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アジア学会(AAS)・東亜図書館協会(CEAL)2005年年次総会、2005年北米日本研究図書館資料調整協議会(NCC)及び北米アジア関係図書館の実態調査-出張報告: アジア情報室通報第3巻第2号

アジア情報室通報 第3巻第2号(2005年6月)
大川 龍一(国会図書館アジア情報課)

2005年3月28日から4月3日まで米国シカゴ、ハイアット・リージェンシー・ホテル(主としてコロンバス・ホール)で行われたAAS・CEAL総会とNCC会議(Japan Information Centerで開催)及びその後のアジア関係図書館の実態調査について報告する。筆者の主なスケジュールは3月27日に米国入りした後、28日にシカゴ大学図書館見学、30日AAS・CEAL総会・分科会参加、31日CEAL分科会参加、4月1日NCC会議参加、3日米国議会図書館(以下LC)訪問、7日ハーバード・イェンチン図書館(以下イェンチン)訪問である。

CEALについては、本誌1巻3号で「北米における中国語、朝鮮語、日本語資料の現状」、3巻1号の平成16年度アジア情報研修の記事中、「アメリカのアジア研究と図書館」で、これまでも簡単に触れている。本稿は、今回参加したCEALの総会と分科会を中心に紹介を行うこととする。なお、CEALの紹介については、今年のアジア情報研修の講師を勤めたKaren T.Wei氏の発表原稿を主な情報ソースとしている。

1 米国東アジア関係団体の沿革等

1948年に「米国と海外における東洋コレクションに関する全国委員会」が学者と東アジア研究司書により設立された。1949年に同委員会は「東洋コレクションに関する合同委員会」に改組され、極東委員会(アジア学会の前身)とアメリカ図書館協会(ALA)資金援助を得ることになる。この合同委員会は1952年に一度廃止されるが、1958年に極東資料委員会が東洋資料の目録化に関する特別委員会としてALAの中に設立され、同年アジア学会(AAS)は米国図書館資料に関する委員会(CALRFE)を設立、1967年にCALRFEはAASの公式な委員会として東亜図書館委員会(CEAL)に昇格、1995年にCEALという略称はそのままに東亜図書館協会と組織名を変更して現在に至る。

アジア学会(AAS)は1941年に、the Far Easten Quarterly(現在は、the Journal of Asian Studies)の出版者として設立された、アジアに関心を持つすべての人に開かれた学術、非政治、非営利団体である。この種の団体としては世界最大であり、対象地域は東アジア、南アジア、東南アジアである。

北米日本研究図書館資料調整協議会(NCC)は1991年設立。日本研究をより効果的に支援するため 日米友好基金および国際交流基金から資金の拠出が行われている。LC、CEAL、研究図書館協会(ARL)、AAS  Northeast Asian Council(AAS  NEAC)の5団体の代表など12~19人により構成される。(CA1462:カレントアウエアネス)

2 CEAL

北米における東アジア関係図書館等にサービスを提供する組織である。現在は80以上の組織会員と300を超える個人会員を抱えている。メンバーの大半は合衆国からであるが、海外会員もいる。CEALの会員になることはAASの会員なるということであり、機関誌であるthe Journal of East Asian Librariesの購読者となるということでもある。

運営は理事会によってなされ、会長、副会長/就任前会長当選者、事務局長、財務担当、委員会議長、3名の無任所メンバーからなり、理事会は組織の活動とプログラムを決定する。主要な活動は、(1)年次総会でのプログラムの策定、(2)3年ごとの役員の選出、(3)協会メンバー組織の統計の集計、(4)the Journal of East Asian Librariesの刊行、(5)ウェブサイトの維持、(6)メーリングリストの維持である。6つの委員会(下記報告参照)はそれぞれ独自の年間計画を持ち、数年にわたるプロジェクトや種々の活動を行う。例えば今年は総会の前にシカゴ大学において技術処理委員会が二つのワークショップ(1)SCCTP(the Serials Cataloging Cooperative Training Program) Electronic Serials Cataloging Workshop (2) SCCTP Integrating Resources Cataloging Workshopを実施した。また会期間中にメンバーシップ・ディナーを開催し、会員、業者、海外からのゲストの親睦を図る。

