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アジア古代都城関連文献: アジア情報室通報 第8巻第4号

アジア情報室通報 第8巻第4号(2010年12月)
阿部健太郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

2010年は平城遷都1300年として、奈良の各地で関連行事が行われた。当館関西館でも、データベースフォーラムにおいて平城京をテーマに、当館のデータベースの使い方を解説1、アジア情報関連のデータベースについても、アジアの都城を具体例として解説した。そこで本稿では、中国の都城を中心に、アジアの古代都城について、参考文献の紹介を主眼に概説したい。

なお、紹介する参考文献は当館関西館アジア情報室所蔵資料を中心とし、本稿執筆時点で閲覧可能な当館所蔵資料については、【】内に当館請求記号を記した。

1 中国

東アジアの古代都城の起源である中国の古代都城を概観した日本語資料については、最近では劉慶柱「中国古代都城史の考古学的検討」2があり、かなり古いが駒井和愛「中国の都城」3は、都城における王城の位置という視点から、戦国時代の魯及び趙から元の大都、上都までの都城の流れを概観している。中国語資料では曲英杰『古代城市』4が、都城についてもまとまっている。

図録としては、『中国都城历史图录』5、文化財研究所奈良文化財研究所編『日中古代都城図録』6が有用である。とくに『中国都城历史图录』は、中国の都城のみならず、辺境民族政権の都城の解説があり、また中国都城研究の文献目録も掲載されている。『日中古代都城図録』には、唐長安城や隋唐洛陽城に関する図面が多数掲載されている。

辞典類では、『中国都城辞典』7 、『中华都城要览』 8がある。

考古学による発掘調査の成果も、徐々に蓄積されてきた。それを簡潔にまとめたのが、中国社会科学院考古研究所编著『新中国的考古发現和研究』9である。30年間の中国考古学の成果を概観しており、都城に関しては、漢長安城、漢魏洛陽城10 、隋唐洛陽城、唐長安城(隋大興城)などの発掘調査の成果がまとめられている。なお、慕容鮮卑の吐谷渾の都城、鉄卜卡故城(伏俟城)についても若干言及されている。この資料は日本語にも翻訳されている11

漢の長安城については、概説に刘庆柱・李毓芳『汉长安城』12がある。城壁や城域、平面形制や城門などのほか、未央宮や長楽宮、北宮や桂宮などの各宮殿や武庫、礼制建築、市場や離宮、苑池などの概要が記述されている。未央宮13や桂宮14、武庫15や礼制建築16については個別報告書も刊行されている。

2 隋唐

隋唐の長安城、洛陽城の概説には、多少古いが宿白「隋唐长安城和洛阳城」 17、马得志「唐代长安与洛阳」18があり、発掘調査の成果を踏まえて概説している。

中国の古代都城は、唐の長安城において一応の完成をみたといえる。唐長安城については、基礎的な発掘調査概報19の他にも、明徳門20などの個別遺構についても報告がなされているが、とくに目立った成果を挙げているのが、大明宮の発掘である。中国社会科学院が1950年代から継続して発掘調査を実施し、その成果を『唐長安大明宮』21及び『唐大明宫遗址考古发现与研究』22として刊行している。

工具書としては、清の徐松による『唐兩京城坊攷』を挙げなければならない 23。唐の西京(長安城)及び東京(洛陽城)の宮城や皇城、各坊に存在した宮殿、官署、寺院・道観、邸宅などの所在地を考証、復元したものである。日本語にも翻訳されており24、唐の長安城を調べるには必読の書である。

また、『唐代研究のしおり』5~7、いわゆる平岡武夫『唐代の長安と洛陽』索引篇・資料篇・地図編も有用である25。本書は、上記の『唐兩京城坊攷』のほか、『長安志』『河南志』『両京新記』など、長安城および洛陽城の研究に有用な史料を集め影印した資料篇、それらの史料にみえる両城に関する語彙を集めた索引篇、関連地図を収集し、論考と併せて掲載した地図編からなる。

