<中国語>『中国非伝統的安全保障研究報告. 2020-2021』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2022年5月公開)
魏志江, 谢贵平, 廖丹子 主编『中国非传统安全研究报告 = Report on China's non-traditional security studies. 2020-2021)(中国非伝統的安全保障研究報告. 2020-2021)』(非传统安全蓝皮书 = Blue book of non-traditional security(非伝統的安全保障藍皮書)) 北京 : 社会科学文献出版社, 2021.11, 2, 6, 2, 271 p ; 24 cm.【A99-C9-C115
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キーワード
中国 国際関係 安全保障 新型コロナウイルス
編集者・著者
主編者の魏志江は、中山大学国際関係学院教授、同大学韓国研究所所長。非伝統的安全保障と東アジアの国際関係を専門研究分野とする。謝貴平は、浙江大学公共管理学院教授、同大学非伝統的安全保障と平和的発展研究センター教授。非伝統的安全保障とグローバル・ガバナンス、辺疆安全保障を専門研究分野とする。廖丹子は、浙江財経大学公共管理学院副教授、浙江大学非伝統的安全保障と平和的発展研究センター兼任研究員。非伝統的安全保障を専門研究分野とする。
出版の背景・目的
本書は社会科学文献出版社が出版する「蓝皮书」(青書)シリーズ[1]の1冊であり、毎年新版が刊行されている。出版の目的は、中国における「非传统安全」(非伝統的安全保障)研究の最新動向を報告し、中国政府や研究機関等の参考に資するとともに、国際社会に対し中国における研究と実践の現状を広く示すことにある。なお、非伝統的安全保障とは、軍事的安全保障に代表される伝統的な安全保障概念に対し、経済・資源・食料・移民など国家が直面する多岐にわたる問題も広く安全保障の対象と捉える考え方である。
本書のポイント
「アジア情報室の社会科学分野の資料紹介」では以前にも本書の旧版(2017-2018年版)を紹介しているが[2]、その後2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生し、中国の習近平国家主席が「生物安全」(バイオセキュリティ)を国家安全保障の構成要素として新たに位置付けるなど[3]、非伝統的安全保障をめぐる状況に大きな変化が生じている。本書では各所においてこのような変化を踏まえた議論が展開されており、アフター・コロナの安全保障のあり方を考える上で、日本国内における検討の参考に資するものとなっている。また、巻末に「参考文献」として、中国の学術誌等で発表された非伝統的安全保障に関する最新の研究論文リストを掲載している点も有用である。
目次
I 総報告1 安全相互保障:非伝統的安全保障の未来
2 中国における非伝統的安全保障研究の現状、特徴と展望(2019~2020)
II 公衆衛生安全保障に関する報告
3 中東地域におけるヘルス・ガバナンスとCOVID-19への対応
III 地域安全保障に関する報告
4 インドシナ半島の地域安全保障複合体における安全保障の構造と社会的構成
5 中国と南シナ海周辺国との海洋の非伝統的安全保障における協力
6 中国-インドシナ半島経済回廊における越境組織犯罪と中国の対策
7 COVID-19流行を踏まえた食料安全保障と国際組織の対応
8 環境安全保障に対する挑戦への対応:グローバル・ガバナンスシステムの焦点と不均衡―4つの主要国際組織を例に
9 経済のグローバル・ガバナンスシステム改革のための中国の構想と智慧
10 核テロリズムのリスクの源泉とその封じ込めのメカニズム
11 移民ガバナンスモデルの構築-中国への啓示を兼ねて
12 日中のエネルギー安全保障協力における歴史展開とそのシステムの分析
参考文献
Abstract
Contents
関連する国立国会図書館刊行物収載の文献
湯野基生. "中国の国家安全とデータ安全". 変化する国際環境と総合安全保障:総合調査報告書. 国立国会図書館調査及び立法考査局編. 国立国会図書館, 2022, p. 147-165https://doi.org/10.11501/12198939

湯野基生. 中国における生物安全法の制定. 外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説. 2021, 288, p. 49-76
https://doi.org/10.11501/11680351

岡村志嘉子. 中国の新たな国家安全法制―国家安全法と反テロリズム法を中心に―. 外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説. 2016, 267, p. 223-240
https://doi.org/10.11501/9914666

(アジア情報課 木下 雅弘)
注
[1] 前田直俊. 皮書について-中国の社会科学報告書. アジア情報室通報. 2007, 5(3), p. 2-5, https://doi.org/10.11501/3051650, (参照 2022-05-27).
[2] 新谷扶美子. アジア情報室の社会科学分野の資料紹介 24. アジア情報室通報. 2020, 18(1), p. 12-13, https://doi.org/10.11501/11476398, (参照 2022-05-27).
[3] 湯野基生. 中国における生物安全法の制定. 外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説. 2021, 288, p. 49-76, https://doi.org/10.11501/11680351, (参照 2022-05-27).