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[2016年11月30日追記]
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最新情報については、以下の情報源をご参照ください。
- 学位論文を探す:調べ方案内「学位論文の検索(韓国)」
(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-90.php) - 学術論文を探す:調べ方案内「朝鮮語の雑誌記事・論文の探し方」
(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-39.php)
調べ方案内「韓国の学術論文データベースKISSの使い方」
(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-137.php) - 新聞記事を探す:調べ方案内「韓国で発行中の新聞の当館所蔵状況およびウェブサイト一覧」
(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-87.php)
調べ方案内「韓国の新聞記事データベースKINDSの使い方」
(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-115.php) - 政府刊行物を探す:AsiaLinks「政府刊行物 : 大韓民国(韓国)・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」
(https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/gov-pub-kor.php)
はじめに
当館では、韓国に関係するレファレンスにおいて、当館所蔵資料のみならず、インターネット上の情報資源を活用することも多い。韓国では特に、国家的な次元で、情報資源のデジタル化や共同活用に取り組んでいることもあり、近年の情報環境の進展は著しい。学術論文や新聞記事までもがインターネット上で入手できる場合も少なくなく、そういった情報を活用すれば、より幅広い情報ニーズに対応することができるであろう。
そこで、本稿では、レファレンスに直接役立つ、韓国のサイトとその利用法の紹介を試みる。特に、紙媒体で発行されている資料の本文を見られるものに焦点を当て、資料の種類ごとに、具体的な事例を交えつつ説明する。本稿で紹介するサイトは、基本的に無料で利用できるものである。
1 学術論文・学位論文
韓国の学術論文や学位論文に関する問い合わせは多い。しかし、当館では主要な学術誌の収集に努めてはいるものの、所蔵している学術誌の数は、学術誌全体から見れば、非常に限られたものである。学位論文も所蔵していない。結果的に、韓国での所蔵機関を案内することが多くなる。
しかし、当館で所蔵していない論文についても、インターネット上で見る方法がある。ここで紹介するRISSとKSI学術論文情報は、論文を探す際に活用すべきサイトである。
(1) RISS
RISS(Research Information Service System) (http://www.riss4u.net/)は、韓国教育学術情報院(Korea Education & Research Information Service, KERIS)が、学術情報源のデジタル化や国内外の学術情報の共同活用体制構築のために取り組んでいるサービスである。
RISSでは、国内学術誌論文、海外学術誌論文、学位論文、単行本、学術誌を検索でき、その資料を所蔵している大学図書館についても調べることができる。このうち、国内学術誌論文については、国内の学会及び大学附設の研究所が発行する学術誌の論文約93万件、学位論文については、国内140余大学の碩士(日本の修士に相当)、博士学位論文約38万件が収録されている。なお、本文を閲覧するには、無料の会員登録が必要である。
検索は、タイトル、著者、出版者のほか、抄録や目次に含まれている語でも可能である。ヒットした論文に、「다운로드」(ダウンロード)と表示されている場合、その論文が無料で見られることを意味し、そこをクリックすれば、PDF形式で全文が表示される。また、「원문구매」(原文購買)と表示されている場合には、その論文は有料だが、そこをクリックすると、「유료논문 장바구니」(有料論文買いものかご)の画面が開く。そこで該当論文に表示されている「미리보기」(プレビュー)をクリックすると、PDF形式で、最初の2ページだけ見られる。
なお、RISSでは、論文に英文タイトルが付されていれば、それで検索できる。例えば、"A social history of the collection building in public library in pusan"という英文タイトルで探したい場合、RISSにsocial, history, collection等の語を入力して検索すれば、釜山大学の博士論文である김영기「부산지역 공공도서관 장서형성의 사회사 : 한국사회 지식흐름의 문제와 관련하여」 (1999)がヒットする。書誌事項が分かるのみならず、「다운로드」の表示があるため、無料で全文を見ることが可能である。
(2) KSI学術論文情報
KSI学術論文情報は、韓国学術情報(Korean Studies Information, KSI)が提供する学術論文データベースである。韓国国内1200余の学会及び研究所が発行する学会誌及び研究刊行物に掲載された約80万件の論文を収録している。
機関利用者用にはKISS (Korean studies Information Service System) (http://kiss.kstudy.com/)があるが、個人用も提供されている(http://www.papersearch.net/
)。ここでは後者を例にとって説明する。
