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中国国家図書館の新館を利用する: アジア情報室通報 第7巻第4号

アジア情報室通報 第7巻第4号(2009年12月)
前田直俊(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

中国国家図書館は2つの地区に分かれている。1つは北京市西部の白石橋に位置する本館、もう1つは北京市の中心部、北海公園の西隣にある古籍館である。本館は1987年に現在の旧館が建設され、2008年9月にはその北側に隣接して新館が開館した。これら3つの庁舎を合わせると、延床面積約25万㎡、蔵書約2,700万冊、1日平均の来館者数が延べ1万人以上におよぶ世界でも屈指の巨大図書館である。2009年9月には、前身である京師図書館の創立から100周年を祝して、記念式典が盛大に催された。

新館の開館を契機にして、蔵書の配置やサービス内容について大幅な改革が行われ、新館は中国語資料と電子資料を中心とした一般向けの図書館に、旧館は外国語資料や学位論文など専門性の高い資料を提供する研究図書館として位置づけられた1。古籍館は従来どおり、古典籍資料を扱う。

筆者は2008年10月から2009年1月までの間、この生まれ変わったばかりの中国国家図書館を利用する機会に恵まれた。以下、新館の利用者サービスを中心に紹介しよう。

入館手続き

新館の開館時間は月曜から金曜が9時から21時、土曜と日曜が9時から17時である。満16歳以上であれば、誰でも利用できる。

一定の大きさ以上のカバン類は持ち込めないので、入館前に入口の外側に設けられたロッカー室で手荷物を預ける。ロッカーは相当数が用意されてはいるものの、来館人数に比べて十分に余裕があるとはいえず、週末などの混雑時には満杯になってしまうことがある。その場合は気長に待つしかない。

階段を上って新館の入口を入ると、総合案内カウンターがある。ここには2名の職員が常駐していて、利用方法や資料の配置など全般的な質問に答えてくれる。

右に行くと利用カードの申請カウンターである。中国国民であれば、利用カードを作らなくても、身分証2 をカードリーダーに読ませるだけで、閲覧室に入ることができる。書庫内にある資料を閲覧したり資料を館外に借り出したりする場合、および外国人は利用カードの作成が必要だ。また、基本サービスは無料だが、拡張サービスを受けるには保証金を預けなければならない(表1)。

表1 利用カードとサービス内容

表1 利用カードとサービス内容

蔵書検索とRFID

利用カードの申請カウンターの近くには、OPAC専用の端末が十数台置かれている。OPACを検索すると、資料が置かれている書架と段数が図で表示され、入口からの最短経路も教えてくれる。館内はかなり広いので、不慣れな利用者にとってはとても重宝する機能だ。その仕組みは、開架されている中国語図書の全てにRFIDタグ3が貼付されていて、作業員が読み取り器で書架に並んだ資料の表面をなぞり、排架場所のデータを読み取って、OPACのデータに反映している。排架整頓は定期的に行われており、排架ミスがあれば、この機器で即座にチェックされる。

蔵書の検索は、閲覧室内にあるPCでもできるが、PCのある席は人気がありほとんど空いていないので、見たい資料が分かっている場合は、予めここで検索して排架場所を確認しておいたほうがよいだろう。

建物の概要

新館は地下3階・地上5階建てで、地下1階から地上4階までが閲覧スペース、地下2~3階は書庫、地上5階は事務スペースである。外観は、書籍を開いた様子をデザインした建物となっている(写真1)。

閲覧スペースは、中央に大きな閲覧室があり、その周りをさらに5層の閲覧室がぐるりと取り囲む構造である。写真2を見てわかるように、中央の閲覧室は空間を贅沢に利用した吹き抜け構造で、ガラス張りの天井からは自然光が差し込み、開放的な雰囲気を演出している。

写真1 新館の外観

写真1 新館の外観

写真2 中央の閲覧室

写真2 中央の閲覧室

参考図書エリア(B1F-2F)

中央の閲覧室には460余の閲覧席が設けられ、約4万冊の参考図書類が開架されている。1階には、古典籍や清末民国期の資料を復刻した叢書類がずらりと並び、2階は国内外の参考図書が壁面を埋め尽くしている。

地下1階は四庫全書エリアである。四庫全書に関連する影印叢書類や辞典類のほとんどが開架されている。さらに、空調管理が施された保存書庫が設けられ、中国国家図書館の誇る四大蔵書4のうちの1つ『文津閣四庫全書』の原本が保存されている(写真3)。普段は、幕が降ろされていて内部の様子を窺うことはできないが、記念行事の際などには、幕を上げてガラス越しに披露される。当該分野を研究している利用者にとっては、『文津閣四庫全書』の存在を間近に感じながら調査研究に没頭できる、なんとも贅沢な空間といえよう。

写真3 『文津閣四庫全書』を収蔵する保存書庫

写真3 『文津閣四庫全書』を収蔵する保存書庫

一般図書エリア(B1F-3F)

