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アジア情報サービスのセカンド・ステージに向けて - 開室4年を迎えるアジア情報室 : アジア情報室通報第4巻第2号

アジア情報室通報 第4巻第2号(2006年6月)
石川 武敏 (国立国会図書館アジア情報課長)

2002(平成14)年10月に開館した国立国会図書館関西館アジア情報室は、今年(2006年)の10月で開室満4年を迎える。関西という新たな土地でアジア情報サービスをスタートし、現在はサービスの枠組みができあがり、セカンド・ステージに向けて新たな一歩を踏み出す時点に立っている。今後いかにサービスの内容を充実させるかが問われているといえよう。関西館開館以来これまで積み上げてきた到達点を明らかにするとともに、今後の取組みを示すことにしたい。

1.アジア情報室の前史

現在のアジア情報室の源流は2002(平成14)年3月までの東京本館におけるアジア関係資料の閲覧サービスにあることを確認しておきたい。当館では、1948(昭和23)年の創設以来一貫してアジア資料の閲覧を行うサービスポイントを館内に設置してきた。『国立国会図書館五十年史』(国立国会図書館、1999年刊)から設置(改組)年と名称を抜粋すると以下のとおりである。

1948(昭和23)年 中国資料閲覧室

1955(昭和30)年 アジア資料閲覧室

1959(昭和34)年 アジア資料参考室

1961(昭和36)年 アジア・アフリカ資料室

1986(昭和61)年 アジア資料室

1986年の当館機構改革で誕生したアジア資料室が、現在のアジア情報室の枠組みの基礎となった。すなわち、対象地域が、東アジア(日本を除く)、東南アジア、南アジア、中東・北アフリカ、中央アジアに確定したこと、対象地域の現地語資料について選書・目録作成から保管・利用までを一貫して同一の課で行うようにしたことなどが、現在のアジア情報室に引き継がれている。アジア資料室が所管していた資料が、東京本館から関西館に移送され、現在のアジア情報室の蔵書の核となっている。また、現在のアジア情報課の業務が、東京本館でアジア資料室を運営していたアジア資料課のノウハウをさまざまな形で受け継いでいることは間違いない。

2.関西館アジア情報室のオープンから現在までの成果と課題

(ア)現在までの到達点

2002(平成14)年3月31日をもって東京本館のアジア資料室は16年(中国資料閲覧室から数えると54年)の歴史に幕を下ろした。それから半年間の準備期間を経て、2002(平成14)年10月7日に関西館アジア情報室のサービスを開始した。室の詳細については本誌創刊号(2003年3月)で紹介済みであるので、本稿では詳しく述べないが、東京本館アジア資料室におけるサービスと比較してみると、次のようになる。

まず、閲覧室については、開架資料が約1万冊から約3万冊に増加、閲覧席数が37席から82席に拡大し、ゆったりした空間で閲覧できるようになった。

コレクションを比較すると、アジア資料室閉室時のアジア言語の蔵書数は図書約6万7千冊、逐次刊行物約6,600タイトル(うち継続受入中 約2,400タイトル)であったのが、平成18年3月現在は図書約28万冊、逐次刊行物約7,400タイトル(うち継続受入中 約2,900タイトル)となり大幅に増加している。図書の増加については、上海新華書店旧蔵中国語図書約15万冊が大きく貢献している。年間図書増加数は、平成13年度までが年間5~6千冊規模であったのに対し、現在は平成16年度が約1万5千冊、平成17年度が約1万4千冊であり、2~3倍の年間収集規模となっている。

目録については、カード目録及び冊子目録しかなかった東京本館時代に対し、現在はアジア言語OPACが稼働しており、インターネットを通じて検索できるようになった。図書については中国語、朝鮮語、ベトナム語、モンゴル語、インドネシア語、マレーシア語の6言語の書誌情報が現在搭載されている。稼動当初20%台であったアジア言語図書のOPAC搭載率は遡及入力が進み現在では70%を超えている。逐次刊行物はすべてが既に入力済みである。ただし、中国語と朝鮮語についてはアジア言語OPACに、その他のアジア諸言語逐次刊行物はALA-LC方式で翻字され、NDL-OPACに入力されており若干複雑である。

