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東亜図書館協会(CEAL)・アジア学会(AAS)2011年年次大会に参加して―出張報告: アジア情報室通報 第9巻第2号

アジア情報室通報 第9巻2号(2011年6月)
鴇田潤(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

2011年3月27日から4月1日にかけて東亜図書館協会(Council on East Asian Libraries。以下、CEAL)の年次大会がホノルルで開催された。また3月31日から4月3日にかけてはアジア学会(Association for Asian Studies:AAS)の年次大会が同地で開催された。

今回、CEALの要請で3月30日にCEAL中国資料委員会・日本資料委員会・韓国資料委員会の合同会議(以下、CEAL CJK合同会議)で発表し、両大会に参加する機会を得たので報告する。当館からは2名が参加した。

また、CEALと多くメンバーを共有する北米日本研究資料調整協議会(North American Coordinating Council on Japanese Library Resources:NCC)や、4月1日に訪問したハワイ大学モアナ校ハミルトン図書館についてもあわせて紹介したい。

なお、この2011年AAS大会は国際アジア研究者会議(International Convention of Asia Scholars:ICAS)との共同開催である。

1 CEAL(http://www.eastasianlib.org/

CEALはAASの下部組織で1958年に設立された。公共サービス委員会、整理技術委員会など9つある委員会のうち、日・中・韓(CJK)三国それぞれの資料ごとに、中国資料委員会(Commitee on Chinese Materials:CCM)、日本資料委員会(Committee on Japanese Materials:CJM)、韓国資料委員会(Committee on Korean Materials:CKM)が置かれている。例年、各委員会から別々に報告がなされていたが、今年はジョイントセッションの形で会議が行われた。CEAL及び関連ミーティングのおもな日程は以下のとおりである。(/は同時開催)

なお、会場はおもにCEALがヒルトンハワイアンビレッジ、AASがハワイコンベンションセンターで行われた。

3月27日-28日
  • 韓国資料委員会ワークショップ:韓国研究司書
3月29日
  • OCLC CJKユーザーズグループ/CEAL常任幹事会I
  • CEAL全体会議I ビジネス
    • 開会の辞(Joy Kim)
    • 新旧役員の交代・表彰(Joy Kim)
    • 東日本大震災に関する特別報告(岡本真)
    • 質疑応答
    • 役員選挙結果(Cathy Chiu)
    • 告知2件
  • CEAL全体会議II プログラム
    • 発表者紹介(Joy Kim)
    • 東アジア研究のための電子的架橋:研究者の視点から(Evelyn Rawski)
    • 緊縮財政時代の協力:モデルと展望(James Simon)
    • 青でなく褐色の目で見る:視点を変えて展望する研究図書館のローカルとグローバル(Paula Mochida)
    • 質疑応答
  • CEAL公共サービス委員会
    • 開会の辞ならびに発表者の紹介(坂口英子)
    • 中美図書館合作会議と会議後のイニシアチブ(Anchi Hoh)
    • 東アジア言語の電子書籍:研究図書館員として知っておくべきこと(Dr. Jidong Yang)
    • 1930年代東アジアにおける構成主義競合:デジタルコラボレーションの必要性を訴える(Suzie Kim)
    • Googleブックスの読みやすさ評価(Ryan James)
    • 質疑応答
  • CEALフェローシップディナー
3月30日
  • CEAL常任幹事会I
  • CEAL CJK合同会議(詳細は次節を参照)
  • CEAL整理技術委員会
    • 開会の辞(Sarah Elman)
    • CEALメンバー3名による発表
    • パネルディスカッション
    • 整理技術委員会からの報告4件(Sarah Elman)
  • CEALメンバーシップ委員会
    • ラウンドミーティング2件
  • /NCC:日本の電子書籍に関するオープンミーティング/族譜と東アジアディアスポラグループ
  • 韓国資料コンソーシアム(KCCNA):クローズドミーティング/中国研究司書協会(SCSL)のイベント
3月31日(/AAS年次大会)
  • CEAL整理技術委員会:映像資料の目録作成に関するワークショップ
  • 社史グループ主催AASワークショップ(セッション191)
  • CEAL小コレクションラウンドテーブル/東アジアの科学技術・医学に関するワーキンググループ
4月1日
  • 江戸以降の日本資料の管理と取扱いに関するワークショップ
  • NCC主催AASワークショップ:日本に行かずに日本研究:デジタル資源と新戦略(セッション324)
  • NCC主催AASラウンドテーブル:日本の電子書籍:研究の新地平(セッション365)
4月2日-3日
  • AAS年次大会

2 CJK合同会議

3月30日に行われた会議の日程・発表者は以下のとおりで、筆者はセッションIトピック2において、「日本における中国・朝鮮古籍の概要」と題し、日本国内の所蔵と研究動向について報告した。またトピック1では当館から大場利康・電子図書館課長が日中韓電子図書館イニシアチブについて報告を行った。