このサイトは、検索だけならば、非会員でも可能であるが、本文を見るには無料の会員登録が必要である。論文ごとに課金される方式で、具体的には、現金ポイントをあらかじめ購入しておき、論文購入時には、購入ポイントが差し引かれる代わりに、本文のダウンロードが可能になる、という流れである。しかし、すべてが有料というわけではなく、中には無料で見られる論文もある。
まず、論文を検索する。検索方法には、「간행물 검색」(刊行物検索)、「분야별검색」(分野別検索)、「상세검색」(詳細検索)がある。刊行物検索は、まず、発行機関(学会など)を選び、その上で、その機関が発行する学術誌、巻号、論文を順に選択するという方法である。分野別検索は、各学問分野を選んだ後、それに関する学会を選び、それ以降は刊行物検索と同じ方法である。詳細検索はタイトル、著者、キーワード、発行機関、出版年で検索するという方法である。
検索結果には、論文ごとに、その論文をダウンロードした場合、いくらかかるかが、韓国ウォンで表示される。しかし、金額の代わりに「무료입니다.」(無料です)の表示があるものについては、無料で見ることが可能である。
その場合、「논문보기」(論文を見る)をクリックすると、PDF形式で全文が表示される。また、検索結果に金額が表示されている有料の論文についても、「미리보기」をクリックすると、RISSと同様、PDF形式で、最初の2ページだけ、見ることができる。英文タイトルで検索できるのもRISSと同様である。
(3) 各学会のホームページ
当然ながら、RISSやKSIで書誌事項がヒットしても、全文を見られない論文もある。そのような場合でも、学会誌などについては、各学会のホームページで全文が公開されている場合があり、そこで論文を見ることが可能である。
例えば、공우석「한라산 고산식물의 분포 특성」『대한지리학회지』33(2), 1998.6, pp.191-208.という論文は、RISSでもKSIでもヒットするが、全文は見られず、前述した「미리보기」をクリックすることによって、最初の2ページを見られるにすぎない。しかし、この論文が掲載されている『대한지리학회지』(大韓地理学会誌)を発行している大韓地理学会のホームページ(http://www.kgeography.or.kr/)にアクセスし、トップページから「간행물」(刊行物)―「학회지」(学会誌)を選択すると、『大韓地理学会誌』のバックナンバーの一覧が表示される。そこで、該当巻号を選択すると、その巻号に掲載された論文の一覧が表示され、見たい論文をクリックすると、PDF形式で全文が表示される(この論文のアドレスはhttp://kgeography.or.kr/publishing/journal/33/03/14.pdf)。
また、홍종학「한미 비교를 통한 신용카드 문제의 분석」『응용경제』6(1), 2004.6, pp.165-207.という論文は、RISSではヒットしない。KSIではヒットするが、全文は見られない。この論文についても、掲載誌の『응용경제』(応用経済)を発行している韓国応用経済学会のホームページ(http://www.kaae.or.kr/)のトップページで、「간행물」(刊行物)を選択すると、『応用経済』のバックナンバーが表示され、該当する巻号の該当する論文をクリックすると、PDF形式で全文が表示される(この論文のアドレスはhttp://www.kaae.or. kr/images/6-1/617_hjh.PDF)。
なお、学術論文については、RISSやKSIの他に、韓国の国立中央図書館(http://www.nl.go.kr/search/web_search/search/search_brief.php?search_mode=0)や国会図書館(http://www.nanet.go.kr/dl/SearchIndex.php
)のOPAC、さらに、会員制だが、ヌリメディアが教保文庫とともに運営するDBpia(http://www.dbpia.co.kr/
)などでも検索が可能なので、RISSやKSIでヒットしなかった場合には、
これらで書誌事項を確認し、当該論文の掲載誌を発行している学会のホームページを確認するという方法もある。
2 新聞記事
当館では、韓国で発行されている新聞について、三大紙(『朝鮮日報』、『東亜日報』、『中央日報』)をはじめとする全国紙はもちろん、各道や広域市で発行されている地方紙まで、計30紙を所蔵している。韓国の新聞に関する当館所蔵資料の紹介等は「レファレンスツール紹介② 韓国の新聞-検索法と関連資料-」(本誌3巻4号, 2005.12, p.19)を参照いただきたい。
新聞を、紙面の形式で見たければ、複写依頼をしていただく必要があるが、記事を読むだけであれば、インターネット上で見られる場合が多い。特に、1990年以降の新聞については、これから述べるKINDSで、検索から本文の閲覧まで、ほとんど可能である。
(1) KINDS
KINDS (Korea Integrated News Database System) (http://www.kinds.or.kr/)は、韓国言論財団が運営する、新聞記事を横断検索できるデータベースである。
KINDSでは、中央日報を除く三大紙や、ハンギョレ、韓国日報など10紙について、1990年以降の全期間を対象として記事検索することができ、本文のテキストを見ることができる。検索は、本文や見出しに含まれている語のほか、日付や掲載面、ジャンルなどを絞って行なうことも可能である。ただし、本文のイメージが表示されるわけではないため、図表や写真等を見ることはできない。最近の新聞に掲載された図表や写真等については、各新聞社のホームページから該当記事を探したほうが、見られる可能性は高い。
日本では、オンラインで提供されている主要な新聞記事データベースは、有料のサービスであるが、韓国では、それが無料で利用できるのである。