平成14年10月の関西館開館とともに始まったサービスとして、アジア情報室ホームページを通じて行う情報発信型サービスがある。平成16年1月に多言語表示可能とするためにホームページをリニューアルし、現在では、情報室の概要紹介のほか、「アジア言語OPAC」「アジア情報機関ダイレクトリー」「AsiaLinks-アジア関係リンク集」「テーマ別調べ方案内(FAQ)」などのコンテンツが掲載されている。これらとNDL-OPACを組み合わせることにより、かなりのアジア情報の検索が可能になった。

国内の類縁機関との連携・協力も、アジア情報課ができてから力を入れている点である。「アジア情報研修」は平成14年度から毎年1回実施している研修で、国内各機関のアジア情報を扱う司書のレベルアップが国内全体のアジア情報サービスの発展に寄与するという目的で行っている。一方、「アジア情報関係機関懇談会」は国内のアジア情報を専門に扱う図書館等が参加する連携・協力の場であって、東京本館からの移転直前の平成13年度に第1回を行い、関西館移転後は毎年1回開催している。この懇談会において、国内のアジア関係機関の所在及び所蔵資料の概要がわかるものが必要だとの声があがり、「アジア情報機関ダイレクトリー」を作成するきっかけとなった。

このように、この4年近くの間に、東京本館アジア資料室のサービスから質的にかなり発展したものになったといえる。

(イ)課題

サービスが質的に向上したとはいえまだまだ課題は多い。第一に、地域による資料の偏りである。国内の情報需要を考えるとある程度東アジアに傾斜するのは仕方がないとしても、現在はそれ以上の偏りがある。平成18(2006)年3月現在の言語別所蔵概数(ただし、アジア言語のみ。欧文言語は含んでいない)は以下のとおりである。

平成18(2006)年3月現在の言語別所蔵概数
言語 図書 占有率 逐刊 占有率
中国語 233,000 85.80% 4,223 57.63%
朝鮮語 22,000 8.10% 2,377 32.44%
インドネシア語
マレーシア語
3,000 1.10% 161 2.20%
ペルシャ語 2,800 1.03% 70 0.96%
アラビア語 2,200 0.81% 61 0.83%
ベトナム語 2,000 0.74% 143 1.95%
タイ語 1,800 0.66% 82 1.12%
ビルマ語 1,500 0.55% 115 1.57%
トルコ語 1,000 0.37% 26 0.35%
ヒンディ語 800 0.29% 11 0.15%
モンゴル語 600 0.22% 23 0.31%
タガログ語 130 0.05% 17 0.23%
その他 720 0.27% 19 0.26%
合計 271,550 100% 7,328 100%

需要の多い中国語資料の整備を継続する一方、そのほかの言語の資料もバランスよく収集する必要がある。

第二に、利用の活性化である。東京本館時代のアジア資料室は、年間のべ1万人の利用者があった。現在のアジア情報室の直接来館者は、東京本館時代の利用者数からはほど遠い。立地条件は別にしても、東京本館であれば、戦前期の日本語文献はもちろんのこと、古典籍資料室の漢籍、憲政資料室にある戦前の政治家の文書類、地図室の外邦図など、多様な資料をアジアという切り口で利用できるという大きなメリットがあった。サービスにまだ工夫の余地がある。

第三に、書誌情報の整備である。アジア言語OPACには現在6言語の書誌情報が搭載されているが、これですべてではない。今後、トルコ語、タイ語、ヒンディ語など他の主要な言語について、搭載を図っていく必要がある。

第四に、連携協力の強化である。戦後のある時期まで、日本におけるアジア情報の需要は、アジア、特に中国の歴史・文学・哲学思想などの古典的研究が中心であり、それに対応した蔵書構成でこと足りていた。現代では、それ以外にも経済や法律、自然科学などアジア地域の研究に対する情報需要が多様化し、範囲は非常に広くなっている。ひとつの図書館ですべての需要を満たすことは不可能である。つまり、図書館同士の連携協力が不可欠になってきている。また、財政状況に起因する資料費及び職員の削減も別な側面から、連携協力の必要性を増大させている。アジア情報室だけですべての情報需要を満たすことができないのは言うまでもない。国内のアジア関係資料を扱う図書館は互いに他館と連携し、情報を共有しつつ運営しなければならない状況にあるといえよう。

