トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報巻号から探す第19巻(2021年)>アジア情報室所蔵朝鮮語図録類の紹介~韓国及び北朝鮮で発行された図録を中心に~:アジア情報室通報 19巻3号

アジア情報室所蔵朝鮮語図録類の紹介~韓国及び北朝鮮で発行された図録を中心に~:アジア情報室通報 19巻3号

田中 福太郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

1.はじめに

韓国には、2020年1月現在、博物館が897館あり、運営主体別では、国立50館、公立380館、私立362館、大学105館となっている。また、美術館は267館あり、運営主体別では、国立1館、公立72館、私立179館、大学15館となっている[1]

北朝鮮には、2010年現在、13の博物館があるとされる[2]

国立国会図書館関西館アジア情報室(以下、アジア情報室)では、2021年7月末現在、朝鮮語図録類[3]を329冊所蔵している。出版国の内訳を示すと、韓国318、日本8、北朝鮮3の順である。

以下では、それらのうち、所蔵冊数の多い韓国の国立中央博物館、国立古宮博物館、ソウル歴史博物館、国立現代美術館の図録及び北朝鮮で発行された図録について、主なものを紹介したい。(【 】内は当館請求記号)

2.韓国発行の図録類

2.1.国立中央博物館

1945年12月3日に旧朝鮮総督府博物館を引き継ぐ形で開館した旧国立博物館は、1972年7月に国立中央博物館と改称された[4]。文化体育観光部が所管し、同館の下に13の地方博物館がある。国宝74点を含む約41万2千点を所蔵する、考古、美術、歴史の総合博物館である。施設として、先史・古代館、中世・近世館、書画館、彫刻・工芸館などの常設展示室のほか、特別展示室、子ども博物館等がある。

国立中央博物館では、年に6回程度特別展を開催している[5]が、アジア情報室では2000年以降の特別展の図録を中心に所蔵している。

以下では、同館開催の特別展の中から、主なアジア情報室所蔵図録を紹介する[6]

  • 『韓國繪畵 : 韓國名畵近五百年展圖錄』(國立中央博物館 1972)【KC16-1428】 1960年代末から1970年代初頭にかけて行われた全国的な絵画調査の結果を基に、山水図、動物画、肖像、風俗等に分類して展示された。
  • 『韓國近代繪畵百年 : 1850-1950』(三和書籍 1987)【KC15-K1】 朝鮮時代の伝統絵画が近代韓国画に移行する過程に焦点を当てた展示と評される。
  • 『韓國美術五千年 : 國立中央博物館』(高麗書籍 1984.7)【K144-K28】 1976年に日本、1981年に米国を巡回した後に同館で開催された展示会の図録である。
  • 『朝鮮時代 風俗畫』(한국박물관회 2002.3)【KC16-K30】 風俗画を中心としつつ記録画や仏画等も含めて展示された。
  • 『秋史 김정희 : 學藝 일치의 경지(秋史 金正喜 : 学芸 一致の境地)』(국립중앙박물관 2006.9)【KC16-K14】 書芸家として有名な金正喜(1786―1856)が、他の分野においても業績を残したことを紹介した展示である。

2.2.国立古宮博物館

1972年に宮中遺物展示館として開館し、2005年8月に国立古宮博物館と改称した[7]。文化財庁所管で、朝鮮王朝及び大韓帝国の皇室に関する資料を中心に所蔵している。

同館では、年に4~6回程度特別展を開催している。アジア情報室では、開館以降の特別展図録を半数程度所蔵している。以下で、主なものを紹介する。

  • 『백자 달항아리(白磁大壺)』(눌와 2005.8)【KB382-K18】 同館開館記念展として開催されたもので、韓国内外で所蔵されている白磁大壷9点が揃って展示された[8]
  • 『조선왕실의 인장(朝鮮王室の印章)』(그라픽네트 2006.8)【KB361-K4】 韓国では1987年の国立民俗博物館での「韓国の印章」展以降、篆刻に関する展示が開催されていなかった。本展示は、印章の製作・収集・伝承の過程に注目した展示である[9]

2.3.ソウル歴史博物館

ソウル特別市が運営するソウル歴史博物館は、ソウルの歴史と伝統文化を整理して提示することでソウルへの理解を深めること及びソウル市民・外国人等にソウルの文化を体験する機会を提供する目的で、2002年5月に開館した。近年はソウルの近現代史の資料収集に力を入れている。

同館では毎年10回前後の企画展を開催している。アジア情報室では、その一部を所蔵しており、主なものは以下のとおりである。

  • 『종로 엘레지(鍾路エレジー)』(서울역사박물관 전시운영과 2010.12)【GE159-K60】 2010年、「ソウル半世紀総合展」の第一弾として企画された。ソウル中心部の鐘路に焦点を当て、現地に所在する企業や個人商店の協力を得て展示が構成された[10]
  • 『신림동 청춘 : 고시촌의 일상(新林洞青春 : 考試村の日常)』(서울역사박물관2015.9)【GE17-K64】 1975年に、ソウル大学がソウル市冠岳区新林洞に移転し、公務員試験受験準備のための塾が集中するようになった同地の変遷を扱った展示である。

なお、同館が刊行した展示図録類は、ウェブ上でも閲覧可能である[11]

