皇室経済法案要綱

昭和21年10月18日 閣議了解

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.448-449 当館請求記号:DG15-19

一、憲法により国有となる皇室財産中、皇室が引続いて直接使用せられる財産、例へば宮城離宮、京都皇宮、御用邸、陵墓等は、国有財産の一種皇室用財産として、これを認めること。
二、皇室用財産については
(一)その財産には収益を目的とするものを含まないこと。
(二)その編入並びに用途の廃止及び変更は、皇室経済会議の議を経ること。
(三)その他の事項については国有財産法中の公用財産に関する規定を適用すること。
三、皇室の財産の授受のうち、通常の経済取引による財産の授受、別に定める一定価額以下の授受並びに調度(御身廻り品を含む、以下同じ)及び食饌に関する進献は、その都度国会の議を経るを要しないこと。
四、前項以外の財産の授受のうち、内帑金による賜与及ぴ別に定める一定価額以下の授受で皇室経済会議の議を経たものについても、亦前項と同じであること。
五、天皇、皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び婚嫁しない未成年の皇子の財産に関しては、租税に関する法令を適用しないこと。
六、皇室経費は、これを内帑金、宮廷費及び皇族費(以上何れも仮称、以下同じ)に分けること。
七、内帑金は、天皇及び第五項に掲げる皇族に関する調度、食饌その他の内廷諸費をその内容とし、別に定める定額を以て国庫から支出すること。
八、宮廷費は、内帑金を除く宮廷諸費をその内容とし、年々の所要に応じ、予算に計上して、国庫から支出すること。
九、皇族費は、皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び婚嫁しない未成年の皇子を除く皇族に対する年々一定額の支給をその内容とし、国庫から支出すること。
十、皇族費は、皇族各一人に対し、別に定める定額を基礎とし、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王、成年、未成年、既婚、未婚、摂政就任等の区別により年々の一定額を定めること。
十一、皇族が、皇族の身分を離れるときには、離れる皇族御一方の一定額の十倍以上十五倍以下に当る金額を国庫から支出すること。但し未婚又は未成年の王については、その成年既婚者となったときの一定額を、未婚の内親王又は女王については、王妃の一定額を基準とすること。
十二、皇室経済会議の構成員は、内閣総理大臣、宮内府(仮称)の長、大蔵大臣、衆議院及び参議院の議長並びに会計検査院長とすること。
十三、皇室経済会議の召集者と議長は、内閣総理大臣を以てあてること。