<中国語>『中国宇宙開発略史』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2021年11月公開)

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アジア情報室 作成

陈积芳 主编, 吴沅 编著『中国航天简史 (中国宇宙開発略史)』 (领先科技系列丛书)(先端技術シリーズ叢書) 上海 : 上海科学技术文献出版社, 2020.6, 2, 5, 169 p【NC161-C31

キーワード

中国、宇宙開発

編集者・著者

著者の呉沅は中国航天科技集団有限公司(CASC)[1]上海航天技術研究院(SAST)の高級技師であると同時に、中国科学普及協会会員として、多数の科学読み物やコラムを執筆している。

出版の背景・目的

先端技術シリーズ叢書は、一般向けの科学読み物として、人工知能、IoTなど最先端の科学技術の動向をわかりやすく解説している。本書はそのシリーズの中の一冊であり、近年中国の宇宙開発の歩みを平易な表現を用いてまとめている。

本書のポイント

月の裏側や火星の探査、独自の宇宙ステーションの建設など、中国の宇宙開発に関する新動向は近年、ニュース等で報道されている。中国の宇宙開発史については、「両弾一星」[2]に代表される1960-1970年代の開発がよく知られているが、本書ではそれらについては扱わず、2000年代以降の宇宙開発の動向を中心にまとめられている。また、一般の読者にも興味を持ってもらえるように、具体的なロケット打上げの経過や、特定の宇宙船、人工衛星などについてトピックを立てて詳しく説明している。科学政策を中心に扱うシンクタンクのレポートなどと比べ、より身近な視点から中国の宇宙開発動向を知ることができる。

目次

一、勢いを蓄えて蒼穹をうかがう-有人宇宙飛行
二、月への探査は月を得るため-月探査プロジェクト
三、「高いポジションでスタートを切るべし」-火星探査
四、宇宙開発の新たな試み
五、大きな世界で挑戦する-小型衛星を讃える
六、宇宙空間にあるさざ波-重力波の検出
七、宇宙開発で得た成果の転用
八、宇宙開発関係者に敬意を

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

芦田淳「【イタリア】宇宙政策をめぐる立法の動向」『外国の立法』No.278-2、2019.2
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11239711_po_02780208.pdf?contentNo=1
調査及び立法考査局『宇宙政策の動向』(科学技術に関する調査プロジェクト2016 報告書)、2017.3
https://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/document/2017/index.html#rm1220128
榎孝浩「宇宙政策の司令塔機能をめぐる議論」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.748、2012.4
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487283_po_0748.pdf?contentNo=1
富窪高志「中国の宇宙活動について」『レファレンス』No.682、2007.11
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_999706_po_068203.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

(アジア情報課 中山 正義)


[1] 中国航天科技集団有限公司は、中国の宇宙開発、ミサイル開発を担当する大手国有企業である。元は国防省第五研究院であり、第七機械工業省、航天(宇宙開発)工業省、航空航天工業省、中国航天工業総公司、中国航天科技集团公司へと組織が再編されてきた。ロケット「長征」シリーズ、有人宇宙船「神舟」シリーズ、月探査衛星「嫦娥」シリーズ、衛星測位システム「北斗」の開発を担当してきた。

[2] 核兵器(原子爆弾)、大陸間弾道ミサイル、及び人工衛星を指す。