新聞記事というのは、過去から日々蓄積されている膨大な情報源であり、それを無料で検索できるメリットは大きい。無料であるからこそ、単に新聞記事を探すという目的で使用するのみならず、手がかりの少ない情報について、何らかの糸口をつかむために、GoogleやNAVERなどの検索エンジンによって、ウェブ上の情報を検索するのと同じような感覚で使うこともできよう。
KINDSではこのほか、京郷新聞、東亜日報、ソウル新聞(大韓毎日)、韓国日報については、1960年から1989年までの新聞紙面を、日付を指定して、PDF形式でイメージを見ることができる。地方紙やインターネット新聞なども検索できるが、記事の表示については、検索結果から、各新聞社のホームページ内の該当記事のページにリンクするという方式をとっている。
(2) 各新聞社のホームページ
新聞社のホームページから、その記事検索ができるものも多い。
例えば、朝鮮日報の記事検索サイト(http://srchdb1.chosun.com/pdf/i_service/)では、無料で、記事を日付やキーワードで検索でき、1990年以降については、本文のテキストを見ることができる。PDF形式での紙面のイメージを見るには、有料の会員登録が必要である。1945年から1989年までについては、PDF形式のみの提供であり、これも有料のサービスである。
KINDSで検索できない中央日報については、「Joins検索」(http://find.joins.com/)で、日付を選択すると、その日の掲載記事の見出しが表示される。最近1年分の記事本文のテキストを見るところまでは無料でできるが、それ以前の記事や、PDF形式での紙面のイメージを見るには、有料の会員登録が必要となっている。
なお、三大紙及び聯合ニュース、釜山日報は日本語のホームページを持っており、主な記事は日本語で見ることができる。主な新聞社のホームページへは、アジア情報室ホームページの「AsiaLinks-アジア関係リンク集-」にリンクが張ってある(http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/link/east/link_kor.html#kor12)。
3 政府刊行物
政府機関が発行している統計や白書類は、重要な情報源であり、当館でも網羅的な収集に努めている。こういった資料についても、インターネット上で見る方法がある。
(1) 国家記録院のホームページ
国家記録院のホームページ(http://www.archives.go.kr/)では、政府刊行物など、政府関係の文書が検索できる。
トップページで「기록물검색」(記録物検索)をクリックし、「기록물종류별DB」(記録物種類別データベース)を選択する。さらにその中の「정부간행물」(政府刊行物)を選択すると、キーワード、発行機関、発行年度などから検索できるようになっている。キーワードに具体的な資料名(「○○白書」等)を入れて検索すれば、同じ資料が数年分表示され、過去の刊行物をさかのぼって調べる際に、便利である。
しかし、国家記録院のホームページは、本稿執筆中に、大幅に改編された。以前とは異なって、ログインが必要となり、専用のビューアをダウンロードしなければ、本文の閲覧ができなくなった。検索結果から見たい資料を選択し、「원문보기」(原文を見る)の表示をクリックするという操作を行なえばよいものと思われるが、筆者のPCでは、設定上の問題からか、本文が表示されなかったので、詳細は不明である。
(2) 各行政機関のホームページ
政府刊行物の場合、各行政機関のホームページで、その機関が発行している刊行物を見られる場合が多い。
例えば、国税庁が発行している『国税統計年報』を見るには、国税庁のホームページ(http://www.nta.go.kr/)で「국세정보 서비스」(国税情報サービス)をクリックする。「자료실」(資料室)の中の「국세통계」(国税統計)を選ぶと、「국세통계 연보」(国税統計年報)のページが開く。「총괄」(総括)、「직접국세」(直接国税)、「간접국세」(間接国税)、「국제조세」(国際租税)、「징수」(徴収)といった、紙媒体の『国税統計年報』の章立てと同じ項目が選択でき、さらに年度も選べるようになっている。下位の項目を選択すると、その項目についての統計がエクセルやPDFなどの形式で表示される。内容は紙媒体と全く同じものである。
また、統一部が発行している『統一白書』を見るには、統一部のホームページ(http://www.unikorea.go.kr/)から、「자료실」(資料室)-「통일부발간물」(統一部発刊物)と選択すると、いくつかの資料が表示され、その中に、「통일백서」(統一白書)もある。2006年版はzip形式で1冊をまるごとダウンロードできるようになっており、PDF形式で表示される。
このような形で、多くの行政機関が、その機関が発行している刊行物をホームページ上で公開しているため、政府刊行物については、そこを探せば見つかる場合が多いであろう。各行政機関のホームページへは、アジア情報室ホームページの「AsiaLinks-アジア関係リンク集-」にリンクが張ってある(http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/link/east/link_kor.html#kor02)。
おわりに
これまで述べてきたように、学術論文・学位論文、新聞記事、政府刊行物それぞれについて、インターネット上で本文を見るには、いずれも、検索及び本文の閲覧ができるような、核となるサイトがある一方で、各資料の発行機関のホームページでも本文が見られる場合がある、という状況になっている。どちらか一方でしか見られない場合もあるので、インターネット上でこれらの本文を見ようとすれば、両方にアクセスして確認することが必要であろう。
図書館員として、所蔵資料の充実に努めることは当然であるが、インターネットから得られる情報が増大する今日、媒体の種類にこだわらず、あらゆる情報のガイド役としての技能を向上させることが、重要な課題であると思われる。
(すべてのインターネットのアドレスのlast access:2006.8.7)