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中国国家図書館創立100周年記念行事参加報告-海外中国学シンポジウムを中心に-: アジア情報室通報 第7巻第4号

アジア情報室通報 第7巻第4号(2009年12月)
鎌田文彦(国立国会図書館調査及び立法考査局総合調査室)

2009年9月9日に、中国国家図書館(以下、国家図書館)は、創立100周年をむかえた。時の清朝廷が国家図書館の前身である京師図書館の設立を決定して以来、中国近現代史の怒涛の中で、100年にわたって同館は文化の伝統を守り続けてきたのである。

100周年を記念して、式典、シンポジウム、展示会など、多くのイベントが催された。筆者は、記念行事の一環として開催された「相互理解・協力・情報共有-海外における中国学に関するコレクション構築、研究及び情報提供サービス」シンポジウム(以下、海外中国学シンポジウム)に参加した。本稿では、このシンポジウムの模様を中心に、100周年記念行事の概要を紹介したい。

1 100周年記念行事

(1) 記念シンポジウム

9月9日の記念日の前後に、国家図書館が主催する2つのシンポジウムが開催された。

一つは、9月8日から12日に開催された「図書館の国際化-知識の全地球的共有の促進」と題するシンポジウムである。ここには、世界各国の国立図書館長、中国国内の各省図書館長等が出席して、世界の図書館界における協力の促進、知識・情報の共有等の問題が論議された。当館からは、長尾真館長が出席して、電子図書館の推進をテーマに講演を行った。

もう一つは、筆者が参加した「海外中国学シンポジウム」である。

(2) 記念展示会

9月初旬から、100周年を記念する2つの展示会が開催された。

①100年の記憶-国家図書館館史展

国家図書館の100年の歴史が、①1909-1927年:創業の労苦、②1928-1949年:土台固まる、③1949-1965年:すべて一新、④1966-1976年:苦難の克服、⑤1977-2009年:栄光への道程、という時代区分のもとに、豊富な写真・資料により紹介された。

②100年の展望-国家図書館貴重書展

甲骨、敦煌文書、西域文献、各種善本、拓本、地図、少数民族文献、名筆、連環画、写真等、国家図書館が所蔵する貴重書・重要資料が展示され、一般公開された。マルクス主義が中国に紹介され始めた頃の出版物、毛沢東の初期の著作等が「新善本」の名称のもとに展示されていたが、このような資料の位置づけは初めての見聞であったので、新鮮な印象であった。

(3) 100周年記念式典

9月9日14:30から、国家図書館設立100周年記念式典が開催された。内外から賓客が集い、盛大な式典であった。李長春中国共産党中央政治局常務委員が出席して講話を述べた。

(4) 100年史の刊行等

以上のほかに、『中国国家図書館館史-1909-2009』(国家図書館出版社、2009.8)の刊行、記念切手の発売等が行われた。

2 海外中国学シンポジウム

(1) シンポジウムの概要

9月8日には、前述の海外中国学シンポジウムが開催された。シンポジウムは、国家図書館が主催し、米国ピッツバーグ大学東アジア図書館、中国社会科学院国外中国学研究センター、北京外国語大学海外漢学研究センターが共催しており、中国内外の研究者、図書館員等約100名が参加した。

シンポジウムは、中国内外の中国学教育・研究機関及び中国学文献収集・利用提供機関の間の交流及び協力を推進し、外国の中国研究と国内の中国研究の間で相互に長所を吸収し短所を補い、中国学の研究発展を促進することを趣旨として開催された。

写真1 海外中国学シンポジウム全体会議

写真1 海外中国学シンポジウム全体会議

(2) 外国の中国学に対する強い関心

現在の中国では、自国についての海外での研究動向に対する関心が非常に強く、その動向を把握したうえで、自国の学術研究の中に取り入れ、また政策決定過程にそれを反映していこうという意欲が高まっている。これが、このようなシンポジウム開催の背景となっている。シンポジウムを共催した中国社会科学院国外中国学研究センター等、その動向を専門に研究する機関も増加している。国家図書館としても、このような中国学術界の動向に即して、国立図書館として然るべき役割を果たそうとしており、記念式典当日の9月9日に、後述の海外中国学文献研究センターをオープンした。

(3) 全体会議

午前中に全体会議が開かれ、詹福瑞国家図書館館長は、国外で中国研究が盛んになり、国内で海外の中国学研究に対する関心が高まっている中で、内外の関係機関が、文献提供、学術サービス面での連携協力を強化することの意義を強調し、国家図書館がこの分野で主要な役割を果たしていく決意を表明した。

(4) 分科会

午後は、2つの分科会が並行して開催された。第1分科会「中国学研究の歴史と展望」と第2分科会「中国学研究における文献提供サービス」である。

筆者は、第2分科会に出席し、「日本の国立国会図書館における中国情報の収集と提供」と題して報告を行った。第2分科会の報告者と報告テーマは以下のとおりである。この分科会には約30名が出席し、各報告について、活発で積極的な質疑応答がなされた。

報告者

報告タイトル

鎌田文彦(国立国会図書館) 日本の国立国会図書館における中国情報の収集と提供
楊継東(米国ミシガン大学東アジア図書館長) デジタル化・グローバル化時代における中国研究文献の整理・索引業務-機会・挑戦・今後の発展の方向性
辛欣(大連図書館副館長) 別の視角から見た中国-大連図書館所蔵満鉄資料紹介
耿立群(台湾漢学研究センター) 漢学研究センターにおける文献情報サービス
李国慶(米国オハイオ州立大学図書館中国部主任) 内外・古今往来-北米における華人の東アジア図書館員による中国学研究成果の概要
張利(内モンゴル大学図書館研究館員) 西部地域の地方文献資源による海外中国学文献情報サービス

