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新型コロナウイルス感染症に関するアジア情報室所蔵中国語資料 :アジア情報室通報 19巻4号

中山 正義(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

中国では新型コロナウイルス感染症に関する様々な資料が刊行されており、国立国会図書館関西館アジア情報室ではそれらについて積極的に収集を行ってきた。

本稿では、アジア情報室が収集した新型コロナウイルス感染症に関する中国語資料のうち主なものを取り上げ、「Ⅰ 武漢市ロックダウン前後における政府の対応と人々の体験記」、「Ⅱ 治療法・感染防止策」、「Ⅲ 社会への影響分析」の3つの章に分けて紹介する。各章においては、「背景」として2020年初めの中国における新型コロナウイルス感染症に関する状況を振り返った上で、「所蔵資料」で個々の資料の概要を紹介する。なお、「背景」で紹介した出来事は以下の中国政府系ウェブサイトの記事を参考にした 。

  • 疫情通报―全力做好新型冠状病毒肺炎疫情防控工作(仮訳:流行状況に関するお知らせ―新型コロナウイルス感染症の予防管理に尽力する)(国家卫生健康委员会 )
    http://www.nhc.gov.cn/xcs/yqtb/list_gzbd.shtml外部サイトへのリンク
  • 中国发布新冠肺炎疫情信息、推进疫情防控国际合作纪事(仮訳:中国が新型コロナウイルス感染症の情報を公開し、予防管理の国際協力を推進した記録)(中国政府网)
    http://www.gov.cn/xinwen/2020-04/06/content_5499625.htm外部サイトへのリンク

※【 】内は国立国会図書館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2021年11月16日。

Ⅰ 武漢市ロックダウン前後における政府の対応と人々の体験記

1 背景

2019年末に中国湖北省武漢市で「原因不明の肺炎」の事例が発生し、2020年1月下旬から感染者数が急増し始めた。国家衛生健康委員会は「ヒト-ヒト感染」の存在を確認し、不要不急の渡航の自粛を呼びかけた。さらに1月23日に武漢市でロックダウンが実施され、市外へのあらゆる交通手段が遮断され、市内の公共交通機関の運行も停止された。郊外に新型コロナウイルス感染症治療専門の仮設病院「火神山医院」と「雷神山医院」が短期間で建設され、また、市内には軽症患者収容のための臨時医療施設「方艙医院」が設置された。さらに全国各地から招集された医療関係者からなる医療チームが編成され、武漢市と湖北省の医療支援にあたった。

2 所蔵資料

中国における新型コロナウイルス感染症への対応について、中国国務院は『抗击新冠肺炎疫情的中国行动 : 2020年6月』(仮訳:新型コロナウイルス感染症との戦いにおける中国の動き)【EG244-C34】と題する白書を発表し、年表形式で当時の全国の状況と政府の施策をまとめ、紹介している。

『2020中国战"疫"日志 : 2020.01.23-02.23』(日本語版タイトル:2020中国戦「疫」日誌)【EG244-C22】、日本語版【EG244-M80】と『2020中国战"疫"日志 第2辑 (2020.02.24-04.08)』(日本語版タイトル:2020中国戦「疫」日誌 第2集)【EG244-C22】は、日誌形式で中国国内における感染症対策のニュースと現場で発生した逸話がまとめられており、外国語版 も刊行された。

ロックダウン下の武漢について、『武汉封城 : 坚守与逆行』(日本語版タイトル:武漢封鎖 : 堅守と「逆行」)【EG244-C31】、日本語版【EG244-M79】は新聞記事や、マスメディアのSNS公式アカウントで発表された様々なコラム記事をまとめ、医療現場と市民生活を描いている。感染者、支援目的で外部から現地入りした医療関係者、仮設病院の建設工事の作業者など、様々な視点から現場で奮闘した人々の様子を紹介している。

『武漢封城日記』(日本語版タイトル:武漢封城(ロックダウン)日記)【EG244-C32】、日本語版【EG244-M93】は、武漢に滞在するソーシャルワーカーが、隔離生活と心情を綴った資料である。団地の出入りを管理する警備員、近隣道路と団地の清掃を担当する従業員、自宅周辺で散歩する隣人など、一般市民の様子を紹介している。

『崇高使命 : 白衣战士武汉、湖北防疫抗疫纪实』(仮訳:崇高なる使命 : 武漢、湖北省における医療関係者の疫病との戦いの記録)【EG244-C16】は、医療現場の様子を記した資料である。全国から武漢市と湖北省へ派遣された医療関係者が現場で奮闘する様子について、新華社通信のニュース記事をまとめている。

『武汉 我们来了』(仮訳:武漢よ、我々は来た)【EG244-C25】は、武漢に派遣された医療関係者の体験談を集めたものである。編者である中国衛生健康思想政治工作促進会 はSNS上で医療関係者からの投稿を募集し、彼らの体験談を写真付きで公表していた。その中から代表的なエピソードを選んで本書で紹介している。

『查医生援鄂日记』(日本語版タイトル:武漢支援日記 : コロナウイルスと闘った68日の記録)【EG244-C17】、日本語版【EG244-M118】は、医療支援チームの一員として派遣された医師が、自身の過ごした2か月以上に及ぶ生活の体験と感想を綴ったものである。

