学術誌・論文集号別目次等が付されています。 なお、本書は国史編纂委員会ウェブサイトで本文画像が閲覧できます[3]
  • ⑨북한의 문화재(北韓の文化財) (韓国・国立文化財研究所文化遺産研究知識ポータルサイト内)
    https://portal.nrich.go.kr/kor/northList.do?menuIdx=64
     「북한 고고학 정기간행물(北韓考古学定期刊行物)」にて、⑤の収録論文がキーワード検索できます。また、「조선유적유물도감(朝鮮遺跡遺物図鑑)」にて、④の一部が閲覧できます。
  • ⑩북한자료센터(北韓資料センター)
    https://unibook.unikorea.go.kr/
     韓国・統一部が運営する、北朝鮮に関する資料を所蔵する資料室です。「소장 자료검색(所蔵資料検索)」(図1)では、北朝鮮で発行された図書や逐次刊行物について、タイトルや著者のほか、図書や論文集の目次を対象としたキーワード検索や、雑誌記事の検索が可能です。資料のタイプや発行年などで絞込検索ができるほか、検索結果はエクセル形式でダウンロードすることもでき、文献リストの作成にも有用です。

図1 所蔵資料検索画面

(出典)北韓資料センター(https://unibook.unikorea.go.kr/material/searchBy

 ⑦に収録されている『朝鮮考古研究』の「主題索引」には「遺跡-墳墓」の項があり、墳墓一般や、壁画古墳等に関する論文の収録号が一覧できるほか、⑧の上巻の2.高句麗>4) 文化>(5)壁画研究の項でも、高句麗の壁画古墳についての論文の収録号が一覧できます。

3.当館所蔵の北朝鮮発行の主な考古学研究書

 当館で所蔵する北朝鮮の考古学研究書として、以下のようなものがあります。

  • ⑪「조선고고학총서(朝鮮考古学叢書)」全61巻(사회과학원 고고학연구소 2009.8) 【GE73-K247】
     北朝鮮の社会科学院考古学研究所が発行した考古学関連の著作を集成したものです。時代別になっており、総論、原始編、古代編、中世編、人類学編、古生物編、付録からなります。高句麗の壁画古墳については、中世編9及び10に論考が収録されています。
  • ⑫「조선사회과학학술집(朝鮮社会科学学術集)」考古学編(사회과학출판사)(刊行年月及び請求記号は巻により異なります)
     北朝鮮で発行された哲学、経済学、法学、言語学、文学、歴史学、考古学、民俗学等に関する著作を集成したもので、600巻まで発行されています。考古学編では、高句麗をはじめとする考古学に関する著作が多数収録されています。⑩では収録論文のタイトルや著者からも検索できます。

 上記のほか、北朝鮮で発行された考古学関連の資料全般について一覧したい場合は、 国立国会図書館オンラインの詳細検索で、分類に「GE73」、出版国に「KP」(北朝鮮)と入力して検索すると、一覧が表示されます[4]。検索結果の書誌情報は、tsv形式かBibTeX形式いずれかでダウンロードできるほか、当館の登録利用者であれば「マイリスト」に保存しておくこともできます。

まとめ

 調査のポイントとしては以下のとおりです。

  • 事典類を用いて、基本情報を入手する
  • 文献目録やデータベースで関連資料を検索してみる

 高句麗は、現在の中国にあたる部分も領土に含まれていたため、中国でも研究が行われています。 中国における考古学については、リサーチ・ナビ内の調べ方案内「中国の考古学について調べる[5]」をご参照のうえ、調査してみてください。

(たなか ふくたろう)



[1] 『문화유물(文化遺物)』、『문화 유산(文化遺産)』【Z8-A2】、【Z8-AK21】(複製版)、『고고 민속(考古民俗)』【Z8-A2】、『조선고고연구 (朝鮮考古研究)』【Z8-AK1】、『민족문화유산(民族文化遺産)』【Z11-AK43】、『력사제문제(歴史諸問題)』、『력사과학(歴史科学)』【Z8-AK45】、『조선 건축(朝鮮建築)』【Z16-AK9】

[4]ただし、分類検索は、整理した年代によって分類付与の方式が異なるため、すべてを網羅できないことにご注意ください。

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