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インド国家ポータル―政府情報へのアクセスをめぐって: アジア情報室通報 第8巻第3号

アジア情報室通報 第8巻第3号(2010年9月)
西願博之(国立国会図書館関西館アジア情報課)

1. はじめに

立法・行政・司法の三権にわたる政府機関ウェブサイトを閲覧する際、一元的なアクセスポイントとなる政府ポータルサイトは、先進国・途上国の別を問わず今や世界的に普及しており、政府機関リンク集や施策情報の提供はもとより、納税手続き、証明書発行といった行政サービスが行われている例もある。このように政府ポータルは、情報発信を通じた政府機関の透明性・説明責任の向上、並びに行政サービスのオンライン化に伴う市民の利便性向上に寄与している。諸外国の事例では、とりわけアメリカ合衆国のUSA.gov1、シンガポールのSingapore Government Information2、韓国の국가대표포털(国家代表ポータル)3が先進的取り組みとして注目されてきた。我が国でも2001年以来、国の「電子政府の総合窓口」(e-GOV)4が稼働しており、法令情報や行政手続案内のほか、各種申請・届出のための「電子申請システム」が提供されてきた。

インド政府も2005年、電子政府推進の一環としてインド国家ポータル(National Portal of India: NPI)5を開設した。本稿ではこの政府ポータルを取り上げ、政策的経緯、利用状況等の概要(2章)を述べた後、コンテンツの基本的用法(3.1)について説明し、重要コンテンツと言える政府文書(3.2)とビジネス関連情報(3.3)に注目して、やや詳しく論じていく。なお、公式判例データベースJudgment Information System(JUDIS)6をはじめとする、各種政府情報のデータベースの用法に関しては、国立国会図書館関西館アジア情報課が昨年実施したアジア情報研修「現代インド情報の調べ方」の配布資料7を参照されたい。

2. 概要

インドでは、政府機関の保有情報に対する国民の権利を定めた情報権利法(Right to Information Act, 2005)が2005年に制定され、すべての政府機関が保有文書を遅滞なく電子化し、全国からネットワーク経由でアクセスできるよう整備する義務を負うこと8とされた結果、政府機関によるウェブサイト開設の動きは、一層確かな潮流となっている。このような中で、同年には、政府サイトへのワンストップ・アクセスを可能とするNPIも一般公開されるに至った。

電子政府の文脈では、インド政府は2006年に国家電子政府計画(National e-Governance Plan: NeGP)を発表し、国家主導による電子政府化推進のため、行政サービスの電子化を中心とする27プロジェクト、及び全国規模でのIT機器・ITネットワーク網の整備を進めてきた。NeGPのビジョンは、「公共のサービス提供経路を用いて、一般人が居住地からすべての政府サービスにアクセスできるようにするとともに、手ごろなコストで政府サービスの効率性、透明性、信頼性を実現することにより、一般人の基本的ニーズを満たす」9点にあり、NPIも上記27プロジェクトの一つに位置づけられている。

NPIの開発・運用を所管しているのは、連邦政府通信・IT省IT局の付属機関に当たる国家情報学センター(National Informatics Centre: NIC)である。NICは、NICNETと呼ばれる基幹ネットワークを経由して、全国の政府機関に対してシステムの設計・保守に係る支援を行うなど、国内において電子政府化の中心的担い手となっている。NPIの設計は、World Wide Web Consortium(W3C)が策定したWeb Content Accessibility Guidelinesほか国内外の各種基準を踏まえたGuidelines for Indian Government Websites10に則っており、視覚障害者に配慮した文字拡大・縮小機能の装備や、文字読み上げソフトへの対応、また、サイト内での統一的インターフェイスの採用といった工夫がなされている。

NPIは英語、ヒンディー語11の2言語版で公開されており、毎月約100万人にも達するサイト訪問者のうち、6割をインド国内、他の2割をアメリカ合衆国のユーザーが占めている12。NPIの開発に際しての想定ユーザーには、インドの国民・政府機関・企業や、インドと関わりを持つ外国政府・外国企業はもちろんのこと、国内外のメディア機関や世界中の一般市民までも含まれている13