 

(5) 報告について

筆者は、概略次のような報告を行った。

・国立国会図書館は、日本の国会にサービスを提供する調査機関として、また日本における唯一の国立図書館として、国立国会図書館法に基づき、1948年に設立された。本国内で刊行される出版物を納本制度により広く収集し、国会、行政及び司法の各部門、国民に各種のサービスを提供している。

・国立国会図書館では、東京本館と関西館それぞれで、中国語資料を所蔵して、利用に供している。東京本館では、20数万冊の中国書を所蔵している。うち古典籍資料室では、清代までの漢籍約9万5000冊を所蔵している。議会官庁資料室では、中国の法令資料の正本を所管している。そのほか、東京本館では、主として1985年までに整理された民国以降の刊行図書約10万冊を所蔵している。

・関西館に設置されているアジア情報室では、1986年以降に整理した中国語図書約25万冊、中国語年鑑・雑誌約4000タイトル、中国語新聞約360タイトルを所蔵している。アジア情報室では、来館者へのサービスと共に、遠隔サービスの充実に努めており、館ホームページをとおして、アジア情報に関する各種コンテンツを発信している。

・日本の国会に対する情報提供サービスは、当館の最も重要な任務である。中国は、日本の隣国であり、政治的・経済的に密接な関係を有することから、国会議員の中国に対する関心は強い。日中間の経済・貿易関係、中国の政治・経済・社会の現状など、中国に関する様々な調査依頼が当館に寄せられている。国会サービスを担う調査員は、それぞれの専門領域の問題について調査を行い、国会議員に対して正確な情報を提供するように努めている。

・調査員は、重要な国政課題に関する調査を自主的に行い、調査局の各種刊行物に調査結果を掲載して、国会議員の国政審議の参考に供している。雑誌『外国の立法』では、中国の立法動向を、毎号紹介している。直面する課題の解決のために中国が推進している立法活動の紹介をとおして、日本の国会において、また広く日本社会において、中国の現状についての正しい理解が行き渡る一助となればと考えている。

・知識を集約し社会に発信する図書館、調査機関の果たすべき役割は大きい。日中両国の関係機関には、相互に情報を発信し、また受け止め、それをそれぞれの社会に流通させるという共通の責務がある。両国の図書館、調査機関が連携協力を強めることにより、この共通の責務を共に十全に果たして行くことができるよう願うものである。

(6) 質疑応答

以上の報告に関連して、出席者から次のような質問が寄せられ、現状について回答した。

・中国の諸問題についての国会議員からの調査依頼は、どのくらい寄せられるか(中国固有の問題に加えて、主要国の比較調査の中で取り上げる事例も含めると相当多いと言えると回答)。

・アジア言語OPACは、各種の文字(漢字、カタカナ、ひらがな、ピンインなど)で検索できるが、その点が優れていると感じている。

・国会議員からの依頼については、どのくらいの調査時間をかけるのか(短時間のうちに回答を求められるケースが増えている状況を紹介)。

・調査局の刊行物の編集体制、調査局の職員の採用方法等についても質問が寄せられた。

(7) 総括会議

各分科会終了後、再び全体会議が開かれ、常丕軍国家図書館副館長がシンポジウムを総括し、これは内外の中国学関係機関の間の交流と協力の第一歩であり、今後国家図書館は関係情報の収集と提供に努める旨の発言を行った。

3 海外中国学文献研究センター

9月9日10:30から、国家図書館内に新設された「海外中国学文献研究センター」の開室式が行われた。

同センターは、次のような趣旨のもとに設立された。

①中国学研究の歴史、現状及び発展の趨勢を把握し、外国の現代中国学研究の焦点及び成果に着目し、国の立法及び政策決定機関に対して関係資料及び参考情報を提供する。

②国家図書館の豊富な蔵書及びサービス・ルートをとおして、国内外の中国学研究者及び図書館関係者に、中国学の専門的文献を提供する。

③中国学文献、情報資源の体系化、デジタル化を推進し、図書館及び関係学術研究機関における情報共有を促進する

④国内外の中国研究に関する学術交流活動を推進し、中国学の発展を促進する。

同センターには、閲覧室が設けられ、同日の午後から閲覧者への一般公開を開始した。現在、中国学に関する1985年以降収集の欧米言語図書約3万点、2007年以降収集のロシア語・日本語・朝鮮語図書約3,500点、中国学関係の外国雑誌数十誌、中国語への翻訳書700点及び参考図書を利用に供している。今後、関係資料の充実に努めるとのことである。

おわりに-公的部門へのサービスの重視

海外中国学文献研究センターは、国家図書館の立法決策服務部に所属し、その設立趣旨として、国の立法及び政策決定機関に対するサービス提供が挙げられている。国家図書館は、図書館界及び一般読者へのサービスに加えて、公的部門への文献サービス、情報提供サービスを今後一層強化しようとしており、同センターの設立は、このような国家図書館の方針に沿うものである。

写真2 新設の海外中国学文献研究センターの案内掲示

写真2 新設の海外中国学文献研究センターの案内掲示

盧海燕立法決策服務部主任によれば、現在の部の人員は30名ほどであり、中国の全国人民代表大会(立法機関)へのサービス提供もあるが、国務院(中国政府)各部門への資料・情報提供が主たる業務とのことである。現状では、まだまだ活動の規模は小さいものの、今後質量共にサービスの充実をはかりたいとのことであった。

海外中国学シンポジウムは、このような国家図書館のサービス拡充の方針に基づいて開催されたものであり、今後の同館のサービスの方向性を示しているという意味においても興味深いものであった。

(かまた ふみひこ)

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