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中国の科学技術政策を調べる(レファレンス事例・ツール紹介24) :アジア情報室通報 19巻4号

濱川 今日子(国立国会図書館関西館アジア情報課)

中国における科学技術の発展は目覚ましく、研究開発(R&D)費、特許出願数・登録数、科学技術分野の論文数などの増加について、多くのメディアでも取り上げられています。

本稿では、「中国における科学技術分野の動向を知りたい。特に、その背景にある政策について調べたい」というお問い合わせを例に、調べ方の一例と参考になるツールをご紹介します。

*特に注記のない限り、紹介する情報源は日本語です。【 】内は国立国会図書館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2021年11月5日です。

1.概要をつかむ

中国の科学技術に関する情報は非常に多く存在し、調査の対象が十分に絞り込めていない場合などには、まず年鑑などでテーマの概要をつかむのがおすすめです。また、中国のように注目度が高い国であれば、国際的な調査報告にも有用な情報が掲載されていることが多いようです。

  • 中国研究所 編『中国年鑑』(中国研究所 1985-)【Z41-119】
     政治経済からポップカルチャー、考古・文物まで、中国事情を幅広く知ることができる総合年鑑です。大きく「特集」「動向」「要覧」「資料」に分かれ、「動向」の中に「科学技術」が立項されています。2019年の動向をまとめた2020年版では、研究開発費の増加、研究の量から質への転換、宇宙開発事業の動向などについて解説されています。
  • 中华人民共和国年鉴编辑部 编『中华人民共和国年鉴(中華人民共和国年鑑)』(中华人民共和国年鉴社 1997-)【Z42-AC40】
     様々な分野について、中国の1年間の動きをまとめた中国語の総合年鑑で、各国家機関が担当分野の執筆を担っています。「科学技术(科学技術)」の項目は、主に自然科学を扱っており、大きく「总类(総類)」と「科技工作及成果(科学技術事業及び成果)」に分かれます。前者は、その年に制定された関連法令、政策文書、10大ニュースなどを収録しています。後者は、中国科学院[1]、中国工程院[2]及び中国科学技術協会[3]の事業内容や、国内の大学や研究機関による重要な研究成果をまとめています。
  • 『科学技術指標 = Japanese science and technology indicators 2021』[4](文部科学省科学技術・学術政策研究所科学技術予測・政策基盤調査研究センター 2021.8)【M42-M73】
     日本及び中国を含む諸外国の科学技術活動の状況を、研究開発費、研究開発人材、高等教育と科学技術人材、研究開発のアウトプット、科学技術とイノベーションの5分野に分けて、約160の指標を用いて比較分析しています。
  • 『主要国の研究開発戦略 = R&D strategy in major countries : 研究開発の俯瞰報告書 2021年』(科学技術振興機構研究開発戦略センター 2021.3)【M51-M11】
     日本や中国を含む7つの国・地域の科学技術イノベーションについて、関連する組織と政策立案体制、基本政策、推進基盤及び各科学技術分野の動向、新型コロナ対策、研究開発費や人材などを国別にとりまとめた資料です。
    巻頭のエグゼクティブサマリーでは、各国の基本政策の体系、重要政策文書、科学技術政策の基本方針、総研究開発投資目標などが一覧化されており、それぞれの特徴を把握・比較することができます。
  • 2.詳細を調べる

    概要をつかんだ後は、専門書や雑誌記事などで、テーマの詳細を調べます。以下では、中国の科学技術政策に関する当館の所蔵資料をご紹介します。

  • 科学技術振興機構中国総合研究・さくらサイエンスセンター 編集『中国科学技術概況 2020』(科学技術振興機構中国総合研究・さくらサイエンスセンター [2020])【M45-M16】
     最近5年~40年の中国における科学技術の発展動向を数値で把握することができる統計集です。研究開発費、研究者数、論文数、特許出願・登録数などに関する主要統計70、科学技術政策関連統計33、高等教育・人材育成政策に関する統計29を収録しています。各統計には、簡潔な解説とデータの出典を付しています。
  • 科学技術振興機構中国総合研究・さくらサイエンスセンター 編集『中国の科学技術の現状と動向 2019』(科学技術振興機構中国総合研究・さくらサイエンスセンター 2019.3)【M45-M6】
     第1編では、中華人民共和国成立以来の科学技術政策の沿革と現状を総括し、「国家科学技術イノベーション第13次5カ年規画綱要」「国家イノベーション駆動発展戦略綱要」「中国製造2025」について、それぞれの計画が掲げる目標や内容を紹介しています。第2編は、宇宙開発技術、原子力エネルギー開発、海洋開発、交通港湾設備、新エネルギー開発、先端生命科学技術の各分野について、近年の事業内容や成果をまとめています。
  • 张志强 主编『科技强国科技发展战略与规划研究 = Science, technology and innovation(科学技術強国における科学技術の発展戦略及び計画に関する研究)』(科学出版社 2020.1)【M45-C135】
     中国語資料です。中国と欧米諸国、日本などの科学技術政策を分野ごとに分析することによって、中国の課題を明らかにし、さらなる発展のための提言を行っています。
    分析の対象となる分野は、基礎先端融合分野、先進材料、エネルギー、生物、人口と健康及び医薬、農業、海洋、資源生態環境、情報、宇宙、重大科学技術基礎施設[5]、コンピュータ・プラットフォームであり、それぞれについて各国の重点研究内容、代表的な計画、計画の編成過程や実施組織を分析し、中国と各国の計画を比較した上で、中国への示唆と提案を行っています。
  • 陈劲 著『科技创新 : 中国未来30年强国之路 = Science, technology and innovation(科学技術イノベーション : 中国の今後30年の強国への道筋)』(中國大百科全書出版社 2020.4)【M45-C134】
     中国語資料です。4編からなり、1、2編は世界全体と米国、イギリス、ドイツ、日本、インドにおけるイノベーションの特徴、主体、環境、文化について解説しています。第3編では、2013年から2017年までのデータをもとに、国家、地域、産業の3つの側面から一人あたりのICT投入比率や就業人数に占める高学歴者の割合などの環境、研究開発経費の支出やそのGDPに占める割合といった資源、特許出願・認可件数や論文数などの成果を指数化して、中国の科学技術イノベーション能力を分析しています。第4編は、戦略思想、制度、政策の面から、中国が科学技術イノベーション強国となるための方策を論じています。
  • 杜宝贵 著『中国科技政策蓝皮书. 2020(科学技術政策藍皮書. 2020)』(科学出版社 2020.5)【AC9-441-C123】
     2017年に発表された科学技術関連の政策を統計的に分析した中国語資料です。特に中国共産党中央委員会、全国人民代表大会、国務院及び行政各部門それぞれの政策分析に力点を置いており、政策の発表時期やテーマといった形式面の分析、政策の目標、政策文書内の頻出語、政策実現手段(公共サービスの実施、税の優遇措置、アウトソーシングなど)をもとにした内容面の分析を行っています。
  • 3.最新の情報を得る

