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平成20年度アジア情報研修概要報告:アジア情報室通報第6巻第4号

アジア情報室通報 第6巻第4号(2008年12月)
遠山泰啓

平成20年11月20日(木)、21日(金)に国立国会図書館関西館において、平成20年度アジア情報研修を実施した。第7回目となる今年度は、韓国の資料・情報に関する科目を中心に実施した。

1. 受講者について

受講者の内訳は、館種別では大学図書館6名、公共図書館1名、専門図書館等5名、学校図書館1名、地域別では関東3名、中部2名、関西7名、中国1名の計13名であった。

2. アジア情報研修の内容

研修の各科目の概要を以下に紹介する。

■ 1日目

(1)「韓国関連情報の調べ方(講義)」
(講師:関西館アジア情報課 渡部淳)

韓国関連情報を調べる際に有用なサイトについて、その特徴や検索方法などを紹介した。韓国関連情報はオンラインで入手できることが多いが、本講義でも原文の入手ができるサイトを中心に説明した。

(2)「韓国関連情報の調べ方(実習)」
(講師:関西館アジア情報課 田中福太郎、加藤眞吾、飯島さとか、渡部淳)

講義で紹介されたサイトを用いての問題演習を行った。研修生は、実際にPCを操作しながら学術論文、統計、新聞記事などの検索や原文の閲覧などを行った。

■ 2日目

(1)「韓国の図書館政策・事情と、歴史・文化財に関するネットワーク情報資源」
(講師:田窪直規 近畿大学短期大学部商経科、近畿大学司書課程・学芸員課程担当教授)

韓国社会では、日本と異なり、情報・ドキュメンテーションを重視する考え方が浸透していると言える。例えば、失業対策としてデジタル情報の入力が行われたり、かつて情報通信部という情報化を担う中央省庁が設置されたりしてきた。

法律面では、情報資源のデジタル化を推進する、知識情報資源管理法がある。この法律を根拠とする補助金により、国や地方に散在するデジタル資源の体系的管理や活用・開発を促進している。

情報システム構築の際には、コンピュータの専門家の他、文献情報学の専門家も参加するため、情報・ドキュメンテーション指向のシステム構築が図られる。

韓国の図書館法は、公共・大学・専門図書館など全ての館種を対象にしているのが特徴である。最近の改正(2006年)で、大統領直属の図書館情報政策委員会の設置が定められた。

司書資格には、4年制大学文献情報学副専攻修了者等に与えられる準司書、同じく文献情報学専攻学士または修士取得者等に与えられる2級正司書、文献情報学博士、または2級正司書で勤務経験後に与えられる1級正司書がある。

デジタル技術を利用した図書館サービスも盛んで、インターネットを通じた電子ブックの貸出しが、ほとんどの公共図書館で行われている。また、公共図書館や学校図書館には、場所や費用がかからずサービス向上が図れるとして、デジタル資料室が積極的に設置されている。

国立中央図書館(NLK)は、開館60周年を迎えた2005年に「知力強国」をスローガンに4P(Pride, Provision, Policy, Portal)戦略を打ち出した。NLKは、日本の中央図書館である国立国会図書館より規模は小さいものの、デジタル化やネットワーク化に積極的に取り組んでいる。公共図書館を対象とする国家資料共同目録システム(KOLIS-NET)を運営するとともに、選択的ネットワーク情報資源の収集・保存プロジェクトのOASISを展開し、2010年までに100万Web資源の収集を目指している。

さらに、ネット上の仮想図書館として、情報資源をインターネットで提供する「国家電子図書館」を運営する他、デジタル資料の作成、収集、整理、保存、サービス提供を行う図書館として国立デジタル図書館(NDL)を建設中で、来年には国レベルのデジタル情報総合センター、全国図書館情報ネットワークの拠点として稼動する予定である。

また、NLKは、図書館政策・研究の中心としての役割を担っており、図書館研究所を設置している。

韓国教育学術情報院(KERIS)は大学図書館を対象とする書誌ユーティリティーであるRISSを運営している。RISSには全ての大学図書館が参加している。

国家知識ポータルは、知識情報資源の総合的なポータル・サイトであり、現在、約3億件弱の情報資源が横断検索可能である。民間ポータル・サイトとも連携している。

国家知識ポータルの下位のポータル・サイトとして韓国歴史情報統合システムと文化遺産総合情報システムがある。前者では、国史編纂委員会を中心とする17機関が、多様な歴史資料の組織化、蓄積を行っている。シソーラスによる統制語の使用や分類法の構築などを行い、多様なアクセスポイントを提供しているのが特徴である。後者では、主要博物館を含む104機関が参加し、韓国の博物館の情報管理を行っている。