3 会議の内容

報告の詳細はここでは紹介しきれないため、各会議で行われた報告のタイトルの紹介に留める。報告の詳細については今後CEALホームページ中の各委員会のページ、もしくは報告者の所属機関に関連情報が紹介されると思われるのでそちらを参照されたい。

http://www.sois.uwm.edu/jeong/ceal/外部サイトへのリンク

(1)総会

(1)2004年アジア部門の活動ハイライト(Hwa-Wei Lee, 米国議会図書館)(2)発展途上世界の知識保存の不安定な経済状態(Bernard F. Reilly,A Center for Research Library) (3)オーストラリアにおけるCJK蔵書構築-問題と展望(Amelia McKenzie,オーストラリア国立図書館)

(2)CEAL特別委員会報告

(1)東アジア研究のためのLCSH/NAR/SARエントリーを包括的に見直すための提案に関する委員会(Hideyuki Morimoto)(2)同領域専門家誌としてのJEALに関する特別委員会(Gail King)

(3)CEALメンバーシップ委員会報告

(1)オンライン・ダイレクトリーについて(Jim Cheng)(2) インターンシップ・ウェブログ(Rob Britt)

(4)CEAL統計委員会報告等(Vickie Doll)

(5)図書館技術委員会

(1)カリフォルニア大学における東アジアデジタル図書館の展開(Peter Zhou他)(2)中国の電子ジャーナルの比較(Jade Atwi、Jing Liu)(3)デジタル図書館の構築-e-Asiaデジタルライブラリー(オレゴン大学図書館)建設の4年間の経験(Robert Felsing)(4)中国の人文科学のためのGIS手引き(Grace Wiersma)

(6)公共サービス委員会

(1)情報リテラシーとアジア研究(Yunshan Ye)(2)ブログと日本研究コレクションの利用者(Maureen Donovan、 Yuji Tosaka)

(7)技術処理委員会

(1)HKCAN(Hong Kong Chinese Authority (Name) )の近況(Patric Lo Lingnan大学 他)、(2)カタロギングに関する問合せへの回答(3)LCのCJK関係カタロギング(Kio Kanda LC)

(8)日本資料委員会

(1)プランゲ雑誌コレクションのオンライン・インデックスの作成について(山本武利 早稲田大学、土屋礼子 大阪市立大学)、(2)日本の歴史地図へのオンラインアクセスについて(Hisayuki Ishimatsuカリフォルニア大学バークレー校)、(3)「GeNii, Kick Off!」 と題するNIIの新サービスについて(古賀崇 NII、荻原寛 NII)(4)「21世紀の日本語資料を扱う図書館員-未来、もしくは記憶」(マクヴェイ山田久仁子)

(9)中国資料委員会

(1)台湾の図書館の再創設(宋建成 NCL)、(2)東アジア図書館員のためのルース夏期講習会の報告(Hong Xu  ピッツバーグ大学)、(3)ハーバードにおける中国関係デジタルプロジェクト(James Cheng ハーバード大学)、(3)Superstar:学術図書館サービス(朱平 Superstar Digital Library)、(4)Apabi eBooks とデジタル図書館(郝思佳Founder Electric Corp)、(4)
Resources and Services from Wanfang Data
(劉定飛 Wanfang Data Corp)、(5)China Studies
e-Resources from Taiwan (郭秀姿 TudorTech System)

10韓国資料委員会

(1)オーストラリアのMonash大学図書館の韓国語資料コレクション(Jung-Sim Kim)、(2)NII/NACSIS-CATの韓国語資料プロジェクト(荻原寛 NII)、(3)2006ソウル世界図書館及び情報会議と国家組織委員会からの報告-第72回IFLA大会(Jung Dong-yol)、(4)韓国デジタル図書館概観とナショナル・アセンブリー図書館の歴史(Cho Chong-gwan NAL)、(5)KORMARCと韓国国家図書館における発展(Pak Il-sim)

