昭和24年度予算の実施について

昭和24年5月10日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.48-49 当館請求記号:DG15-19

昭和二十四年度予算の実行に当っては、その各方面に及ぼす影響の重大であるのに鑑み、特に慎重を期すると共に、可及的節約を図り、国民負担の軽減に資し得るよう左記により最大限の努力を傾注するものとする。

一、総合的均衡財政の完全なる実現を達成するため、予め各四半期毎に実行の計画を定め収支の時期的調整を図ること。なお右計画は国庫の収支、金融の情勢等を勘案し適実にこれを定める外情況の推移に応じ調整し得るよう弾力性あるものとすること。
二、価格調整費については、単一レートの設定、完全なる自主自立の経済態勢の確立と見合って、近い将来、これを全面的に廃止することを目途として順次計画的にこれを減少せしめる具体案を至急策定すること。
右具体案の策定に至るまでにおいても、企業努力の推進、副次製品段階における吸収の可能性等を勘案し補給品目の整理、補給金単価の減少等を図ると共に要すれば最小限度の価格補正を考慮すること。
三、行政整理については、既定の方針に従い、これを徹底的に実施し、機構の簡素化、事務の能率化及び経費の節減を図ること。
なお、行政整理実施後においても、後の情勢に即応して不断の検討を遂げ、積極的に経済統制その他不急不要事務の縮減又は廃止を断行し、機構の縮小、人員の整理、冗費の節約に努力すること。
四、特に本年度においては、一般会計においては、予備費を計上していないので、真に緊急やむを得ない需要が生じた場合に備えるため、計画的に一定割合の予算残額を保留するよう努めること。
五、米国対日援助見返資金特別会計の資金の使用については、その産業並びに金融上に及ぼす影響の重大な点に鑑み、連合軍最高司令部と緊密な連絡をとり、これを敏速、且つ効率的に運用し、もって経済の再建、金融市場の調整に支障なからしめること。
なお、本資金により国債等の償還を行った場合に金融機関に生ずべき資金的余裕の運用方針についても、積極的指導又は規正を行うこと。
六、今回改正の財政法及会計法に基き支出負担行為の統制を強化すると共に既に確定した政府債務の支払については特に敏速且つ円滑化を図り民間企業に支障を与え金融市場の梗塞を来さしめるような事例の絶無を期すること。
七、現に予算において予定しているもの以外においても、各省各庁は、不用財産、用途廃止すべき財産等を徹底的に調査し、これが払下による収入の増加を図ること。
官業についても、右に準じ民営に移管すべきものを検討し、その払下に関する具体的計画を立案すること。
八、以上各号の方針は、一般会計のみならず、特別会計及び政府関係機関の予算の実施についても、当然これを適用又は準用すること。
九、将来適当なる時期において、以上各号により実施した歳出予算の節約計画並びにこれに見合うべき国民負担の軽減計画を織込んだ補正予算を編成し、国会に提案することを考慮すること。