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海外韓国学司書ワークショップ」と「RISS INTERNATIONAL」説明会への参加―出張報告 : アジア情報室通報第5巻第1号

アジア情報室通報 第5巻第1号(2007年3月)
田中福太郎・藤原夏人

1. はじめに

私たちは2006年10月29日から11月6日にかけて、韓国国立中央図書館(以下NLK)主催の「海外韓国学司書ワークショップ」と、韓国教育学術情報院(以下KERIS)が同ワークショップに合わせて開催した「RISS INTERNATIONAL」説明会に、参加する機会を得た。

10月29日から11月5日までの日程で開催された同ワークショップは、今回が2回目で、私たちを含め10か国から19名が参加した。海外の機関で韓国学関連資料を扱っている司書を、資料の保存・管理と情報資源の活用の両面からサポートすることを目的とするものである。また11月6日に開催された「RISS INTERNATIONAL」説明会では、KERISが2007年6月から海外の機関用に提供を予定している新サービスについての説明と、テスト用画面を用いてのデモンストレーションが行われた。以下、それらの概要を紹介する。

2. 海外韓国学司書ワークショップ

以下では、会場ごとに述べることとする。

(1)国立中央図書館(10月30日-10月31日)

○講義

・「韓国学関連情報概観」(講師 : 釜山大教授 イスサン)および「主要情報源探索および活用」(講師 : 釜山大講師 チョヨンワン)

「韓国学関連情報概観」では、総合、政治・行政・法律、経済・経営、産業・技術、社会・文化、歴史、文献情報の7分野について、無料または有料のウェブ情報源26サイトを概観した。行政機関が作成した情報を提供する「国家知識ポータル」、新聞記事が無料で見られる「韓国言論財団KINDS」、各種報道写真が検索できる「朝鮮日報フォトバンク」、判例・法令の検索が可能な「大法院総合法律情報」、各種会社情報が得られる「金融監督院電子公示システム」、商品情報や企業の取引情報が検索できる「大韓商工会議所KORCHAMBIZ」、登録制だが信頼性の高い資料が得られ、講師もよく利用するという「サムスン経済研究所(SERI)」、大学図書館の資料総合目録で、記事検索もできるKERISの「RISS」、有料学術情報データベースである「韓国学術情報(KISS)」などが取り上げられた。「主要情報源探索および活用」では、「韓国学関連情報概観」で取り上げられたウェブ情報源のサイトを活用し、実際に資料の検索を行う実習形式で進められた。

・「古文献管理及び資料組織」(講師 : 国立中央図書館 イヘウン)

古文献等の名称や定義、韓国の古典籍の特徴、NLKにおける資料の管理や保存に関する概説のほか、 韓国古典籍保存協議会や韓国古典籍総合目録システムの紹介が行われた。具体的には、現在は「古書」より広い概念をもった「古文献」や「古典籍」という名称がよく使われている、NLKでは古文献の基準を1910年以前としている、保存については裏打ち等の補修作業、保存箱やマイクロフィルムの作成を行っている等の説明があった。

韓国古典籍総合目録システムについては、NLKが2004年に開発。NLKを含む42機関が加盟している韓国古典籍保存協議会の加盟機関のうち、28機関から目録データの提供を受け、2005年にスタートした経緯が述べられた。2007年からは、地方の書院や個人所蔵の資料等もデータベース化するための調査を開始する予定であり、将来は全世界における韓国の古文献を網羅したいとのことであった。

・「国立中央図書館DB現況および利用法」(講師 : 国立中央図書館 ホンヨンミ)

2000年に政府が推進した図書館情報化事業が契機となってデータベース構築が進んだが、その背景にKBSの9時ニュースで情報化死角地帯として図書館が取り上げられたという事情があったという。この講義では、NLKがOPACを通じて提供している「主要資料原文情報データベース」、「国家資料目次情報データベース」、「記事索引および抄録情報データベース」や、公共図書館の総合目録である「国家資料共同目録データベース(KOLIS-NET)」等が紹介された。そのほか、オンラインデジタル資源の収集・保存(OASIS)事業や、NLKを含む国内8機関が目録、目次、原文データの提供を行い、その統合検索が可能な「国家電子図書館」にも言及があった。

NLKが提供している原文データベースのうち、著作権法で保護されているものについては、利用にあたって、別途韓国複写伝送権管理センターと協約を結ばなければならないが、講師から、今後その窓口はNLKが引き受ける旨の発言があった。

