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アジア資料―朝鮮語資料―(関西館の資料紹介 11 ):国立国会図書館月報2006年11月号

国立国会図書館月報 2006年11月号(no.548)
関西館資料部アジア情報課 山本 健太郎

はじめに

近年、 韓国は、 世界経済の中で存在感を増し、 また、 北朝鮮問題をはじめとして、 朝鮮半島が国際政治においてクローズアップされる機会が増えています。
朝鮮半島に関する多様な情報ニーズに対応するため、 アジア情報課では、 朝鮮語資料の充実に努めています。 ここでは、 関西館で所蔵している朝鮮語資料について、 紹介します。
なお、 北朝鮮で発行されている資料について、 当館では、 現在では入手が極めて困難な資料についても、 数多く所蔵しています。 ただし、 韓国の資料に比べ出版点数が少ないため、 ここで紹介する資料も、 韓国のものが中心になることをあらかじめお断りしておきます。

所蔵資料

関西館アジア情報課で所蔵している朝鮮語資料は、 現在、 図書約22,000冊、 雑誌・年鑑類約2,300タイトル、 新聞約110紙です。 このうち、 雑誌・年鑑類は約850タイトル、 新聞は36紙を、 現在も継続して収集しています。

おもな資料

○参考図書類

朝鮮語資料の収集に当たっては、 韓国や北朝鮮に関する参考図書類を、 分野を問わず広く収集することを第一の目標としています。 具体的には、 辞典・事典や辞書、 図鑑、 書誌・目録があります。
百科事典は、 韓国のものとしては、 韓国精神文化研究院 (現・韓国学中央研究院) の 『韓国民族文化大百科事典』 (全28巻) があります。 約65,000の見出し語を収録し、 参考文献も付されており、 レファレンスで役立つ資料です。 北朝鮮については、 『朝鮮大百科事典』 (全30巻) があります。 2004年に出版された簡略本には、 本編にはない項目も掲載されています。 このほか、 社会、 人文、 自然の各分野の辞典・事典を幅広く所蔵しています。 中には、 『韓国映画俳優事典』 『キムチ百科事典』 といったものもあります。
北朝鮮で発行された辞典・事典としては、 『経済辞典』 『歴史辞典』 『農業百科事典』 『高麗医学大百科』 や、 韓国と共同制作された、 北朝鮮の地理を網羅している 『朝鮮郷土大百科』 などを所蔵しています。
辞書も多様なものがあります。 韓日・日韓辞典はもちろん、 国立国語研究院 (現・国立国語院) が編纂した韓国最大の国語辞典である 『標準国語大辞典』 や、 北朝鮮で発行された 『朝鮮語大辞典』 をはじめとする国語辞典などがあります。

図鑑も各種、 所蔵しています。 動物・植物図鑑のほか、 鳥類や魚類、 昆虫など、 生物の種類ごとの図鑑もあります。

基本的な書誌・目録についても、 所蔵しています。 ただし、 韓国の図書館の蔵書などは、 最近はインターネットで検索できるため、 韓国国立中央図書館の 『大韓民国出版物総目録』 や韓国国会図書館の 『韓国博士および碩士学位論文総目録』 も、 冊子体では発行されなくなっています。

○白書・統計・年鑑類

行政機関や地方自治体が発行している白書や統計類、 新聞社などが発行する年鑑類について、 400を超えるタイトルを継続して収集しています。 関西館開館時には265タイトルでしたから、 この4年で大幅に増加したことになります。 この背景には、 韓国では出版される資料が多様化し、 白書・統計・年鑑類についても、 その種類が増えたことや、 いかなる資料が出版されているかについての情報の把握に努め、 これらの資料の充実を図ってきたことがあります。
行政機関が発行している白書には、 政策の動向や社会の実情などがまとめられています。 主要な行政機関が発行しているもののほか、 地方自治体が発行している市政・道政白書も、 特別市、 広域市、 道レベルについては、 網羅的な収集に努めています。

統計については、 統計庁の 『韓国統計年鑑』 や韓国銀行の 『経済統計年報』 など、 種々の指標がまとまっている資料のほか、 税、 金融、 人口、 貿易、 女性、 教育などの分野別統計や、 各地域や産業別の統計についても所蔵しています。 統計に関するレファレンスは多く、 最新のデータのみならず、 過去のデータを遡って調べる上での需要もありますので、 継続的に収集するようにしています。