中央の閲覧室の外側には、周囲を取り囲むようにして回字形の閲覧室があり、最近5年間に出版された中国語図書約60万冊が開架されている。閲覧席は約830席、うち210席にPCが設置されている。「中国語図書エリア」、「芸術デザイン資料エリア」、「名著エリア」の3つに区分けされ、「芸術デザイン資料エリア」には写真集や絵画集などのビジュアル資料が、「名著エリア」には古典作品や受賞作品などが集められ、それ以外の新刊書が「中国語図書エリア」に排架されている。

資料の利用と保存

このように、新刊書のほとんどが開架され自由に手にとって閲覧できるのは、利用者にとって大変に使い勝手がよい。だが一方で、国立図書館が担うべき出版物の保存とは矛盾しないのだろうか。そこで、中国国家図書館全体の蔵書構成の視点から、これら開架資料の位置づけを見ておこう。

中国国家図書館では、中国語図書の場合、基本的に納本で3部、購入で2部の都合5部を収集しており(右下の囲み記事を参照)、寄贈がある場合は最大で6部まで受け入れている。これらは受入順によって、1部目が「保存本」、2部目が「基蔵本」、3部目が「閲覧本」、4部目が「貸出本」、5部目が「デジタル化」、6部目が「閲覧・貸出の代替本」に振り分けられる(図1)。

①保存本

保存本は永久に保存される資料で、旧館の保存本書庫に収められている。完全に保存用なので、原則として閲覧することはできないが、他に複本が無い場合に限ってのみ利用ができる。閲覧請求は旧館の「保存本閲覧室」で受け付けている。

②基蔵本

「基蔵」とは「書」の略で、長期的に保存しかつ利用にも供する資料である。旧館の基蔵本書庫に収蔵されている。同一資料が3部以上ある場合は、出版されてから5年以内は、3部目以降のみが利用できるようになっており、基蔵本は利用することができない。5年が経過すると3部目以降は除籍され、保存本と基蔵本のみが残されるので、以降は基蔵本を閲覧することになる。なお、5年以内であっても同一資料が合計2部しかない場合は、基蔵本が利用できる。旧館の「基蔵書刊閲覧室」で閲覧申請を受け付けている。

③閲覧本

3部目は開架閲覧用で、出版されてから5年間、新館の閲覧室に開架される。前項で紹介した新館「一般図書エリア」の新刊書60万冊がこれにあたる。5年を過ぎると除籍され、状態の悪いものは廃棄され、状態の良いものは財政状況の厳しい地方の図書館などに寄贈される。

以上、①保存本、②基蔵本、③閲覧本は、いずれも館内での利用に限られている。

④貸出本

4部目は貸出本である。出版されてから3年間、旧館の「館外貸出閲覧室」に開架されており、利用者は手続きをして館外に借り出すことができる。3年を過ぎると除籍され、廃棄もしくは他の図書館に寄贈される。

⑤デジタル化

中国国家図書館では、古典籍のみならず新刊書についてもデジタル化を進めており、この作業に5部目を使用する。

⑥代替本

6部目は閲覧本や貸出本が破損した際の代替本として5年間、保管される。5年を過ぎて残ったものは、地方の図書館などに寄贈される。

このように、国立図書館としての使命である資料の保存を保障しつつ、同時に大規模な開架閲覧サービスや館外貸出サービスを提供するには、複本の存在が欠かせない。無論、複本を収集しこれらのサービスを維持するには相応の費用と労力が必要である5。それでも、中国国家図書館が蔵書の一般利用を重視する政策を取っている背景には、中国では公共図書館の整備が十分でなく、同館に対して公共図書館としての機能を求める声が根強いという事情がある。

ただし、そうした要請に応える一方、限られた予算と人的資源のなかで、これらのサービスにどのくらいの力点を置くべきか、また今後も継続していくべきかについては、館内でも議論されているようだ。事実、新館の開館にともなう機構改革のなかで、従来3つあった館外貸出閲覧室を2つに減らすなど、館外貸出にかける比重を減少させている。ある幹部によると、同館が提供している公共図書館の機能のうち、少なくとも館外貸出については、今後の公共図書館の整備状況、および電子図書など代替メディアの進展具合を見ながら、さらに縮小する方向で調整していくつもりだという。

さて、新館のサービスに話を戻そう。

図1 図書の複本と利用

図1 図書の複本と利用

複本の収集-納本と購入-

図書の納本部数は、定価100元未満が3部、定価100元以上およびセット定価1,000元以上が1部。不足分は購入して必要部数を揃える。ただし、高額資料の場合は都合1、2部しか収集しない。 雑誌の納本部数は3部だが、完全に納本されているタイトルは全体の約50%。残り50%のうち、納本部数が足りないものが30%、全くの未納が20%ある。不足分は購入で補う。 新聞の納本部数は1部である。納本率が30%と低く購入で補う必要があるほか、さらに複本の全てを購入で入手するため、図書や雑誌と比べて購入の占める割合が高い。


