春肥供給確保緊急対策要領

昭和23年3月26日 閣議決定

収載資料:農林行政史 第6巻 農林大臣官房総務課編 農林協会 1972 pp.885-887 当館請求記号:611.1-N955n4
 本年春肥(一~七月)としてさきに政府の公約せる稲反当り平均窒素肥料(硫安換算)五貫五百匁、燐酸肥料二貫匁の配給を確保するため、左記緊急対策措置を強力且つ速かに実施し、春肥の供給に遺憾なきを期するものとする。
  対策措置                         
一、生産確保量
 四~七月間を化学肥料緊急増産期間にし、本期間の生産確保量を次の如く経本の通りとする。
 硫安    三四五、〇〇〇キログラム
 石灰窒素  一〇五、〇〇〇トン(硫安換算八四、〇〇〇トン)
 過燐酸石灰 二八八、〇〇〇トン
二、原料の確保                        
 右の生産数量を確保する為左記数量を配当する。
 石炭    七六七、三〇〇キログラム
 コークス  七六七、三〇〇キログラム
 電力    一、一五五、〇〇〇千キロワット/時
 硫化鉱   四八五、〇〇〇キログラム
 包装紙   二、五六八、〇〇〇ポンド
尚(1)余剰電力に付てはあらゆる産業に優先して化学肥料用に配当する外化学肥料用電力の規制順位を本期間中暫定的に各一順位引上げる。
 (2)石炭及びコークスに付ては、適正炭の確保を計ると共に割当と荷渡とを一致させる様万全の努力を払う。
 (3)アメリカ無煙炭の輸入が実現するまで、石灰窒素用カーバイド原料として木炭毎月五千トンを確保する。
 (4)化学肥料用石炭コークス木炭硫化鉱及び石灰原石の輸送については、必要量を最優先に確保してその完遂を図る。   
三、硫化鉱対策
 (1)四~七月間の生産輸送計画を次の通りとする        
   生産計画   四二一、〇〇〇トン             
   輸送計画   四八五、〇〇〇トン            
 (2)右の計画を達成するため、主要鉱山に対し増産輸送督励調査団を派遣して現場に於て強力な措置をとる。
 (3)山元に於る滞貨中、六四、〇〇〇トンを四~七月間に於て払出しを行うものとし、之がため必要な労務者の確保及びトラックその他の輸送用資材の確保を図る。
四、原単位引下げ
 主要原材料(硫化鉱、石炭、コークス、電力)の節約を図る為昨年同期実績原単位の一割を目途とし原単位の引下げを図る。
之が為技術指導調査団を現地に派遣して強力な指導を行う。
 右の原単位引下げの成績は次期の原材料の割当に於て報奨的に考慮する。
五、運転資金の確保
 化学肥料工場及び硫化鉱鉱山の所要運転資金の確保に付て万全の措置を講ずると共に肥料代金の回収を強力に推進する。
六、労務対策 
 化学肥料工場及び硫化鉱鉱山に対する作業用品、食糧品等労務用物資の優先配当及び現物化の促進を期する。
七、報償
 春肥増産期間の成果を総合的に判定して優秀工場並びに優秀硫化鉱鉱山の選定報償を行う。
八、輸出入対策
 (1)硝安の輸入増加促進、硫安輸出の削減については総力を挙げてG・H・Qに懇請する。
 (2)アメリカ無煙炭(一一万トン)及び樺太コーライトの輸入の促進についてG・H・Qに懇請する。
九、優先輸送の実施
 化学肥料及び包装用縄叺の輸送については最優先に之を確保し特に九州方面より関東東北方面への輸送につき特段の措置を講ずる。
十、配給の迅速化
 肥料配給公団の在庫の一掃及び製品流通時間の短縮による配給の迅速化について特段の措置を講ずる。
十一、経理対策
 化学肥料工場及び硫化鉱鉱山の合理的経営を可能ならしむる様所要の経理対策を至急行う。