公文書館である国家記録院では、永久記録管理システムを開発するとともに、各省庁、自治体、大学に設置されている記録館のための管理システムも開発している。

以上紹介した情報源の他に、基礎学問資料センターや、雑誌記事サイトや新聞記事サイト、大型書店のサイトからも歴史・文化財情報を得ることができる。

日本の情報源では、国立国会図書館関西館アジア情報室ホームページ内にあるAsiaLinksの大韓民国のページを挙げることができる。また、アジア歴史資料センターのサイトでは朝鮮半島に関係する近代資料を検索することができる。

(2)「韓国における経済・産業事情とその情報の入手」
(講師:奥田聡 日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター専任調査役)

韓国経済は1945年の解放後の混乱、朝鮮戦争などにより極貧国となったが、1961年に政権の座に就いた朴正煕大統領は、インフラ建設と軽工業輸出を軸とする経済計画を断行し、73年からは重化学工業化路線を歩んだ結果、1970年代末には新興工業国(NIEs)として注目を浴びるようになった。

1980年代になっても韓国は経済成長を続け国民生活は豊かになり、1990年代半ばには半導体・自動車・造船などの主要輸出国となったが、1997・98年のアジア通貨危機で韓国経済は大きな打撃を受けた。その後、IMFからの緊急融資や対中輸出、対中投資が活発になったことなどにより、経済は急速に回復し、三星(サムスン)電子、LG電子、現代自動車など国際的に有名な企業を輩出するまでになった。

しかし、近年の韓国経済は三つの問題点を抱えている。第一に、これまでの経済成長が輸出に大きく依存してきたという経緯から、海外の不況が韓国内に増幅されて現れる傾向がある。サブプライム問題や資源価格高騰の影響が危惧される。第二に、1997・98年のアジア経済危機後、韓国で成功を収めた造船、半導体、携帯電話、自動車などは日本のかつての得意産業であり、日本モデルを追う展開から抜け出せていない。第三に、今後急速に進む高齢化、年金制度崩壊の懸念、少子化社会、最低の出生率、非正規労働者などが、生産・消費の両面でマイナスの影響を与えかねない。

日韓交流は着実に広がっており、近年の日本人の韓国入国者数は200万人以上で、日系企業の進出も続いている。

経済・産業事情の情報の入手に関しては、韓国ではオンラインによるデータ発信が進んでおり、新聞の過去の記事を検索することや、ウェブ上で統計データなどを入手することが容易になっている。しかし、利用者にとっては以下のように問題点も多い。

オンライン化の結果、情報過多になり、受け手は情報を取捨選択する必要があること、韓国サイトでは利用者登録を求められることが多く、本人確認として住民登録番号を要求されると外国人は原則として利用できないこと、日本からアクセスする際にウェブページの設計上の問題が発生して情報を入手できないことがある点などが挙げられる。

また、オンラインによる発信が強まった一方、冊子体による発信は弱まり需要も少なくなった結果、書籍の価格は上昇し、冊子体を入手することが困難になっている。

なお、マクロ経済情報のオンライン情報としては、幅広い経済データを網羅する「韓国銀行経済情報システム」、貿易統計が充実している「韓国貿易協会(KITA)」、統計を総合的に網羅する「国家統計ポータル(KOSIS)」、冊子体情報として、幅広い分野をカバーする『最近経済動向』(月刊)、様々な分野における韓国の位置を的確に表す208の指標を厳選した『208個経済・貿易・社会指標で見た大韓民国』、『韓国経済年鑑』をもとに翻訳した『韓国経済・産業データハンドブック』(日本語)がある。ミクロ経済情報のオンライン情報としては、過去の記事も豊富な「朝鮮日報」(ハングルと日本語のページがある)、46,500社余りを収録している「韓国貿易協会 輸出入企業リスト(tradeKorea)」、海外投資の届出、実投資の件数などを閲覧できる「韓国輸出入銀行 海外投資統計」、冊子体情報として、数表のみのデータ集である『韓国の産業と市場―産業概況および市場動向データブック』、約52,000社を収録している『会社年鑑』がある。

3. 研修を振り返って

研修終了後に行ったアンケートでは、「講義で紹介されたサイトはとても参考になった」「配布資料がとても充実していた」「今後の業務に直接役立つ」と総じて高い評価を受けた。また、関西館以外での研修開催を望む声もあった。今後の参考にしたい。

なお、講義テキストはアジア情報室ホームページ
(http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/contents/asia_workshop20.html)
に掲載している。

最後に、研修講師の方々に、この場を借りて改めてお礼申し上げる。

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