3 朝鮮その他

三国時代の朝鮮の都城全般の概説としては、多少古いが、田中俊明「朝鮮三国の都城制と東アジア」26のみ挙げておく。

高句麗の都城については、領土的な問題から、中国、北朝鮮両者の研究を参照する必要がある。日本語では東潮・田中俊明編著『高句麗の歴史と遺跡』27 、最近の中国側の概説として魏存成『高句丽遗迹』28、北朝鮮側のものとして최승택『고구려의 성곽』29が、国内城(丸都城。山城子山城、通溝城)や平壌城(大城山城、清岩里土城、長安城)のほか安鶴宮についても記している。

新羅、百済の都城については、新羅王京や百済の熊津、泗沘の王京や羅城、都城(公山城、扶蘇山城)などに関する概説に東潮・田中俊明編著『韓国の古代遺跡』1新羅篇(慶州)・2百済・伽耶篇30、高田貫太・庄田慎矢「朝鮮半島の古代都城」31がある。発掘調査報告書には、新羅の國立慶州文化財硏究所編『新羅王京』32を挙げておく。

最近では、渤海都城の研究の進展が著しい。渤海も高句麗同様、領土的な問題から、中国、北朝鮮、ロシアの研究動向に目を配らなければならない。中国側の概説的な見解を知るには朱国忱・朱威『渤海遗迹』33、北朝鮮側に関しては김종혁・리창언『발해의 성곽과 건축』34が有用である。

渤海については、上京龍泉府(黒竜江省寧安市東京城)35のみならず、東京龍原府(吉林省琿春市八連城)36など、五京の各都城について調査研究が進んでいる37。とくに黑龙江省文物考古研究所编著『渤海上京城 : 1998~2007年度考古发掘调查报告』38の刊行は特筆すべきであろう。編著者による上京龍泉府の発掘調査報告書で、これにより上京龍泉府の研究が一段と深化することが期待される。現在地比定に諸説ある都城の比定は今後の発掘調査の進展に期すところが大きく、とくに南京南海府に比定する説もある青海土城(北青土城。北朝鮮咸鏡南道北青郡)については、発掘調査の進展と成果の公開が期待される。

そのほか、TONG Trung Tin「ハノイの宮殿遺跡の実態―大羅城(7~9世紀)と昇龍城の遺跡(11~18世紀)」39が、ベトナムの首都ハノイに7世紀から9世紀にかけて存在した都城Thành Đại La(大羅城)について紹介している。

4 おわりに

紙幅の関係上、本稿に挙げた参考文献は東アジアの古代都城を概観するには不十分かもしれない。とくに高句麗や渤海については、その領土が複数の国にまたがっており、それらの研究成果を十分に把握できていない感は否めない。これについては稿を改めて紹介したい。

(あべ けんたろう)


1. 当日の資料は、以下のページからアクセスできる。(http://www.ndl.go.jp/jp/dbforum/handouts.html)