○国立中央図書館見学

本館と資料保存館を見学した。NLKでは利用者カードにより入退館、資料の貸し出し等の手続きを行っている。専門資料室で利用する資料以外の一般的な書庫資料は1階の情報奉仕室で所蔵資料を検索し、書庫資料申請カウンターで申請を行う。情報奉仕室は夜間図書館としても利用され、資料を事前に予約しておけば、資料室閉室後の22時まで利用できる(私たちの帰国後まもなく、23時までに延長された)。なお、事前予約を館外からインターネット上で行った場合は、資料を取り置きしてくれる。古典運営室、デジタル資料室、東北アジア資料室など、専門資料室も見学したが、その中で目を引いたのが4階の主題別資料室に設置された、RFID技術を利用した資料管理システムである。無人資料利用機に利用カードと資料をかざすことで、利用者は書架区域から資料を外に持ち出すことが可能となる。例えばこのシステムを使うと、資料の利用状況を把握することができるので、利用が多い本はそのまま開架、利用がない資料は書庫に移動させたりしているとのことであった。

次に資料保存館を見学。韓国伝統文化学校、または慶州大、公州大などいくつかの大学に設置されている文化財保存の専門課程を経た職員が資料の補修を行っていた。補修に使用する材料はアメリカ製が主とのことで、燻蒸施設や脱酸処理の施設を備えているほか、資料のマイクロフィルムへのメディア変換も行う。公共図書館の資料の保存状況はさらに劣悪なので、共同保存が今後の課題であるという説明があった。

○「国立中央図書館職員との懇談会」

参加者を2つに分けてNLK職員との懇談会が行われた。私たちは、ライデン大学からの参加者とともに韓国関連サービスについて報告をした。その後の質疑応答では、アジア情報室に関することのほか、当館の司書教育や第10回日韓業務交流でも話題となったレファレンス協同データベースにおける事例の蓄積とその活用法についての質問があった。アメリカにおけるチャットレファレンスや司書研修プログラムの具体例が他の参加者から紹介されるなど、活発な意見交換が行われた。

(2)国立国語院(11月1日午前)

国立国語院は文化観光部傘下機関で、韓国の国語政策等を担当している。まず簡単な業務紹介のあと、ハングル創製に関する10分ほどのビデオを視聴し、その後「韓国の国語政策」の講義へと移った。講師は専門用語および南北朝鮮の言語の統一を担当する国語政策チームに所属するイスンジェ氏で、南北の表記やローマ字表記などについて、その統一の難しさを、具体的な事例を挙げながら話した。他の参加者から「韓国語のローマ字表記の統一はできないのか」という質問が出たが、特に人名については個人の権利やアイデンティティーの問題があって難しいという回答であった。出張前、国立国語院が編纂した『標準国語大辞典』の改訂版がウェブ上でのみ提供されるという報道に接していたので、その理由を質問したところ、「紙媒体は需要がないから」とのことであった。講義後、1階の国語展示館を中心に見学を行った。

(3)韓国学中央研究院(11月1日午後)

韓国学中央研究院(旧韓国精神文化研究院)は、韓国学研究および教育、資料の保存等を担う。もとは朝鮮王朝の資料を保管する施設であり、現在は同研究院に移管された蔵書閣において、資料の整理、

データ入力、マイクロ化作業等のスペースを見学した。蔵書閣では、古書のみならず、朝鮮時代の奴婢文記等一枚ものの資料も多く所蔵しているとのことである。

見学後、同研究院内にある韓国学大学院の院長であるキムヨンウン教授による「国楽学資料DB構築事例」の講義が行われた。同教授は、これまで韓国語でしか検索できなかった国楽学関連論文を、英文でも検索できる目録データベースを試験的に構築した。構築にあたり、著者名や資料名のローマ字表記が統一されていない等の問題点があったという。ハングルを解さない利用者への情報提供のあり方について、大変示唆に富む内容であった。

(4)高麗大学図書館(11月2日午前)

高麗大学は2005年に100周年を迎えた韓国有数の私立大学であり、韓国私立大学中最多の207万冊の資料を所蔵している。ソウル市内の安岩キャンパス内にあるCDL(Centennial Digital Library)、中央図書館(旧館)、中央図書館(新館)の3つを見学した。CDLでは、資料のデジタル化の進捗状況、今後の計画などについて説明を受けた。古書、貴重書、肖像画、旧韓国外交資料、古地図といった様々な資料に加え、学位論文や講義のデジタル化も進めているとのことである。

(5)国立子ども青少年図書館(11月2日午後)

