<中国語>『展望と探索』19(3):アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2021年3月公開)

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アジア情報室 作成

『展望與探索(展望と探索)』19(3) 展望與探索雜誌社, 2021.3【Z1-AC82】

キーワード

台湾、両岸関係、国際情勢

著者情報

本誌は、台湾の法務部[1]調査局[2]が編集・刊行[3]している雑誌である。また、記事の執筆者には、大学教授等の民間の研究者等のほか、同局の職員も含まれる。

本書のポイント

本誌は、時事問題について学者や専門家が評論を執筆する「時評」、台湾の発展と国家安全、中国の情勢、両岸関係(中国と台湾の関係)等に関わる調査研究をまとめた「学術論著」及び「専題」[4]、様々なテーマの論文が掲載される「論壇」で構成されている[5]。最近では、米中関係、香港問題等に関する記事が多く掲載されており、日本の公安調査庁に相当する台湾の行政機関において注目されている最新の時事問題が取り上げられていると思われる。

本稿では、2021年3月現在の最新号であり、EU・中国包括的投資協定[6]やミャンマーのクーデター等に関する記事が含まれている19巻3号(2021.3)の目次を紹介する。なお、本誌は1巻3号から最新号までが法務部調査局ウェブサイトで公開されている[7]

目次

時評
 EUと中国[8]の「EU・中国包括的投資協定」を論じる
 日本の菅政権下の日中関係の展望
 兄弟からパートナーへ:70年間のアフリカ・中国関係
 ミャンマーのクーデターの政治経済分析
 中国の「政府監督検査業務条例」[9]の分析
 増産しているのに増収にならない:中国の経済復興の影に潜む問題
専題
 中国における民間のロケット産業の発展を分析する
 (英文記事)南アフリカと中国との関係:北京とアフリカの協力関係の固定化
論壇
 チベット亡命政府の2021年の首相選「予備選挙」の結果を分析する
 中国共産党「外事工作委員会弁公室」[10]の役割の変遷の研究

(アジア情報課 丹治 美玲)


[1] 日本の法務省に相当する機関。
法務部ウェブサイト
https://www.moj.gov.tw/外部サイト

[2] 国家の安全に対する脅威と国家利益への違反を調査し防止することを所掌とする組織。
法務部調査局ウェブサイト
https://www.mjib.gov.tw/外部サイト

[3] 『展望與探索』全文が法務部調査局のウェブサイトで公開されている(注7参照)こと、また、「展望與探索雜誌社」の詳細は不明だが、奥付の発行人が調査局長であることから、実質的に同局が編集・刊行している雑誌と見なすことができると思われる。

[4] 「学術論著」及び「専題」は、主題の面で差異はないが、「学術論著」は英文アブストラクトが必要でかつ査読を経るのに対し、「専題」は雑誌社の編集会議を経るのみで掲載されるなど、体裁や学術的信頼性の面で差異がある。

[5] なお、「学術論著」「専題」「論壇」は、号によっては記事が掲載されないこともある。

[6] 2020年12月30日に大筋合意が発表された協定。
(参考)欧州委、EU・中国包括的投資協定の条文公表(日本貿易振興機構ウェブサイト)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/01/ff2f970e57791388.html外部サイト

[7] 展望與探索月刊(法務部調査局ウェブサイト)
https://www.mjib.gov.tw/eBooks/eBooks_Detail?CID=4外部サイト
なお、当館は初号から18巻10号(2020.10)を所蔵している【当館請求記号Z1-AC82】。(2021年3月現在)

[8] 原文で「中國大陸」等とされているものも、本稿では便宜上「中国」と訳している。

[9] 政府督查工作条例(中華人民共和国中央政府ウェブサイト)
http://www.gov.cn/zhengce/content/2020-2/29/content_5574770.htm外部サイト

[10] 外事工作委員会は外交を担当する組織であり、弁公室はその事務局である。
(参考)楊潔篪氏、外事委弁公室主任に 中国の外交担当(日経新聞 2018.3.29)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28747250Z20C18A3FF1000/外部サイト