国家行政組織法施行後の物価行政の運営について

昭和23年5月29日 閣議決定

収載資料:経済安定本部戦後経済政策資料 第16巻 総合研究開発機構(NIRA)戦後経済政策資料研究会 1995.1 pp.64-69 当館請求記号:DC55-E831

国家行政組織法に基く各省各庁設置法施行後の各省各庁の所掌事務の範囲に関しては、去る五月十四日の閣議において、これを従来の官制及び閣議決定その他当事者間の了解事項に基いて行われてきた範囲と同一とする旨決定せられたのであるが、物価行政は、物価院(物価院法が施行されるまでの間は、物価庁、以下同じ)以外の各省各庁の所管行政と密接な関連があるので、この際、各省各庁においては、従来の了解事項に基き、左記諸項に御留意の上、物価行政の円滑な運営を図るように協力すること。
(註)本件については、さきに昭和二十一年八月物価庁官制が公布施行せられ、物価に関する権限が内閣総理大臣の権限に一元化され、物価庁においてその事務を取扱うことになつた折に、同年九月九日の次官会議の決定を得ていることであつて、今回あらためて、概ねこれと同じ趣旨について、これが再確認を得んとするものである。

一、物価に関する権限は従来の物価庁官制に代る物価院法によつて、従来通り内閣総理大臣の権限に一元化され、又その事務は物価院において取扱うことになるわけであるが、物価院において取扱う事務の範囲は、価格、運送賃、保管料、保険料、賃貸料、加工賃、修繕料その他給付の対価たる財産的給付の一切に関する事務であつて、その価格等を決定し、認可し、許可し、或は指示する等の事務は、具体的なものも基準に関するものも物価に関する事務である。但し、雇傭契約に基く労務提供の対価たる賃金、俸給その他の給与に関する行政事務は、物価に関する事務の範囲から除かれるし、又金利に関する行政事務も一応物価に関する事務の範囲外として取扱うことにしたいが、たゞ賃金等及び金利は物価に重大な関係があるから、これらに関する事項については、関係省庁間において連絡を密にし、政策のそごを来さぬようにすること。

二、各省各庁において、物価に関係ある事項を規定した法律政令を起案する場合は、必ず物価院に合議すること。

三、物価に関係ある事項を規定した命令を各省各庁限りで省令等を以て制定することはできない訳であるから、必ず物価院に合議の上総理府令省令等によつて、制定公布すること。

四、従来各庁において処理されていた物価に関する指定、認許可等の行政処分は、左により処理すること。
(一)物価院としては、物価に関係ある規定を含む法令は、原則として総て、物価統制令第七条のいわゆる他法令として総理府令を以て指定する方針であるから、この場合、法令において各省各庁の権限として規定されているものでも物価院総裁(物価院法が施行されるまでの間は物価庁長官、以下同じ)の権限に移されることになるので、各庁限りで処理することなく、各省各庁は、物価院に処理方依頼すること。
(二)国が事業の主体となつている場合の右(一)の行政処分は、物価に関する事務であると同時にその事業運営上の事務でもあるので、これは共管で処理する建前とし、その法的根拠を昭和二十一年勅令第三百八十二号附則代二項但書の規定に基き物価統制令施行規則(第八条の二)により明かにすること。(例、塩の賠償価格、売渡価格、米麦の政府買上売渡価格、国鉄運賃の決定等)
(三)又右(一)の行政処分が物価に関する事項以外の事項にも亘つていうものであるときは、夫々の所管事項につき検討を遂げた上、共同して一本の行政処分として処理すること。(例、道路運送法による事業計画の認可)
(四)以上の行政処分をなすについて、所管の各省各庁と物価院の事務の運営に関し、明確を欠くものについては、別途運営要領を具体的に協議して決定すること。
(五)地方公共団体又は地方特別官庁に対して物価に関係ある事項を指令通牒する等のことは、原則として物価院において処理すること。各省各庁において、地方公共団体等に対し、指令、通牒等を発する場合、その内容が物価に関係ある事項を含むときは、予め物価院と合議の上各省各庁限りで又は物価院と共同で発すること。

五、物価に関係ある事項につき、地方公共団体等を会議に招集する場合には、物価院において、これを主催するが、各省各庁において主催する会議の議事内容が、物価に関係ある事項を含むときは、物価院にもその会議に参加するよう連絡すること。

六、各省各庁において物価に関係ある事項を含んだ事項につき、閣議決定、次官会議決定等の手続を採られる場合には、予め、物価院と協議すること。

七、各省各庁所管の委員会、協議会に対し各省各庁より物価に関する事項を諮問する等の場合には、予め物価院と協議すること。

八、物価に関する事項の新聞発表は、原則として、物価院で行う。各省各庁において新聞発表をする必要のある場合には、予め物価院と協議の上各省各庁限りで、又は物価院と共同で発表すること。

九、物価に関する事項は、生産配給等に関する影響を及ぼすことが大であるのは勿論、連合軍最高司令部当局との関係もあるから、各般の手続完了前外部に洩れることがないよう、特に留意すること。