    科学技術は急速に発展しており、関連政策も矢継ぎ早に打ち出されていることから、出版物から得られる情報が最新の状況を反映しているとは限りません。最新状況を知りたい場合、新聞やインターネットなど即時性のある情報源で調査をするのも重要です。

    ここでは、中国の科学技術に関する情報を得ることができるウェブサイトをご紹介します。

  • SciencePortal China(国立研究開発法人科学技術振興機構アジア・太平洋総合研究センター[6]
    https://spc.jst.go.jp/外部サイトへのリンク
     中国の科学技術ニュースをはじめ、専門家による各分野の現状や研究動向についての報告、各種調査資料、コラムなど多様な情報を得ることができます。
     「科学技術ニュース」のページには、平日はほぼ毎日5本程度の新着記事が掲載されます。また、「科学技術」のページ[7]内の「中国の科学技術分野別状況」の項目では、ライフサイエンス、ナノテクノロジーなど9の分野について、関連政策、研究予算・人材・成果、企業の研究活動、国際研究活動をまとめ、各分野をさらに細分化して、研究開発の動向を解説しています。さらに「調査報告書」のページは、2.で取り上げた『中国科学技術概況』や『中国の科学技術の現状と動向』の各年度版など、同センター独自の各種調査報告書を収録しています。
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
    https://www.jst.go.jp/crds/index.html外部サイトへのリンク
     「【特集】海外の科学技術情報[8]」の記事一覧で「アジア(ASEANを除く)>中国」を選択すると、1.でご紹介した『主要国の研究開発戦略』のほか、同センターが実施した調査結果のうち中国に関連する資料をまとめて閲覧することができます。また、「海外記事検索(デイリーウォッチャー)」のページ[9]には、諸外国の政府機関や研究機関の発表を日本語で要約して掲載しています。国名や政策課題による絞り込み検索も可能です。
  • このほか、多くは中国語又は英語ですが、中国政府のウェブサイトにも膨大な情報が掲載されています。科学技術を所管する部門のサイトには政策の全文が掲載されることも多く、原典を確認する意味でも重要です。

    当館アジア情報室が管理するアジア関係のリンク集「AsiaLinks」の中には、中国の国家機関のウェブサイトをまとめたページ「中国 : 立法機関, 行政機関, 司法」(https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/link-chn01.php#02)がありますので、こちらもご参照ください。

    まとめ

    調査のポイントとしては以下のとおりです。

    ・まず年鑑や国際調査報告書などで概要をつかむ。

    ・次に、調査テーマに即した専門解説書や雑誌記事で詳細を確認する。

    ・最新の動向にも注意を払う。

    以上、中国の科学技術政策の調べ方をご紹介しました。このテーマについては、日本語の資料やインターネット情報も多く、情報へのアクセスが比較的容易である一方、その選別の難しさを感じることもあるかもしれません。本稿が調査の一助となれば幸いです。

    (はまかわ きょうこ)



    [1] 中国における自然科学及びハイテク分野の最高研究機関。国家の政策決定にも関与している。

    [2] 中国におけるエンジニアリング分野の最高研究機関。中国科学院と同様に、国家の政策決定にも関与している。

    [3] 科学技術者の民間団体で、学術交流と学問分野の発展を任務としている。

    [4] 各年度版も含め、インターネットでも閲覧可能。
    https://www.nistep.go.jp/research/science-and-technology-indicators-and-scientometrics/indicators外部サイトへのリンク

    [5] 重大科学技術基礎施設の概要については、以下を参照。
    「【21-039】《科学技術インフラ》中国の国家重大科学技術基礎施設について(その1)」
    https://spc.jst.go.jp/experiences/beijing/bj21_039.html外部サイトへのリンク

    [6] 同機構中国総合研究・さくらサイエンスセンターから改組改称した組織。

    [7] https://spc.jst.go.jp/sciencetech/s01/外部サイトへのリンク

    [8] https://www.jst.go.jp/crds/column/worldmap/index.html外部サイトへのリンク

    [9] https://crds.jst.go.jp/dw/外部サイトへのリンク

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