昭和27年度税制改正の要綱

昭和27年1月25日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.232-233 当館請求記号:DG15-19

国民租税負担の現状にかんがみ、さきに臨時特例法によって実施した所得税の軽減を維持平年度化する外、所得税及び相続税につき一層負担の合理化を図るとともに、課税の簡素化及び資本の蓄積に資する等のため、次のとおり税制の改正を行うものとする。
第一 所得税
一 さきに、臨時特例法により実施した控除及び税率の改正を次の如く平年度化するものとする。
(1)基礎控除額を五万円(改正前三万円、昭和二六年分三万八千円)に引き上げること。
(2)扶養控除額を扶養親族三人までは、一人につき二万円(改正前一律に一万五千円、昭和二六年分三人まで一人につき一万七千円)に引き上げること。
(3)税率を次のとおり改めること。
課税所得金額(基礎控除及び扶養控除等の諸控除を行った後の所得の金額)
八万円以下の金額   一〇〇分の二〇(改正前五万円以下の金額一〇〇分の二〇
〃  五万円をこえる金額一〇〇分の二五)
八万円をこえる金額  一〇〇分の二五(〃  一〇万円をこえる金額一〇〇分の三〇)
一二万円  〃    一〇〇分の三〇(〃  一五万円  〃   一〇〇分の三五)
二〇万円  〃    一〇〇分の三五(〃  二〇万円  〃   一〇〇分の四〇)
三〇万円  〃    一〇〇分の四〇(〃  三〇万円  〃   一〇〇分の四五)
五〇万円  〃    一〇〇分の四五(〃  五〇万円  〃   一〇〇分の五〇)
一〇〇万円  〃    一〇〇分の五〇(〃  一〇〇万円 〃   一〇〇分の五五)
二〇〇万円  〃    一〇〇分の五五
(4)不具者控除、老年者控除、寡婦控除及び勤労学生控除については、改正前一万五千円の所得控除を税額控除に改め、四千円を税額から控除するものとすること。なお、旧軍人、軍属の遺家族である寡婦及び老年者並びに旧軍人、軍属で戦傷のため不具者となった者に対しては、これらの控除を六千円に引き上げるものとすること。
二 生命保険料の控除限度額を四千円(現行二千円)に引き上げるものとする。
三 青色申告書を提出した納税義務者がその事業に専ら従事する親族(配偶者及び一八歳末満の者を除く。)に給与を支払う場合においては、年五万円を限度として、事業上の必要経費に算入することを認めるものとする。
四 変動所得に対する課税を次の通り改正し、負担の軽減及び課税の簡素化を図るものとする。
(1)退職所得については、さきに実施した臨時軽減措置を平年度化し、収入金額から一五万円を控除した後の金額の半額を課税所得とし、他の所得と分離して課税するものとすること。
(2)譲渡所得、一時所得及び山林所得については、一〇万円を控除した後の金額を課税所得とすること。
(3)自家用住宅及び自作農地を売却又は交換して、一年以内に新たにこれらと同種の資産を取得した場合の譲渡所得の課税を免除すること。
(4)以上の外、変動所得については、一年限りの平均課税を認める範囲を拡張する等できる限り課税の簡素化を図ること。
五 医師の社会保険に基く診療収入及び弁護士、公認会計士等の報酬並びに非居住外国人の受ける特許権使用料に対し新たに源泉徴収を行うものとする。
なお、原稿料等に対する現行源泉徴収税率につき合理的な調整を行うとともに、源泉徴収税額が過納となった場合の還付の簡易迅速化につき所要の措置を講ずるものとする。
六 右の外租税協定の締結と関連して、制限納税義務者としての課税所得の範囲を拡張するとともに、外国で取得した所得を総合課税する場合には、外国で納付した税額を控除する等規定の整備及び合理化を行うものとする。
第二 法人税
一 法人が他の法人から受ける配当につき源泉徴収された税額を法人税額から控除し切れないときは、これを還付するものとする。
二 法人税額の半額を徴収猶予する場合の利子税日歩四銭を日歩二銭に引き下げるものとする。
第三 相続税
一 基礎控除額を三〇万円(現行一五万円)に引き上げるものとする。
二 被相続人の死亡に因って取得する保険金に対する控除を二〇万円(現行十万円)に引き上げるとともに、新たに退職金に対しても二〇万円の控除を認めるものとする。
三 税率を次のとおりに引き下げるものとする。
課税財産価格(基礎控除その他の諸控除を行った後の財産の価格)
二〇万円以下      一〇〇分の二〇(現行二〇万円以下の金額一〇〇分の二五)
二〇万円をこえる金額   一〇〇分の二五(〃 二〇万円をこえる金額一〇〇分の三〇)
五〇万円   〃      一〇〇分の三〇(〃 五〇万円  〃   一〇〇分の三五)
一〇〇万円  〃    一〇〇分の三五(〃 一〇〇万円 〃   一〇〇分の四〇
〃 一五〇万円 〃   一〇〇分の五〇)
二〇〇万円  〃    一〇〇分の四〇(〃 二〇〇万円 〃   一〇〇分の五〇)
三〇〇万円  〃    一〇〇分の四五(〃 三〇〇万円 〃   一〇〇分の五五)
〃 四〇〇万円 〃   一〇〇分の六〇)
五〇〇万円  〃    一〇〇分の五〇(〃 五〇〇万円 〃   一〇〇分の六五)
〃 七〇〇万円 〃   一〇〇分の七〇)
一〇〇〇万円 〃    一〇〇分の五五(〃 一〇〇〇万円 〃  一〇〇分の七五)
〃 一五〇〇万円 〃  一〇〇分の八〇)
二〇〇〇万円 〃    一〇〇分の六〇(〃 二五〇〇万円 〃  一〇〇分の八五)
五〇〇〇万円 〃    一〇〇分の六五(〃 五〇〇〇万円 〃  一〇〇分の九〇)
一億円     〃     一〇〇分の七〇
四 右の外山林及び不動産が相続財産の半額以上ある場合の延納期間(現行五年)を十年に延長するとともに、延納の場合の利子税日歩四銭を日歩二銭に引き下げる等制度の合理化をはかるものとする。
第四、砂糖消費税
分蜜糖及び氷砂糖等に対する現行税率を概ね七割程度引き上げるものとする。
なお、砂糖に関する関税率を粗糖二〇%、精製糖三五%(現行粗糖一〇%、精製糖二〇%)に引き上げるものとする。