酉の市って?

歳時記

11月になると大きな熊手を持って歩く人や、神社の境内等に酉の市と書かれた看板を見かけることがあります。酉の市の名前は知っていても、酉の市が何なのか詳しく知っている人は多くないかもしれません。

そもそも酉の市の始まりは何でしょうか。その由来は色々あります。1つ目は、浅草のおおとり神社の御由緒に拠れば、祭神である鷲大明神に日本武尊やまとたけるのみことが戦勝のお礼まいりをしたのが11月の酉の日だったので、この日を鷲神社の例祭と定めたのが酉の市の始まりになったというものです。2つ目は長国寺に安置される「鷲妙見大菩薩」のご開帳日に立つ門前市から始まったというものです。3つ目は足立の花又(花畑)の大鷲神社近郊の祭礼です。

酉の市は11月の酉の日に、大鳥神を祀った鷲神社や寺院などで家内安全・商売繁盛や幸福を祈願する祭礼中に立つ市で、境内や門前に様々な飾りを付けた熊手などを売る露店が並びます。

豊国「一陽来復酉の市」万延元【本別7-261】

豊国「十二月ノ内 霜月酉のまち」安政元【寄別2-8-1-6】

11月の最初の酉の日を「一の酉」、12日後に巡ってくる酉の日を「二の酉」といいます。暦の関係でもう1回酉の日がある場合は「三の酉」となりますが、特に「三の酉」まである年は火事が多いといわれ、この時には熊手だけでなく火防のお札やお守りが売られます。

酉の市の縁起物が熊手です。熊手は、運を掻き集める、金銀を集めることが出来る道具として、商売繁盛につながります。また、福や運を鷲掴みにする鷲の爪のような形のため、力が存在するといわれます。そのため、酉の市は熊手を買い求める人々で賑わいました。

広重、豊国「江戸自慢三十六興 酉の丁銘物くまで」【寄別7-7-1-4】

豊国「酉のまち」元治元【寄別2-8-1-6】

熊手のほかにも、小さな熊手に稲穂やお札をつけたお守りや、たくさんの芽が出る縁起担ぎの食べ物の八頭、色が小判に似ている黄金餅、実だけでなく葉も花も幹や樹皮まで捨てるものがない縁起物の餅菓子の切山椒が売られました。錦絵にもこれらを買って帰る人々の様子が描かれています。

酉の市の様子は、江戸時代の錦絵にもたくさん描かれ、その盛況ぶりを知ることができます。また暮の歳の市と並んで、年末の江戸の風物詩であったともいえます。酉の市は明治以降もずっと行われており、東京都内では規模の差はありますが、現在も40か所以上の寺社で酉の市が行われています。

芳年「東京自慢十二ケ月 11」1880【VF6-F4-76】

「酉の市」(『東京風景』小川一真写真部 明治44所収)【333-7】

参考文献

  • 台東区総務部広報課編『史跡をたずねて:下谷・浅草』新版第11版 2018【GC67-M24】
  • 東京都台東区教育委員会生涯学習課編『台東区の祭礼と行事』2018【GD33-L492】
  • 浅草鷲神社ホームページ外部サイト

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