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中国での在外研究を終えて : アジア情報室通報第5巻第2号

アジア情報室通報 第5巻第2号(2007年6月)
清水扶美子

昨年の12月から今年の3月初頭にかけて、中国国家図書館において在外研究を行った。約3ヶ月にわたり各部署において実習やヒアリングをさせていただいたほか、合間には国家科学院図書館や清華大学・北京大学の図書館など、外部の図書館を見学する機会にも恵まれた。本稿では、中国国家図書館をはじめとして、今回訪問した各図書館についてその概要などを以下に述べる


中国国家図書館

中国の国立中央図書館である。蔵書は約2,500万冊(中国語資料と外国語資料の比率は1:1)、1年363日開館を誇る。館内には中国語の人社系図書を置く中文社科図書第一・第二閲覧室や、外国語の雑誌を置く外文期刊閲覧室(一)~(三)、電子資料やインターネットが利用できる電子閲覧室など47の閲覧室があり、一日の利用者数は全体で約12,000人とのことであった。2008年5月には新館も完成予定であり、さらなるサービスの充実が期待される。

当館との大きな違いは、まず国内出版物の収集部数の多さであろう。図書・雑誌とも3部納本されることが納本制度により定められているが、ほとんどの資料はさらに2~3部購入する。その利用上の内訳は、以下のとおりである。
図書…①保存本(永久保存用)②基蔵本(保存しつつ閲覧にも供する)③閲覧室開架用④⑤貸出用⑥古籍館(分館)用
雑誌…①保存本②基蔵本③閲覧室開架用④閲覧室開架用予備⑤⑥主題閲覧室用
図書・雑誌とも最終的に残すのは正本である①②のみで、複本となる③以降は、利用期間が過ぎた後は、僻地の図書館や経済的に困難を抱えている図書館に寄贈するなど、適宜処分しているとのことである。

個人への図書の館外貸出を行うことも、当館との違いのひとつである。中国語図書については最近5年分、外国語図書については1950年以降3年前まで(最近3年のものはおおむね閲覧室に開架されている)のものにつき、貸出を行っている。利用者の強い要望に応えて始めたサービスだけあって貸出を利用する利用者は多く、特に外国語図書の場合は、閲覧室での利用よりも貸出のほうが多いとのことであった。もっとも、貸出を利用するにはあらかじめ読者カードに該当の機能を付加しておく必要があり、それには一定の保証金が必要である。具体的には、中国語図書の貸出には100元、外国語図書には1,000元の保証金を支払うこととなる。また、中国語図書のうち中文図書第一外借庫にあるもの、および外国語図書の貸出については、学生なら院生以上など一定の身元の確かさが求められる。

もうひとつの大きな違いは、企業へのサービスを専門に行う部署があることである。報刊資料部に属する企業信息服務中心(企業情報サービスセンター)がそれであるが、図書館の蔵する紙媒体資料はもちろんのこと、インターネット上の電子情報をも駆使して、さまざまなサービスを展開している。具体的には、依頼に応じて新聞などの報道を追跡的にスクラップする「媒体監測」、遡ってスクラップする「歴史信息検索」といったサービスがある。また、異なる閲覧室に配置してある複数の資料を必要とする場合に、ユーザー企業に代わって検索や複写を行う「文献提供」、ユーザー企業の持ち込んだ資料を英語やその他の言語に訳す「翻訳」なども行う。いくつかサンプルを見せていただいたのだが、例えばある企業の依頼により、ライバル企業の商品開発・販売などの動向を調査したり、ある団体についての報道をスクラップして定期的に報告したりといった業務を行っている。いずれも有料であるが、企業にとっては欲しい情報を効率的に入手できるところにメリットがあり、好評のようだ。

これまで、国家図書館は必要経費と予算の間を埋める手段の一つとして、種々の有料サービスを行ってきた。しかし、最近は公共機関であることがより強く意識され始め、個々のサービスについて料金の引き下げや無料化が検討されている。ただ一方で、年々の国内出版物の増加に伴う業務量増大に対応するため、非常勤職員やアルバイトの雇用、定年退職者の再雇用などが行われており、公共図書館としての開かれたサービスと、国立の中央図書館としての質を維持するための収益確保との両立が目下の課題であるようだ。


中国科学院国家科学図書館(本館)