セッションI 日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)及び日中韓地域研究資源の共有
  • 開会の辞及び日中韓各資料委員会メンバー並びにファーストパネル発表者紹介(姚張光天、ハワイ大学図書館中国研究司書)
トピック1 日中韓電子図書館イニシアチブ
  • われわれは効果的に伝達できているか:CJKDLIメタデータ見当合わせ(パク・ジノ、韓国国家電子図書館)
  • 電子図書館技術によるアジア文化の普及と保護(魏大威、中国国家図書館副館長)
  • 日中韓電子図書館イニシアチブと国立国会図書館:国立国会図書館の新たなポータルサービス(大場利康、国立国会図書館関西館)
  • 質疑応答
トピック2 日中韓地域研究資源の共有
  • セカンドパネル前言及び発表者の紹介(キム・ハナ、トロント大学鄭裕彤東亜図書館韓国研究司書)
  • 韓国における中国・日本資料(ポン・ソンギ、韓国国立中央図書館古籍館長)
  • 台湾における日本・韓国コレクション:台湾中央研究院を例に(崔燕慧、台湾中央研究院人文社会科学聯合図書館長)
  • 日本における中国・朝鮮古籍の概要(鴇田潤、国立国会図書館関西館)
  • アジア歴史資料センター・デジタルアーカイブの中国・韓国関係資料(清井美紀恵、国立公文書館アジア歴史資料センター次長)
  • 質疑応答
セッションII 東アジア司書及び越境する日中韓地域研究資料の発展と管理
  • サードパネル前言及び発表者の紹介(中村治子、CEAL日本語資料委員会委員長、イェール大学東アジア図書館日本コレクション司書)
  • 研究図書館協会(ARL)指導キャリア開発プログラムとその反響(陳粛、ミネソタ大学東亜図書館長)
  • 喜びと痛み:アジア研究司書の新体験(呉憲、ミシガン州立大学アジア研究書誌学者)
  • 日中韓小コレクションのためのコレクション拡大(シャロン・ドマイヤー、マサチューセッツ大学東アジア研究司書)
  • 次世代東アジア研究司書のための文献案内計画(安里のり子、ハワイ大学図書館情報学講座准教授)
  • 質疑応答
告知・報告
  • ユン・ジヨン(韓国基金韓国研究部門企画室)
  • ヘレン・キム(北米韓国資料コンソーシアム議長)
  • ホー・アンチー(米国議会図書館アジア部門次長)
  • 中村治子(日本語資料委員会委員長)

3月27日-28日の韓国資料委員会ワークショップ開催、30日の韓国料理店でのフェローシップディナーに引き続き、質疑応答においても、とくに韓国関係者の自国の資料・発表に対する関心の高さが感じられた。

今回このような形ではじめて合同会議が行われたが、今後も継続して行われることが期待される。

3 AAS(http://www.asian-studies.org

AASの創立は1941年で、2011年で70周年を迎えた。開催されたセッションの数は、「中国及び内陸アジア」183、「日本」111、「南アジア」58、「東南アジア」89、「複数領域にまたがるもの」276、「コリア」38、及び、追加3の合計758セッションが行われた。

筆者の関心は、図書館、出版のほか、地域としてはおもに中国にあったので、関連のセッションに参加(聴講)した。「日本」テーマのセッションも多く、日本からも多くの参加があったようである。「コリア」は38と数字の上では少ないが、自国の資料に関するテーマにおいては質疑で積極的に発言する姿が目立った。

討論参加者のなかには、中国の書物・出版文化の研究で有名なルシル・チア(Lucille Chia)やシンシア・ブロコウ(Cynthia J. Brokaw)、中国文献学の呉格(上海復旦大学古籍整理研究所教授)のほか、科幻小説(SF)研究の呉岩(北京師範大学)、また、今回参加を逃したが、セッション37には、中国の女性史研究で、清末上海の娼妓と知識人の遊戯文化について論じた著書があるキャサリン・イエ(Catherine Vance Yeh)の名前も見えるなど、じつに豪華な顔ぶれであった。

