今年も花見の季節がやってきました。「花より団子」と言いますが、花見の時期は今も昔も「花より宴会」、そんな人々がたくさんいました。『東都歳事記』に拠れば、江戸の桜の名所は、隅田川、上野、飛鳥山、御殿山等が有名です。

上野

名所の中でも上野の山の桜は特別でした。上野の山は東叡山寛永寺の敷地で、寛永寺は徳川家の菩提寺であり、桜の時期に開放される「黒門」から入場しました。しかし、音曲厳禁・飲酒も禁止、暮れ六つの鐘とともに門は閉まり人々は追い出されました。「真っ黒な門が桜の関所なり」という句に表されたように、黒門が花見をする人には関所のように見えたようです。錦絵には、歩きながら桜を見物する人々のみが描かれています。

では、ほかの地域では花見はどうだったのでしょうか。隅田川、飛鳥山、御殿山は現在と同様に花見をして、桜の下での無礼講、音曲を奏で、それに合わせて踊ったりと自由に楽しみました。その楽しい様子は錦絵等に描かれています。

飛鳥山

飛鳥山では、多くの人々が敷物の上で弁当を広げたり、お酒を飲んだり、寝転んだりしている様子が見られます。桜の木の下でお酒を飲んだ人々が、三味線をひいて、それに合わせて踊って楽しんでいる様子が描かれています。外国人が描かれているものもあります。

隅田川

隅田川の東岸も桜の名所でした。描かれているのは対岸から船に乗ってお花見にやってきた人々でしょうか。まだ酔いが冷めないのか船に乗っても踊っている人もいるようです。早く出かけて場所をとり、ほろ酔い気分での帰宅。今も昔も変わらない風景のようです。

御殿山

無礼講の人々が、江戸湾を見下ろせる場所で花見を楽しむ様子です。

花見には子連れの人も来ています。年に一度の楽しみだったようです。

多くの江戸の庶民の楽しみであった春の花見。今もこれらの名所は、規模や場所が少し変わりましたが毎年多くの人が訪れる場所です。しかし、『女あるじ花見のめいてい』のように飲みすぎて支えられながら帰宅する人も。時代は変わっても花見の楽しみは変わらないようです。

関連電子展示会

江戸の花見文化については、本の万華鏡「江戸の花見」でも詳しくご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

参考文献

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