科技文献情報の提供を専門とする国立図書館の本館である。前身は中国科学院図書館。2006年3月に中国科学院国家科学図書館と名称を変え、蘭州分館・成都分館・武漢分館と合わせた4館体制となった。蔵書は、数学・理学・化学関連の資料を主とし、総資料数は約520万件冊である。ほとんどの資料を購入により入手している。欧文雑誌が1万余種、同電子版は5,426種、中文雑誌は3,000余種、同電子版11,200種とのことである。日本語の資料は10数万冊ほどであり、現在はほとんど受け入れていない。2Fから5Fまで約3,000㎡のサービススペースには開架図書・雑誌の書架が並び、各階3台のOPAC検索機が設置されている。雑誌は最近10年までのものを開架(欧文雑誌については1991年以降のものを開架)している。そのほか、中国語の社会科学分野図書、中国語・欧文の自然科学分野図書、同図書館情報学関連図書・雑誌、同参考図書・雑誌、国内科学院博士・修士論文が開架されている。また、研究室スペースや院生の自習室なども設けられている。研究室スペース(4F)はレンタル式で、3ヶ月まで連続して利用可能であると共に、図書についても1ヶ月を限度として部屋の中に取り置きしておくことができる。科学院の図書館であることから、院内の研究者・院生へのサービスが手厚いが、院外でも閲覧カード(有料)を作れば閲覧は可能であり、各種データベースも館内に限り利用できる。

チェックインや書誌作成などの作業も見学させていただいた。発注やチェックインなどの業務には、INNOPACというシステムを利用している(日本では早稲田大学図書館が同システムを採用している)。外国語図書の整理は、OCLC、Ohio Linkや中国国家図書館からデータをダウンロードして行っているが、日本語・ロシア語についてはシステムが未対応であるため、現在もカード目録を利用しているとのことであった。分類は中国科学院図書館図書分類法による。


清華大学図書館

理系の大学として有名な、清華大学の図書館である。1919年、1931年、1991年と増改築を行い、現在も新書庫を建築中である。固定書架のほか、約27,000㎡の集密書架を有する。所蔵資料は全350万件冊、雑誌は電子化が進んでいることから紙媒体の件数はさほど多くなく、現刊で中国語のものが3,000件、外国語のものが1,000件ほどである。外国語の資料は英文のものが最も多く、次いで日本語、ロシア語となっている。全資料をOPACで検索することができる。閲覧室は、新書や使用頻度の高い図書を開架している中文新書及常用書閲覧室、国内外新聞約200紙と中国語雑誌約300誌を提供する報刊閲覧室など、13箇所に分かれている。そのうち、老館(1931年築)にある普通閲覧室は学生たちの自習室として使われており、訪問当日も500余の座席が学生たちでほぼ埋まっていた。

館内には無線LANが設置されており、どこでもインターネットに接続することができる。また、レファレンスサービスもメールで申し込める。開架図書については学部生20冊、院生30冊まで貸出可能で、期限は1ヶ月(外国語図書については、最近2年分は7日間)であり、図書館HP(http://www.lib.tsinghua.edu.cn/外部サイトへのリンク)内で延長手続きもできる。座席は図書館全体で1,300席ある。学内の教員や学生がサービスの主な対象であるが、学外でも身分証等を持参の上、臨時閲覧証を作成すれば閲覧が可能である。


北京大学図書館

北京大学の図書館である。地上6階地下2階で、総面積は53,000㎡ある。驚いたことに、これまでのところ集密書架は採用していない。今後書庫が足りなくなってきたら、採用を検討するかもしれないとのことである。全650余万冊の資料があり、そのうち150万冊が中文古籍、うち20万冊が5~18世紀のもの。開架閲覧室としては、1990年以降の理科系図書を置く自然図書借閲区、1993年以降の文科系図書を置く人文社科図書借閲区、当年分の雑誌と最近10~15年の製本済雑誌を置く期刊閲覧区などがある。大学図書館らしく、閲覧室には教師専用のブースを設けているところもあり、試験問題作成や採点などの際に利用される。

こちらも館内には無線LANがある。また、オンラインでのレファレンスサービスも行っている。貸出は5~20冊までで、期限は1ヶ月である(未製本雑誌の貸出はしないが、製本済のものについては1週間を限度に貸し出す)。図書館HP(http://www.lib.pku.edu.cn/外部サイトへのリンク)内での貸出延長手続きも可。座席は清華大よりも多く、4,000余席ある。学外の人間は、職場等の紹介状と身分証を持参して臨時閲覧証を作成することで、閲覧や複写のサービスが受けられる。

