アジア情報室所蔵資料の概要: 中東・北アフリカ関係資料: 図書
欧米言語、日本語図書
人文、社会科学分野を中心に、参考図書、基本書、研究書を所蔵しています。
また、国連出版物のArab Human Development Reportなど、社会情勢について知ることができるレポート類も数多くあります。
現地語史料を校訂し欧米語タイトルで出版したものもあり、たとえばM. J. de Goejeによる"Annales, quos scripsit Abu Djafar Mohammed ibn Djarir al-Tabari"にはタバリーの有名なアラビア語の年代記"تأريخ الرسل والملوك"(『使徒たちと諸王の歴史』)が収められています。
現地語図書
ペルシア語資料は約40%を言語・文学関係が占め、デフホダーの"لغت نامه"(『辞典』)などのペルシア語辞典や、フィルドウシーの"شاهنامه"(『王書』)をはじめニザーミー、ハーフィズ、サアディーなど著名な古典文学者の作品や研究書を所蔵しています。次いで歴史・地理関係が、25%を占めています。宗教関係にはイスラームだけでなくゾロアスター教についての資料も含まれています。
アラビア語資料は歴史・地理、宗教、言語・文学等、人文系分野をバランスよく所蔵しています。イスラームについてはクルアーン注釈やハディース、哲学、神学、法学、神秘主義についての基本的な古典文献を所蔵しており、とくに法学関係は珍しいものが多く、1910年にモロッコで出版されたマーリク派の"المعيار الجديد"(『新しい尺度』)、1883年にエジプトで出版されたハナフィー派の "الفتاوى المهدية في الوقائع المصرية"(『エジプトの出来事についてのマフディーのファトワー集』)などがあります。小口カバーのついた西アジア特有の装丁の資料や、19世紀エジプトで盛んに行われた活版印刷で、特徴ある版面をもつブーラーク版など製本や印刷の面で興味深い資料もあります。また、福沢諭吉『福翁自伝』や吉本ばなな『つぐみ』のアラビア語訳など日本関係の資料も所蔵しています。
トルコ語資料も人文系分野が多く、歴史・地理関係では古代オリエントの時代から現代のトルコ共和国までを扱った資料を幅広く所蔵しています。なかでも数が多いのはトルコ歴史協会(Türk Tarih Kurumu)の出版物です。次いで所蔵が多いのが文化観光省(Kültür ve Turizm Bakanlığı)やトルコ言語協会(Türk Dil Kurumu)などから出版されている言語・文学関係資料で、カーシュガリーの"Divanü lûgat-it-Türk"(『チュルク諸語辞典』)やトルコ文学の最も古い作品"Kutadgu Bilig"(『幸福に関する智恵』)などの刊本があります。このほか、在日本トルコ大使館から寄贈された現代小説も多く所蔵しています。
また、トルコ語資料には1928年の文字改革以前に出版されたアラビア文字表記のオスマントルコ語史料も含まれており、"صولاقزاده تاریخی"(『ソラクザーデ史』)などの年代記の刊本を中心に所蔵しています。この中にはアラビア語資料と同じエジプトで印刷されたブーラーク版や、それより以前の18世紀にイスタンブルで印刷されたミュテフェッリカ版など、印刷史上で重要な出版物もあります。
図書館情報学関係では、ペルシア語と英語を対照させた図書館用語辞典、世界各地のアラビア文字言語の写本目録などの参考図書や、Türk Kütüphaneciler Derneği(トルコ図書館員協会)の出版物を所蔵しています。
検索方法
アジア情報室関連ページ
- 「アジア資料―諸地域資料―(関西館の資料紹介 12 )
」『国立国会図書館月報』 2006年12月号(no.549)
- 林瞬介「オスマントルコ語の書誌データ作成と検索に関する諸問題」(『アジア情報室通報』第9巻第2号 2011年6月)
- 林瞬介「アラビア文字活字印刷の普及とムハンマド・アリー時代のブーラーク印刷所」(『アジア情報室通報』第1巻第2号 2009年9月)
- 「アジア情報室の資料収集―入手方法と資料概要」(『アジア情報室通報』第1巻第2号 2003年6月)