また、 最近では、 会社情報に関する問い合わせも増えています。 会社情報については、 韓国最大の経済紙である 「毎日経済」 を発行する毎日経済新聞社の 『会社年鑑』 のほか、 ベンチャー企業について分かる 『韓国ベンチャー企業年鑑』 なども所蔵しています。

このほか、 年鑑類としては、 新聞社・通信社が発行する、 その年のニュースや出来事などがまとめられているものをはじめ、 各業界紙の新聞社などから発行されている広告、 食品、 レジャー、 電力、 鉄鋼、 機械、 情報通信、 出版など、 各産業に関する年鑑も所蔵しています。
北朝鮮の状況に関する資料としては、 北朝鮮で発行されている 『朝鮮中央年鑑』 のほか、 韓国統一部の 『北韓理解』 や、 新聞社などが出している年鑑があります。

○地方史誌・会社史・団体史

地方史誌は、 各地域の歴史、 自然、 文化、 社会状況などをまとめたものです。 韓国、 北朝鮮ともに道、 市、 郡のものを網羅的に収集することを目指しています。

会社史や団体史などについても、 積極的な収集を行っています。 特に、 新聞社の社史は、 韓国の近現代史を振り返る上でも有用な資料であり、 レファレンスに使用することもしばしばあります。

○史料・叢書類

韓国では、 史料の影印本が盛んに刊行されており、 当館でもそれらを収集してきました。 『朝鮮王朝実録』 (北朝鮮発行のものは 『李朝実録』) 『日省録』 『備邊司騰録』 『承政院日記』 などの史料や、 大型コレクションの一つ 『韓国歴代文集叢書』 (全3,000冊) は、 その代表的なものです。

また、 「朝鮮近代文学の祖」 と言われる李光洙をはじめとして、 韓国の代表的な作家の全集も所蔵しています。
こういった資料が充実している背景には、 過去、 当館の朝鮮語資料に対する需要は、 歴史や文学に関するものが多かったため、 伝統的に、 この分野の資料を優先的に収集してきたという経緯があります。

なお、 『朝鮮王朝実録』 については、 2005年12月、 国史編纂委員会がインターネット上での提供を開始し、 無料で、 閲覧および検索ができるようになりました。

○日本関係の資料

近年、 我が国では、 「韓流」 ブームもあり、 韓国が多くの人の関心を集めるようになった一方、 韓国の日本に対する関心は、 以前から強く、 日本に関する数多くの図書が出版されてきました。 当館では、 日本に関係する資料については、 言語を問わず収集するという方針があり、 その一環として、 韓国で出版された日本に関係する資料についても、 積極的な収集を行っています。

朝鮮語資料の収集に当たっては、 参考図書類に重点を置く一方、 研究書等の収集は基本的なものにとどめていますが、 日本関係については、 その例外として、 各分野の研究書等も数多く所蔵しています。
内容的には、 政治、 経済、 社会、 文化、 歴史等、 多岐に渡りますが、 中でも、 これまでの日本と韓国の関係から、 日本の植民地支配に関する資料が多くなっています。 また、 最近の資料で目を引くものとしては、 2005年8月に公開された、 日韓基本条約締結とその交渉に関する外交文書である 『韓日会談請求権関連文書』 (全94巻) があります。

また、 綿矢りさ 『蹴りたい背中』 のように、 日本でベストセラーになった小説の翻訳もあります。 小説に限らず、 韓国では、 日本で話題になった本の翻訳が数多く出版されており、 そういった資料についても収集しています。

○雑 誌

一般的な時事雑誌や、 主要な学術誌、 図書館関係の雑誌を所蔵しています。 学術誌については、 歴史・地理、 言語・文学、 科学技術分野の雑誌が比較的多いです。 韓国、 北朝鮮発行のものを合わせ、 継続して収集している約200タイトルが、 閲覧室に開架されています。