(11)NCC会議

(1)電子資料委員会(DRC)の報告と情報交換セッションについて(Tomoko Steen他)(2)日本芸術カタログ(JAC)プロジェクト(グッド長橋広行 ピッツバーグ大学)(2)Multi-Volume Set(MVS)委員会報告とMVSプロジェクトの適用方法(Reiko Yoshimura他)(3)AAU/ARL/NCC日本プロジェクトのアップデートとILL/DD委員会報告(Victoria Bestor他)(4)指導者訓練プロジェクトの報告とその将来計画(Kristina Troost他)(5)日本研究情報専門家研修セミナーへの参加報告(Keiko Yokota-Carter他)(5)国立国会図書館レファレンス共同データベースついての報告(村上清子 国立国会図書館)

各委員会では図書館資料のデジタル化、インターネットによる図書館の利用が話題の中心であった。日本ではCD-ROMによる資料のデジタル化が多いのはなぜかとの北米図書館司書の質問に対して、出版関係者からは会社が未来永劫にわたり継続するとは限らない、資金回収が早いなどの回答があった。GISという地理情報サービスの進展もデジタル環境ならではの展開であった。最新技術といった方面への関心とは裏腹に、著作権処理といった制度上の問題については特に中国の全文データベースに関しては、ベンダーが大丈夫と主張するのみで、まとまった取組みについての発表はなされなかった。

CEAL会議は米国の東アジア研究司書の年に一度の同窓会のような側面もあり、当館および国際交流基金で実施している日本研究司書研修(現、日本研究情報専門家研修)に参加者したことのある当時の研修生と情報交換なども有益であった。会議参加者は中国資料関係司書の数が圧倒的であり韓国語資料委員会の参加者が中国・日本に比して少なかったのが印象的であった。会議の報告自体はすべて英語で行われるが、中国語資料委員会の報告では一部中国語での報告もあった。

4月1日からは会議とは別のフロアーを使い出版業者の展示会が開催され盛況であり、関連のラウンドテーブルも別途開催されフロアーからも熱心に質問が寄せられていた。アジア関係の出版社がまとめて一同に会するということは恐らく他ではないと思われ、貴重な情報源となっているようであった。

4 北米アジア関係図書館の実態調査

(1)米国議会図書館

アジア部レファレンスライブラリアンの伊東英一氏の業務説明及び施設の見学の後、Hwa-Wei Leeアジア部主任と歓談、アフリカ・アジア収集及び海外業務部担当者へのアジア資料の収集方法についてのヒアリングを行った。

所蔵資料はCEALの2004年6月末の統計では、中国語960,049冊、日本語1,146,859冊、朝鮮語244,389冊であり、2002年の統計と比較するとそれぞれ、138,116冊、114,652冊、28,789冊の増加となる。その他、南アジア・東南アジア諸言語資料は380,000冊、チベット語は9,000冊となり、中・日・朝のほかに南アジア、東南アジア、チベット、モンゴルのコレクションのパンフレットをそれぞれ作るなどの取組みをしている。

資料の収集はAfrican/Asian Acquisition & Overseas Operations Divisionで行い、Chinese Acquisition Section、Japanese, Korean, Southeast Asian Acquisitions Section、Overseas Office(New Delhi (India), Jakarta(Indonesia), Islamabad(Pakistan)等) で実際の収集活動を行っている。当館ではJakartaオフィスの共同収集プログラムに参加している。中東地域の収集方法など質問したが、必要であれば直接現地のオフィスに問い合わせた方が良いとのことで担当者の連絡先についての紹介を受け、さらにCairoオフィスのプログラムへの参加などの提案受けた。

(2)ハーバード・イェンチン(燕京)図書館

日本語資料担当のマクヴェイ山田久仁子氏、韓国語資料担当のChoong Nam Yoon氏、レファレンス及び東アジア電子資料担当Ellen McGill氏との懇談及び閲覧室・書庫の見学を行った。所蔵資料はCEALの2004年6月末の統計では中国語620,412冊、日本語283,958冊、朝鮮語121,202冊で、2002年末からそれぞれ、30,860冊、11,736冊、9,620冊増加している。

