「リサーチ・ナビ」に関するアンケートを実施しています。皆さまのご意見をお聞かせください。アンケートに答える

トップアジア諸国の情報をさがす刊行物>エマード・アブー・ガーズィー博士特別講演会 「エジプトの文書館・図書館と文書研究」概要報告 : アジア情報室通報第5巻第4号

エマード・アブー・ガーズィー博士特別講演会 「エジプトの文書館・図書館と文書研究」概要報告 : アジア情報室通報第5巻第4号

アジア情報室通報 第5巻第4号(2007年12月)
大西啓子

平成19年11月6日(火)国立国会図書館関西館においてエマード・アブー・ガーズィー博士(エジプト高等文化評議会文化諸委員会統括本部長兼カイロ大学文学部図書館・文書学・情報学学科助教授)による特別講演会を開催した。今回の博士の来日は、NIHUプログラム「イスラーム地域研究」の招聘による。以下にその概要を報告する。

講演要旨

エジプトにおける近代的な文化施設の登場は19世紀のことで、図書館、公文書館、考古学博物館の3施設が文化施設の核となった。

(1) 図書館の歩み

図書館は古代から存在したが、近代になり1829年、ムハンマド・アリーによってシタデル(城塞)に最初の図書館が設置された。また、同年ブーラーク地区に最初の印刷所が開設され刊本の時代に入る。イスマーイール・パシャの時代になると国立図書館設立の機運が高まり、1870年にアリー・ムバーラクによって国立図書館の設置が決定される。シタデルの図書館の蔵書をもとに、各省庁、学校、モスクの保管資料、購入・寄贈による新たなコレクションを加え、1899年国立図書館建設の礎石が築かれた。同館は1903年に開館、翌年には一般研究者に門戸を開放したが、その後は数回の名称変更を経て文書館と統合、1971年には公社の一部となる。1993年にようやく独立の組織に戻り、現在のエジプト国立図書館となった。

エジプト国内の図書館は、大学図書館、宗教施設に附属する図書館、学術的な民間団体・協会の図書館などに大別される。近年は図書館復興の動きがあり、アレクサンドリア図書館や大カイロ図書館、オペラ座の音楽専門図書館、カイロクリエーションセンター内の映画図書館、ムバーラク大統領の名を冠した各種図書館、民間組織による図書館などが建設されている。

(2) 文書館の歩み

1829年、行政文書を保管し官僚の利用に供する目的でシタデル内に設立された文書館が、近代的な公文書館の始まりである。文書館は19世紀を通じて発展し、その役割も、行政・財務文書の保管から学問研究のための保管へと拡大する。1930年には、ムハンマド・アリー王朝に関する文書を収集する歴史文書館がアブディーン宮殿内に設立された。同館は1954年の国立文書館設置令を受けて国立文書館となり、その他の文書館のコレクション、政府関係文書が加えられた。12世紀から20世紀までの各種文書を収蔵し、内容で大別すると、政府関係、経済関係、地方行政関係、公益事業関係(文化・芸術・教育)、司法関係、その他(政治指導者の回想録、宗教機関の文書など)の6つとなる。研究者や国民に対して必要な文書の写しを提供するサービスを行っているが、同館が全ての文書を所蔵しているわけではなく、ワクフ省や宗教機関などに所蔵されているものもある。

(3) 文書研究

エジプト文書研究の萌芽期に当たる19世紀最後の四半世紀に活躍した人物として、アリー・ムバーラク(1823-1893)、アミーン・サーミー・パシャ(1857-1941)、アリー・バハガト(1858-1924)の3人が挙げられる。文書館局員の養成に関しては、1950年代初めには古典写本・文書校訂の必要性が認識され始め、それまで個々に研究してきた学者たちの要請に基づいてフワード1世大学(現在のカイロ大学)の文書・図書館研究所で研究が開始された。しかし、1954年に同研究所はカイロ大学に組み込まれる形で終焉を迎え、文書研究は後退を余儀なくされる。次に新しい段階を迎えるのは1970年代初め、大学組織令により高等教育において独立した文書研究が誕生してからである。大学院課程の研究においては、アブド・アル・ラティーフ・イブラーヒーム博士(1926-2001)が最もよく知られた人物の一人である。博士は、古文書学、校訂学における数多くの研究を指導し、エジプト国内や他のアラブ諸国における文書研究の発展に大きな功績を残した。文書研究の一学派を作ったともいえるパイオニアで、外国の研究者もその研究に注目してきた。

(4) まとめ

知識社会の時代に力強く入りつつある今日、文書館の役割も新しい側面を帯びてきている。文書館は社会における基礎的な情報源の一つとして、できるだけ多くの情報を提供し、人々の選択の幅を広げることと結びついて人間の発展開発の核になるといえる。新しい時代において知識は力の基礎となるパスワードであり、現代における戦略的な生産物である。知識社会に勇敢に入っていくことは、我々が望む包括的、持続的な人類の発展を実現するために是非とも必要なことである。


講演は、100枚以上の写真を使用して詳細に論じられた。質疑応答では、銀行図書館についての質問や、1952年のエジプト革命が文書館や文書館研究に与えた影響についての質問が寄せられた。

エジプトの図書館・文書館とそれを取り巻く環境は年々整備が進められている。そのなかで今回、エジプト文化行政の最前線で活躍されるエマード博士のお話をうかがう機会を持てたことは貴重であった。エマード博士をはじめ、本講演会の開催にご尽力いただいた大稔哲也氏(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)、通訳をお引き受けいただいた福田義昭氏(大阪大学)にあらためて感謝申し上げたい。

 

  • 国立国会図書館
  • 国立国会図書館オンライン
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡
  • 参考書誌研究