第1次行政制度改革要綱

昭和31年3月30日 閣議決定

収載資料:行政管理庁史 行政管理庁史編集委員会編 行政管理庁 1984.6 pp.1045-1047 当館請求記号:AZ-333-23

政府は、昭和31年2月23日付行政審議会の答申の主旨を尊重して、占領行政の行き過ぎを是正し、議院内閣制の下における責任体制を明確にするとともに、行政事務の管理を強化し、その能率を向上させるために、第1次として次の通り行政機構の改革及び行政運営の改善を行う。
第1 トップマネージメント機構の改革
1 内閣官房長官は、国務大臣をもってこれに充てる。
2 政務次官の増員
(1)各省及び国務大臣をもってその長に充てることと定められている各庁には、各1人の政務次官を置く。
(2)政務運営上特に必要があると認められる省には、政務次官1人を増置することができる。
(3)2人の政務次官を置く省における各政務次官の職務の範囲は、その省の大臣がこれを定める。
3 事務次官補の新設
事務運営上特に必要があると認められる省には、別に法律の定めるところにより、省務の一部を総括整理させるため事務次官補1人を置くことができる。
第2 総理府機構の改革
1 総務長官の新設
(1)総理府に新たに総務長官を置き、総理府の長たる内閣総理大臣を助けて府務を整理し、総理府(国務大臣をもってその長に充てることと定められている外局を除く。)所管の事項について政策及び企画に参画し、政務を処理し、並びに各部局及び機関の事務を監督させる。
(2)総務長官は、国務大臣をもってこれに充てる。
2 総務次長の新設
総理府に新たに総務次長を置き、総理府の長たる内閣総理大臣の定めるところにより、総理府(国務大臣をもってその長に充てることと定められている外局を除く。)所管の事項について、上官の職務を助けさせる。
3 公正取引委員会に関する措置
公正取引委員会は経済企画庁に移管してその所轄の下に置く。
4 南方連絡事務局に関する措置
南方連絡事務局は内政省に移管してその附属機関とする。
5 総理府に附置されている審議会等に関する措置
総理府に附置されている下記の審議会等は、それぞれ右記の省または庁に移管するものとする。
引揚同胞対策審議会            厚生省
宿舎審議会                大蔵省
地方制度調査会              内政省
選挙制度調査会              内政省
国土総合開発審議会            経済企画庁
電源開発調整審議会            経済企画庁
積雪寒冷単作地帯振興対策審議会      農林省
特殊土じょう地帯対策審議会        経済企画庁
離島振興対策審議会            経済企画庁
奄美群島復興審議会            内政省
第3 人事行政機構及び運営の改革
1 人事局の新設
(1)総理府の内局として人事局を新設する。
(2)人事局は人事行政に関する企画・立案・国家公務員全般に亘る人事行政の実施及びその総合調整に関する事務を行う。
(3)人事局には人事院事務総局の一部・総理府公務員制度調査室及び大蔵省主計局給与課の一部を統合する。
2 国家人事委員会の新設
(1)総理府の外局として国家人事委員会を新設する。
(2)国家人事委員会は、人事行政の改善、職員の給与の改善等に関する勧告、職員の研修・試験・選考・身分保障・公平裁定等の人事行政の公正の確保及び職員の福祉・利益の保護に関する事務を行う。
(3)国家人事委員会は委員3人をもって構成する。委員長は委員のうちから内閣総理大臣が指名する。
(4)国家人事委員会に事務局を置く。
3 国家人事委員会の勧告に関する措置
(1)国家人事委員会は、給与・待遇の改善等につき必要があると認めるときは、内閣に対して勧告を行う。
(2)内閣は上記の勧告を受け取ったときは、原則として7日以内にこれを国会に報告しなけれはならないものとする。
(3)内閣は、勧告を実施することができないと決定したときは、詳細な理由を付してその旨を国会に報告しなければならないものとする。
4 人事院の廃止
人事院は廃止する。
第4 予算編成機構及び運営の改革
1 予算閣僚会議の新設
(1)内閣に法津の定めるところにより、予算閣僚会議を置く。
(2)予算閣僚会議は,内閣総理大臣・大蔵大臣・経済企画庁長官及び内閣総理大臣の指名する国務大臣をもって構成し、内閣総理大臣を議長とする。
内閣官房長官及び予算を担当する大蔵政務次官は予算閣僚会議の幹事として、議事の整理に当るものとする。
(3)予算閣僚会議の幹事を補佐して予算閣僚会議の事務にあたらせるため、内閣官房副長官3人を置く。
2 予算閣僚会議の運営
(1)予算閣僚会議は、予算編成方針を審議する。その審議に資するため、大蔵大臣は歳入・歳出の見積に関する資料を予算閣僚会議に提出するものとする。
(2)内閣総理大臣及び各省大臣は、財政法第17条の規定に基きその所掌に係る歳入・歳出及び国庫債務負担行為等の見積に関する書類(概算要求)を大蔵大臣に送付するとともに、その大綱を予算閣僚会議に提出するものとする。
(3)内閣は、財政法第18条の規定に基き、歳入・歳出及び国庫債務負担行為等の概算を決定しようとするときは、あらかじめ、予算閣僚会議に審議調整させるものとする。
第5 内政省の新設
1 地方行政に関する中央機関として地方自治の健全な発達を図り、国土の建設・開発にあたるため、内政省を新設する。
2 内政省に、自治庁・北海道開発庁・建設省・首都圏整備委員会及び南方連絡事務局を統合する。
3 北海道開発庁及び首都圏整備委員会は、内政省の外局とする。
第6 行政運営の改善
1 行政事務の整理
行政能率を改善し、国民の便宜をはかるため、行政事務手続の簡素化・窓口事務の統合一本化及び共管事務の整理を行う。
2 行政機関の内部機構の縮小
行政機関の内部機構が著しく膨張し、行政事務の効率的処理を阻害しつつある現状にかんがみ、各行政機関の課を2割整理する。
3 職階給与制の運用の是正等
職階給与制の実施により行政機構の内部機構の膨張をきたした実情にかんがみ、機構の膨張または官職の異動を伴わずに、職員がその実情と能力に応じて正当な待遇を受けることができるよう職階給与制の運営を是正するとともに、適切な組織管理の方途を講ずる。