1928年に創設の図書館で、大学の東アジア研究図書館としては西欧最大とのこと。ハーバード・イェンチン研究所と北京の燕京大学の財政支援もあり、蔵書を拡大、当初のコレクションは中国語と日本語だけであったが、チベット語、モンゴル語、満洲語の資料が加わり、1951年には朝鮮語コレクションを加え、1973年にはベトナムを加えた。当初は人文科学に重点がおかれていたが、第2次大戦後は社会科学が増え始め、現在ではあらゆる学術分野の東アジアの資料を扱っている。

(3)シカゴ大学図書館(ジョゼフ・レーゲンシュタイン図書館)

日本語資料担当の奥泉栄三郎氏と懇談、閲覧室・書庫の見学を行った。東アジアコレクションは主に5階にある。書庫は5階と地下にあり、1987年より前がハーバード・イェンチンの分類記号を用いて地下に配置し、後がLCの分類記号を用いて5階に配置している。東アジア図書館として1936年に創設され、現在ではおよそ620,000冊の東アジアコレクションを所蔵している。CEALの2004年6月末の統計では中国語378,821冊、日本語193,079冊、朝鮮語39,893冊で、2002年末からそれぞれ8,951冊、6,408冊、4,327冊の増加している。この他にもチベット語、モンゴル語、満洲語の資料を所蔵している。

5 その他

CEALでは一部の例外的な公共図書館以外はメンバーとしていないということもあり、アジア関係の資料を所蔵している米国の公共図書館の実情を把握するため、以下の図書館を見学した。

(1)ハロルド・ワシントン図書館

シカゴ公立図書館。756,640平方フィートの図書館は1991年10月17日に開館。 7階部分に外国語資料の一部としてアジア関係資料も配置されている。一般市民を対象とする公共サービスにおけるの各国語資料のレファレンスブックを見学した。都会の公共図書館として日本と比較すると欧米諸言語の辞典類のコレクションが充実していた。日本語・中国語資料については刊行年代が古く更新がされていなかった。新刊書コーナーには日本の公共図書館ではほとんど見ることが無いヒンディー語の資料、また近年シカゴ付近に多いポーランド系移民のためにポーランド語資料が多く置かれていた。

(2)ボストン公立図書館

ボストン公立図書館は新館のいわゆる公共図書館部分と旧館(McKim Building)のリサーチ部分とに分離しており、雰囲気はまったく異なっている。この図書館ではまた、最先端のワイヤレス・インターネット・アクセスを提供しているとのことであったので、閲覧スペースでのPCの利用実態なども見学の目的であった。私物のPCを持ち込んで利用している人もいたが、1回10分程度と時間制限はあるがインターネット接続自由な端末が数台配置され、満席だったのが印象的であった。アジア関係資料は新館の中2階部分に外国語資料コレクションの一部として配置されており、中国語書籍が多く配架されていた。日本語図書もあるにはあるが、新しいものはほとんど無く、明確な選書方針は感じられなかった。ヒスパニックの資料の多さが目に付いた。

6 終わりに

あれほど多くの東アジア研究司書が米国にいるというのはやはり驚きであった。また、所蔵資料が多い図書館を選んで見学させてもらったので当然だが、日本の図書館にいるのかと錯覚するほどの資料を所蔵するシカゴ大学図書館、イェンチン図書館の書庫を実際に見ることができ、ホームページや統計だけからでは分からない実感をつかむことができた。イェンチンでは、たまたま一緒に見学をした日本の大学の先生が、その所蔵の量、また、日本で見たことの無い資料に驚き、書庫から離れられなくなってしまうという一幕もあった。

今回の出張では、今は無き当館の図書館研究所に筆者が配属されていたときに研修生として接遇した方、今年のアジア情報研修の講師を務めていただいた方など当館の研修プログラムで知り合いになれた方々などに大変お世話になった。末筆ではあるが、この場を借りてあらためて御礼をさせていただきたい。

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