<中国語>『TPPによるサービス貿易規則再構築と中国の対策に関する研究』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年1月公開)

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アジア情報室 作成

贺小勇, 黄琳琳 著『TPP对服务贸易规则的重构及中国对策研究 (TPPによるサービス貿易規則再構築と中国の対策に関する研究)= Research on TPP's reconstruction of rules of trade in services and China's countermeasures』 北京 : 北京大學出版社, 2021.1, 2, 204 p【DE451-C12

キーワード

中国、TPP、サービス貿易

編集者・著者

著者の賀小勇は華東政法大学国際金融法律学院長、同大学中国貿易区法律研究院常務副院長を務めており、国際金融法、自由貿易に関する複数の学会で副会長などの役員を担当し、上海、アモイの仲裁委員会で仲裁人として活動している。

黄琳琳は上海立信会計金融学院の講師を務めており、賀小勇と同様、国際貿易法及び国際金融法を専門としている。これまで複数の国家社会科学基金の研究プロジェクトと上海市の政策決定諮問プロジェクトに参加した実績がある。

出版の背景・目的[1]

国際サービス貿易を規定する取り決めは1994年の「サービスの貿易に関する一般協定」(以降GATSとする)が最初であるが、ドーハラウンド交渉の行き詰まりにより、経済発展の新しい需要を満たせなくなってきている。一方、2016年に署名された「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)とその発展形である「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP、本書では前項と合わせてTPPとする)は、より経済のグローバル化に適するよう、従来のGATSと比べて取り決めの仕組みから規定内容まで様々な調整が行われた。本書は、サービス貿易におけるTPPと従来のGATSの違いを議論し、その相違によってもたらされたGATS体制への影響と、これまでGATSに合わせて整備した中国のサービス貿易規則がTPPへ適応するためにはどのような施策が必要かについて検討することを目的として出版された。

本書のポイント

本書では、中国の立場からTPPの仕組みについて分析が行われている。TPPはより高いサービス貿易の自由化基準を代表し、中国のサービス業のさらなる開放の方向に合致していると著者は主張している[2]。その前提に基づき、中国国内のサービス貿易規則改正への建議や、FTAのサービス貿易交渉とWTO電子商取引交渉における中国への提言がされている。中国は世界2位の経済体として、東アジアのみならず、環太平洋地域でも大きな影響力を行使している。2021年9月にはTPPへの正式加盟の申請書を提出したと発表した[3]。今後TPP加入についての交渉では、中国の産業・経済政策をめぐって数多くの課題が想定されるが、TPPに対する中国の認識と、中国国内の政策、立法事情を理解するのに本書は役に立つ。

目次

序言
第1章 TPPによるサービス貿易規則再構築の基礎
第2章 TPPによるサービス貿易規則再構築その1:「商業的存在[4]」の投資条項への導入
第3章 TPPによるサービス貿易規則再構築その2:国境を越えるサービス貿易規則
第4章 TPPによるサービス貿易規則再構築その3:金融サービスと電気通信サービス貿易規則
第5章 サービス貿易の約束方法の再構築
第6章 TPPによるサービス貿易規則再構築への中国の対応に関する提言
参考文献
あとがき

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

工藤豊「TPP の農業分野をめぐる論点」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.924、2016.10
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10207256_po_0924.pdf?contentNo=1
鈴木賢一、雨宮卓史、田辺智子、寺倉憲一、小池拓自「TPP の概要と論点 各論(下)-環太平洋パートナーシップ協定署名を受けて-」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.903、2016.3.
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9914190_po_0903.pdf?contentNo=1
小池拓自、工藤豊、田中菜採兒、髙峯康世「TPP の概要と論点 各論(上)-環太平洋パートナーシップ協定署名を受けて-」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.902、2016.3
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9914188_po_0902.pdf?contentNo=1
小池拓自、田中菜採兒「TPP の概要と論点 総論-環太平洋パートナーシップ協定署名を受けて-」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.901、2016.3
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9914186_po_0901.pdf?contentNo=1
田中菜採兒、小池拓自「環太平洋パートナーシップ協定の概要-TPP 交渉の大筋合意を受けて-」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.884、2015.11
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9549824_po_0884.pdf?contentNo=1
森田倫子「農業分野のTPP 関税交渉の経過と大筋合意」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.879、2015.10
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9519240_po_0879.pdf?contentNo=1

(アジア情報課 中山 正義)


[1] 本書の序言より

[2] 本書のあとがきより

[3] 「中国、TPP加盟を正式申請 アジア貿易主導権狙う」日本経済新聞Web版2021年9月16日(2022年1月14日最終アクセス)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM16DYS0W1A910C2000000/外部サイト

[4] 商业存在、Commercial Presence。用語の定義は下記のリンクを参照。
https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/90/00/2895外部サイト