3.今後の取り組み

私たちが提供するアジア情報サービスの目標は、研究者等アジア情報を求める者に対し、以下の2点を実現することである。

目標1:関西館の中でアジア情報に関する質の高い専門図書館サービスを行う。

目標2:立地を意識させない遠隔サービス、情報発信型サービスを行う。

これらの目標を達成するために、今後次のことに取り組んでいきたいと考えている。

(ア)収集の強化

(1)収集困難地域の解消

中東・北アフリカ及び中央アジアの資料については、当館ではまだ収集ルートが確立しておらず、十分な収集ができていない。現地調査を含め、収集の方法の確立のための努力をしていく。

(2)逐次刊行物の収集強化

逐次刊行物、特に学術雑誌の収集を強化する。そ理由は、第一に、アジア研究者が現地で図書を入手する機会が増え、雑誌への資料ニーズが相対的に高まっていること、第二に、逐次刊行物が遠隔複写サービスにより適した資料であるからである。

今後3年程度で現地語と欧文を含め雑誌600タイトル程度を増加させる予定である。電子ジャーナルについては、平成17年度に中国学術雑誌全文データベース(CAJ)と中国重要新聞データベース(CCND)を導入したが、他の地域の電子ジャーナルについても、今後導入を検討し学術情報の充実を図っていくつもりである。また、新聞については、「一国一紙以上」を目標に収集に努めているところであるが、中央アジア、中東・北アフリカ諸国など手薄な地域がある。国際交換による入手なども含め、これら空白地帯を解消していく努力を行う。

(3)アジア関係日本語資料のさらなる充実<

東京本館アジア資料室の時代には、納本による膨大な日本語蔵書を背景にサービスを行っていた。関西館にアジア情報室を設置するにあたり、日本語資料の資料整備を行ってきたが、納本と異なり網羅的な収集は難しい。アジア情報室を利用するのは研究者ばかりではない。一般公衆が簡単にアジアの情報を得られる日本語の図書、雑誌も含め充実を図る。

(4)国内刊行アジア言語資料

国際化にともない、日本国内に在留するアジア人が増加している。彼らを対象に日本で発行される情報誌、ミニコミ誌もかなりの数が発行されていると思われるが、収集されているものはごく一部である。発行状況を調査し、収集率を高めていく。

(5)アジア地域刊行日本関係資料

外国で刊行された日本に関する資料を収集することは当館の重要な役割である。積極的に収集する。

(イ)情報発信の強化

内外への情報発信の基盤として、アジア情報室ホームページを運営している。情報発信型サービスの発展に資するため、特に次の三つのコンテンツに力を入れる。

(1)アジア言語OPAC

http://asiaopac.ndl.go.jp/外部サイトへのリンク

平成14(2002)年10月に中国語資料と朝鮮語資料の書誌情報公開から開始し、平成16年度にベトナム語図書、平成17年度にモンゴル語、インドネシア語、マレーシア語図書の書誌情報を公開した。平成18年度はアラビア語、ペルシャ語図書について公開する予定であり、今後3年程度で、残りの主要な言語(トルコ語、タイ語、ヒンディー語等)について公開する予定である。ただし、ビルマ語等ユニコードに対応していない文字の言語については、公開時期は未定である。

課題は当館のOPACがNDL-OPACとアジア言語OPACとの二本立てになっているために検索が不便になっている点である。アジア情報室で所管する資料に限っても、アジア言語図書はアジア言語OPAC、アジア言語逐次刊行物は中国語と朝鮮語がアジア言語OPAC、その他の言語のものがNDL-OPAC、日本語と欧文の図書・逐次刊行物がNDL-OPACと複雑に分かれている。今すぐ解決することは困難であるが、検索の便を改善する必要がある。

