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平成16年度アジア情報研修を終了して: アジア情報室通報第3巻第1号

アジア情報室通報 第3巻第1号(2005年3月)

平成17 年1 月27 日(木)、28 日(金)に昨年度に引続き第3回目のアジア情報研修を実施した。今年度は共通テーマを「アジア研究の動向と情報ニーズ:図書館の対応と情報資源の共有」とした。

1.受講者について

受講者の内訳は、以下の通りである。

受講者の内訳
  近畿 首都圏 中部
北陸
九州 合計
大学図書館 12 3 1 1 17
公共図書館 2 2 1   5
専門図書館他 1       1
合計 15 5 2 1 23

2.研修内容

以下に、懇談会、アジア情報室見学を除く科目について、その概要を紹介する。

■研修1日目

(1)「「地域研究コンソーシアム」設立の背景-研究とその基盤としての情報資源について」(講師:押川文子国立民族学博物館地域研究企画交流センター長)

地域研究に関わる研究機関、大学院の研究科、COE プログラム、地域で展開しているNGO、NPO を含めた組織で作っている地域研究コンソーシアムでは、その地域研究情報の共有化に取り組んでいる。課題として、(1)資料を系統的かつ継続的に集めるには研究者主導ではなく、図書館員が収集のイニシアチブをとることが必要であり、そのためには学識をもった専門職としての図書館員の地位を向上させ組織内での発言権を保証することが必要であること、(2)コンソーシアムの連携を深めるためには、各機関の予算の使い方など、実質的な情報交換が必要なこと、(3)公開性に関連しては著作権が大きな問題であるが、図書館・研究機関が個々に取り組むのではなく、大学の法学部などとタイアップしつつ、地域研究者、資料担当者、情報学研究者が協力し、ノウハウを共有することが必要であるという3点が挙げられた。

特に(1)の課題に対応するため、コンソーシアムでは、研究者・図書館員の双方が、情報資源の収集と共有に関する歴史と現状を確認し、地域研究の基盤となる情報資源の共有化の方向性を検討する組織として「情報共有化研究会」を2004年12月に設けた。この研究会には、コンソーシアムの理事会メンバーもオブザーバーとして出席し、検討内容が理事会に反映される仕組みとなっている。

専門性を備えた図書館員による組織的・系統的、そして持続的な情報資源の収集が強調された。

(2)「現代中国研究の動向-現代中国学会の動向を中心に」(講師:佐々木信彰大阪市立大学大学院経済学研究科教授)

巻頭記事を参照

(3)「情報ニーズ把握の試み-アジア経済研究所における取組み」(講師:重城忠純 日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館長)

A)定点観測ネットワーク、B)図書館利用者アンケート、C)調査研究懇談会、D)業績評価委員会を用いて研究ニーズを把握するよう努めている。A)調査対象は、民間企業、公的機関、途上国関連の学会、言論界・国民一般の4ブロックに分けて、大体700~800 機関・人を定点にしてアンケート調査を平成15 年6 月~7月に実施した。項目は①アジ研およびその出版物の認知度、②期待する研究領域、分野、スタイル、③重点的に取り組む地域、④期待する研究分野テーマ、⑤その他であり、①の認知度は高かった。②は圧倒的に地域研究、カレント性を持ったものに対する期待が大きい。③地域はアジアが40%、中東は20%だが、これはイラク戦争の影響であろう。アジア地域では中国・台湾が32%、東南アジアが28%、朝鮮半島14%、南アジア16%となる。中央アジアも今回は10%でている。④研究分野・テーマは圧倒的に経済関係、2 番目に政治、3 番目は社会となる。B)は図書館業務の改善のために実施しているが、この中に研究ニーズを聞く項目が入っている。定点観測と似たような傾向を示している。テーマに環境・教育・民族問題・農業・エネルギーが入り範囲が広くなっている。ちなみに蔵書の状況は29%が経済、17%が政治であるが、分野的には幅広く収集している。C)は過去に参与顧問会、調査協議会として実施していたものを統合・再編したもので、委員の先生の顔が見えるのが特徴。A)~C)は業務の参考にするものだが、D)は対応を求められる。1993 年度から調査研究活動と研究会運営の活性化のため導入したものだが、2003 年度から対象を全事業に拡大している。この他に経済産業省、総務省の独立行政法人評価システムがあり、ここで重大な指摘ないしマイナスの評価を受けないようにする点からも、ニーズを的確に把握する必要がある。

(4)「アメリカのアジア研究と図書館」(講師:Karen T. Wei 全米アジア学会東亜図書館協会中国語資料部会長)

①北米の東アジア(中国、日本、韓国)研究のためのコレクションの発展の歴史、②東亜図書館協会(CEAL:Council on East Asian Libraries)、全米アジア学会(AAS:Association for Asian Studies)について、その歴史、組織、活動、③CEAL 中国語資料委員会(CCM:Committee on Chinese Materials)について、会員と会員機関のコレクション、協力活動とその課題、中国研究司書のプロフィール、中国研究司書に求められる能力、研修、④イリノイ大学アジア図書館について、歴史、図書館資料の選書と収集、関連分野の動向、利用者の要望の認識、利用サービス等について紹介された。