3. コンテンツ

NPIのコンテンツは、連邦、州・連邦直轄領14、地方自治体の政府機関が作成しており、National Portal Content Framework15という共通基準の下で、収録情報の標準化が図られている。2009年時点のコンテンツは、政府文書約7,000件、行政書式4,000件以上、行政手続案内・オンライン行政サービス1,498件、法律1,357件、規則815件、告示1,033件、社会福祉計画825件、政府機関連絡先996件ほか、多岐に渡っている16

NPIのトップページ(図表1)にはいくつかのセクションが設けられており、GOVERNMENT、CITIZENS等の分野別セクションに関しては、各セクション名をクリック(ただし、SECTORS、KNOW INDIA、BUSINESSについては、さらに ▷▷ もクリック)するか、トップページ右上のSite Mapをクリック後、各フォルダを展開すれば、収録カテゴリー一覧(図表2)を参照することができる。分野別セクション以外にも、行政手続案内・オンライン行政サービスに特化したHOW DO I ?、インド国営テレビ放送(Doordarshan)の最新ニュースを扱うNEWS UPDATE、連邦政府情報放送省報道情報局(Press Information Bureau: PIB)の最新プレスリリースを提供するPRESS RELEASES等のセクションも用意されている。さらに、トップページ中段右端のDOCUMENTSやGOVT. WEBSITESをクリックすると、それぞれ政府文書の検索用ページ、政府機関リンク集を直接開くことができる。

NPIのトップページ
図表1 NPIのトップページ(http://india.gov.in/)

セクション カテゴリー
GOVERNMENT ①インド憲法、②政府要人、③国会、④政府機関リンク集、⑤規則、⑥法律、⑦社会福祉計画、⑧政府職員コーナー、⑨情報・放送省出版局の刊行物リスト、⑩政府機関連絡先、⑪地誌
CITIZENS ①保健、②教育、③雇用、④住宅、⑤高齢者コーナー、⑥警察・司法、⑦旅行・観光、⑧銀行・保険、⑨租税、⑩農業、⑪農村のインド人
OVERSEAS ①インドを訪れる、②インドで学ぶ、③国外在住インド人、④インドのパスポート・ビザ、⑤在インド外国大使館・領事館、⑥インド旅行のためのアドバイス
SECTORS ①農業、②商工業、③財政、④通信・IT、⑤国防、⑥教育、⑦農村開発、⑧水資源、⑨消費者問題・食糧・公共配給、⑩運輸、⑪科学技術、⑫保健・家族福祉、⑬環境・森林
KNOW INDIA ①インドの概要、②国のシンボル、③文化・遺産、④州・連邦直轄領、⑤県、⑥フォトギャラリー、⑦キッズコーナー、⑧私のインド、私の誇り、⑨正義と法、⑩歴代の政府要人、⑪インドと世界
BUSINESS ①ビジネスの開始、②ビジネスの拡大、③ビジネスの経営、④ビジネスにおける資金調達、⑤インド国外でのビジネス、⑥ビジネスの中止・変更、⑦法的側面、⑧コーポレートガバナンス、⑨在外インド人の投資機会、⑩土地取得:再定住・再建、⑪イノベーションとビジネス、⑫よくある質問、⑬経済インフラ、⑭投資:機会とインセンティブ、⑮インド経済、⑯貿易、⑰課税、⑱工業・サービス業、⑲消費者の権利、⑳農業・農業関連部門における企業家精神、○21中小企業に関わる諸問題、○22産業のアウトソーシング、○23輸入者・輸出者
図表2 分野別セクションのカテゴリー一覧

