おいしい新茶ができるまで

歳時記

4月末から5月にかけて、茶葉は新芽の生長が進んで、茶摘みの季節になります。茶の新芽は桜が開花する時期に芽吹き始め、八十八夜(立春から数えて88日後・5月2日頃)には摘み取れるまでに成長します。摘み取った茶葉はすぐに緑茶に加工され、多くの過程を経て新茶として出荷されます。毎年香りのよい新茶が飲める時期は、製茶に携わる人々にとって、人手と手間を要する一番忙しい時期です。ここでは新茶ができる様子をいくつかの資料から紹介しましょう。

宇治のてん

宇治茶の中でも「碾茶」は、茶の湯に用いられる高級なお茶です。江戸時代、宇治は茶の産地として茶摘みの風物が名所図会に描かれるなど、観光の対象となっていました。甜茶は、覆いで日除けした茶園で栽培して作り、これは宇治の特徴でした。

『製茶之図』には覆いをかけた覆下茶園が描かれ、その中で茶摘みが行われている様子も描かれています。摘み取った茶葉はかまどの羽釜で蒸しあげます。火の面倒を見ている人が傍らにいて、たくさんの女性が折敷のような器に葉をいれています。蒸しあげた茶葉は、焙炉ほいろで茶葉を和紙の上に乗せて乾燥させます。そして仕上げに茶の選別を行います。

水澤村の煎茶

三重県四日市市水澤地区は鈴鹿山脈の麓に位置するお茶の産地です。『製茶説』では煎茶の製茶工程を描いています。老若男女が茶摘み作業をし、かまどで茶葉を蒸しています。蒸しあげた茶葉は焙炉で揉みながら乾燥させています。その後女性たちが箸で茶葉を選別しています。

甲賀郡土山製茶

近江茶の一大産地として知られる甲賀市土山町の製茶の様子です。茶摘み、蒸し、選別、乾燥、出荷までの様子が描かれています。また、製茶作業に使用する道具類も一緒に描かれています。


名産品として、または産業の一つとして製茶を描くことは明治時代にも行われました。『大日本物産図会』や『教草おしえぐさ』には、製茶の工程が解説入りで描かれています。

今年もおいしい新茶の季節がやってきました。作業工程の多くは機械化されましたが、茶畑の風景、お茶の文化は変わらず続いています。

上記以外に製茶の様子がわかる資料

参考文献

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