Ⅱ 治療法・感染防止策

1 背景

新型コロナウイルス感染症の治療法と感染防止策については、現場からのフィードバックを受けつつ、国家衛生健康委員会が診療ガイドライン、予防管理ガイドライン等を発表、更新していた 。

2 所蔵資料

公式発表された上掲のガイドラインのほか、医療現場や日常生活から得られた知見をまとめた医療従事者向け、一般向けの書籍も刊行されている。

『新冠肺炎防治精要』(仮訳:新型コロナウイルス感染症の予防治療要旨)【SC141-C8】と『新冠肺炎病人护理与管理』(仮訳:新型コロナウイルス感染症患者の看護と管理)【SC141-C9】は、PCR検査の意義、レムデシビル、アビガン等の治療薬の効果、ECMOの使い方、院内消毒の注意点、医療関係者の防護措置等、数多くのトピックを設けて解説している。

『新冠肺炎疫情防控知识 : 社区版』(仮訳:新型コロナウイルス感染症の流行の予防対策に関する知識 : コミュニティ版 )【EG244-C18】はコミュニティ生活における一般市民の予防策、『老年人新型冠状病毒肺炎防护手册 : 大字版』(仮訳:高齢者新型コロナウイルス感染症予防ハンドブック)【EG244-C28】は、高齢者向けの感染予防策を紹介している。

また、『新型冠状病毒肺炎疫情公众心理援助操作手册』(仮訳:新型コロナウイルス感染症流行下における大衆への心理支援ハンドブック)【SC192-C3】、『新型冠状病毒肺炎心理干预指南』(仮訳:新型コロナウイルス感染症下の心理学的介入ガイド)【EG244-C23】は、感染症の治療や長期にわたるロックダウン措置など、非日常的な経験によって心の不調を訴える人々を支援する医療従事者やカウンセラーを対象に、メンタルケアの方法などを紹介している。

Ⅲ 社会への影響分析

1 背景

新型コロナウイルス感染症への対策は、医療現場での治療や、前述の仮設病院、臨時医療施設の開設にとどまらない。航空券、鉄道乗車券の払い戻し、旧正月連休の延長、料金滞納者への電気供給の維持等の施策が迅速に導入され、様々な臨時予算と経費が投入される等の支援が行われた。感染拡大地域に十分な物資を供給できるよう、税関における医療物資の通関手続きの簡素化が実施されるなど、政府により医療物資の生産と流通が調整されていた。

2 所蔵資料

『依法抗疫 : 新冠肺炎法律热点160问』(仮訳:法に基づいて疫病に対抗する : 新型コロナウイルス感染症に関する法律の注目問答160問)【AC9-311-C342】、『全民防控新冠肺炎法律导读』(仮訳:新型コロナウイルス感染症予防管理に関する国民向けの法律案内)【AC9-451-C108】は、隔離政策、交通規制、物価統制、雇用の保護など、新型コロナウイルス感染症の流行下で起こりうる法的な問題を取り上げ、弁護士等の専門家による解説を行っている。

『新冠肺炎疫情的行业影响及对策分析』(仮訳:新型コロナウイルス感染症の各業界における影響及びその対策の分析)【DC157-C663】は、各業界の視点から感染症の流行による影響を分析し、ポスト・コロナを意識し、政府に対して業界における難題解決に向けた政策を提言するとともに、経営者に向けて業界の現状を紹介している。漢方薬や健康診断などの医療関連業界、自動車産業をはじめとする製造業、クルーズ客船、観光業など人的接触が必要とされる諸産業に注目するほか、スマートシティやコンサルティング、会計監査、企業財務、決済などの業界における新しいデジタル技術の活用事例も紹介している。

おわりに

以上、中国における新型コロナウイルス感染症に関する、アジア情報室所蔵中国語資料の一部を紹介した。アジア情報室ではこれ以外も含め、2021年10月時点で約40点の関連資料を所蔵している。国立国会図書館オンライン の「詳細検索」画面で「分類」に「EG244」又は「SC141」、「本文の言語コード」又は「原文の言語コード」に「chi」と入力し、出版年を「2020~」と指定すると、新型コロナウイルス感染症に関する資料を検索できる。さらに、次のページでも一覧の形で所蔵資料を紹介しているので参照されたい。

(なかやま まさよし)


[1] 中国の新型コロナウイルス感染症への対応に対する当館の事実認定や評価を意味するものではない。

[2] 国家衛生健康委員会は、中華人民共和国国務院に所属する、国民衛生と健康を担当する機関。前身は衛生省。

[3] 前掲の日本語版のほか、英語版、フランス語版、ロシア語版、スペイン語版やドイツ語版も発行された。日本語版の第2集は当館未所蔵。

[4] 旧衛生省の下で設立された社会団体で、衛生行政組織内と衛生健康業界での思想宣伝を担当している。

[5] 2021年11月16日現在、既に廃止された旧版も一部を除き国家衛生健康委員会のウェブサイトに掲載されており、現行版との比較も可能である。

[6] https://ndlonline.ndl.go.jp/

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