<朝鮮語>『一度も経験したことのない国 : 「民主主義はどのように終わるのか」』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年1月公開)

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アジア情報室 作成

강양구, 권경애, 김경율, 서민, 진중권 지음(カン・ヤング、権京愛、キム・ギョンユル、ソ・ミン、陳重権)『한번도 경험해보지 못한 나라 : "민주주의는 어떻게 끝장나는가"(一度も経験したことのない国 : 「民主主義はどのように終わるのか」)』[ソウル] : 천년의상상(青年の想像), 2020.9, 337 p【GE136-K344

キーワード

韓国、政治、検察改革

編集者・著者

カン・ヤングは、メディア財団TBSの科学専門記者である。権京愛は、法務法人へミール所属の弁護士である。キム・ギョンユルは、市民団体経済民主主義21共同代表である。1998年から2019年まで、市民団体である参与連帯に所属していた。ソ・ミンは、檀国大学校医学部教授であり、専門は寄生虫学である。陳重権は、美学者であり、前・東洋大学校教養学部副教授である。現在はコメンテータとして活動している。

出版の背景・目的

文在寅(ムン・ジェイン)政権は、2017年7月に発表した「文在寅政府国政運営5か年計画」にて、高位公職者不正捜査機関の設置、検察と警察の捜査権の見直し、検察人事に関する制度の整備等の改革を掲げ、長年の腐敗構造を清算するとした[1]。2019年8月、文大統領は、曺国(チョ・グク)氏を法務部(部は日本の省に相当)長官に指名することを発表したが、同氏の家族について、投資した企業が公共工事受注で利益を得たり、不正入学があったのではないか等の疑惑が提起され、報道が過熱したほか、検察が同氏の家族を逮捕・起訴する等捜査も強化された。2020年には、当時それらの疑惑を捜査する検察のトップであった尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏と、曺国氏の辞任後に就任した秋美愛(チュ・ミエ)法務長官(当時)との対立も激化し、検索改革をめぐる政治的混乱が見られた[2]

本書は、2020年初頭に上記著者らによる対談集として企画され、同年2月から7月までテーマ別に対談を行ったものをまとめたものである。本書のタイトルは、文大統領が就任演説において、「今、私の心には一度も経験したことのない国を作るという熱い情熱があります」と述べたことにちなんでいる。

本書が出版される1か月前には、曺国白書発刊委員会による『検察改革とろうそく市民 : 曺国事態で見た政治検察とマスコミ』[3]が出版されている。また、2021年5月には、曺国氏による自伝『曺国の時間 : 痛みと真実の語れない思い』[4]が出版された。

本書のポイント

本書は、2019年に韓国において検察改革が話題になっていた政治状況に基づいた対談集であるが、2022年3月に大統領選挙が予定されている中、韓国の政治状況の一端を知ることができる資料である。 本書の1~3章は、メディア・知識人、政治分野を扱っている。大統領府・与党・行政省庁・メディア等の権力に対する態度についての対談である。4~5章は、金融資本と私募ファンドについて扱っている。6~7章は、586[5]政治エリートと崩壊した正義と公正の回復をテーマとした対談である。

目次

  • 1章 ニューノーマル!「格好いい新世界」が開かれた
  • 2章 メディアの没落、知識人の死
  • 3章 新たな政治プラットフォーム、ファンダム政治
  • 4章 金融市場を揺るがす私募ファンドシンドローム
  • 5章 世間で最も刺激的な賭博
  • 6章 偽善は嫌だ!586政治エリート
  • 7章 倒れた正義と公正の回復のために

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

藤原夏人「【韓国】文在寅新政権の政策課題」『外国の立法』月刊版No.273-2(2017.11)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10984037_po_02730207.pdf?contentNo=1

(アジア情報課 田中福太郎)


[1] 「문재인 정부 국정운영 5개년 계획 및 100대 국정과제」대한민국 정책브리핑ウェブサイト
https://www.korea.kr/archive/expDocView.do?docId=37595外部サイト

[2] 奥田 聡, 渡邉 雄一「日韓関係のさらなる悪化と経済低迷 : 2019年の韓国」『アジア動向年報. 2020』
https://doi.org/10.24765/asiadoukou.2020.0_25外部サイト
同「与党の総選挙圧勝と検察改革の迷走 : 2020年の韓国」『アジア動向年報. 2021』
http://doi.org/10.20561/00052134外部サイト

[3] 조국백서추진위원회 지음『검찰개혁과 촛불시민 : 조국 사태로 본 정치검찰과 언론』(오마이북, 2020.8)【GE136-K345

[4] 조국 지음『조국의 시간 : 아픔과 진실 말하지 못한 생각』(한길사, 2021.5)【A11-K4-K144

[5] 韓国において、現在50代で、1980年代に大学に通い、1960年代生まれの世代を指す。1990年代には「386世代」と呼ばれた。