図書館HP内の「特色収蔵」のページにある「報紙熱点」は新聞の記事索引であり、全文が見られるものも多く、特定の話題について通覧的に記事を探す場合などに便利である。


首都図書館

北京市立の図書館である。2001年に、安定門の国子監から現在の朝陽区東三環南路に移転した。建築面積約37,000㎡、全資料数400万余冊である。書庫は省スペース化のため、すべて集密書架にしてある。現在、2009年の完成を目指して新館を建設中である。完成後は総建築面積67,000㎡になる予定で、資料数も1,000万冊に達することを目標としている。なお、完成後は現在の建物を少年児童図書館とし、新館を一般利用者向けとする。

年間利用者数は延べ200万人、年間貸出冊数は220万件冊、年間の収集量は約30万件冊ほどである。年間収集量のうち、児童書が約10万件冊、外国語図書は約3,200件冊とのことである。日本語の資料については12万件冊ほどを所蔵し、同雑誌・新聞は約70誌・紙を受入中である。日本語ができる職員の確保がなかなか容易でないため(現在は1人)、資料数があまり増やせないそうだ。欧文資料についてはOPACへの登載を行っているが、日本語・ロシア語の資料については、システムが未対応であるためカード目録のみである。図書については利用者の便宜のため、中国語・欧文共に1件ずつスキャナーで読み込んだ表紙と標題紙をOPACに掲載している。

首都図書館は、北京市公共図書館計算機信息服務網絡系統というプログラムの中央データ処理センターでもある。このプログラムは、北京市内の公共図書館が「智慧2000数字図書館系統」という同一のシステムを採用することで、加盟館のOPACの横断検索や各図書館のデータベースの閲覧、貸出の予約や延長手続きを同プログラムのサイト(http://www.bplisn.net.cn/外部サイトへのリンク)から可能にするというものである。利用者は、任意の加盟館で共通利用者カードを1枚作成することで、他の加盟館も自由に利用できるようになる。現在のところは、この共通利用者カードが使えるのは首都図書館と10箇所の区立図書館および各区内のネットワーク館のみであるが、順次拡大予定のようである。また、資料の返却についても、現状では貸出館に返しに行かなければならないが、将来は貸出館以外の加盟館でも返せるようにする予定であるという。


北京市西城区図書

国家図書館のある海淀区と隣り合う、西城区の図書館である。建築面積約10,000㎡、全資料開架で、約49万冊を所蔵している。年間の収集量は約4万余冊とのことである。4Fには380余の座席を備えた自習室(2元/日)があり、区内はもちろん区外の学生も利用できる。3Fには閲覧室があり、図書のほか3ヶ月を経過した雑誌も貸出可である。ここの第一の特徴は、多媒体網絡中心(マルチメディアネットワークセンター)である。室内には80台のPCが並び、視聴覚資料の閲覧ができると共に、PCの使用法などを教える講座も開かれている。そのほかには、旅行関連の資料のみを集めた旅遊資料室も特徴的なものである。

館全体の利用者は一日当たり1,000人ほどで、高齢者の利用が多い。その理由のひとつには、音楽資料室の存在があげられる。この資料室は、利用者の音楽に関する「聴く・読む・学ぶ・語る・鑑賞する・作る」をサポートするための部屋で、室内には音楽関連の文献や視聴覚資料が置いてある。利用者は、常設してある電子ピアノを使って練習をしたり、作品を作ったりできる上、カラオケをすることも可能である。定年退職後の中高年が第二の人生に踏み出すための、恰好の場となっているようである。また、2002年5月以降、点字パネルや資料を読む際の拡大機、HPの内容の読み上げを行う機械の導入など、障害を持った利用者へのサービスにも力を入れている。

訪問させていただいたどの図書館でも、単に資料を提供する、レファレンスに答えるというだけではなく、より積極的に利用者へのサービスを展開しようとする意気込みが感じられた。

最後に、忙しい中見学を快く受け入れてくださった各図書館、特に今回の研修を受け入れてくださると共に、他館の見学にも同行してくださった中国国家図書館の方々に心から感謝したい。

中国国家図書館図書採選編目部東方語文採編組のみなさんと
(中国国家図書館図書採選編目部東方語文採編組のみなさんと)
(すべてのURLのlast access:2007/5/14)

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