トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報巻号から探す第19巻(2021年)>インドの世論を調べる(レファレンス事例・ツール紹介23):アジア情報室通報 19巻3号

インドの世論を調べる(レファレンス事例・ツール紹介23):アジア情報室通報 19巻3号

大西 啓子(国立国会図書館関西館アジア情報課)

昨年度のアジア情報研修[1]で、インドのプラスチック規制関連法令の調べ方を取り上げたところ、「規制する政府側の情報は多いが、国民の側からの情報が少ない」というご意見をいただきました。本稿では、「インドのプラスチック規制に対する市民の声を知りたい」という事例をもとに、インドの世論をインターネット上の公開情報を使って調べる方法をご紹介します。

1. 世論調査

まず、政府機関の世論調査や研究機関、メディアによる代表的な世論調査を確認します。

(1) 政府機関の世論調査

① Poll & Survey, MyGov.in https://www.mygov.in/home/poll/外部サイトへのリンク

インド政府が推進するICT政策「デジタル・インディア」のもとで開設された市民の政治参加プラットフォームMyGovの世論調査のページです。上部メニューで「All」を選択すると、これまでに各省庁や政府機関によってMyGov上で実施された調査を一覧することができます。例えば、このページで「Swachh Survekshan 2021」という都市の衛生状態と清浄度に関する調査が住宅・都市問題省によって行われたという情報を得て、調査名称でウェブ検索をすると、該当する調査のページ[2]が見つかります。2020年までの調査レポートを見ることができますが、プラスチック規制に対する市民の意見は見当たりません。MyGovには掲載されない調査もあるため、関連政府機関のウェブサイトも確認します[3]。今回は、環境・森林・気候変動省[4]、中央汚染管理委員会[5]のウェブサイトを参照しましたが、関連する調査は見つかりません。

(2) 研究機関、メディアの世論調査

② Lokniti https://www.lokniti.org/外部サイトへのリンク

デリーにある社会科学研究機関Centre for the Study of Developing Societies : CSDSの研究プログラムLokniti : Programme for Comparative Democracyのウェブサイトです。Loknitiは投票行動に関する調査[6]で知られていますが、各種テーマの世論調査[7]も実施しています[8]。環境問題に関連する調査には、2008年の「Lokniti-CSDS-CNN-IBN-Outlook State of India's Environment Survey」[9]があります。6都市の1,800人を対象とした調査からは、ゴミを管理する最もよい方法はプラスチックの使用削減であると考える人が多く(31.2%)、日常生活で使用する物の中で最も環境にとって有害だと考えられているのはプラスチックで包装された食品である(50.8%)ことがわかります。一方、家庭でプラスチック袋の不使用を実践している人は39.3%、買い物でプラスチック袋を使用していない人は23.4%です。

③ India Today https://www.indiatoday.in/外部サイトへのリンク

インドのニュース雑誌India Todayは、約半年ごとに世論調査「Mood of the Nation」を実施しており、政治、経済、外交、社会問題、スポーツ、エンターテイメント等の各分野の質問項目が設定されます。例えば、2021年1月の調査では、97の連邦議会選挙区[10]及び19州[11]の194議会選挙区の12,232人を対象に調査が行われ、COVID-19パンデミック及び農業関連新法への抗議運動に対するモディ政権の対応、異教徒間の結婚への賛否、好きな俳優等70以上の項目について調査が行われました。結果はIndia Today【当館請求記号Z55-C371】2021年2月1日号の特集記事として公表されています[12]。環境問題に関連する質問項目としては、2020年1月の調査にSwachh Bharat Mission[13]に関するものがありますが、プラスチック製品の規制に関する内容は含まれていません。

(3) その他の世論調査

ウェブ検索を用いて調査テーマに関係する世論調査を探します。India、plastic、ban、carry bag、survey等の語を用いた検索で、以下のような世論調査が見つかります。

  • Perception survey on Plastic use and Management Report- March 2020[14]

ニューデリーに本社を置く研究機関The Energy and Resources Institute : TERIが、UNEP(国連環境計画)の支援を受けて2020年にマハーラーシュトラ州ムンバイで実施した調査です。865人以上の回答者うち97%がプラスチック廃棄物は人間の健康及び環境への影響が懸念されると考えています。また、85%は買い物では紙袋やプラスチック袋よりも布製の袋を好むこと、76%はプラスチック袋を有料にすることは使用量の削減に効果があると考えていることが示されています。

  • Results of the survey on the plastic ban in Pune city[15]