同図書館のセミナー室で、漢陽大ユンソニョン教授による「著作権法の理解」の講義が行われた。韓国の著作権法の現在に至るまでの歴史、著作物の定義、著作権の種類と性質、図書館で資料を貸出できる根拠規定、著作権の制限、図書館等における複製等の規定、図書館補償金制度、韓国複写伝送権管理センターなどについての概説であった。韓国の著作権法では、発行から5年経過すれば、他の図書館などで閲覧するための資料のデジタル化や伝送が可能となり、それに伴う図書館補償金制度も設けられている。講師は、法や制度を実効性あるものにするためにも、著作権を保護するための技術的なバックアップが重要であると強調していた。また、著作権保護の考え方を司書が教育者となって広めなければならないとも述べていた。

講義の後、同図書館の見学を行った。展示会用の展示室はかなり広いスペースが確保されており、イベントに力を入れている様子がうかがえた。私たちが訪問した時は、韓国の昔ばなしに関する展示会が終わった後であった。同図書館の利用者数は平日で200~300名、休日が500~600名、所蔵資料は24万冊以上で、児童関連資料では国内最大規模。児童書研究図書館として位置づけられ、子どものための読書プログラムの開発や、公共図書館における児童司書の養成なども行い、児童サービスのモデルを提示しているとの説明があった。

(6)慶州踏査(11月3日-11月4日)

2日間にわたり、韓国南東部にある慶州地域の文化遺跡を訪問した。国立慶州博物館、感恩寺址、文武王海中陵、石窟庵の見学のほか、現在に伝わる両班村である良洞民俗村では、ガイドの方が朝鮮時代の両班村の住居の位置や構造、具体的な生活の様子、子弟の教育にいたるまで丁寧に解説してくださり、多くの文化遺産が生み出された歴史的背景に触れることができた。さらに良洞出身の朝鮮時代の哲学者、李彦迪が一時期住んでいた独楽壇と、彼を祀った玉山書院を、彼の子孫の案内で見学できた。三国史記の木版本を保管している金庫が置かれた書庫など、普段は立ち入ることができないところまで見学することができ、地方における古文献の保存状況を垣間見ることができた。

3.「RISS INTERNATIONAL」説明会(11月6日午前)

KERISは教育人的資源部傘下の機関で、教育・学術情報の提供を行っている。今回説明のあった「RISS INTERNATIONAL」は、データベースは現在提供中の「RISS」と共通であるが、専用の英文インターフェースを通して原文およびMARCのダウンロードサービスが受けられる。現在、同サービスでカバーしている学術雑誌は、韓国で発行されている学術雑誌約5,800誌のうちのおよそ70パーセント、4,065誌で、内KERISが構築したデータベース2,814誌、商業データベースからのリンクが1,251誌とのことであった。その他に学位論文(修士・博士)の利用も可能。利用は年間単位の有料契約で、利用範囲によって4つのタイプが選択できる。韓国では学術的な成果は公共の財産との考えから、料金はデータベース「利用料」ではなく、「維持運営費」との認識であるという。著作権に関する手続きについては、KERISが韓国複写伝送権管理センターへの窓口となってくれる。説明後、実際にパソコン端末を用いてテスト用のインターフェースから検索の実習を行った。

「RISS INTERNATIONAL」とは別途に、2008年中に開始予定のDDSサービスの準備状況についても説明があった。料金等、現在調整を進めているとのことである。

4. おわりに

同ワークショップの参加を通じて、NLKをはじめとする主要学術機関において、どのようなサービスがなされているかを現地で確認することができた。

例えば、ビューワーの問題で日本では見られないのが残念であるが、NLKでは構築した原文データについては、OPACの検索結果から直接見られるようになっていたことなど、資料提供のあり方について、強い関心を持った。最近、日本では絶版になった資料の活用に向けた著作権法の改正の動きが伝えられているところであるが、すでに韓国では、自館での保存や閲覧のためのデジタル化はもちろんのこと、前述のように、発行から5年経過すれば、デジタル化した資料を他の図書館へ伝送することも可能である。

資料保存上の理由によるマイクロ化やデジタル化の重要性は言うまでもないが、新しい資料についてもデジタル化し、提供していくことも「電子図書館」の将来像として一考に値する。ウェブ情報源については、講義で紹介された主要な無料データベースは、すでにアジア情報室ホームページ内「AsiaLinks-アジア関係リンク集」に収載されており、この面では当館のサービスが遜色のないレベルにあることを確認した。今後KISSやDBPIAといった有料のデータベース、「RISS INTERNATIONAL」等を活用することができれば、資料提供サービスの向上が期待できる。

世界各国からの参加者との交流を通じ、各国で韓国学関連図書館サービスをしている司書がどの程度存在し、どのように資料を収集し、サービスを行っているかなど、韓国関連資料や韓国学が置かれている現状の一端を窺い知ることができたことも収穫であった。

最後に、お世話になったすべての関係機関と関係者の方々に心より御礼申し上げる。

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海外韓国学司書ワークショップ受講生(国立国語院にて)

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