トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報>フィリピンにおける英語教育(レファレンス事例・ツール紹介 20):アジア情報室通報 18巻4号

フィリピンにおける英語教育(レファレンス事例・ツール紹介 20):アジア情報室通報 18巻4号

佐藤 久美子(国立国会図書館関西館アジア情報課)

 国際共通語となっている英語力の向上[1]を目指し、 日本でも英語教育のあり方についての議論が行われていますが、 他地域と比較して英語の影響力が大きいアジアの国々でも[2]、英語教育に力が入れられています。

 本稿では、「インターネット上で英会話のレッスンを行うオンライン英会話ではフィリピン人の講師が多いと聞くが、フィリピンでの英語教育はどのようなものか」というレファレンス事例をもとに、フィリピンでの英語教育に関する資料や、無料で使えるインターネット情報をご紹介します。

*【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2020年11月6日です。

1. 教育制度に関する参考資料を調べる

 初めに、教育制度について概要を知るため、参考資料を参照します。

  • Rebecca Marlow-Ferguson, editor [and project coordinator ; Chris Lopez, associate editor] "World education encyclopedia : a survey of educational systems worldwide"2nd ed. (Gale Group, c2002. 3 v. ) 【F2-A149】
     233の国・地域の教育制度について、概要、法的基盤、歴史、参考文献等が記載されており、索引も付されています。フィリピンについても収録されており、公用語はフィリピノ語と英語であること、11の言語と87の方言があるフィリピンでは、その中の特定の言語を教授言語とすることは論議を巻き起こすものであること、などが記載されています。

2. フィリピンに関する参考資料を調べる

 次に、フィリピンに関する参考資料に英語教育についての記載がないかを探してみます。

    • 鈴木静夫, 早瀬晋三 編『フィリピンの事典』(東南アジアを知るシリーズ)(同朋舎出版, 1992.4)【GE8-E5】
       「ガイドライン」「項目編[あ~わ]」「資料編」の3部からなり、総項目数897項、図版約220点を収録しています。また、巻末に索引、略語一覧があります。
       「教育」の項では、歴史、義務教育(初等教育)、中等教育、大学教育、職業教育について述べられており、アメリカ合衆国の植民統治期に英語による教育が行われたこと、1946年のフィリピン共和国独立以降も教授言語として地方語・国語(フィリピノ語)、英語の3言語が使われてきたことについても言及されています。
  • 大野拓司, 鈴木伸隆, 日下渉 編著『フィリピンを知るための64章』(エリア・スタディーズ ; 154)(明石書店, 2016.12)【GE514-L14】
     全体を「I 暮らしを映す人間模様」「II 未来を照らす歴史」「III 変容する社会と文化」「IV 多元化する政治」「V 躍動する経済」「VI 絡み合う日比関係」の6つに分け、全64章で「新しいフィリピン像」を紹介しています。
     「言語と教育」の章では、ビジネス文書や法律等高度な知的活動で英語が使われているフィリピンでは英語能力と知性を同等視する風潮があること、また、「英語留学」の章では、日本人のフィリピンへの英語留学が急増していることについて記載されています。