おもな参加(聴講)の日程は以下のとおりである。

3月31日
  • 中華帝国における地方民間信仰と共同体の儀礼(Session 34)
  • 出版における諸問題:私の本はなぜ出版を断られるのか?学術出版に関するワークショップ(Session 44)
  • 中国近代文学におけるユートピア、冒険、SF小説(Session 120)
  • 図書館と資料(Individual Papers)(Session 141))
    内容は、ブータン国立文書館:過去を保存し未来を建設する(Felicity M. Shaw)、米国議会図書館における中国研究のための電子資料(Yuwu Song)など
  • 明代中国の出版における偽造、模造、模倣(Session 200)
4月1日
  • ラウンドテーブル:中国古籍出版の趨勢と挑戦(Session 289)
    「中国古籍出版的趨勢與挑戦」と題され、司会進行など一部を除き発表はすべて中国語で行われた。内容は、中国古籍整理出版事業概観(李岩、中華書局)、《中国古籍総目》的編纂出版及其対古籍整理出版工作的意義(呉格、上海復旦大学古籍整理研究所教授)、中国古籍出版的数字化現状與展望(李岩)、台湾中文古籍数位化加値兼述漢学研究発展現況(曾淑賢、台湾国家図書館長)
  • 道教万神殿の構造と儀礼におけるその機能(Session 327)
4月2日
  • 前近代中国における宗教文化としての建築(Session 419)
  • 文人から知識人へ:清から民国における文化の商品化と出版(Session 460)
  • 土地の認識:宋代中国の文化地理学(Session 504)
  • SSCR(Society for the Study of Chinese Religions)主催:中国の科学と宗教(Session 578)
4月3日
  • 初期中国の墳墓と文書(Session 669
  • 王朝美術(Individual Papers)(Session 714)
  • 東アジアにおける聖典(『道蔵』『高麗大蔵経』『神典』など)の正典化(Session 720)

4 日本関係司書との交流、NCC

CEAL・AAS年次大会に参加するとともに、3月29日のCEALフェローシップディナーをはじめとした会食、その前後の会議日程中の休憩時間、また空き時間を利用して、日本研究司書等との交流を行うことで、アジア研究及び日本研究の最新動向についての知識を得た。

日本研究司書の集まりとしては、CEAL の日本資料委員会(CJM)のほか、NCCがある。日本研究のための資料の共同構築や、司書の育成などを検討・支援する組織である。(http://www.nccjapan.org/)

CEAL、AASとは別組織だが、CEALとメンバーが重なるため、同時期に会議を開催しているとのことである。今回NCC主催のセッションは3月30日、4月1日に行われた。

また、AASのセッションにあった社史グループのほか、日本基金などいくつか研究司書のネットワークがあるようである。関係司書間には相当に厚い信頼関係が築かれており、相互の仕事のやりとり(ギブアンドテイク)が刺激となって、また新たな仕事の展開を生んでいるかのようであった。会話からうかがえる図書館活動にまつわる問題への意識の高さは学ぶところが大きかった。

日本関係司書に限らず、今回は東日本大震災への関心が高かった。3月29日のCEAL全体会議I ビジネスでの、岡本真氏によるスペシャルリポートのほか、いくつか関連のプログラムが追加された。

日本研究司書等との交流においても被災と図書館について話題に上ることが多く、その対策や復旧についての想定が常に必要であることを再認識した。

5 ハミルトン図書館(http://library.manoa.hawaii.edu/

AAS会期中の4月1日に、日本研究司書のネットワークにより機会を得て、ハワイ大学モアナ校のハミルトン図書館を見学することができた。ハミルトン図書館は2004年10月30日に鉄砲水に襲われ、大きな被害を受けている。施設こそ復旧したが、被災資料の修復は今も続いている。

水害対策構造の建築を巡りつつ、訪れた地図室や修復作業室で、まず何より驚き圧倒されたのが、技術の高さ、仕事の工夫もさることながら、スタッフの情熱である。ライブラリアンやアーキビストたちはじつに愉しげに自分たちの仕事を説明するのである。

同館の特殊コレクションもほとんどスタッフ個人の情熱の賜物であるとさえ言えるものであった。「坂巻・宝玲文庫」「梶山文庫」「ハワイ日本語学校教科書文庫」などといったユニークなコレクションについて話を聞くと、それらの収集と整理にはいずれも情熱が引き寄せた縁と、縁をつなぐ努力・研鑽があることがわかるのであった。

なお、これらのコレクションの内容はオンラインでうかがい知ることができる。上記以外にもいくつか、目録整備中で、公開をまっているものがあるようで、今からたのしみである。

おわりに

会議の場では、国威発揚の意味もあるのか、特に中国、韓国関係者の自国の資料・発表に対する熱意と関心の高さが感じられた。日中韓三国の連携などをいう場合、各国の意識の違いは当然であるが、それを本当の意味で理解したうえで連携協力を進めるべきことをあらためて実感した。

日本関係司書との交流、図書館見学などを通じて、海外のライブラリアンやアーキビストたちの精力的な情報収集、研究者を含めた人的交流の広さ・濃密さ、そしてそれらを継続する努力の重要性を思った。

当館からの報告をサポートしてくれた日本関係司書の方々をはじめとするライブラリアン、アーキビスト諸氏に心からお礼申し上げる。ありがとうございました。

(ときた じゅん)

(URLの最終アクセスは全て2011年5月31日)

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