中国語雑誌(4F)

4階には「中国語雑誌エリア」が設けられ、最新2年分の中国語雑誌が約7,000タイトル開架されている。雑誌の収集部数は3部で、図書と同じく1部目が保存用、2部目が基蔵用、3部目が開架閲覧用となっている。2年を過ぎると1部目と2部目を製本して書庫に収め、3部目は除籍される(図2)。電子ジャーナルについては、PC席で利用カードのID・PWを入力して利用する。

図2 雑誌の複本と利用

図2 雑誌の複本と利用

中国語新聞(4F)

同じく4階にある「中国語新聞エリア」では、中国語新聞約300タイトルを開架している。新聞の収集部数は4部である。他の資料と同じく、1部目が保存用、2部目が基蔵用である。3部目と4部目は開架閲覧用で、出版後の2ヶ月間は3部目をカレントのまま開架する。カレント新聞は利用による傷みが激しいため、2ヶ月後には廃棄して、代わりに簡略製本をした4部目を、2年間、開架する。そして2年後、1部目と2部目を製本した後に、この4部目も除籍される(図3)。

新聞エリアでは紙媒体の新聞のほか、タッチパネル式の大型閲覧器が設置され、ネットで公開されている電子新聞200紙余りを閲覧することができる(写真4)。毎朝クローラー6が自動で採取し、開館時間までには加工が終わっているので、利用者はその日の朝刊を読むことができる。画面を指でなぞればページをめくることができ、拡大縮小も自在である。この閲覧器は、新聞エリアのほか館内の数箇所に設置されていて、デジタル化された所蔵資料やネット上の電子雑誌なども閲覧することができる。

図3 新聞の複本と利用

図3 新聞の複本と利用

写真4 大型閲覧器で新聞を読む利用者

写真4 大型閲覧器で新聞を読む利用者

電子資料閲覧室(4F)

4階にある電子資料閲覧室では、約240ある座席の全てにPCを設置し、利用者が電子資料を自由に利用できる環境が整えられている(写真5)。国内外の電子ジャーナル、データベース、電子図書、視聴覚資料など130種類以上のコンテンツが提供されている7。利用カードのID・PWを入力すれば、1時間は無料で利用できる。インターネットの閲覧も自由だ。1時間を超えると1時間につき3元(1元は約14円)が課金されるので、事前に利用カードにデポジットしておく必要がある。また、ポータブル閲覧器の館内貸与も行なっており、これにPCから電子資料をダウンロードして、館内の随意の場所で利用することもできる(写真6)。

さらに、館内は無線LANが張り巡らされているので、持ち込みのPCで館内LANにアクセスして電子資料を利用することもできる。

写真5 電子資料閲覧室

写真5 電子資料閲覧室

写真6 ポータブル閲覧器

写真6 ポータブル閲覧器

複写サービス

新館内の3箇所に複写カウンターが設けられている。複写したい箇所に短冊を挟んで申込書とともに提出するほか、利用カードにデポジットしておけば、セルフ複写も可能だ。カードを読ませれば自動精算される。料金はモノクロの場合、A4・B5 が1枚0.2元、B4が1枚0.3元である。

おわりに

今回紹介した新館のサービスのほか、中国国家図書館は近年、オンラインチャット方式のレファレンスサービスや、携帯電話を使った情報提供サービス8、視覚障害者向けの電子図書館サービス9など、利用者のニーズに即した新しいサービスを次々と打ち出している。また、電子図書館分野における躍進ぶりも目を見張るものがある。そこからは、ハード・ソフトの両面から総合的に設計された最先端の図書館サービスを提供していこうという強い姿勢が感じられる。

2009年9月には、本館の目の前に地下鉄4号線の駅ができ、交通の便が一段と良くなった。また、近くには北京動物園や紫竹院公園があって、読書や調査研究で疲れた頭を癒すのにも良い環境だ。北京に行く機会があれば、是非とも足を運んでみて欲しい。一見の価値があるだけでなく、繰り返し使ってみたくなる、そんな図書館であること請け合いだ。


1 旧館は南区または一期、新館は北区または二期とも呼ばれる。

2 ICチップが埋め込まれた新式(第二代)の身分証。

3 接触することなくデータを読み取ることができるICタグ。Radio Frequency Identification

4 『永楽大典』、『趙城金蔵』、『文津閣四庫全書』、敦煌遺書

5 2008年の中国語の図書・雑誌・新聞の購入経費は約1,145万元(『中国国家图书馆馆史』李致忠主编 国家图书馆出版社 2009.8 p.398)

6 ネット上の資源を収集して自動的にデータベース化するプログラムロボット。

7 提供コンテンツはホームページで確認できる。http://dportal.nlc.gov.cn:8332/nlcdrss/database/sjk_lb.htm

8 新着情報の配信、蔵書検索、閲覧予約、電子資料の閲覧など。

9 http://www.cdlvi.cn/

 (URLの最終アクセスは全て2009年11月6日)

(まえだ なおとし)

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