3.1 基本的用法

それではここで、「インド政府のIT政策を調べる」という事例を通して、NPIの基本的用法について説明したい。このケースでは、主に以下3つの調査方法が考えられる。

(1)所管機関のウェブサイトから調べる

第一の方法は、IT政策の所管機関を特定後、当該機関のウェブサイトを見つけ出し、そのサイト内で政策情報を探すというものである。NPIトップページでGOVERNMENTをクリック後、カテゴリー一覧からWebsitesを選択する、あるいはNPIトップページ中段右端のGOVT. WEBSITESをクリックすると、NPIと同じくNICが開発・運用している政府機関リンク集Government of India Web Directory(GOI Web Directory)17が現れる。そのトップページ中央は、連邦政府、州・連邦直轄領、全国の立法機関、全国の司法機関の4つに分かれており、このうちUnion Government内Ministriesを選ぶと、連邦政府の省名一覧が表示される。ここで、IT政策の所管機関と推測されるMinistry of Communications and Information Technologyを選べば、通信・IT省の内部部局、下部機関等が列挙され、そのうちDepartment of Information Technology(DIT)を選ぶと、通信・IT省IT局のウェブサイト18に辿り着く。トップページ中央には、サイバー法・サーバーセキュリティ、電子政府等、IT政策の下位分野が並んでおり、例えばe-Governance内National e-Governance Planを選択すると、NeGPの概要を知ることができる。

なお、インドの政府機関に関するリンク集として、国立国会図書館ウェブサイト内「リサーチ・ナビ」のコンテンツ「AsiaLinks-アジア関係リンク集-」19(以下AsiaLinks)にも、約300機関へのリンクが用意されている。AsiaLinksトップページで「国・地域から探す」内「インド」を選択後、「機関から探す」内の各カテゴリーを選ぶと、関係機関のリンク集が現れる。AsiaLinksの特長として、収録機関を厳選しており、一部機関名には日本語訳を付す点が挙げられるが、政府機関の網羅的収録という点に限れば、約5,000機関を収録するGOI Web Directoryの方が格段に優っている。このため、連邦政府の著名な機関のウェブサイトを探す場合にAsiaLinksを用いる一方、州レベルの機関についてはGOI Web Directoryを利用するなど、リンク集を使い分ける余地もある。

(2)SECTORSセクションを活用する

NPIの利用経験を重ね、サイト構成を把握できてくると、NPIトップページで試しにSECTORSを選択し、関連カテゴリーを探すこともできる。SECTORSセクションの各カテゴリーは主要行政分野に対応しており、このうちCommunications&ITを選ぶと、Communication and IT - Sectors: National Portal of Indiaのページ(図表3)が現れる。このページでは、通信・IT政策に関する入門的説明に続いて、Statistics, Reports and Publications等のサブカテゴリーが設けられており、例えばMajor Initiatives in the Communication and IT Sector内E-Governanceを選べば、NeGPについてのまとまった説明を読むことができる。また、Policies and Plansをクリック後、Department of Information Technology, Policiesを選ぶと、通信・IT省IT局のウェブサイト内Policies/Guidelinesのページが開き、IT分野のガイドライン類を参照することができる。図表3のページ下方には、連邦政府通信・IT省や、各州・連邦直轄領のIT関連機関へのリンクも用意されており、国内の動向をシームレスに調べることができる。

図表3 通信・ITのページ

図表3 通信・ITのページ(http://india.gov.in/sectors/communication/index.php)

(3)サイト内検索を利用する

最後の方法として、NPIトップページ右上のSearch欄にITと入力し、右隣りの ▶ を押せば、サイト内検索を行うことができる。この場合、検索結果上位にCommunication and IT - Sectors: National Portal of Indiaという見出しが見つかり、これを選ぶと上記図表3のページが現れる。また、検索語をInformation Technologyとした場合、検索結果上位のBusiness Portal of India: Industry and Services: Services Sector: Information Technology and IT Enabled Servicesを選べば、3.3で後述するBusiness Portal of Indiaのコンテンツが表示され、IT産業の規模についての説明ほか、ビジネス的観点から見たIT政策概説を読むことができる。

3.2 政府文書

NPIのコンテンツのうち特に重要なものの一つに、政府機関が作成した年次報告書、予算文書等の政府文書が挙げられる。NPIトップページ内DOCUMENTSより文書検索用ページを開くと、連邦又は州・連邦直轄領の政府機関名、文書の種類、キーワードをそれぞれ指定して、掛け合わせ検索を行うことができる。文書の種類のみ指定して検索すると、収録文書の内訳は、年次報告書223件、予算文書191件、センサス関係文書20件、市民憲章20333件、通達類419件、官報公示通知864件、ガイドライン379件、計画文書232件、政策文書402件、調査報告書193件、統計報告書197件、連邦政府機関・州の概要42件、その他2,565件となる。検索結果一覧から希望文書を選ぶと、当該文書の掲載ウェブページURL、使用言語等のメタデータが表示され、ハイパーリンク形式のURLをクリックすれば、本文を直ちに閲覧することができる。