マハーラーシュトラ州プネーに拠点を置く社会的企業eCoexistによって、2018年11月から2019年1月にプネーの1,155店舗を対象として行われた調査です。同州では2018年3月にプラスチック製品の使用を禁止する告示[16]が出されており、この調査は同規制の効果を計る目的で実施されました。61%の店舗がプラスチック袋の提供を取り止めている一方、業種別にみると肉屋、食料品店、カフェ・屋台でその割合が低いという結果になっています。また、61%の店舗において依然として顧客からのプラスチック袋に対する需要があることがわかります。

  • Single Use Plastic-The Last Straw[17]

インドの環境保護団体Toxics Linkによる、都市部の中産階級453人を対象とした2020年の調査です。回答者の61%が厚さ50ミクロン未満のプラスチック袋が法令[18]で禁止されていることを認識しており、年代別に見ると20歳未満の認識割合が最も低く、年代が上がるにつれて高くなります。買い物でのプラスチック袋の使用頻度は、毎回14%、頻繁に32%、時々37%、使用しない17%となっていますが、プラスチック袋の全面禁止に期待する人は83%にのぼります。オンラインショッピングにおけるプラスチック包装が過剰であると考える人は77%、プラスチックストローの禁止に賛成の人は91%です。

世論調査を参照する際は、調査対象、時期、場所等、結果に影響を与えうる要因に意識を払うことが重要です。複数の調査結果を比較することをおすすめします。

2. 学術研究

学術研究の一環として世論調査や社会調査が行われ、学術論文に掲載される場合があります。代表的な機関リポジトリには、Information and Library Network(INFLIBNET)Centreが運営する電子学位論文リポジトリ④Shodhganga[19]があり、470以上の大学や研究機関の博士論文等30万件以上を収録しています。大学図書館の総合目録⑤IndCat[20]の論文検索結果からもShodhgangaへリンクしています。科学技術関係では、国立科学コミュニケーション情報資源研究所の⑥NISCAIR Online Periodicals Repository[21] やインド理科大学院の⑦ePrints@IISc[22]があります。

3. 新聞記事・ニュース

新聞やニュース等の報道からも具体的な市民の声を知ることができます。おもな報道機関のウェブサイトを一覧するには、当館の⑧「AsiaLinks -アジア関係リンク集-」[23]が便利です。プラスチック規制に対する市民の反応を含む報道として、例えば、新聞Business Standardのオンライン版の記事[24]は、2021年3月に発表されたプラスチック廃棄物管理法の改正法案に対して、プラスチック製造業界が修正と規制の導入延期を求めていることを報じています。また、放送局NDTVのウェブサイト[25]では、マハーラーシュトラ州でのプラスチック製品の禁止後の市民の生活を取材した記事の中で、プラスチック袋の提供をやめたことで顧客が他店に移ってしまった果物店や、プラスチック製品の在庫が処分できずに損失を出すという店主の話を紹介しています。報道記事はまた、調査テーマの背景や争点を把握し、調査範囲を広げる手掛かりを集めるのにも役立ちます。

4. 議会会議録・立法趣旨

調査テーマが議会で取り上げられている場合や関連立法の動きがある場合は、会議録や法案の立法趣旨から事柄の背景や市民の意見が読み取れる場合があります。⑨Parliament Digital Library[26]では連邦下院の会議録等の議会文書を、⑩Legislation : Lok Sabha[27]では下院、上院の法案をそれぞれ検索・閲覧できます。例えば、連邦下院の会議録では、プラスチック袋で販売される牛乳を例にして買い戻し・リサイクルのシステムを求める意見等が見つかります[28]

まとめ

    1. 代表的な世論調査をおさえたうえで、関連団体による調査や学術研究を探す。
    2. 報道記事を調査の手掛かりにする。
    3. 議会会議録や立法趣旨にも目を配る。

ある出来事が起こった直後は、報道記事や個人・団体による情報発信が世論を知るおもな手段であっても、時間の経過とともに民意に関する調査研究が行われ、利用できる情報に厚みが出る場合も少なくありません。本稿がインドの世論を調べるための一助となれば幸いです。

(おおにし けいこ)



[1]「アジア情報研修(令和2年度):インドのことを調べよう!~法令・政府情報と統計を中心に~ 」国立国会図書館ウェブサイト<https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-workshop2020.php>(最終アクセス日2021.8.5、以下同じ)

[2] <https://swachhsurvekshan2021.org/外部サイトへのリンク>

[3] 政府機関のサイトを探すツールとして、政府の公式ウェブディレクトリIntegrated Government Online Directory <https://goidirectory.gov.in/外部サイトへのリンク> がある。

