浮浪児根絶緊急対策要綱

昭和23年9月7日 閣議決定

収載資料:内閣制度九十年資料集 内閣官房編 大蔵省印刷局 1976.3 pp.1037-1038 当館請求記号:AZ-332-6

終戦後満三年を経た今日街頭になお浮浪児がその跡をたゝないことは、まことに遺憾のことである。よつてこれらの児童を健全正常な生活に立戻らせ同時にこれらの児童を発生させる社会的原因を根絶するため、ここに全国的大運動を展開して、左の事項を強力に実施するものとする。

一、浮浪児の背後にあつてこれを利用している者を厳重に取締り、これらの者と浮浪児との因縁関係を切断すること。
二、浮浪児を根絶できない大なる理由が、人々が浮浪児に対して安価な同情により又は自己の一時的便宜によつて彼等の浮浪生活を可能ならしめていることにあることを、一般社会人に深く認識せしめること。
三、浮浪児に対する保護取締を連続反覆して徹底的に行うこと。
四、特に犯罪性のある浮浪児は少年審判所に送致し、その他の浮浪児は児童相談所を経て養護施設又は教護院に収容するか或は児童福祉司、児童委員等の指導に附すること。
五、収容施設は浮浪児の浮浪性除去に適した自然環境を備えるもの(例えば農場、牧場その他島嶼等)を選び、当該施設においては愛情を以てこれを迎え、食糧等について充分留意するとともに、浮浪児の生活に適した遊び、運動、職業指導等を通じて、浮浪児の施設内の生活に対する興味を喚起するよう努めること。
六、逃走性強く、これを収容施設に定着させることが不可能な浮浪児に対しては、医学的、心理学的、社会学的判断を基礎とした科学的方法によりこれが浮浪性除去に努めること。
その際一定の期間適切な方法によりその生活の場所を制限することもやむをえないこと。
七、現存の施設の中には、その内容が浮浪児保護につき不十分なものがあるから、できる限りすみやかにその内容を整備するとともに、必要な収容施設の拡張を図ること。
八、新たに浮浪児を発生させぬよう少年不良化防止の運動を展開し、特にこれに対する各家庭の自覚と協力を求めること。
九、本要綱の実施推進については、中央、地方を通じ、厚生、警察、法務、文部、労働その他の関係諸機関が夫々緊密な連絡をとり相協力してこれにあたることとし、そのために、中央児童福祉委員会及び地方児童福祉委員会に特別部会を設けること。
(註)本要綱にいう浮浪児とは、一定の住所がなく諸所を浮浪する児童は勿論のこと、就学義務があるにかかわらず学絞に登校しないで諸所を浮浪する児童をも含めたものであること。