リンク制の拡大及び計画化に関する措置要綱

昭和22年9月18日 閣議決定

収載資料:食糧管理史 V 制度篇 各論(上) 食糧庁食糧管理史編纂室・統計研究会食糧管理史研究会編 統計研究会 1958 pp.311-314 当館請求記号:611.31-Sy9576s-T

流通秩序確立対策要綱に基く重要物資の生産を刺戟し、その公正な出荷、輸送を促進するためのリンク制の拡大は、指定配給物資及び指定生産資材の総合的な需給計画に従い、労務用物資の割当及び配給に関する基本方策及び基本計画に即し、概ねつぎの要領によりできるだけ総合的かつ計画的にこれを行う。
一、リンク物資及びリンク物資の配当を受ける者の範囲
(一)リンク物資の種類は、リンク物資の配当を受ける者が、作業及び生活上必要とする指定配給物資及び指定生産資材中からリンク制の目的達成上効果があると認められるものにつき、食糧、作業用品、生産資材、嗜好品又はその他の物資の中から選定し、かつ必要ある程度に止める。
(二)リンク制の適用は、産業の復興及び民生の安定上最も重要かつ基礎的な産業であつて、生産、供出、輸送について国家計画の樹てられているものに従事する者について、これを行うこととし、差当り、つぎの者につき重点を置いて速かに実施する。
(イ)米、麦、いも類、雑穀の供出をする生産者につき、作業用品、生産資材、嗜好品など
(ロ)炭鉱における坑内夫、坑外夫及びその家族につき、嗜好品、作業用品、食糧など
(ハ)鮮魚介の出荷をする漁業者につき、生産資材、食糧、嗜好品、作業用品など
(ニ)薪炭の供出をする生産者につき、食糧、作業用品、嗜好品など
(ホ)蔬菜の供出をする生産者につき、生産資材、嗜好品、作業用品など
(ヘ)経済安定本部総裁の定める重要物資を輸送するトラック運送業者につき、輸送用資材など
右の外、必要に応じてリンク制を適用する範囲を拡大する。
(三)リンク物資の数量は、リンク物資の需給計画上リンク物資の配当を受ける者の従事する業種に対する配当量の範囲内においてリンク物資の性質に応じて、できるだけリンク制の目的達成上効果があると認められ、かつ実施可能な程度において定めるも、概ね生産資材及び作業用品については、原則として全部又は大部分を、食糧はその労務加配量の一部又は相当部分を、嗜好品については、原則として全部を、その他の物資については適宜これを充てることを目的とする。
(四)隠退蔵物資で利用し得るものは、これを優先的にリンク物資として利用するものとする。
二 リンク物資の割当
(一)リンク物資は、原則として、各リンク物資の配当を受ける者について、予め時期及び比率等を考慮して定める一定の標準に従い、生産、供出又は輸送の量にリンクしてこれを割当てることとし、その需給計画上の供給力の関係上、リンク物資の配当を受ける者全部に亘り、これを割当てることが困難な物資については、適当な範囲内において点数制の採用又はリンク物資間の代替割当をすることを考慮する。
(二)リンク物資の割当に当つては、リンク物資の配当を受ける者の生産、供出又は輸送すべき責任量をできるだけ科学的に決定し、その責任遂行の度合にリンクして割当量を加減するものとする。
右責任数量は、原則として、リンク物資の配当を受ける者が、生産、供出又は輸送する物費の数量について、リンク物資の配当を受ける者の個人につきこれを定めるも、個人別に定めることが困難なものは、工場、事業場又は作業集団ごとにこれを定めることがあるものとする。
(三)リンク物資の割当計画及び割当の標準は、リンク物資の配当を受ける者の従事する業種につき、一定期間ごとに経済安定本部総裁がこれを定め、これに基いて、各リンク物資の配給に関し権限がある主務大臣が、これを実施する。
前項の主務大臣は、その実施に当りリンク物資の配当を受ける者の従事する業種の生産、供出又は輸送に関して権限がある主務大臣に十分協議し、その要請に応じて円滑な実施を図るものとする。
右の要請は、リンク物資の配当を受ける者の従事する業種の生産、供出又は輸送に関して権限がある行政庁が、生産、供出又は輸送の成績を確認した書類により、リンク物資の配給に関して権限がある行政庁に対してリンク物資の割当を要請することによりこれを行うものとする。
(四)リンク物資の割当は、指定配給物資配給手続規程及び指定生産資材割当手続規程に基いて、原則としてリンク物資別に、各リンク物資の配当を受ける者ごとに、配給割当公文書によりこれを行う。
(五)リンク物資の割当計画(数量、時期及び比率)は、リンク物資の配当を受ける者の従事する業種の生産、供出又は輸送計画と共に公表するものとする。
三、リンク物資の配給、備蓄及び輸送
(一)リンク物資の配給は、指定配給物資配給手続規程及び指定生産資材割当手続規程に基く当該物資の配給に関する法規によりこれを行う。
(二)特に、リンク物資の計画的にして確実な配給を実施するため、その必要な数量を備蓄輸送することに努めるものとし、その機関として、リンク物資につき、特定の政府機関がないものについては、差当り必要に応じて、産業復興公団を活用するものとし、これがため必要な機構の整備及び融資等の途を速かに講ずる。
(三)リンク物資の配給に関し権限のある主務大臣は、その配給を計画的に実施するため、必要に応じ生産者又は販売業者に対し、譲渡の制限又は出荷の命令をするものとする。
(四)リンク物資の輸送については、特に適期、円滑な輸送を行うため、必要な措置を講ずる。
四、リンク制実施の推進及び監査
(一)リンク制に関する計画の確実、かつ円滑な遂行を図るため、経済安定本部に、部内関係局の外、関係庁、関係団体の代表者及び学識経験者から成る推進委員会を設ける。
(二)リンク制に関する計画の実施状況を絶えず監査するため、特別の措置を講ずる。
備考
一、本措置は、昭和二十二年産米及び甘しよの供出に関するものから実施するも、他のものについても、できるだけ速かにこれを実施する。
二、生産企業について、できるだけ科学的な能率判定基準を作成し、資材の割当と生産品の実績とを常に照合することに努め、生産品の生産又は出荷にリンクして、次期における資材の割当を停止又は削減するなどの一般的措置については、別途措置するものとする。