(2)AsiaLinks-アジア関係リンク集

http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/link/asia_05link.html

「AsiaLinks-アジア関係リンク集」とはアジアに関する地域別、国別リンク集である。6,000を超えるインターネット・サイトへリンクしている包括的情報源である。職員がレファレンスサービス等に有用なサイトを見つけて平成14(2002)年度から地道に築き上げたもので、平成17(2005)年に6,000サイトを超えた。

構成は、「国内類縁機関」「他機関オンライン目録(OPAC)リンク集」「中国語圏データベース」及び「地域別・国別リンク集」からなる。

AsiaLinksの「地域別・国別リンク集」をたどっていけば、その国の基本的な情報にたどりつくことができる。また、英語サイトも多数リンクされているので、現地語を知らなくともある程度の情報を簡単に入手できる便利さがある。

アジア情報の調査のためには有用なコンテンツであると自負しているが、まだまだ知名度が低く、アクセス数が思うように伸びていない。積極的に広報して広く利用されるようにしたい。今後は、サイトに対する解題を付すこと、地域横断的に特定主題のサイトを検索できるようにするなどの改善を図る予定である。

(3)アジア情報機関ダイレクトリー

http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/directory/index.html

「アジア情報機関ダイレクトリー」は、アジア言語資料またはアジア関連資料を所蔵する国内の機関について、その所蔵資料の内容およびその機関の概要・利用方法等を記述し集積したものである。これは前述したように、アジア情報関係機関懇談会でその必要性が確認され、アジア情報資源の利用促進及び関係機関間の情報共有を図るための基礎ツールとして当館が作成したものである。

現在までに72機関の協力を得て作成・運営を進めてきたが、網羅しているとはいえないので、今後掲載機関を拡大し、国内のアジア資料を所蔵している機関については、特殊コレクションを含めて網羅的に把握できるものにする予定である。

(ウ)そのほかの取組み

(1)利用の促進

広報活動に力を入れるとともに、アジア情報需要の中心である東京本館とも連携を密にして、国立国会図書館としての情報提供を行っていくつもりである。

また、遠方の方に対しては、電話レファレンスサービスの利用も促進したい。東京本館の代表電話(03-3581-2331)からのアクセスのほか、アジア情報室直通のレファレンス電話(0774-98-1390)も利用できるようにしている。

(2)連携協力の促進

アジア情報サービスにおける連携協力の重要性については前述したとおりである。「アジア情報研修」はこれまでアジア情報に特化した機関を中心に参加を呼びかけてきた。しかし、現在のように、アジア情報の国内の需要が高まると、アジア情報専門の図書館でなくとも、アジア情報を扱う機会が増えている。そのような図書館の司書のためにも、広く参加を呼びかける予定である。

また、「アジア情報機関懇談会」については、これまで十数機関に参加を限定して開催してきたが、同様に連携協力の輪を広げるべく、参加館を増加させる予定である。

アジア情報室書架

4.結び

平成14年4月から同年10月の開館を経て丸4年間、職員は無我夢中で新情報室を軌道に乗せるべく努力してきた。この間、情報技術の発展はとどまるところを知らず、一方で日本国内におけるアジア情報の重要性はますます増大している。私たちは業務を見直しつつ時代に追いつこうとしているところである。今後私たちが予想もしない技術革新、国際情勢の変化等があればさらに軌道修正が必要になる。広い視野を持ちつつ「役に立つアジア情報室」を目指して、職員一同、力を合わせていくつもりである。アジア情報室、または国立国会図書館だけの力では解決できないことも当然予想される。他機関からの協力も仰ぎながら、日本におけるアジア情報サービスの拠点として活動していきたいと考える。

1937年に延安で中国共産党により創設された国営の図書出版・販売機構新華書店の上海分店が保管していた書店見本用書籍のコレクションである。1930年代から90年代初めまでの上海を中心とする地域の代表的出版物を多く含み、内容は、文芸書、マルクス・エンゲルス、レーニン、毛沢東などの著作集、啓蒙書、実用書、古典、連環画(絵物語の一種)など多岐にわたる。詳細はアジア情報室ホームページのコレクション紹介http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/collection/shinka.htmlを参照のこと。

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