見返資金の中小企業に対する融資要領及び一般的基準

昭和24年12月23日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.367-368 当館請求記号:DG15-19

見返資金の中小企業に対する融資要領
一、方針
1、輸出の振興等我国経済の再建に寄与するところ大なる事業を営む中小企業の設備資金として見返資金を融資し、もって緊要なる中小企業融資の促進を図ることを目的とする。
2、本措置の実施については、出来る限り取扱銀行の自主性を尊重すると共に、融資手続及び書式等は極力簡素化し、敏速適切なる融資を行うものとする。
3、本措置による融資の審査並びに承認に関する事務は総べて日本銀行がこれを行うものとし、大蔵省は予め司令部の包括的承認を得た金額の範囲内において日本銀行の申達に応じ迅速に資金を交付するものとする。

二、融資対策
1、輸出の振興等我国経済の再建に寄与するところ大なる事業を営む中小企業であって、原則として払込資本金三百万円以下、従業員二百名以内の会社又はこれと同程度の組合とする。
2、融資対象の一般的基準(例えば、業種及び使途等)は、大蔵省が安定本部、中小企業庁等関係官庁及び日本銀行と協議の上決定するものとする。

三、融資条件
1、金額 一件の貸付金額は三百万円以内を原則とし、そのうち五割は見返資金により、残額は取扱銀行の自己資金により融資する。
2、利率 見返資金による分については七分五厘、取扱銀行の自己資金による分については一般貸出利率による。
3、使途 設備資金にして使途の明らかなものに限る。
4、償還期限 最長五年とする。
5、償還方法 元利金の償還は原則として年二回として予め承認された償還計画に従い償還するものとするが元金の償還については、取扱銀行の自己資金による融資は見返資金による融資に優先して償還されるものとする。
6、担保 本融資に係る設備の他必要に応じ確実な担保を徴する。
7、保証人 確実な保証人を要す。

四、融資手続
1、大蔵省は、各四半期の中小企業融資資金として運用する見返資金額について予め司令部の包括的承認を得る。
右金額は差当り一・四半期三億円とする。
2、本措置による融資を希望する中小企業は取扱銀行に通常の方法により融資の申込をなす。
3、取扱銀行は右の申込を審査の上、適当と認めるものについては日本銀行に申請手続をとる。
4、日本銀行は右申請を審査の上適当と認めるものについては借用証書(大蔵大臣宛)を受領の上、適宜分とりまとめ大蔵省に申達する。
5、大蔵省は右申達に応じ迅速に資金を交付する。
6、大蔵省は本措置による融資の審査、承認、貸付の実行、管理、回収の事務を日本銀行に委託し日本銀行は必要と認める範囲において、その事務を取扱銀行に委託する。

五、取扱手数料
取扱銀行に対し本融資に関する事務の取扱手数料として、見返資金貸出残高の年二%相当額を支払うものとする。

見返資金の中小企業に対する融資要領における融資対象の一般的基準
本措置による融資の対象は原則として左に掲げる業種の中小企業の設備の改良補修等合理化資金であって新規貸出に限る。
(一)輸出産業
(二)生活必需物資産業
(三)重要基礎産業の関連産業