石炭生産確保対策について

昭和26年8月14日 閣議了解

収載資料:経済安定本部戦後経済政策資料 第29巻 総合研究開発機構(NIRA)戦後経済政策資料研究会 日本経済評論社 1995.7 pp.497-498 当館請求記号:DC55-E831

最近における石炭の需要状況は一般産業の伸長を反映し、いよいよ緊迫の度を加えつつあり、特に電力用炭については渇水期を控え成行きを憂慮される現状に鑑み、政府は、本年度における石炭の生産目標を四五○○万屯に引上げるとともに、今後における石炭の生産を確保するため左の諸対策を緊急且つ強力に実施するものとする。

一、輸送の確保
石炭の生産目標を達成するためには、これに相応する増送を行うことが必要であるが、輸送力が不足している現状に鑑み、国鉄における貨車の新造、改修等緊急に輸送態勢の整備強化を図り、併せて海上輸送の円滑化を図るため、機帆船用燃料を確保する。

二、資材の確保
改正森林法の運用及び官公有林産物の払下げに関し坑木適材を石炭鉱業に優先的に振向けるとともに坑木輸送についても確保の措置を講じ、併せて坑枠用の古レール輸入のための外資資金の割当について考慮する。

三、電力の確保
渇水期における緊急制限の緩和、制電時における保安電力の確保等、炭鉱向電力供給の優先的措置につき特段の考慮を払う。

四、資金の確保
石炭生産の維持増強に必要な資金の確保を図るため日本開発銀行等による重点的資金の投入及び融資の迅速化を図る。

五、税制の改善
石炭鉱業の経営基盤の健全化を図るため税制の改善合理化を促進する。

六、近代的採炭方式の普及推進
石炭鉱業の技術的立遅れを回復するため炭鉱の機械化及び合理化を普及推進するものとし、併せて選炭設備の改善、指導等により品位の維持向上を図る。