もっとも、現状では、連邦政府50省中31省の文書しか収録されておらず、総文書数は255件、収録機関当たりの平均文書数は7.5件と算出される。省別では最も多い順に、商工省28件、財務省21件、人事・苦情処理・年金省16件となっており、例えば商工省の場合、政策文書のForeign Trade Policy 2009-14や統計報告書のTea Statisticsが収められている半面、年次報告書と予算文書はいずれも未収録となっている。他方、州レベルでは、全国28州・7連邦直轄領のうち26州・6連邦直轄領の文書が収録されており、地方政府当たりの平均文書数は177件となる。州別では最も多い順に、マディヤ・プラデーシュ州896件、オリッサ州636件、ミゾラム州579件、ヒマーチャル・プラデーシュ州423件となっており、このうちオリッサ州の場合、予算文書だけで19件に上り、Budget Speech 2009-10やBudget at a glance, 2009-10を参照して、州予算の概要と詳細を知ることができる。ただし、ビハール州、マハーラーシュトラ州、西ベンガル州のように、8,000-9,000万人の人口を擁する大規模州にも関わらず、収録文書数が1件にすぎない例もある21

以上のような事情から、文書検索用ページにも説明があるとおり、現時点では、政府文書が十分網羅的に収録されているとは言い難い。もっとも、西ベンガル州の例では、NPI内の文書数は非常に少ないものの、州政府のウェブサイト22には、予算文書や調査報告書が収録されている。従って、政府文書に関する正確な調査を行うためには、NPIの検索結果にとどまらず、各政府機関のウェブサイトも合わせて参照する方が望ましいと言える。

3.3 ビジネス関連情報

インドは、BRICs諸国の一角として急速な経済成長を続けており、安価で大量の労働力を擁すると同時に巨大な消費市場であることから、外国企業の進出先としても関心が高まっている。こうした中で、インドのビジネス関連情報に対するニーズは国内外で増大しており、NPI内のビジネスポータルサイトBusiness Portal of India23には、ビジネスの開始、ビジネスの拡大といった局面ごとに、経済事情・経済制度に関する解説が用意されている。

Business Portal of India のトップページを開くには、NPIトップページ内BUSINESSをクリック後、セクション右下の ▷▷ をクリックすれば良い。そうすると画面右側に23カテゴリーが列挙され、例えばLEGAL ASPECTSを選ぶと、会社設立、資本調達等を規定している基本的法律が1956年会社法であることが分かる。ここでさらに、ページ左上のサブカテゴリーIndustrial Acts and Legislationsを選択後、画面右側のCompanies Actをクリックすると、会社法についてのやや詳しい説明を読むことができる。もう一つの例として、INDIAN ECONOMYを選んだ場合には、鉱工業生産指数、消費者物価指数ほか、主要経済指標の意味を知ることができる。続いて、ページ左上のStudies/Surveys/

Reportsを選べば、インド準備銀行、連邦政府財務省経済局、同統計・計画実施省等の刊行物へのリンク集が現れ、ここから簡単に、経済分野の重要な一次情報へアクセスすることができる。

なお、日本語で書かれたウェブ情報源として、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ウェブサイト内「海外ビジネス情報」のインド24のページには、ビジネスニュースや、貿易為替制度及び投資制度に関する説明が掲載されており、インドの政府情報を理解する上での手助けとなることもある。

4. おわりに

最後に、改めてNPIの特長を要約すれば、インドの政府情報に係る一元的アクセスポイントとして、統一的インターフェイスや分野別セクションを導入することにより、政府機関のリストや各機関の所管事項についての知識を前提としなくとも、ユーザーが目的の情報へ到達できるようになっていると言える。ただし、NPIの利用に当たっては、政府文書の例に限らず、コンテンツの網羅性が必ずしも保証されない点に注意を要する。NPIのNewsletter25にも紹介があるとおり、コンテンツの更新・新設に向けた努力は続いており、今後の一層のコンテンツ充実を経て、政府ポータルとしての価値が高まることを期待したい。


(URLの最終アクセスは全て2010年8月31日)

(さいがん ひろゆき)

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