[4] Ministry of Environment, Forest and Climate Change <https://moef.gov.in/en/外部サイトへのリンク>

[5] Central Pollution Control Board <https://cpcb.nic.in/index.php外部サイトへのリンク>

[6] 連邦下院選挙に関する調査National Election Studies <https://www.lokniti.org/national-election-studies> ; 州議会選挙に関する調査 State Election Studies <https://www.lokniti.org/state-election-studies外部サイトへのリンク>

[7] Other Studies <https://www.lokniti.org/other-studies外部サイトへのリンク>

[8] Loknitiによれば、Loknitiの調査は学術的、非商業的である点が他機関の調査とは異なる。 <https://www.lokniti.org/about-us外部サイトへのリンク>

[9] <https://www.lokniti.org/otherstudies/lokniti-csds-cnn-ibn-outlook-state-of-india-s-environment-survey-38外部サイトへのリンク>

[10] 連邦下院の選挙区数は543である。List of Parliamentary Constituencies, Election Commission of India Website <https://eci.gov.in/files/file/8465-list-of-parliamentary-constituencies/外部サイトへのリンク>

[11] インドは28州、8連邦直轄地からなる。Know India: National Portal of India Website <https://knowindia.gov.in/states-uts/外部サイトへのリンク>

[12] 特集記事及び調査結果の概要はIndia Todayのウェブサイトでも見ることができる。India Today Magazine Issue - Dated Feb 1, 2021 <https://www.indiatoday.in/magazine/01-02-2021外部サイトへのリンク> ; Mood of the Nation 2021: Modi Govt 2.0 Performance Survey by India Today <https://www.indiatoday.in/mood-of-the-nation-survey-2021外部サイトへのリンク>

[13] 衛生環境改善を目標として2014年に開始された政策。トイレの普及により野外排泄をなくすこと、排水処理の改善、ゴミの分別、使い捨てプラスチックの削減等に焦点を当てている。Swachh Bharat Urban <http://swachhbharaturban.gov.in/外部サイトへのリンク>

[14] <https://www.teriin.org/sites/default/files/files/Annexure_M1_Perception-survey-Report.pdf外部サイトへのリンク> この調査はRethink Plastic: UNEP-TERI joint initiative in Mumbai regionの一環として行われた。<https://www.teriin.org/project/rethink-plastic-unep-teri-joint-initiative-mumbai-region外部サイトへのリンク>

[15] <https://www.e-coexist.org.in/wp-content/uploads/2021/02/Plastic-ban-survey-results-final.pdf外部サイトへのリンク>

[16] Maharashtra Plastic and Thermocol Products (Manufacture, Usage, Sale, Transport, Handling and Storage) Notification, 2018, Maharashtra Pollution Control Board Website <https://www.mpcb.gov.in/sites/default/files/plastic-waste/rules/plastic_27032018.pdf外部サイトへのリンク>

[17] <http://toxicslink.org/docs/Final%20Report%20Single%20Use%20Plastic.pdf外部サイトへのリンク>

[18] Plastic Waste Management Rules, 2016, India Code Website <https://upload.indiacode.nic.in/showfile?actid=AC_CEN_16_18_00011_198629_1517807327582&type=rule&filename=PWM-Rules,-2016.pdf外部サイトへのリンク>

[19] <https://shodhganga.inflibnet.ac.in/外部サイトへのリンク>

[20] <http://indcat.inflibnet.ac.in/外部サイトへのリンク>

[21] <http://nopr.niscair.res.in/外部サイトへのリンク>

[22] <http://eprints.iisc.ac.in/外部サイトへのリンク>

[23] <https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/link-ind17.php>

[24] "India's ban on single-use plastics runs into challenges, pitches new rules", Business Standard News, 2021.6.17.< https://www.business-standard.com/article/current-affairs/what-india-must-do-to-implement-ban-on-single-use-plastics-effectively-121061700235_1.html外部サイトへのリンク>

[25] "Maharashtra Plastic Ban: How Has Life Changed In The State Post The Ban On Plastic", NDTV.com, 2018.6.22. <https://swachhindia.ndtv.com/maharashtra-plastic-ban-world-environment-day-20575/外部サイトへのリンク>

[26] <https://eparlib.nic.in/外部サイトへのリンク>

[27] <http://loksabhaph.nic.in/Legislation/NewAdvsearch.aspx外部サイトへのリンク>

[28] <https://eparlib.nic.in/handle/123456789/782204?view_type=browse外部サイトへのリンク>

  • 国立国会図書館
  • 国立国会図書館オンライン
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡
  • 参考書誌研究
  • Research Navi(English)