CCM に関連する活動として、中国地域研究ウエッブページ、中国マイクロフィルム新聞プロジェクト、インターネットを介したレファレンス・サービスである、東アジア図書館に聞く(AskEASL)、教育省の支援で開始された中国語、朝鮮語雑誌の目次をインターネットで提供する東アジア図書館協力WWW、北東地域における中国地方誌の分担収集や中国学術雑誌全文データベースの導入におけるコンソーシアム形成などがある。また、中国研究司書に必要とされる能力として、語学力、対象地域に対する理解、コンピュータ能力のほか、対人関係の処理能力も重要なものとして指摘された。人材育成の例として、ルース基金による中堅職員を対象とした3週間にわたる中国情報に関する研修が紹介された。

■研修2日目

(1)「大学図書館における情報発信とニーズへの対応」(講師:江川和子 東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センター 業務係長)

当センターは1999 年に今の組織に改組され、文献と造形の二つを対象とする研究・整理を進めること、アジア全体を視野に入れて活動することが大きな柱となり、データベースによる情報発信を推進することになった。データベース作成はプロジェクト体制をとり、研究者がデータベースの企画を行いセンターに申請し、委員会が採択し、予算を配分するという仕組みである。

最近の情報発信の事例は、①アジア研究情報Gateway、②東京大学東洋文化研究所(以下「東文研」)所蔵タイ語書誌データベース、③漢籍善本全文影像資料庫がある。①では、研究者等の協力を得ながら、アジア研究の最新動向、アジア研究の最新動向、アジアの図書館・公文書館の紹介、紹介文付きリンク集など、アジア研究関連情報を広く集積・紹介している。②は東文研図書室が中心になって取り組んできたもので、2005 年3 月に公開予定である。③は東文研所蔵貴重書のデジタル化事業であり、これも間もなく公開予定である。

データベースを構築し外に発信する場合、前提となるニーズを想定するというのが一般的なことだと思うが、センターでデータベース事業に携わる研究者の意識は必ずしもそうではない。研究者によっては情報発信に対するモチベーションが弱いこともあり、図書館職員は研究情報資源としてのデータベース公開の意義を伝え研究者を説得することも求められる。

頻繁な人事異動等のため、研究者の信頼を受けるに足る主題専門性を養うことは困難であるが、情報発信に主体的に取り組むために、図書館職員には調整・交渉力が必要である。

(2)「公共図書館におけるアジア情報ニーズへの対応」(講師:佐藤晋 福岡市総合図書館 国際資料専門員)

福岡市はアジア太平洋都市宣言を出すなど、アジアに目を向けることを行政の方向性としているため、「アジアマンス」「アジアフォーカス・福岡映画祭」などの事業を実施している。こうした背景下、在日外国人を含めた市民のアジアに対するニーズは、レファレンス件数の変化に現れているが、増大そして多様化している。

中国・韓国の情報ニーズが多いが、近年ではタイ、マレーシア、スリランカなどの南アジア、東南アジアの資料の要望も増えてきている。資料群では雑誌・新聞への要望が高く、在日・滞日外国人の増加を反映し、分野としては女性・家庭関係のものが多くなっているほか、経済・政治の需要も高い。旧外地での生活体験を持つ人、あるいは関係の方から、現在の場所の特定などの質問が寄せられたり、観光・ビジネスで海外に行く人も増え、地図情報に対するニーズが増えており、できるだけ詳細なものを収集するようにしている。

中国・朝鮮以外については、年度計画にしたがって書店に作成依頼したリストから選書している。中国・朝鮮・欧米言語は書評誌・紙等の他、ウェッブ情報も利用して選書をしている。雑誌・新聞の選定や、個々の資料選定の判断に困る場合は、地元の領事館・大使館、大学の研究機関・友好協会などに助言を仰ぐこともある。中国や韓国の年鑑類はできだけ現地語資料を収集し、その他のアジア地域は国連資料を含めた英語資料を活用している。この他、特色あるコレクションとして、アジア地域の教科書、映画コレクションもある。

(3)「日本におけるアジア情報資源の現状:「アジア情報関係機関ダイレクトリー」を編集して」

平成16 年度中に提供する標記ダイレクトリーの意義、収録機関、内容等を紹介した。特に統計データを利用したアジア言語資料の言語別所蔵機関一覧、所蔵数の集計結果から、国内のアジア関係情報資源の配置状況が概観された。言語別所蔵統計が利用できない機関が多いこともあり、参考データではあるが、中国語・朝鮮語資料を所蔵する機関数が多いこと、特に収録機関の所蔵総数においては、中国語資料がきわだって多いという結果が紹介された。

(4)「東南アジア刊行資料の充実に向けて」(関西館資料部アジア情報課)

①米国議会図書館(LC)による外国資料の収集、②LC の共同収集プログラム(CAP)、③現地事務所の活動、④国立国会図書館とCAP という内容で、国立国会図書館が参加しているLC ジャカルタ現地事務所のCAP について紹介した。これまでのシンガポール、マレーシア、インドネシア、ブルネイに加え、新しくタイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、フィリピンも対象とするとともに、分野も拡充、また、これまでの英語中心から現地語資料も対象とするようにした。

3.おわりに

懇談会では、館種の異なる機関の活動を知ることができた等内容が豊富であったとの評価とともに、ツール紹介等、実務にすぐ活かせる科目についての要望もあった。研修科目を系統的な組み立てにすること、また、アジア情報に同じく関心を寄せる図書館員の交流の場とすべく、今後も検討を続けていきたい。

平成16年度アジア情報研修

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