<英語>Postrevolutionary Iran: a political handbook:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2021年2月公開)

更新
アジア情報室 作成

英語

Mehrzad Boroujerdi and Kourosh Rahimkhani, Postrevolutionary Iran: a political handbook (革命後のイラン:政治ハンドブック), Syracuse, New York: Syracuse University Press, 2018, xxxv, 853 pages.【GE721-P81

【キーワード】

イラン、政治エリート、政治団体、選挙

【著者情報】

筆頭執筆者のMehrzad Boroujerdiは、比較政治学、中東政治学及びイラン研究を専門とし、2019年からバージニア工科大学公共・国際関係スクールのスクール長を務める。本書執筆当時は、シラキュース大学マックスウェルスクール政治学科教授を務めた。

【出版の背景・目的】

イランの政治情勢は、外交政策や核開発の行方などをめぐり、世界から大きな注目を集めている。

その一方、同国の政治エリートについては、最高指導者や大統領等のごく一部を除き、これまでほとんど知られてこなかった。組織構造の分かりにくさ等が指摘され、親子関係や地縁による影響も見受けられる革命後のイラン政治において、 政治エリートに関する情報の不足は、政治的な分析を行う上での深刻な妨げになりうると本書は指摘している。

本書の研究は、そうした従来のイラン政治研究に対する問題意識に基づき進められたもので、本書では、革命後イランの政治エリートに関する幅広いデータが提供される。

なお、本書は、研究・執筆にあたって米国平和研究所(United States Institute of Peace(USIP))[1]、 バイオレット・ジャバラ公益信託(Violet Jabara Charitable Trust)[2]及びシラキュース大学の支援を受けている。

【本書のポイント】

革命後イランの政治エリートに関するデータが豊富に掲載されている。本書で扱われるデータには、 主な国家機関(監督者評議会、内閣、国会、専門家会議等)の構成員の変遷、 2017年までに行われた各種選挙(大統領選挙、国会議員選挙、専門家会議議員選挙等)のデータ、 女性国会議員割合の変遷、400以上の政治団体の情報、2,300人以上の政治エリートの人物情報等が含まれる。

これらのデータの主な情報源は、公文書、書籍、新聞、政治家のウェブサイトといった一般に公開されている情報であるが、 その収集には様々な制約を伴い[3]、正確とは限らない情報源に依拠せざるを得なかった場合もあるという。それでも、イラン内務省ウェブサイト上で短期間しか公開されなかった選挙結果が収録されるなど、本書には通常入手し難いデータも掲載されており、これらは現代イラン政治についての調査に資するものと思われる。

なお、本書のデータの一部は、オンラインでも公開されており、 Iran Data Portal(https://irandataportal.syr.edu/外部サイト[4] や、Iran Primer(https://iranprimer.usip.org/外部サイト[5]から参照できる。

【目次】

Part 1Political Institutions
1. Chronology of Major Political Events (1978-2017)
2. Revolutionaries and Political Institutions
3. Supreme Leader
4. Guardian Council
5. Expediency Discernment Assembly
6. Judiciary and Military Officials
7. Provinces and Elections
8. Presidency
9. Cabinet
10. Majlis
11. Assembly of Experts
12. Municipal Councils
13. Other Important Elite
14. Political Parties

Part 2 Political Elite
15. Who is Who in Postrevolutionary Iran
16. Family Ties of the Iranian Political Elite

【関連する調査及び立法考査局刊行物収載の文献】

(アジア情報課 伊勢田 梨名)


[1]米国平和研究所は、1984年に米国連邦議会によって設立された独立の機関である。暴力的紛争のない世界を目指し、非党派的な立場から、様々な調査研究や紛争地帯での紛争の防止に向けた活動等を行っている。

[2]バイオレット・ジャバラ公益信託は、2007年に設立された財団で、中東諸国の人々の生活の改善及び米国における中東文化に対する理解の促進をその使命として、各種助成を行っている。

[3]たとえば、イランの公的機関が提供する情報や統計にはしばしば矛盾が見られ、また、人物情報について客観的に検証する方法がない場合も多かったという。

[4] "Iran Data Portal"は、イランの社会科学に関するデータを提供するウェブサイトで、同国の各種統計、選挙のデータ、一部の法令の英訳等を収録している。本書の筆頭執筆者であるMehrzad Boroujerdiらが主任研究員を務めている。

[5] "Iran Primer"は、米国平和研究所がイラン関係の情報を提供するウェブサイトである。本ウェブサイトでは、本書の筆頭執筆者Mehrzad Boroujerdiも著者に加わったイラン政治の入門書、Robin Wright, editor, The Iran Primer: Power, Politics, and U.S. Policy, Washington, D.C.: United States Institute of Peace : Published in collaboration with Woodrow Wilson International Center for Scholars, 2010が公開されており、適宜その内容の更新も行われている。