2.4.国立現代美術館

1969年に景福宮内に開館した国立現代美術館は、1973年に徳寿宮石造殿、1986年に現在地の京畿道果川市へ移転した[12]。ソウル市内に2つの分館、忠清北道清州市に保存施設を備えた分館がある。文化体育観光部が所管する。同館では、年に6~10回程度の企画展が開催されている。アジア情報室では、1980年代~1990年代を中心に所蔵している。主なものに、以下のようなものがある。

  • 『근대를 보는 눈 : 한국 근대 미술 : 유화(近代を見る目 : 韓国近代美術 : 油絵)』(삶과 꿈 1997.12)【KC16-K12】 朝鮮時代末期から1960年代までに描かれた油絵約280点が展示された。
  • 『또 다른 이야기 : 한・일현대미술전(いま、話そう : 韓・日現代美術展)』(얼과 알 2002.5)【K16-K104】 統一テーマ「コミュニケーション」のもと、日韓の女性作家各6名の作品を展示。日本の国立国際美術館でも開催された[13]

なお、同館ウェブサイトにて、過去に開催された展示会の概要、会場で配布されたパンフレット類、ヴァーチャル展示などが公開されている。

3.北朝鮮発行の図録類

アジア情報室では北朝鮮発行の図録類も所蔵している。主なものに、以下のようなものがある。

  • 『조선중앙력사박물관(朝鮮中央歴史博物館)』(조선문화보존사 2004.12)【K16-K38】 朝鮮中央歴史博物館の所蔵品図録である。巻末に館内平面図が付されている。
  • 『조선미술박물관(朝鮮美術博物館)』(미술정보쎈터 2008.8)【KC15-K5】 1948年に朝鮮中央美術博物館として開館した朝鮮美術博物館が、2008年に開館60年を迎えたことを記念して出版されたものである。同館には数万点の作品があるとされ、その中から代表的な収蔵品である朝鮮画、油絵、出版物掲載画が収録されているほか、巻末に同館の全景及び館内の写真が掲載されている。
  • 『국가 미술 전람회 화첩(国家美術展覧会画帖)』(조선미술출판사 1987)【KC16-K1】 植民地支配からの解放及び朝鮮労働党創建40年を記念して開催された「国家美術展覧会」の出展作品の一部が収録されている。

4.おわりに

図録類は、たとえ言語が読み解けなくても、図版中心のため、展示の内容を理解しやすい。また、展示の企画意図や関連の論考が掲載されていることがあり、その分野について深く知るのに有用な資料ともなる。本稿が、その利用のきっかけとなれば幸いである。

図1 本稿で紹介した図録類

(たなか ふくたろう)


[1] 『2020 전국 문화기반시설 총람(全国文化基盤施設総覧)』(문화체육관광부 문화기반과, 2020.12)による。同書は韓国・文化体育観光部ウェブサイトで閲覧できる。https://www.mcst.go.kr/kor/s_policy/dept/deptView.jsp?pSeq=1453&pDataCD=0417000000&pType=外部サイトへのリンク

[2] 張慶姫 著, 池貞姫, 村上和弘, 松永悦枝 訳『北朝鮮の博物館』【UA31-L207】による。同書は장경희 글『북한의 박물관』【UA31-K23】の和訳である。

[3] 本稿で考察の対象とする朝鮮語図録類は、国立国会図書館分類表のGE17(歴史-図鑑・図録)、K15及びK16(芸術一般-美術図録)、KB15及びKB16(彫刻・工芸-図録)、KC15及びKC16(絵画・書・写真-図録)の資料のうち、著者または発行者が博物館及び美術館のもののほか、上記分類以外でタイトルまたはシリーズ名に「특별전(特別展)」や「전시(展示)」などの字句が含まれる資料、書誌注記の「会期・会場」に博物館や美術館等の展示会場の記述があるものとする。

[4] 「연혁 및 발자취」국립중앙박물관ウェブサイトhttps://www.museum.go.kr/site/main/content/history_1945外部サイトへのリンク

[5]『國立中央博物館 60年』【UA31-K13】に、1946年から2005年までに開催された特別展示の一覧が収録されている。

[6] 1945年から2006年10月までに開催された、韓国における特別展の概観及び図録の発行された特別展の一覧が『한국미술 전시와 연구 : 2006 국립중앙박물관 한국미술 국제학술 심포지엄 논문집』【UA31-K18】に収録されている。以下の記述は同資料を基に行った。

[7] 「연혁」국립고궁박물관ウェブサイトhttps://www.gogung.go.kr/history2.do外部サイトへのリンク

[8] 片山まび「『白磁大壷』にまつわる断片的記憶」『韓国朝鮮の文化と社会』6 (2007.10)pp.243-246【Z 71-J98】

[9] 前掲注(6)

[10] 조선경「종로 엘레지(Jongno elegy)」『서울역사박물관 리뷰』2010【Z45-AK29】

[11] 「발간도서」서울역사박물관ウェブサイトhttps://museum.seoul.go.kr/www/board/NR_boardList.do?bbsCd=1012&sso=ok外部サイトへのリンク

[12] 「연혁」국립현대미술관ウェブサイトhttp://www.mmca.go.kr/contents.do?menuId=5020001210外部サイトへのリンク

[13] 喜多恵美子「[展評]いま、話そう(또 다른 이야기)A Second Talk: Contemporary Art from Korea and Japan」『韓国朝鮮の文化と社会』1 (2002.10)pp.217-222【Z71-J98】

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