北支那開発株式会社設立要綱

昭和13年3月15日 閣議決定

収載資料:国立公文書館所蔵公文別録 84 ゆまに書房 1997.5 69-73 当館請求記号:YC-98

帝国政府決定ノ北支那経済開発方針ニ基キ日満北支経済ヲ緊密ニ結合シテ北支那ノ経済開発ヲ促進シ以テ北支那ノ繁栄ヲ図リ併テ我国国防経済力ノ拡充強化ヲ期スル為北支那開発株式会社ヲ設立スルモノトス
一、本会社ハ特別法ニ基ク日本法人トス
二、本会社ノ資本金ハ三億五千万円トシ日本政府及日本政府以外ノ者ニ於テ夫々一億七千五百万円宛ヲ出資スルモノトス
日本政府出資ノ中約一億五千万円ハ現物ニ依ルモノトス
日本政府以外ノ者ヨリノ出資ハ一般ヨリ之ヲ公募ス
本会社ノ資本金ハ政府ノ認可ヲ受ケ増加スルコトヲ得ルモノトス
三、本会社ニ対スル日本政府以外ノ者ノ出資ニ対シテハ優先配当権ヲ認メ又会社ニ対スル一定期間ノ利益補給ニ依リ配当ノ確実ヲ期スル等適当ナル優遇方法ヲ講ズルモノトス
四、本会社ハ左ノ事業ニ投資又ハ融資シ其ノ事業ヲ統合調整スルモノトス
(一) 主要交通運輸及港湾事業
(二) 主要通信事業
(三) 主要発送電事業
(四) 主要鉱産事業
(五) 塩業及塩利用事業
(六) 其ノ他北支那ノ経済開発促進上特ニ統合調整ヲ必要トスル事業ニシテ政府ノ認可ヲ受ケタルモノ
本会社ハ右ニ掲ゲタル諸事業ヲ実行スベキ子会社ノ設立ニ当リテハ予メ政府ノ承認ヲ得ルモノトス
五、本会社ハ払込資本金ノ五倍迄社債ヲ発行スルコトヲ得ルモノトス
政府ハ右社債ノ元利支払ニ付保証ノ方法ヲ考慮スルモノトス
六、政府ハ本会社ニ対シ登録税並ニ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ九年間所得税及営業収益税ニ関シ特典ヲ与フルモノトス
七、本会社ニ総裁一人、副総裁二人、理事五人以上、監事二人以上ヲ置ク
総裁及副総裁ハ勅栽ヲ経テ政府之ヲ命ジ理事ハ株主総会ニ於テ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトス
本会社ニ顧問ヲ置クコトヲ得顧問ハ政府ノ許可ヲ受ケテ会社之ヲ委嘱スルモノトス
八、政府ハ毎営業年度ノ投資及融資ニ関スル計画其ノ他重要事項ノ認可(別紙ノ方法ニ依ル)、監理官ノ設置、軍事上又ハ本会社ノ目的遂行上必要ナル命令等ニ依リ本会社ヲ監督スルモノトス
軍事上又ハ本会社ノ目的遂行上必要ナル命令ニ因リ政府ノ補償ヲ要スルガ如キ場合ハ予算ノ範囲内ニ限ルモノトス
九、政府ハ新政権ヲシテ本会社及其ノ子会社ニ対シ適当ナル優遇方法ヲ講ゼシムル様努ムルモノトス

別紙
一、北支那開発株式会社ノ毎営業年度ノ投資及融資ニ関スル計画又ハ其ノ変更ノ認可申請ハ遅クモ年度開始又ハ変更計画着手予定期一箇月前迄ニ為サシムルモノトス但シ其ノ計画ノ変更ニシテ軽易ナルモノニ付テハ簡易ナル手続ニ依ルコトヲ認ムルモノトス
二、政府ハ投資及融資ニ関スル計画又ハ其ノ変更ノ認可ニ関シテハ年度開始又ハ変更計画着手予定期迄ニ処理スルモノトス

閣議諒解事項
一、投資及融資ニ関スル計画トハ資金ノ使用ニ関スル計画ノミナラズ其ノ資金ノ調達ニ関スル計画ヲモ一体トシテ包含スルモノトシ、其ノ認可申請ニ当リテハ子会社ノ事業計画ヲ添附セシムルモノトス
二、軍事上ノ命令ヲ発スベキ場合ニハ予算ノ関係モアリ予メ関係庁ト充分協議スルモノトス
三、先ニ閣議ニ於テ決定セル昭和十三年中ノ物資需給並ニ輸入計画ニ於テハ本会社ノ目的遂行ノ為必要ナルベキ物資並ニ外貨資金ハ一部ノ鉄道材料ノ如キモノヲ除キ之ヲ見込ミ居ラザルニ付本会社ノ目的遂行ノ為ニハ関係各庁共同ノ努力ヲ以テ出来得ル限リ物資及外貨資金ヲ差繰捻出スルノ外ナク本会社ノ事業ハ斯クシテ生ジタル物資並ニ資金ノ余裕ノ範囲内ニ於テ之ヲ行フモノトス
四、本会社ハ自己又ハ其ノ子会社ガ現地ニ於テ第三国(満洲国ヲ除ク)ヨリノ物資其ノ他ニ因リ外貨資金(新政権ノ通貨ヲ除ク)ノ必要ヲ生ズルガ如キ業務ヲ為サントスルトキハ予メ政府ノ承認ヲ受クルベキモノトス