最近では、 各分野の学術論文に対するニーズも多く、 より広範な学術情報の提供のため、 電子ジャーナルの導入も検討する必要があると考えています。

○新 聞

アジア情報室では、朝鮮語の新聞を36紙開架しています。 韓国の三大紙 (『朝鮮日報』 『東亜日報』 『中央日報』)をはじめとする全国紙のほか、 各広域市や道で発行されている地方紙、さらには法律新聞や経済紙、 スポーツ新聞などがあります。 また、 北朝鮮の 『労働新聞』 や 『民主朝鮮』、 中国吉林省南部の延辺朝鮮族自治州で発行されている 『延辺日報』 も所蔵しています。 

1883年に創刊された韓国最初の新聞である 『漢城旬報』 の縮刷版を所蔵しているほか、 朝鮮時代末期から日本の植民地時代、 建国前後の時期にかけて発行された古い時期の新聞についても、 マイクロフィルムや縮刷版、 影印本の形態で所蔵しているものがあります。

検索方法

アジア情報課所蔵の朝鮮語資料については、 図書、 雑誌・年鑑類、 新聞のいずれも、 アジア言語 OPAC で検索することができます。 基本的な検索方法は、 前号に掲載された中国語資料と同様です。

朝鮮語資料はハングルで検索でき、 書名、 著編者、 出版者が漢字表記であれば、 漢字でも検索できます。 書名がハングルのものについても、 書名の日本語訳を付しているので、 それで検索することが可能です。 本稿で紹介している資料の書名は、 日本語訳です。

なお、 1985年までに受け入れた図書・年鑑や、 朝鮮半島で出版された漢籍である朝鮮本については、 東京本館で所蔵しています。 所蔵館および検索手段をまとめると、 表のようになります。

検索方法
  整理 所蔵館 検索手段
図書・年鑑 ~1969.7 東京本館 『国立国会図書館所蔵朝鮮関係資料目録. 第3 朝鮮文篇』
1969.8~1985 『国立国会図書館所蔵朝鮮関係資料目録. 3 補遺版 朝鮮文篇』 (~1984.3)
カード目録
朝鮮本 ~1974.7 『国立国会図書館所蔵朝鮮関係資料目録. 第4 朝鮮本篇』
1974.7~1981 『国立国会図書館漢籍目録』
図書 1986~ 関西館 アジア言語OPAC外部サイトへのリンク
雑誌・新聞 すべて

おわりに

当館の朝鮮語資料について、 かつてのように歴史や文学に関する古典的な資料を収集し、 提供するだけでは、 近年の多様化する利用者の要求を充足することができなくなりました。 さまざまな情報ニーズに対応するため、 まずは、 基本的な参考図書類を網羅的に収集することによって、 社会、 人文、 自然のあらゆる分野に関する幅広い情報を提供していきたいと考えています。 また、 社会の諸分野の動向を知るのに必須の資料である白書・統計・年鑑類についても、 関西館開館時から、 その充実を目指してきました。 さらに、 より高度で専門的な学術情報に対する要求も高まっており、 これに応えるために、 電子ジャーナル導入の必要性が増しています。

当館は、 国会の立法活動を補佐する機関として、 国会議員、 国会関係者からの情報ニーズに対応することが第一の責務です。 最近では特に、 世界の中で政治的にも経済的にも、 韓国や北朝鮮の動向が注目され、 より広く深い情報が求められるようになっています。 このような状況の中、 アジア情報課が所蔵する朝鮮語資料が持つ重要性は、 今後、 さらに高まっていくと思われます。

今回は、 当館所蔵資料の紹介でしたが、 レファレンスでは、 所蔵資料のみならず、 インターネット上の情報資源を活用することも少なくありません。 近年、 韓国の情報環境の進展は著しく、 新聞記事や学術雑誌論文、 政府刊行物など、 多くの情報をインターネット上で入手できるようになっています。 これらのインターネット上の情報資源については、 アジア情報室ホームページの 「AsiaLinks-アジア関係リンク集-」 < http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/link/asia_05link.html >  にリンクが張ってあります。 今後も、 所蔵資料の充実に努めることはもちろんですが、 こういったインターネット上の情報資源をも活用することによって、 多様な情報ニーズに対応していきたいと考えています。

参考文献

  • 国立国会図書館
  • NDL-OPAC 国立国会図書館蔵書検索・申込システム
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