2. 『東アジアの古代都城』奈良文化財研究所、2003、pp.7-48【GE71-H3】

3. 『日本古代と大陸文化』野村書店、1948、pp.131-167

4. 20世纪中国文物考古发现与研究丛书第2批第3辑、文物出版社、2003【KA421-C4】。中国語。

5. 兰州大学出版社、1986【GE75-C44】。中国語。

6. 文化財研究所奈良文化財研究所、2002【GB161-H20】

7. 江西教育出版社、1999【GE8-C96】。中国語。

8. 河南大学出版社、1989【GE257-C49】。中国語。

9. 文物出版社、1984【GE75-111】(カード目録所載)。中国語。『中国社会科学院文庫』本(方志出版社、2007)【GE75-C384】も所蔵。

10. 漢魏洛陽城については、中国科学院考古研究所洛阳工作队「汉魏洛阳城初步勘查」(『考古』1973-4【Z8-AC162】)も参照。

11. 『新中国の考古学』(中国社会科学院考古研究所編著、関野雄監訳、平凡社、1988)【GE75-E2】

12. 20世纪中国文物考古发现与研究丛书第2批第4辑、文物出版社、2003。中国語。

13. 中国社会科学院考古研究所编『汉长安城未央宫』上下、中国大百科全书出版社、1996【GE75-C244】。中国語。

14. 中国社会科学院考古研究所・日本奈良国立文化财研究所编著『汉长安城桂宫』文物出版社、2007【GE75-C395】。中国語。

15. 中国社会科学院考古研究所编著『汉长安城武库』文物出版社、2005。中国語。

16. 中国社会科学院考古研究所编著『西汉礼制建筑遗址』文物出版社、2003【GE75-C400】。中国語。

17. 『考古』1978-6【Z8-AC162】。中国語。

18. 『考古』1982-6【Z8-AC162】。中国語。

19. 陕西省文物管理委员会「唐长安城地基初步探测」(『考古学报』1958-3【Z202.5-Ko7】)、中国科学院考古研究所西安唐城发掘队「唐代长安城考古纪略」(『考古』1963-11【Z8-AC162】)。ともに中国語。

20. 中国科学院考古研究所西安工作队「唐代长安城明德门遗址发掘简报」(『考古』1974-1【Z8-AC162】)。中国語。

21. 中國科學院考古研究所編著、科學出版社、1959【222.002-Ty9962t2】(漢籍目録所載)。中国語。

22. 中国社会科学院考古研究所・西安市大明宫遗址区改造保护领导小组编、文物出版社、2007【GE75-C333】。中国語。

23. 『連筠簃叢書』本【216-18】、『畿輔叢書』本【248-1】、『叢書集成初編』本(商務印書館、1936)【082.1-So654】(以上、漢籍目録所載)【XP-A-22780~2】、『中国古代都城資料選刊』本(中華書局、1985)【GE277-C4】を所蔵。すべて中国語。

24. 『唐両京城坊攷』(徐松撰、愛宕元訳注、平凡社、1994)【GE277-E7】。ただし、原文に注として付された考証やそれに用いられた史料が省かれている。

25. 京都大学人文科学研究所、1956。当館では、復刻版(同朋舎出版、1977)【GE277-58】を所蔵。

26. 上田正昭編著『古代の日本と東アジア』小学館、1991、pp.391-422【GB161-E92】

27. 中央公論社、1995【GE73-E24】

28. 20世纪中国文物考古发现与研究丛书第2批第4辑、文物出版社、2002【GE73-C1】。中国語。

29. 조선고고학총서28중세편4、사회과학원 고고학연 구소、2009【GE73-K247】。朝鮮語。

30. 中央公論社、1988-1989【GE73-E1】

31. 『考古学ジャーナル』599、2010【Z8-183】

32. 國立慶州文化財硏究所、2001-2002。朝鮮語。

33. 20世纪中国文物考古发现与研究丛书第1批第4辑、文物出版社、2002【GE75-C302】。中国語。

34. 조선고고학총서42중세편18、사회과학원 고고학 연구소、2009【GE73-K247】。朝鮮語。

35. 『東京城』(東亜考古学会、1939)【222.5-To347t】、中国社会科学院考古研究所编著『六顶山与渤海镇』(中国大百科全书出版社、1997、中国語)。

36. 『間島省古蹟調査報告』(満州国民生部、1941)、斎藤甚兵衛『半拉城』(琿春縣公署、1942)。

37. 中京顕徳府(吉林省和龍市西古城か)については、宋玉彬主编・吉林省文物考古研究所 [ほか] 编著『西古城 : 2000~2005年度渤海国中京显徳府故址田野考古报告』(文物出版社、2007。中国語。)参照。

38. 文物出版社、2009【GE75-C414】。中国語。

39. 『東アジアにおける古代都市と宮殿』奈良女子大学21世紀COEプログラム古代日本形成の特質解明の研究教育拠点、2005、pp.118-152【GE114-H22】

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