 以上の資料から、多様な言語を持つフィリピンでは公用語でもある英語が教授言語としても使用され、英語能力が社会の中で重要性を持つことがわかりました。

3. 英語教育に関する資料を調べる

 「英語教育」をキーワードに資料を探してみます。

  • 河添恵子 著『アジア英語教育最前線 : 遅れる日本?進むアジア!』(三修社, 2005.4)【FC95-H114】
     「英語教育急進派の国」「バイリンガルの国」「英語教育新潮流の国」「教育発展途上国」に分けて、アジアの18か国の英語教育や塾、就学前教育事情等を紹介しています。フィリピンは「バイリンガルの国」の一つとして取り上げられています。
     フィリピンでは小学校の1年生から英語を学科として教えていること、理系科目については教授言語も英語となっていることなどがわかります。
  • 村田翼夫 編著『東南アジアの教育モデル構築 = South-East Asian educational model for developing countries : 南南教育協力への適用』(学術研究出版/ブックウェイ, 2018.12)【FB56-M1】
     国民統合のための教育、英語教育、宗教教育、多文化教育に力点を置く東南アジア諸国教育についての分析研究です。
     フィリピンの英語教育については、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングをバランスよく発達させようとし、コミュニケーション能力の発達に配慮していることなどが記載されています。
  • 村田翼夫 編著『東南アジア諸国の国民統合と教育 : 多民族社会における葛藤』(東信堂, 2001.2)【FB56-G18】
     多様な民族、言語、宗教、文化をもつ中で、国民統合を目指す東南アジア諸国の国民教育制度等についての論考を収録しています。
     フィリピンでは、フィリピノ語教育の重視が叫ばれる中で、公立学校では英語教育の質が低下傾向にある一方、私立エリート校では質の高い英語教育が行われていることなどがわかります。
  • 本名信行 編・著『事典アジアの最新英語事情』(大修館書店, 2002.12)【KS14-H4】
     フィリピンを含むアジア圏全21か国について、①その国の歴史的、地理的、民族的、社会的背景、②言語政策、③英語の使用状況、④小・中・高・大学における英語教育、⑤英語の特徴、⑥今後の展望、⑦参考文献が記述されています。
     フィリピンではほとんどの大学が英語を用いて授業を行っており、その水準も非常に高いことなどがわかります。
  • 河原俊昭, 川畑松晴 編『アジア・オセアニアの英語』(めこん, 2006.11)【KS14-H51】
     「第一部 ESLの英語」でフィリピンを含む英語を第二言語として話すアメリカ・イギリスの旧植民地諸国、「第二部 EFL国の英語」で英語が外国語の一つである国、「第三部 ENL国の英語」でネイティブ・スピーカーとして英語を話す国について、英語教育や英語事情を紹介しています。
  • 祖慶壽子 著『アジアの視点で英語を考える : 読む・聴く『CD付き』・話すアジアン・イングリッシュ』(朝日出版社, 2005.7)【YU21-H688】
     フィリピンを含めたアジア各国がどのように英語を受容し、どのように使用しているかを紹介しています。実際に各国の人が話している英語を付録のCDで聞くことができ、フィリピン人の話す英語の音源も収録されています。
  • Allan B.I. Bernardo, editor "The paradox of Philippine education and education reform : social science perspectives" (Philippine Social Science Council, c2008) 【FB56-P74】
     フィリピンの教育制度に関する9本の論文を収録しています。Ricardo D. Ma. Nolasco "The Prospects of Multilingual Education and Literacy"を含みます。
  • Department of Education
    https://www.deped.gov.ph/
     フィリピンで初等・中等教育を担当している教育省のサイトです。English educationで検索すると、初等・中等教育での英語教育に関する施策等が閲覧できます。
  • TESDA: Technical Education and Skills Development Authority
    https://www.tesda.gov.ph/
     フィリピンで、中等教育以降の職業・技術教育を担当し、英語学校設立等を管轄している技術教育技能開発庁のサイトです。TESDAに登録されたプログラム・コースを持つ英語教育機関等を検索できます。
  • CHED: Commission on Higher Education
    https://ched.gov.ph/
     フィリピンで高等教育を担当している高等教育委員会のサイトです。English educationで検索すると、高等教育での英語教育に関する施策等が閲覧できます。

 以上の資料から、フィリピンでは小学校の1年生から英語を学科として教えていること、理系科目については教授言語も英語となっていること、英語はリスニング、スピーキング、リーディング、ライティングをバランスよく発達させようとしていることなどがわかりました。

4. オンライン英会話に関する資料を調べる

 視点を変えて、「オンライン英会話」をキーワードに資料を探してみます。

  • 本名信行, 竹下裕子 編著『世界の英語・私の英語 : 多文化共生社会をめざして』(桐原書店, 2018.8)【KS61-L86】
     世界共通語であるからこそ多様性に富む現代英語を「世界諸英語」と呼び、アジア諸国で英語がどのように使われているかを紹介しています。日本人のフィリピンへの英語留学や主にフィリピン人が講師となるオンライン英会話についても取り上げられており、「主な「フィリピン留学」と「オンライン英会話」に関する書籍」の一覧も掲載されています。
  • 隂山英男, 藤岡頼光 著『これからの英語教育 = Future of English education : フィリピン発・英語学習法』(Edu-talkシリーズ ; 4)(中村堂, 2015.4)【KS61-L86】
     教育者隂山氏による講演「最近の教育動向と英語教育」、日本人のフィリピンへの英語留学事業、オンライン英会話事業を手掛けている藤岡氏による講演「フィリピン発・英語教育法」及び手記「バイク便が始めたゼロからのフィリピン英会話事業」が収録されています。フィリピンの英語事情や、フィリピンで英会話事業を始めた経緯、ホスピタリティに優れたフィリピンの人々は教師に向いていると考えられていること等が述べられています。
  • 小張順弘(研究代表者)・坂井誠・森元昌『サービスの商品化がもたらす日比関係の変容に関する学際的分析』(亜細亜大学アジア研究所・アジア研究シリーズ No.96)(亜細亜大学アジア研究所, 2018.2)
    https://www.asia-u.ac.jp/uploads/files/20180413120945.pdf
     「日本とフィリピンを結ぶ英語/英語教育」について論じる3本の論文を収録しています。坂井誠「日本社会におけるオンライン英会話サービスの現状、効性、そして課題」では、フィリピン人英語講師の受けた英語教育についての言及もあります。

まとめ

 今回の調査のポイントは以下のとおりです。

  1. 参考図書類を参照し、基本情報を確認する。
  2. キーワードを基に資料やインターネットを用いて情報を得る。

 アジア情報室では、他にもアジアの国々の教育に関する資料を多数所蔵しています。ぜひご利用ください。

(さとう くみこ)



[1] 英語教育の在り方に関する有識者会議「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352464.htm

[2] 河原俊昭, 川畑松晴 編『アジア・オセアニアの英語』(めこん, 2006.11), p.5

  • 国立国会図書館
  • 国立国会図書館オンライン
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡
  • 参考書誌研究